「そ、そんなバカな! 私が最も信頼する六大将軍が、こんな小僧に……!」
「残りはお前だけだ」
デスカールとメネロも倒された事でガルヴァスが慟哭めいた叫びを上げてるのを余所に、俺はエクスカリバーの能力で鞭から直剣型に戻していた。
全員簡単に倒していた中で、厄介だったのはアンデッドのデスカールぐらいだ。特に魂を抜き取る術を生身で受けていたら、かなり危うかっただろう。一応の用心として、
だが、それでも解せない事がある。いかに厄介な相手がいるからって、本当に大魔王バーン直属の魔王軍なのだろうか。あの強大な強さを持つバーンが、こんな弱い連中を部下にするとは到底思えない。
目の前にいるガルヴァスは確かに相応の力を感じ取れるが、(当時戦った)バーンの実力の半分どころか、一割にも満たしていない。以前に
「貴様さえ現れなければ、私の計画が……!」
「計画、ねぇ」
どんな計画かは知らんが、取り敢えず魔王軍の行動を事前に阻止出来たと思えば良いのだろうか。
本当なら詳しく聞きたいところだけど――
「許さんぞ小僧! 貴様だけは絶対に、絶対許さんぞぉぉぉぉ!!」
怒髪天を衝くみたいな状態になっている今のガルヴァスとは、まともな会話は出来ないので諦める事にした。
ヤツの両手から闘気らしき塊を出現させた直後、俺に向けて放って来た。二つの闘気は大き目なビーム状となり、凄まじい勢いで俺に当たった瞬間、自分のいる周囲を吹き飛ばすほどの爆発が起きる。
「はぁっ……はぁっ……やったか」
部屋の一部分が吹っ飛んだ事で煙が舞っている事で、ガルヴァスは確認が出来ないでいるようだ。
先程放った闘気から見て、奴は相当な力を込めていたのだろう。
確かにアレなら普通の人間が受ければ確実に死んでいるかもしれないが――
「下らん技だな。ただ埃を巻き上げるだけなのか?」
「な、そ、そんな……!」
俺からすれば痛くも痒くもない児戯なモノも同然だった。爆発した事で部屋の一部が無くなっており、今の俺は飛翔術で身体が浮いているので落ちていない。
派手さだけで言えばイッセーが放つ
如何でも良いけど、ガルヴァスの顔はとても面白い事になっていた。自慢の技を受けても無傷であったのがショックなのか、口を開けて唖然としてるどころか、鼻水まで垂らしていると言う非常に情けない姿を晒している。まるでギャグマンガの如く滑稽なモノだ。
一応相手は六大将軍の指揮官なので、少しは警戒して戦おうと考えていたが、それはすぐに改めた。さっきの一撃を受けて、俺が本気を出してまで倒す相手じゃないと瞬時に理解したから。
「今度は俺の番だ。技の見本を見せてやる」
そう言いながら俺はエクスカリバーを左手に持ち替え、開いてる右手をガルヴァスの方へと向けて腕も真っ直ぐ伸ばす。
直後、掌にオーラが集束と同時に凝縮されていき――
「ビックバンストライク!」
「ッ!?」
技名を叫んだ瞬間、球体状の光弾が放たれた。
これは『ドラグ・ソボール』主人公の空孫悟の仲間でありライバルであるキャラ――ベジターの技。究極体デルが登場する前に現れた人造戦士の一人に止めを刺す時に、巨大な光弾として放った。着弾すると大爆発を起こし、人造戦士は首だけしか残らないと言う強力な一撃になっている。
その技を再現させたから、ガルヴァスも受ければ当然ただでは済まない。しかし奴は俺に対する恐怖の所為か、咄嗟に動く事も出来ないまま無防備で受けてしまう。
「ガァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
最上階だけでなく、塔すらも巻き込むほどの大爆発が起きた瞬間、ガルヴァスは大きな悲鳴を上げたのは当然の流れであった。
「ふむ、一応加減したつもりなんだが……」
ガルヴァスに相応の技で倒してやろうとビックバンストライクを放った後、俺は大爆発に巻き込まれないよう防御結界を張っていた。
爆発が収まったのを見て結界を解除しながら周囲を見渡している中、少しばかり後悔している。
塔自体は消えても別に問題無いが、その周囲は別だった。大爆発によって塔から発していた瘴気は綺麗さっぱり消えても、広大なクレーターが出来た事で周囲の自然に大きな影響が出ているのだ。
ガルヴァスを倒すついでに、塔ごと吹っ飛ばすために使っても、自然にまで被害を与えてしまったのは誤算だった。もう少し加減して撃てば良かったと反省するほどに。
因みに技を直撃したガルヴァスだが……姿は見えなくても生きているのが分かった。とは言っても、感じる魔力が微弱で虫の息も同然。恐らく数分もしない内に死ぬだろうから、最早俺が止めを刺す必要は無い。そう断言出来るほど、奴は弱っているのだから。
まぁそれでも、死の確認ぐらいはしておこう。もしかしたら魔王軍の誰かが援軍として駆け付けて、ヤツを回復させる為に何処かへ連れて行く可能性がある。
そう考えた俺は事後処理の前に、ガルヴァスのオーラを辿って――
「ん? 何だ?」
飛翔術で移動しようとするが、すぐに止めた。ふと急に小さな光が視界に入り、どこかへ飛んでいく為に。
俺が視てる光は一つだけじゃない。此処より少し離れた所からも球状の光が複数あって、まるで合流するように集まっていく。その数は全部で六つで、集まった途端に同じ方向へと目指して向かう。
さっき見た光の中に宝石らしき玉が見えた。あれは確かデスカールを真っ二つした時に落ちた魔法が籠められているモノ、だったか。加えて残りの光は、俺がガルヴァスの塔へ向かう方向と一致している。となればアレは、俺が今まで倒した六大将軍が持っていた宝石になる。
そして集まった宝石が光の球となって、向かった方向の先には……死ぬ寸前のガルヴァスがいる。
「あ~、これってまさか……」
この後に起きる展開を予想した俺は、もう少し早く行動に移すべきだったかと思った瞬間――
『フッフッフッ………ハハハハハハハハッ!!』
周囲全体に響くような笑い声が上がると同時に、闘気の柱が空に向かって伸びていくと同時に凄まじい風圧が襲い掛かって来た。
「はぁっ……やはりな」
ゲームのラスボス戦とかでよくあるパターンだと気付いた俺は嘆息した。一度倒した後に復活して、そこで真の力を見せる第二ラウンド前であった事に。
ベタな展開だと思っている中、闘気の柱に変化が起きる。自分が浮いている位置と同じ所から、瀕死であった筈のガルヴァスが現れた。身に纏っていた黒い外套が無くなった事で、屈強な肉体と思われる上半身を晒している。
外見は良いとして、先程俺が倒したヤツとは別人じゃないかと思うほど魔力が飛躍していた。そうなった原因は、胸の辺りにある宝石である事が一目瞭然だ。
「ハァーッハッハッハッハ! 我が忠実なる六大将軍達よ! お前達のお陰で、私に『豪魔六芒星』を完成させてくれた! 今この瞬間より、私は魔軍司令ハドラーを超え、最早影武者として生きる必要が無くなった!」
「何?」
魔軍司令ハドラー? それに影武者として生きる必要が無くなった、だと?
そうなるとガルヴァスを含めた六大将軍は、大魔王バーン直属の配下じゃないと言う事になる。さっき口にした『魔軍司令ハドラー』こそが、本物の魔王軍を指揮しているのだろう。
それを聞いて俺はとんだ勘違いをしていたと同時に、道理でバーンが率いている魔王軍にしては弱過ぎると納得した。こんな連中で『地上破滅計画』を行うのは、余りにも荷が重すぎるどころか役割すら全う出来ないと思っていたので。
目の前にいるガルヴァスはそれなりに強くなったとは言っても――
「だがその前に!」
「ごっ!」
いつの間にかガルヴァスが高速で動いたかと思いきや、俺の懐に入って早々拳を当ててきた。
「貴様にはたっぷり礼をしてやらねばな!」
スピードも上がっている事に驚いている俺を余所に、ガルヴァスの猛攻はまだ続く。