止めるな!俺は日曜賛歌するんだッ!!   作:一般開拓者

11 / 12

流石に投稿スピードが亀すぎますね。もうちょっとスピード上げたい...

スタレの方ではFate/コラボ、ゼンゼロの方では周年でレミエール実装と楽しみが盛りだくさんですね



エーテル怖い系司祭

 

「あっ、サンデーさん!やっと帰ってきた!」

 

サンデーがRandom Play(ビデオ屋)に帰りつくや否やリンが急かすようにスタッフルームへと手招きする。

 

「早くこっち来て!ちょっと大変なことになっちゃって...」

「一体何事ですか?」

 

小走りでスタッフルームへと入室し、部屋全体を見回す必要もなく壁にかけられている全てのモニターが青色に染まっているのが視認できた。

 

「これは、ブルースクリーンというものでしょうか?」

「それが違うみたいでね。さっきもリンに同じような事をしたけど...」

 

アキラは数度咳払いをしてモニターに向かって急に喋り出す。

 

 

「Fairy(フェアリー)、聞こえるかい?もう1人の仲間が到着したよ」

 

 

サンデーにはそれが全くどのような意味を含んでいるのかが理解できなかった。元々機械に対して深い知識を得ていない上に、機械が喋って自分の意思を持ちながら行動するのが当たり前の場所なのだから、ブルースクリーンに対してこのような言葉をかけるのも自分の知らない技術なのかと勘ぐっている。

 

だが、ブルースクリーンから復帰するだけだとサンデーは思っているのに“もう1人の仲間が到着した” という100%不必要な要素を喋っているのがおかしいとは気づけなかった。

 

「それはどういう意味で──『お待ちしていました。初めましてサンデーさん。私はlll型総順式集成汎用人工知能のFairyです。どうぞよろしくお願いします』

 

「これは...凄いですね...」

 

急にモニターから声がするかと思えば自分の名前を紹介してもいないのに言われて、つらつらと流れるように長い漢字を聞かされて情報量の暴力で頭の中がパンクしてしまい、月並みな感想しか出力されなかった。

 

物が勝手に動き出す、急に喋り出して何気ない会話をする小鳥がそこら辺にいるなど現実的におかしいという区分に分類されるものたちは夢境で飽きるほど見てきたが、それはあくまで夢境だからと理由をつけることができた。

 

ここまで知能を感じる機械は現実だと滅多にお目にかかれないだろう。先程遭遇したボンプと違って肉体があるわけではなかったが、ボンプと違って人語を喋っている一点において一線を画していた。

 

「Fairyさんはなぜワタシの名前を知っているのですか?」

 

至極真っ当な疑問である。サンデーは一つずつ情報を整理する事にした。

 

「あっ、それは私が言ったからだよ。ここの関係者だから流石に伝えておいた方が良いかなって思ったの」

「そういう事でしたか。個人情報が漏洩しているのかと勘違いしてしまいました」

 

こう言ってはいるが、出身が別世界なので戸籍無しであり個人情報の漏洩もクソもないのである。唯一可能性があるとすればそれは間違いなくニコだが、金の亡者にも人の心は残っていたので金のなる木を前にしても流石にやらなかった。サンデーはそれを知る由もないが。

 

『新エリー都のデータベース上にはサンデーという名前の人物は存在していませんでした』

「ナチュラルに誰かの情報を調べてここで読み上げるのはやめてくれるかい?」

『肯定。以降、マスターに命令されるまでは個人情報保護の観点から個人情報の取得をロックします』

「ワタシの安息の地は無くなってしまいましたか」

 

今のところ唯一のんびりできていた場所でさえ変な人工知能が介入してきた事により消滅してしまったサンデーは非常に不憫である。

 

いかに予想だにしないことが起きるにしても個人情報の漏洩というラインをあっさりと越えてくることに開いた口が塞がらないどころか地面に着きそうな勢いだ。

 

「そういえば、Fairyは全都市80%以上の知能設備に対して無制限にアクセス出来るって言っていたよね。もしかしたらサンデーさんの住民票なんかも偽造できるんじゃないかな?」

 

「お兄ちゃん、もしや天才?」

 

ないなら作ってしまえ(違法)という考えに辿り着いたアキラは念の為サンデーにもそれで良いか確認を取る。

 

「サンデーさんもそれでいいかい?違法だけど、方法はこれしかないと思う」

「違法事業をしているワタシ達が今更違法かどうかを気にする必要があるのでしょうか。可能であるならば、ぜひお願いいたします」

「サンデーさんは痛い所を突いてくるね...」

 

『肯定。個人名:サンデー として住民票を作成します』

『認証しました。独自のルートを通して1時間後にはポストの中に保険証やその他の身分を証明するものが入っているはずです』

 

「仕事が早くて助かります。これでようやく浮浪者の身分から脱する事が出来ました」

「良かったねサンデーさん!脱違法司祭!」

 

違法司祭などという不名誉な言葉が飛び出したが、サンデーはスルーした。自らが違法司祭であると認めているようなものである。

 

「実は、ここの向かいにあるCDショップに興味がありましてね。会員証の登録などもしておきたかったのでこのような形で身分を証明出来るものが貰えて助かります」

 

「へえ、音楽も嗜むのかい?」

 

意外だという様にアキラが問いかける。それもそのはず、聖書らしき本を身につけているため読書が好きなのだと思っていた。

 

「はい。妹が歌手でして、妹の曲を聴く機会が多かったので妹が歌うもの以外の曲も自然と聴くようになりました。それでも、1番のお気に入りは妹の曲ですが」

 

何を隠そう、サンデーは妹大好き人間である。

 

仕事に忙殺されていたのにも関わらずわざわざお店に出向いて限定版のレコードを何時間も並んでいの一番に購入したり、仕事部屋ではクラシック音楽を流して夢境の様子を見ながら優雅に書類に向き合う──のではなく、ロビンの曲を流して歌詞の一つ一つに共感しながら仕事からの解放を夢見て、ただひたすらに手を動かしていた。

 

「妹さんにゾッコンだねぇ〜!お兄ちゃんもサンデーさんを見習ったら?」

「十分すぎるくらいリンで癒されてるから遠慮しておくよ」

「...私も愛されてるねぇ」

 

 

 

.........

 

 

 

翌朝、チュンチュンと鳴くスズメの奏でる音で目を覚まして気怠げに上半身を起こす。軽く背伸びをしてカーテンを開き、太陽光を直に浴びる事で身体と脳を目覚めさせ軽く身支度を整えると、ぐぅ〜と腹の虫が騒ぐ。

 

「ああ......」

 

 

「──お腹が、減りました」

 

そうと決まれば朝ごはんのために近所の喫茶店に向かう。ビデオ屋で食べるという選択肢もあったが、冷蔵庫は必要最低限の食べ物しかなく、棚を開けてみるとカップラーメンやら栄養補助食品のバーで埋まっておりご機嫌な朝食を取るのは難しそうだったので諦めた。

 

日差しが少し眩しいが、まだまだ空は薄いオレンジ色を帯びている。活気溢れる六分街の朝が始まった瞬間だった。

 

「モーニングセットを一つお願いします」

 

まだ朝早い時間のため、友達と喋りながら学校へ向かっているシリオンの学生や犬の散歩をしている人、猫と縄張り争いをしているボンプなどで賑わっていた。

 

もちろん今日は平日だが、決して仕事に追われている人を見て可哀想だなぁと思うために外出したのではない。

 

注文を終えると店の外にあるテラス席に座って今日の予定を立て始めた。

 

(今日はこのモーニングセットを食べ終わったらその後にCDショップに行って...暇だからキャロットをちゃんと持って行ってホロウ探索でもしてみようかな)

 

「お待たせしました、モーニングセットです。ティンズ・スペシャルをオマケしておきます。ごゆっくりどうぞ」

 

ある程度予定を決めると、モーニングセットに加えティンズ・スペシャルという看板メニューのコーヒーもテーブルに置かれた。

 

コーヒーからは湯気が立ち上り、バスケットに入った焼き立てのパンからは鼻腔をくすぐる香ばしい小麦の香りが食欲をそそらせる。

 

(ほー、いいじゃないか。こういうのでいいんだよこういうので)

 

手を合わせてテーブルの上に並べられた料理に向かって一礼をする。

 

「いただきます」

 

両手でパンを掴み、焼きたての熱さをものともせずにかぶり付く。

 

「美味しい...」

 

たまらずハムエッグを少し分けてフォークを刺し、パンを飲み込み切ってから口の中に入れる。

 

カリカリに焼かれたハムが、トロトロのたまごと調和して口の中でとろけた。

 

まるで子供のように無邪気にパンとハムエッグを貪り、気付いた頃にはお皿の上にはパンくずのかけらさえもなかった。サンデーは少し前のめりになっていた状態から戻り、おしぼりで良く手を拭いてティンズ・スペシャルへと手を伸ばす。

 

置かれた陶器製の白いカップと、それに隣り合わせのミルクとガムシロップ。いかにもな“喫茶店のコーヒー”を感じさせるそれは、飲まれるのを今か今かと待ち望んでいるかのようだった。

 

持ち手に指を通してカップを持ち上げてコーヒーを口内へと流し込むと、まだ温かさを感じるコーヒーの味が広がる。

 

「おお...!」

 

ほんのりと苦く、しかし飲みやすいようにブレンドされているコーヒー。一つ一つ豆を厳選して焙煎していると言われても納得な出来だった。

 

特有の酸味や苦すぎる味もなく、コーヒーの味そのものが舌の上に染み込んでいく。これほど上品な味わいは未だかつて味わったことがないコーヒーの一つの極地であると言える。

 

そういえば、と今の時刻を見てみると、思っていたより料理の虜になっていたのかCDショップの開店時刻から既に十数分も過ぎていた。

 

カップの中に残っていたコーヒーをしっかりと飲み干し、サンデーは席を立った。

 

「ごちそうさまでした」

「ありがとうございます。お会計、800ディニーになります」

「では、1000ディニーからで」

「はい、200ディニーのお返しですね」

 

すると、店員さんはおつりの硬貨と一緒にチケットらしきものを渡してきた。

 

「これは、いったい何でしょうか?」

「コーヒーのクーポンです。コーヒーが気に入っていたご様子でしたので、ぜひ」

「なるほど...」

 

クーポンを見てみると、コーヒーが200ディニーも安くなるらしい。メニューで見た時、コーヒーは一杯500ディニーほどだったので破格のクーポンと言える。その上、期限も特に指定されていなかった。

 

「それでは、またのご来店をお待ちしています」

 

店員さんに見送られて喫茶店の敷地から出る。ふぅ、とお腹を撫でながら一息。

 

「やはり、ここで正解でしたね」

 

美味しいご飯を食べれるお店を引き当てた充実感を感じながらCDショップへと歩いていく。

 

 

 

.........

 

 

 

CDショップに入るとラジカセやテレビから流れるような音ではなく、蓄音機から音楽が奏でられている音で入店を迎えられる。

 

そのメロディはまさにサンデーの仕事部屋で聞いていたようなちょっぴり懐かしい音だった。

 

円盤が壁に飾られていたりと目新しいものばかりで興味深々に目が動き回る。気づけば、お店のカウンターまで来ていた。

 

「いらっしゃいませ。おや、あまり見かけない顔ですね。私はエイファといいます。この店の店長をしています」

「サンデーと申します。最近、こちらの街に越してきたのですよ。今は向かいにあるビデオ屋で働かせてもらっています」

 

互いに挨拶を交わし終えたところで、エイファはサンデーに問いかける。

 

「さて、サンデーさんはどんな音楽が好みですか?」

「決まってこれというものはありませんね。妹のカバーであれば何でも良かったのですが...一度、見て回っても?」

「かまいませんよ」

 

そう言って、サンデーは店内をふらふらと歩き始める。落ち着くクラシカルなもの...と呟きながら一つずつ手に取り、ジャケ絵や最初のフレーズを聞いてみたり。

 

様々なアプローチで自分好みの音楽を探そうと音楽のみに集中して頑張っていた。

 

 

「これも中々良──「良いわよね!その曲!私も歌ったことがあるわ。これが好きなら...こっちもオススメよ!」

 

 

急に右からかなりの近距離で人の声が聞こえたため、思わず慄いてしまった。

 

見れば声をかけてきたその人は怪しすぎる装いをしていた。まるでロビン(妹)の変装を見ているような...と既視感を覚えるのは仕方がない。目元を隠すための黒いサングラスに口元を隠すマスク。そして羽織っているコート。

 

変装の三種の神器みたいな格好は、「自分は有名人なんです!」と主張しているようなものである。

 

「ええと、サンデーと言います。すいません、アナタは...?」

「私のことはデタラメチャーハンと呼んでくれるかしら?」

「デタラメ...チャーハン...???」

 

適応不可。残念ながらヘイローは回らない。

 

流石に何を言っているのかが理解できなかった。宇宙猫サンデーになってしまうことは避けられない。今だけFairyを自分の脳に埋め込んでもらいたかったが、それは出来ない。

 

 

今ここに、デタラメチャーハンとハーモニーピジョンの縁が生まれた。






次回「デタラメ調律系司祭」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。