魔法少女を護る者   作:歯車

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プロローグ

 魔法少女。魔法や不思議な力を使って戦ったり、人々を助けたりする少女キャラクター、およびその変身ヒロイン作品のジャンル。

 

 その発端は1960年代のアニメとされる。ただしそれは表向き。

 遥か過去より、魔法と共にある少女達は世界の裏に存在した。人々に知られる事なく、人々に害を及ぼす魔女と呼ばれる悪鬼から守ったり、時に欲望のままに人々に害を成したりしながら。

 

 そうして人類史と共にあった魔法少女達。それだけ永い期間なのだから、当然様々な少女達がいた。

 時に英雄、時に魔女、時に一般人、時に偉人の家族、時に……。

 

 そうしてある時代に一人の魔法少女は思った。私を守ってくれる人が欲しい、と。

 そう思う魔法少女は別段珍しくないが、彼女は特別だった。魔法少女としては別段強いわけではない。寧ろ平均としては弱い部類に当たるだろう。

 

 だが天才だった。

 

 過去現在において並ぶ者なき頭脳。唯一迫るとすれば、過去にフランスをその欲望のままに蹂躙しかけた王妃ぐらいか。それでも迫るだけで並び立つほどではない。

 

 彼女の頭脳に追いつける人間が生まれるのを待っていたら人類は魔法少女を生み出す者達の仲間入りを果たすだろう。

 

 そんな彼女が欲しいと思ったのだから、造った。

 自分(魔法少女)を護る存在。魔女を殺す存在を。

 

 

 

 

 神浜市。

 東西で軋轢が存在し、親が、周りがそうだからと互いに理由もなく嫌い合う。そういった不安定な場所は願いを持つ者達が生まれやすく、故に魔法少女が生まれる。

 

 別に魔法少女は人々の願いを叶えるから、ではない。願いを叶えた少女が、相応の対価として魔法少女の宿命を背負うのだ。

 

 今まさに魔女に追われる少女もその一人。

 植物を生やし障害物を生み出すも、魔女は気にせずその巨大で破壊する。

 

「は、はぁ………誰、か…………」

 

 助けは来ない。魔女は結界と呼ばれる異空間を作り出し、そこは魔力や素質を持たぬ者には正気を保てぬ空間故に。

 

「ももこ、ちゃん………レナちゃん!」

 

 彼女のように弱い魔法少女は、この街ではチームを組むのだが、偶発的に巻き込まれたこの結界の中に彼女以外の魔法少女はいない。

 

 息も荒く、やがて己の足で足を引っ掛け転ぶ少女。追いついた魔女は片腕を上げる。少女は次の瞬間には地面にこびり着く赤いシミへと変わるだろう。恐怖からギュッと目を瞑り………しかし次の瞬間轟音が響く。

 

「■■■■■■■■!?」

「………………はぇ?」

 

 恐る恐る目を開けると巨大な剣に貫かれた魔女。地面に深く縫い付けられビクビクと虫のように痙攣する。

 

 剣を抜こうと暴れる魔女が最期に目にしたのは己に迫る巨大な刃。断頭台(ギロチン)の如くその首を斬り落とした。

 

「え? ええ?」

 

 混乱する少女。砂煙が晴れていくと、振ってきた刃の上に人影を見つける。フードを深く被って顔は分からないが、ここにいて、魔女を倒したという事は魔法少女なのだろう。服装が魔法少女らしくないのは、まさかまだ変身してないのだろうか?

 

「……………あ、あの」

「ちっ」

 

 え、舌打ち? と少女が困惑し、気づく。魔女が倒れたのに結界が消えていない。

 

「■■■■■■■■■■!!」

 

 異質な咆哮を挙げ迫る使い魔。感じる魔力が尋常ではない。恐らく自身で結界を張れるまでに成長した巣立ち目前の個体……………()()()

 

「ふゆぅ!?」

 

 謎の人物のみならず当然少女にも向かっていく。使い魔達が銃声と共に体の一部を弾けさせた。

 見れば謎の人物が銃を持っていた。あれで助けてくれたらしい。

 

 バランスを崩した使い魔達は地面に落ちて少女の真横を転がる。

 

「あ、ありが…………」

 

 と、礼を言おうとした少女の周りに突き刺さる槍、剣、鎌、大鎌、ハルバート、斧。全て傷ついた身体でなお少女に襲いかかろうとした使い魔へ向けた物。

 

 謎の人物はそのまま少女の下に移動すると抱え上げる。次の瞬間駆け出した。かと思えばぶん投げられた。

 

「「ええ!?」」

 

 響く声は2つ。少女と少女のものだ。

 投げ飛ばされた少女は驚愕して固まっている少女とぶつかる。というか、どうにも投げ渡されたらしく謎の人物は踵を返し追ってきている使い魔達へと向き直る。

 

 光すら飲み込む純黒の煙が現れ、無数の武具を形作る。空中で固定されたそれらは次の瞬間には高速で射出され使い魔を蹂躙。

 

 後方に控えていた一番魔力の高い使い魔が同様しながらも逃走を選択。武器が崩れ再び煙に変わる。

 

 そればかり高く飛んだ謎の人物のもとに集い、新しく形作られるのは巨大な曲刀(シミター)

 

 人の身より巨大なそれを振り下ろし使い魔をぶった斬った。

 

「■■■■■■■!!」

 

 結界を維持できるだけの力を持つ最後の使い魔が絶命した事により結界が崩れる。力の弱い使い魔達はその消滅に巻き込まれ消えていく。

 

「……………す、すごい」

「結構強そうな使い魔を、あんなに簡単に…………」

「もきゅう」

 

 少女達がその光景に呆然と呟き、妙な鳴き声が聞こえた。見れば小さな白い小動物がこちらを見ていた。

 

「あ!」

「………………」

 

 謎の人物はそれを一瞥すると何を思ったのか再び武器を作り出す。狙いは、小動物?

 

「まっ──!」

「──!?」

 

 いろはが慌てて止めようと叫ぶも遅く、武器は射出された。しかし謎の人物がビクッと体を震わせ武器が明後日の方向に突き刺さる。

 

「きゅー!」

「あ、ま、待って!」

 

 攻撃され逃げ出す小動物を慌てて追いかける桃髪の少女。謎の人物は暫しその背中を見つめた後歩き出す。

 

「あ、あの!」

「………………」

 

 少女が慌てて声をかける。立ち止まり、振り返ってくれた。

 

「助けてくれて、あり………ああ!?」

 

 お礼を言おうとしたがすぐに早足で立ち去った。

 

 

 

 

 

「クソクソクソ、また助けちまった」

 

 人気のない廃墟が立ち並ぶそこで、フードを深くかぶった人物は忌々しげに呟く。

 魔法少女が魔女や使い魔に襲われていると助けずにはいられない。地獄の底で母親もニッコリしていることだろう。ムカついて標識を蹴飛ばせばあっさり鉄が千切れガラァン! と大きな音を響かせる。

 

「まあいい。魔法少女に恩を売って損はねえんだ。面倒なだけで………」

 

 それに魔法少女を助けるということは必然的に魔女や使い魔と戦うと言う事だ。それ自体は歓迎するべき事。後は…………

 

 魔力の流れを追う。複数の魔法少女が訪れる場所がある。恐らくこの街の『調整屋』。

 

 これだけの魔法少女がいるならまあ居るだろう。在中なのか立ち寄ったのかは知らないが……まあ信用は築けているらしいから仲介してもらえばいいか。

 

「の前に、宿探すか…………」

 

 最悪廃墟で野宿でもいいが、出来ればネット環境があると助かる。

 

 

 

 

 ネカフェの場所も確認し、再び廃墟の立ち並ぶ区画に訪れる。やがて目的の場所が見えた。

 

「夏草や兵どもの夢の跡ってか………」

 

 『神浜ミレナ座』という色もくすんだ看板。

 

「あ………」

「………」

 

 なかに入れば先程弱い魔法少女を投げ渡した桃髪の弱い魔法少女。それから金髪と銀髪の魔法少女達。

 

「あれ、いろはちゃん知り合い?」

「さ、さっき魔女の結界で………」

「あ、じゃああんたがかえでを助けてくれた! ありがと、あたしはさっき助けてくれた子とチーム組んでる十咎ももこってんだ!」

「た、環いろはです」

「なぁに、私だけのけ者なのかしらぁ? 八雲みたまよ。この街で調整屋をやってるわぁ。ここに来たってことは、そういうことよねぇ?」

 

 それぞれが自己紹介し、こちらの言葉を待つ視線。まあ遅かれ早かれ多くの魔法少女と関わる予定はあったのだからと舌打ちしてから口を開く。

 

「俺は別に調整に来たわけじゃねえよ」

「え!?」

「あら………」

「はっ!?」

 

 紡がれた『声』に各々反応を示す。そのどれもが驚愕。それはそうだろう、魔女の結界で出会い、ここに訪れるということは魔法少女だろうと思っていたが、その声は間違いなく男だ。

 

「ま、魔法少女じゃ、ないんですか?」

「んな劣等種と一緒にすんな」

「れっと………?」

「劣っているという意味ねぇ」

「んだとぉ!?」

 

 いろはが困惑しみたまが補足しももこがキレた。

 

「…………ああ、悪い。親の教えだ………『魔法少女なんてのは総じて劣等』って教え込まれててつい、な」

「どんな親だよ!」

「俺が知る限り最低最悪の魔法少女」

「魔法少女なのかよ!」

「というか親って…………あらぁ、やちよさん達より歴が長そうねえ」

「そうだとしても、もうくたばったからそのうち抜けるだろ」

「っ! 悪い、嫌な事思い出させた」

 

 魔法少女を劣等と呼んでいても人の親。その子供に死んだことを口に出させ申し訳なさそうな顔をするももこ。

 

「話がそれた。俺が来たのはここで始める商売の仲介を、調整屋に頼みに来た。残留魔力からして、それなりの信頼はされてるみたいだからな」

「仲介?」

「『浄化屋』………金銭や食料と引き換えにソウルジェムの穢れを浄化してやるって店を始めたくてね。ソウルジェム差し出すにしても、信用のある魔法少女の紹介があったほうがいいだろ?」

「ソウルジェムの浄化って………グリーフシードを有り余らせてるのか?」

「強いていうなら俺の固有魔法だな」

 

 そんな魔法あるのか、とこの中で一番多くの魔法少女と関わるみたまに視線を向けるももこ。

 ソウルジェム………魔法少女の力の源は魔力を使えば穢れるのが常識。魔法で穢れを浄化など、矛盾している。

 

「仲介してくれんならこれはお代」

「あらぁ、良質なグリーフシード………」

 

 ジャラジャラと出されたのは魔女の卵のグリーフシード。

 

 グリーフシードの質は魔女の強さ。これだけの数を狩ってきたなんて。しかも保持しているということは浄化にグリーフシードを殆ど使っていないのだろう。

 

「つってもな。そう簡単にソウルジェムをホイホイ渡せねえよ。しかもまだ名乗らねえような奴に」

「どうりだな」

 

 と、フードを脱ぐ。年は、高校生ほどだろう。

 端正な顔立ち。紫の髪に紫の瞳、長い睫毛に薄い唇。無表情も相まり人形や彫像など芸術品を思わせる。

 

「俺は…………」

「トー君!?」

「………あ?」

「更紗燈矢君だよね!? あの、私の事覚えてる!?」

 

 そう、いろはが叫ぶ。

 

「…………………知らん。人違いだろ。俺は柴陽(さいはる)(きし)だ。お前とは今日が初対面」




柴陽岸
魔法を使う謎の男。魔法少女のソウルジェムから穢れを浄化する力を持つ。母親は魔法少女らしい。
紫の髪に瞳を持つイケメン。

更紗燈矢
岸と瓜二つの少年。行方不明。
いろはとは病院で知り合ったらしい。ブラコンの妹がいる。
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