タイトルは適性遺物の名前を位置のみちょこっと変更しただけです。
※本当は「再び苦難の道を歩む司祭」
「ん...?何か、人の声が聞こえたような...?気のせいでしょうか...」
そう言ってサンデーは辺りをキョロキョロと見回す。切実に人と触れ合いたいのだ。欲を言えばその人たちがホロウから脱出する手がかりを持っているならなお良い。
「おーい!こっちだこっち!俺らはここだ!」
間違いなく人の声が聞こえて、サンデーは安堵しきった表情で声のした方向を振り向く。
(エッ!?ひ、人じゃ無い!?なんだあれ、オムニックみたいな感じっぽいな?)
サンデーの視線の先には、赤いジャケットを着てフサフサの白い髪がかなり特徴的などこからどう見てもオムニックみたいな人ともう1人、
少しグレーめのある髪をした、いかにもサイバーパンクですよと言わんばかりの全体的に薄緑と黒で構成された服を着用している割には刀のような前時代的なものを腰に携えているオレンジ色の瞳をした少女がいた。
(なんか...2人とも服が蛍光色だからわかりやすいな...)
サンデー、今思うべきところは絶対にそこではない。
そんなくだらない事を考えていた割には頭はしっかり働いていた。
(この2人、ゼンゼロのゲームトレーラーで見覚えがあるぞ...!)
(と、言うことはだよ。かなりメタ思考だがこの2人に着いていけば絶対にホロウを出られる!)
「初めまして...ワタシの名前はサンデー。しがない旅人です...どうぞよろしくお願いいたします」
きっちりとした礼の角度で、靴の向きも整わせお手本のようなお辞儀をしながらサンデーは自己紹介を行う。
それに続けて、目の前の2人もそれぞれ自己紹介をする。
「コホン...私はアンビー・デマラ。何でも屋『邪兎屋』の従業員よ。よろしく」
アンビーは簡潔に、それでいて洗練された自己紹介を行った。そうすると、今度は俺の番だという風に推定オムニックがアンビーの前に立ち、サンデーの方を見た。
「俺はビリー!ビリー・キッドだ。さっきのサンデーの戦闘を見てたら感動しちまってよ!まるで『スターライトナイト』を見てるようだったぜ!」
中々リアクションの良い人のようだ。そして、サンデーがオムニックのようだと推測していたが、表情がコロコロ変わっているのを見るに、それはオムニックの特徴と一致しない。
(ここは思い切って聞いてみた方がいいだろう...ちょっと待って?さっきの戦闘見られてたの?うっわあ恥ずかしい...!)
サンデーはあの一連の流れが人に見られていたことを知り、恥ずかしがった。外面は全くの無表情であるが。
表情があまり動かない点で言えば、サンデーとアンビーは仲良くなれるだろう。
「すたーらいとないと?というものはわかりませんがお褒に預かり光栄です...その...一つ、ビリーさんにお聞きしたいのですが、もしかしてアナタは知能機械人ですか?」
「そうだ!って、ええええ!?スターライトナイトを知らないのか!?」
ビリーは本気で驚いたように声を張り上げている。
「えぇ...なにぶん、仕事漬けだったせいで外の世界の事情に疎いのですよ」
嘘は言っていない。嘘は。
嘘をつくときは真実を良い塩梅で混ぜ込めばバレにくいと言うが、それはこの状況の為だけにある言葉と言っても過言ではない。
「仕方ねぇな!いいか?スターライトナイトって言うのは───「ビリー、話し始めた所悪いけど、本来の目的を達成しなきゃいけないわ」
「おっと!そうだった!すまねえ...スターライトナイトについてはまた今度教えてやる!」
そう言って目の前にいたビリーはアンビーの隣へと引っ込んでいった。
「すみません...『本来の目的』とは、一体何のことでしょうか?」
まるで何でもないことかのように穏やかな雰囲気でサンデーは質問をする。
(ここで2人と別れてしまったら本っっっ当にマズい!!)
内心はコレである。温度差で風邪ひかないようにだけ気をつけてください。
「それは...」
アンビーがそう言いかけると、サンデーから少し距離を取った後に何やらビリーと肩を寄せ合ってヒソヒソと話し合いをし始めた。
「おいおい!そんな簡単に言っちゃっていいのかよ?」
「彼の人となりを少し観察したけど、悪そうな人ではないわ。それに...私たち2人だけの状態よりも彼がいた方がエーテリアスに襲われた時に心強いでしょ?」
「なるほど!確かに上級エーテリアスを単独で撃破できるくらいだしな...俺も賛成だ!」
普通に丸聞こえである。彼ら(主にビリー)はもう少し声のトーンを下げて話すことを練習した方がいいだろう。
「考えが纏まったわ」
2人はサンデーの前に戻って来て早速提案を持ちかける。
「サンデー、私たちと一緒に行動しない?」
(いよっしゃああああああああ!!ナイス俺!見られてて良かった!!)
この沸きっぷりである。勝手に助かった気になっているが、そもそもホロウから出てないため依然として危険なままだ。
「願ってもないことです。ぜひ同行させてください」
続けざまにサンデーは口を動かす。
「実はワタシはホロウから出る為の手段を持ち合わせていないので、あなた方とここで出会えて幸運でした」
サンデーは心の底から言葉を発していた。まごう事なき本心であった。
しかし、そんなサンデーとは対照的に2人の顔は少し青くなっている。
自分たちから協力を申し出た手前、まさか「こっちもホロウから出る為の手段がない」とは口が裂けても言えない。
「そそそそそうだな!!なあアンビー!」
「えぇ、本当に」
ビリーはわかりやすく声が震えているし、アンビーに至ってはただでさえ少ない口数がもっと少なくなっている。
誤魔化すのが下手すぎるぞ邪兎屋!どうなっているんだ邪兎屋!
こんなにわかりやすく動揺しているのに、サンデーはちっとも気にしていなかった。断じてラノベの鈍感系主人公ではない。
「ンンッ!...とにかくこれで私たちは協力者よ」
「いざって時は頼んだぜ!」
「ええ、もちろんです」
そうやっているうちにもホロウ内部での時間は過ぎていく。
.........
「それじゃあ、私たちの目標を共有するわ」
「私たちの目標は『赤牙組が盗み出した金庫の回収』よ」
(赤牙組ってなんだ...?組って入ってるくらいだし暴力団っぽさを感じるな)
サンデーは赤牙組という組織が何なのかわからなかったが、目標の共有を円滑に行う為に口からこぼれ落ちそうな疑問をグッと飲み込んだ。
「ちなみに、赤牙組のリーダーは『シルバーヘッド』っていうおっさんだ!」
「なるほど...覚えておきましょう。それで、その金庫の場所の目星はついているのでしょうか?」
「いえ、まだよ。さっきからエーテリアスの大群に追いかけ回されてたせいでまともに見つけられてないわ」
(まぁ...敵から逃げながら探すのはそりゃあ難しいよな...)
「サンデーと会って俺らはやっと少し休憩出来てるんだが、いつエーテリアスが現れてもおかしくねぇ!」
「GuRururuUru...!!」
「あー...こんな風に、な」
3人の背後にあった背の高い歩道橋から2体のエーテリアスが堂々と登場して下に降りてこようとしている。
「火力支援は俺がやる!アンビーは前を頼んだ!サンデーは...
「サポートが本職です!」
「了解!後ろは頼んだぜ!」
2体のエーテリアスを皮切りに質の悪いCG合成かと思うくらいぞろぞろとエーテリアスが出てくる。
「移動しながら戦闘するわ!」
「「わか(った!)(りました!)」」
そう言うやいなや、3人は一斉に駆け出した。
.........
「そろそろ先頭のエーテリアスをゴッソリ削らないとマズイな!」
「ふっ!そうね!」
着実に追いかけてくるエーテリアスの数は減っているものの、数の暴力には流石に勝てないので3人はここで一気に決める態勢に入る。
「接敵する前にサポートをします!受け取って下さい!」
サンデーは本を開き、こだまを準備して精神を統一させる。
「安寧が、目に映る──!」
そうサンデーが唱えると、こだまが一斉にビリーとアンビーを囲んで「調和」の祝福を行う。
「うおっ!?力が一気に引き上げられた感覚がするぜ...!」
「これは...見事ね。ここまで手厚いサポートを貰ったのならしっかりと決め切るわ!」
2人は意気揚々とエーテリアスに突っ込んで行く!
「フォーー!!全員くたばりなぁ!」
デュララララララララ!!!!
ビリーは回転しながら2丁拳銃を駆使して凄まじい音を立てながら乱射し、広範囲のエーテリアスを一気に殲滅し、
「はああああっ!」
アンビーは近くの貨物を足場にして高速で縦横無尽に動き回り、確実に一体一体ずつまるでアサシンのようにエーテリアスを倒していく!
「ワタシもお二人に続きます!」
サポートに徹していたサンデーも、自分を狙ってくる数体のエーテリアス相手に通常攻撃で近寄らせずに冷静に処理を行う。
数十秒後、残りのエーテリアスの数は数えられるほどにまで減った。
まだまだ勢いは止まる事なく、ビリーは余裕さえ出て来た。
「命中!」
正面にいるエーテリアスの右足を華麗に撃ち抜き、バランスが取れないようにして無力化する。
「RuUuAoooOO!!」
背後から別のエーテリアスが飛び込んで来ていたもののすぐに反応して地面に伏せ、自分の上を通り過ぎる時を狙って下からエーテリアスの腹を撃ち抜く。まさに凄技である。
「おっと!危ねぇ危ねぇ」
腹を撃ち抜いて地に体を伏したエーテリアスの頭部に銃口を向ける。
「悪いな、個人的な恨みはないんだが、俺らとお前ら化け物は...敵対する
「痛くねぇように、せめて急所を狙ってやるよ」
普段はおちゃらけた雰囲気の多いビリーだが、今の彼はピシッと引き締まってカッコいいが濃縮されている状態であった。
ビリーは躊躇うことなく、引き金を引く。
カチッ
「ん?」
前言撤回。ビリーはやはりビリーであった。
折角のカッコいいシーンが台無しである。
「や、やべ、弾換えんの忘れてた!」
そう言っている間に、地に伏せていたエーテリアスはゆっくりと立ち上がり先程の借りを返さんとばかりに命を奪う刃を振り抜き、ビリーに襲いかかる...!
「待て!ちょっと待ってくれ!」
「うわぁーー!」
「させません!」
間一髪、サンデーが虚数エネルギー製茨の鞭をエーテリアスの足元に巻きつけて転ばせたお陰で刃の軌道が逸れて当たりはしなかった。
「はっ!」
エーテリアスが転んだ隙にアンビーが電気を放出させた状態の電磁ナタで胴体を斬ってとどめを刺す。非常に息の合った連携プレーである。
「...ビリー、集中して」
アンビーは少し呆れたようにビリーに向けて言葉を投げかける。
「あはははは、凡ミスだ凡ミス。サンデーもありがとよ!」
そう言ってはいるが完全に腰が抜けて地面に座り込んでいる。
ビリーは立ちあがろうとした時、視界の先で何かが動くのが見えた。
「おい、あそこに誰かいるぞ」
「迷い込んだ人かもしれません。見にいってみましょう」
3人は少し足早にビリーが言っていたところへ向かう。
そこには人がいた。うめき声も聞こえた。
「ぐっ!」
正体は右手の手のひらから緑色の刃が飛び出しており、それを振り上げて近寄るエーテリアスを倒しているシルバーヘッドだった。
「彼の足元に金庫がある」
「本当だ!ラッキー、わざわざ探す手間が省けたぜ」
「待って下さい。彼を無視するのですか?」
「彼がシルバーヘッドだからよ」
「なるほど、納得しました」
そう会話をしている合間にアンビーは前へ前へと進んでいる。
「って、ちょ、アンビー?何する気だ?」
すんでのところでビリーがアンビーの左手を掴んで止めるも、右手にはすでに電磁ナタが握られていた。
判断が早すぎである。アンビー、恐ろしい子...!
「彼を捕らえて金庫を回収するの」
(良かった...流石に殺すようなことはしないか)
「いや、まずは様子を見てから...」
ビリーは乗り気であった。頑張れサンデー!お前しかストッパーがいないぞ!流れに負けるな!
「ワタシも手伝いましょう」
死ななければいい、殺さなければいいという価値観のもと、再起不能なレベルでボコボコにはするという選択肢が入ってくる...これが終末世界!
ヘイローがガコン!と音を立てて回転したような幻聴が聞こえたような気がするが、気のせいである。
「俺は...げほっ...ころ...すっ...うあああ...!」
シルバーヘッドの右目は充血し、左目があった部分は黒く染まっている小さな球体が出現していた。
「やっぱりだ、エーテルに侵蝕されてやがる。異化がここまで進んでるってことは、おっさん、エーテル適応体質じゃないんだな」
ビリーが冷静にシルバーヘッドの状態を観察する。
「...うあああッーーころす...奪っちゃ...ならねぇ...うぅぅっ!」
「まだ抗う意思はあるみたい」
シルバーヘッドは侵蝕で生まれた刃をこちらに向けて威嚇してくる。
「無駄だ。エーテル結晶がすでに全身に広まってる。これじゃもう── 「...ッああァーータスケ...キエロ...だめだ...うぅぅッ!」
「『コア』が現れた!」
「まずい!もうすぐ完全にエーテリアス化すんぞ!」
シルバーヘッドの体の一部を占めていたエーテルは急速に膨れ上がり、それに比例してコアも段々と大きくなっている。
そして、シルバーヘッドの頭部は完全にコアに飲み込まれてしまった。
「ARGHHHhahh--!!」
───シルバーヘッドの全身が光り輝き、辺りに風が吹き荒れる。
「くっ!」
「......!」
「これは...!」
光と風がおさまり、風から目を守る為に目を隠していた腕を退ける...
シルバーヘッドがいたはずのそこには、2本足で大地を踏みしめているエーテリアスの『騎士』がいた。
「ちっ、こいつは手強そうだ。アンビー!サンデー!構えろ!」
「ええ!」「勿論です!」
戦闘描写がこんなに難しいとは思いもしませんでした。
次回「明日退職の司祭はホロウ内にて無敵」