元神の冒険   作:さすらいの旅人

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六大将軍との戦い③

(残りはこの三人で間違いなさそうだ……)

 

 塔の中に入らず、飛翔術で一気にショートカットして登場する俺に、残った六大将軍らしき連中は鳩が豆鉄砲を喰らったような表情となっていた。

 

 此処へ来る前に俺は少々悩んでいた。王道として塔の中に入って進むか、もしくは飛翔術を使って一気に最上階までショートカットして直接対決するかのどちらを。

 

 さっき倒したブレーガンやザングレイは(弱くてもちょっとばかり)惜しい奴等だったけど、魔王軍の実力を考えると全然大した事はない。それどころか大魔王バーンの配下にしては弱過ぎて、逆に奴を心配してしまいそうになってしまう。あんな連中を使って『地上破滅計画』を行うのには、余りにも実力不足で役割を果たす事が出来ないと断言出来る。

 

 残りの連中も弱くて話にならないのであれば、さっさと片付けるのがベストなんじゃないかと実行しようとするも、すぐに却下した。せめて奴等から、バーンに関する情報を得た後に倒した方が良いんじゃないかと。それでも万が一の事を考えて、ちょっとした用心(・・・・・・・・)を施した後、此処へ来た訳である。

 

 そして俺の目の前にいるのは、赤い長髪の魔族らしき男、神官と思わしきアンデッド、端整な容姿をしている緑髪の女魔族。

 

 女魔族はともかく、残りの二人はこれまで倒した連中とは少々違うようだ。特にあのアンデッドから、かなりの魔力を感じられる。どんな術を使うかは知らんが、もしかすれば甘く見てると痛い目に遭うかもしれない。

 

「お、おのれ……! 貴様みたいな非常識な小僧に、私の大事な部下達がやられるとは!」

 

「いや、敵に常識を求めるのはおかしいだろ」

 

 男魔族の台詞に、俺は思わずツッコミを入れてしまった。

 

 恐らく俺が塔の中に入って最上階へ目指そうと思っていたのだろうが、敵対している相手に常識を求めること自体間違っている。『竜の探索』シリーズみたいなRPG(ロールプレイングゲーム)ならやってるかもしれないが、生憎これはゲームじゃない為に勝手ながら省略させてもらった。

 

 まぁそんな事より、あの男魔族は『部下達』と言っていた。それから察するに、奴が六大将軍を纏める指揮官ってところか。

 

「ガルヴァス様、お下がりを!」

 

「こんな礼儀知らずな坊やは、あたしの鞭でお仕置きしてやる!」

 

 予想通りと言うべきか、アンデッドと女魔族が男魔族――ガルヴァスとやらを守る為に前へ出ていた。

 

 如何でも良いけどコイツ等、今もゆっくりと地面に足を付けている俺を見ても何の違和感も抱いていないようだ。尤も、そうしてくれた方が此方としては大変好都合だから別に構わないが。

 

「止めときな。どうせお姉さんもさっきの奴等みたいに一撃で終わるからさ」

 

「言ってくれるじゃない! はぁっ!」

 

 俺の忠告に女魔族は聞く耳持たずで、片腕に巻いている茨みたいな鞭を振るおうとする。

 

 距離は明らかに届かない筈だが、鞭が突然伸びて俺の方へと向かって来る。恐らくは鞭自体に、自身の魔力を通して伸縮自在に操っているかもしれない。

 

 だが、速度が大した事ないので躱すのは造作も無かった。俺がヒョイヒョイッと身体を動かしただけで通り過ぎていく。

 

「くっ、ちょろちょろと動き回るんじゃない!」

 

「当たりたくないから避けるに決まってるんだろうが」

 

 紙一重で躱されて苛立っている女魔族に言い返すも、向こうは全く聞いてないかのように鞭を振るい続けていた。

 

 他の相手もいるから、さっさと片付けようと接近を試みようと――

 

「ならば私が動けぬようにしてやろう」

 

「!?」

 

 思った瞬間、ガルヴァスの傍に居た筈のアンデッドが、いつの間にか俺の背後を取って姿を現していた。

 

 即座に迎撃しようとするも、向こうの方が一足早く、片手を此方に手を向けている。その瞬間、アンデッドの片手から闘気から作り出したと思われる無数の糸が出現し、そのまま俺の身体に貼り付いていく。

 

「ぐあぁぁぁぁッ!」

 

「ふはははは! この(とう)()()(ぐつ)(しょう)に捕まったら最後、もはや貴様は二度と動けぬわ!」

 

 悲鳴を上げる俺に、アンデッドは気分が良い様に技の名前を教えながら嘲笑っていた。

 

「ぐっ、くそっ……!」

 

「無駄だ! この技の前では私の操り人形も同然よ!」

 

「あああぁぁぁぁぁぁ!」

 

 逃れる為に抵抗しようとするも、力を強めたかのように無数の糸が俺の身体を締め付けていく。

 

 それを見た女魔族は好機と言わんばかりに、先程まで躱されていた鞭を再び振るい始める。

 

「うぐっ! ぎっ!」

 

「あはははは! どうしたの坊や、さっきまでの威勢は何処へ行ったのかしら!?」

 

 朱乃とは違うサディスティックな笑みを浮かべる女魔族は、何度も何度も鞭で俺の身体を痛めつけていた。

 

 アンデッドが使った闘魔傀儡掌と言う技で動けなくなり、女魔族に甚振られる光景を見て気分が良くなったのか、先程まで焦っていたガルヴァスに段々と余裕が戻り始めていく。

 

「ふふふ、どうやら私が出るまでもなかったか。だが……メネロ、そこまでにせよ」

 

「はっ」

 

 ガルヴァスの命令に女魔族――メネロは鞭を振るうのを止めて、今度はアンデッドに向かって言った。

 

「デスカールよ、脱魂(だっこん)()(じゅつ)を使って、小僧の魂を抜き出せ」

 

「脱魂魔術を、ですか? 恐れながらガルヴァス様、既にこの小僧の命は私が握っているも同然。態々術を使わずとも、殺す事は可能ですが」

 

「ぐぁっ!」

 

 アンデッド――デスカールは闘魔傀儡掌で殺せる事を証明しようと、更に束縛を強くして悲鳴を上げさせた。

 

「魂となったこいつには色々訊きたい事があるのでな。それに加え、計画の前に大事な部下四人を殺した落とし前を付けさせねば私の気が済まん! さっさとやれ!」

 

「畏まりました」

 

「け、計画、だと……?」

 

 今も束縛されている俺が思わず呟くも、ガルヴァスはまるで聞いてないように無視していた。

 

 デスカールは左手で術を使いながら、もう片方の右手から黒い玉状みたいな闘気の塊を出現させながら翳して、こう叫んだ。

 

「【暗黒闘気脱魂魔術】!」

 

 直後、黒い玉状から光線らしきモノが放たれ、そのまま束縛されている俺の方へと向かう。

 

 そして光線が俺に当たり、魂が抜かれようとしていく。

 

 だが――

 

「ッ!?」

 

「? どうしたのだ、デスカール」

 

 突如デスカールは違和感を抱き、同時に俺の身体から魂が出ない事にガルヴァスは異変に気付く。

 

「魂が存在していません!」

 

「何だと!?」

 

「ど、どう言う事なのよ、デスカール!?」

 

 魂が存在しないと断言するデスカールにガルヴァスだけでなく、一緒に見ていたメネロも信じられないように叫ぶ。

 

「こ、この小僧、もしや偽物――ッ!?」

 

「気付くのが遅過ぎだ」

 

「ぐぁぁぁぁぁぁあああ!」

 

 束縛している俺の正体に気付いたデスカールの背後から、エクスカリバーを翳しているもう一人の俺(・・・・・・)が振り下ろした瞬間、奴の身体は真っ二つとなる。

 

 アンデッドである故なのか、聖剣によるダメージが強すぎて、一瞬で灰となって消えた。魔法が宿っていると思われる宝石だけを残して。

 

「デスカールゥ!」

 

「ど、どういう事なの!? さっきまでデスカールが束縛していた筈なのに……!」

 

 自分が最も信頼する存在だったのか、アンデッドが滅ぼされた事に嘆くガルヴァスと、信じられないと叫んでいるメネロ。

 

 因みにデスカールが闘魔傀儡掌で束縛されていた俺だが、術者が死んだ事で闘気の糸が消えた事で解放された瞬間、役目を終えたかのように霧散していく。

 

「まさかアレは幻術!?」

 

「その通り。無策で此処へ来たらどうなるかと思って、魔法で作った偽物の俺を先に行かせたんだ」

 

 敵の拠点に着いて早々、ザングレイとの戦闘で使った夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)を発動させ、再び俺の残像を作り出した。相手側がどんな手段を使うのかを見る為、先行させて身代わりにさせたのである。

 

 因みに本物の俺は残像を操りながらも、剣および使い手を透明化できる能力――『透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)』を発動させて、ガルヴァス達に気付かれないようコッソリ侵入していた。複数の能力を同時に発動させる事など、俺には造作も無い。

 

 透明化したまま様子を伺った結果、やはり用心して正解だったと改めて認識した。デスカールと言うアンデッドが相手を束縛する技以外に、魂を抜き取ると言う術までも使用するなど非常に厄介な存在だ。いくら聖書の神(わたし)が対策を持っているとは言っても、何も知らずに受けていれば危うい展開になっていたかもしれない。

 

 そして残像の俺に脱魂魔術を使ったデスカールが気付いたのを見計らって、奴の背後を取ってすぐに透明化を解除した俺は仕留めた後、残っているガルヴァスとメネロに種明かしをしたと言う事である。

 

「き、貴様ぁ、人間の分際で小賢しい真似を……!」

 

(ここ)を使って敵を倒すのも手段の一つだと思うんだが」

 

 ぐぬぬと歯軋りしているガルヴァスに、俺はエクスカリバーを持っていない片手での指で自分の頭を突きながら言い返した。

 

 あの男は指揮官だから、俺が策を使っている事を全く考えなかったのだろうか。だとすれば、かなり間抜けな奴としか言いようがない。

 

「よくもデスカールをぉぉ!」

 

 俺の台詞に激高したのか、メネロが鞭を振るって、本物の俺を狙おうとする。

 

「悪いけど、それはもう見飽きた」

 

「なっ!」

 

 向かって来る茨の鞭を見ないまま、手にしてる聖剣で斬った事によってバラバラになった。

 

 俺からすれば、あの女魔族が振るう速度は余りにも遅い為、態々見なくても充分に対処出来る。

 

「わ、私の鞭が!」

 

「ついでに鞭と言うのは、ただ振るって相手に当てるだけじゃない。こんな使い方もある、ぞ!」

 

「きゃあっ!」

 

「ば、バカな! 剣が突然鞭に!」

 

 直剣となっているエクスカリバーを振るった瞬間、刀身が鞭と化して、すぐにメネロの身体に巻き付いた。突然の事にメネロが悲鳴を上げ、見ていたガルヴァスは信じられないように叫ぶ。

 

 剣から鞭に変わったのは、エクスカリバーの能力『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』を発動させたからだ。これは使い手のイメージ力次第でその形を自由自在に変えられる能力で、かなりの応用力を持つ。駒王学園で再会した時の紫藤イリナは、未熟と言えど大変便利に使っていた程だ。俺が使っているのはレプリカと言えど、使いこなせば武器の形状を瞬時に変える事は造作も無い。

 

「くっ、は、放せ!」

 

「そう言うなよ。偽物とは言え、さっきまで俺を散々甚振ってくれたんだから、此方も相応のお返しをしてやる、よ!」

 

 俺が握っている聖剣の柄を少し強く握りしめた瞬間――

 

「ギャァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

「メネロ!」

 

 鞭からバチバチと強烈な電撃が発生し、メネロの全身を浴びせるように感電させた。

 

 余りの激痛に女魔族は悲鳴を上げている中、途端に顔が醜悪な魔物へと変貌していく。

 

 因みにこれは以前朱乃に教えた技で、ライザー・フェニックスとのレーティングゲームに使っていたモノだ。ドSな彼女はこれに味を占めたのか、ザコのはぐれ悪魔討伐の時に使う事がよくある。

 

「あ……が……」

 

 電撃が消えて拘束を解くと、感電と同時に黒焦げになっているメネロはうつ伏せに倒れて虫の息になるも、すぐに動かなくなった。それはつまり、死んだと言う事になる。

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