サンデー復刻...!これを見てる皆さんも引けます様に!
「邪魔しないで!!」
「後ろにも敵だ!」
「側面からも」
「高台から降りてきている個体が来ます!」
邪兎屋とサンデーの4人は現れるエーテリアスを次々と倒していきながら、うんともすんとも言わないリンについて行く。
「ねえ!本当にこの道で大丈夫なの?」
「......」
ニコが戦闘中にも関わらずリンを気にかけているが、いつまで経っても返事は返ってこない。
「店長、どうしたんだ?ずっと黙って歩くばっかで、戦闘を回避するつもりもなさそうだけどよ」
ビリーも流石にここまで喋らないのはおかしいと思い、リンに声をかけるが、それでもやはり何も返事はなくまるで虚空に話しかけている様に感じた。
「──プロキシ?」
「怒ってる?ニコが着手金を支払う時に値切ったりしたから?」
「えぇ!?そうなのか!?」
「あの温厚なお二人が怒ってる様子が想像出来ませんね...」
「そんなわけないでしょ!ていうか、サンデーにうちのお財布事情が聞かれてるじゃない!」
既に手遅れである。この会話を聞く前から邪兎屋の財布がすっからかんなのは会話の端端から読み取れすぎていた。
既に何回かサンデーから邪兎屋に向けて可哀想なものを見る目が向けられていたことに気づいていないだけである。
そんな茶番を繰り広げていたが、リンはそれを気にも止めずスタスタと歩いて行った。それを見てニコは冷や汗をかく。
「おかしい、ホロウに入った時から全然ガイドしてるようには見えない...まさか、サンデーが言ってた通り本当に外でトラブルでもあった?」
流石に緊急事態であるとニコの中で警鐘が鳴り響き、急いでリンの進行方向に立ち塞がる。
「ねえ!何かあったの?」
リンは立っている。なぜだか地面に映る影がいやにはっきりと見える。
リンは黙ったまま視線を上に向け、ニコと目を合わせる。
そして、
見つめ終わったかと思うといきなりリンは走り出す。
「あっ、ちょっと、そっち行かないで!」
リンがエーテリアスのいる方向に走っていくので、急いでその周りにいたエーテリアスに鞄をぶつけてリンが攻撃されないようにする。
「リンさん!そちらは危険ですよ!」
ニコとサンデーの制止も虚しく、エーテリアスがやってくる方向へと躊躇うことなく進んでいく。
「ああもう!奴らを食い止めて!プロキシを守るのよ!」
早速人型のエーテリアスと獣型のエーテリアスが現れる。リンはそんな奴らの足元を通って移動していく。
「苦よ、去りたまえ!」
サンデーは邪兎屋のメンバー全員に祈りを与える。
「リンさんに追いつくためにはワタシ達もここを強行突破するしかありません!」
「良い考えね」
アンビーが前に飛び出して一体一体相手をせずに一気に横に薙いで前への道を確保する。
「ビリー、後ろのエーテリアスは任せたわ」
「おうよ!」
ビリーはサンデーと同じ位置に移動して背後から攻撃してくるエーテリアスの対処に回る。
「ふふん!あたしがシュガーボムで敵を集めるから一気にやっちゃって頂戴!」
「わかった」
アンビーはニコがシュガーボムをチャージし終わるまで援護をする。
ニコに獣型のエーテリアスが飛びかかるが、空中で真っ二つになり傷口はバチバチと電気と熱を発しながら焼き切れているようになっていた。
「触らせない」
「サプライズよ!受け取りなさい!」
ニコがシュガーボムのチャージを終えて進行方向に思い切り射出をすると、エーテルで出来た小さなブラックホールが着弾地点に出現してエーテリアスが吸い込まれていく。
「やあああっ!」
その隙を狙ってエーテリアスを処理していき、シュガーボムに巻き込まれたエーテリアスの数は急激に減少し始めた。
「これで最後!」
「アンビー、良くやったわ!これで追いつける...!」
後方ではビリーとサンデーが図体のデカい、まるでゴリラをそのまま大きくしたかのようなエーテリアスと戦っているのが見えた。
「あっちは大丈夫そう」
「ビリー、サンデー!先にプロキシを追いかけるから終わったらついてきなさいよ!」
「オーケー!」
「わかりました!」
その事を伝えるとニコとアンビーはリンを捕まえるために追いかける。
「待ちなさーい!」
全速力で追いかけていたため、足の短いボンプの走りにはすぐに追いついてリンを捕まえる事に成功した。
「よし!」
捕まえたと同時にビリーとサンデーがやってくる。
「間に合ったのか!良かったぜ...」
「エーテリアスの群れがやって来ます。どこかの物陰に隠れた方が良いかと」
その言葉を聞いた3人は即座にコンテナの裏へと身を隠す。するとすぐさま大通りの方向で大量の足音が移動しているのが聞こえた。
「エーテリアスの群れはまだそこにいる」
アンビーが状況把握のため大通りの方にチラッと視線と耳を傾けながらそう口にする。
「家賃を取り立てにくる大家さんみてぇだな」
「こんな凶暴な大家さんがいたらたまったものではありませんね...」
そう話しているとビリーのポケットからピピピという機械音が鳴る。
ビリーはそれをポケットから取り出して確認を行う。
「時間だ、これで4回『ホロウ内安全活動推奨時間』が過ぎたぞ」
「それは結構...いえ、かなり不味いのではないですか?」
ビリーはニコと一緒に座り込み、リンを揺さぶる。
「プロキシ、早く正気に戻らないと永遠に借金を回収できなくなるわよ!」
お金を借りている立場の人がお金を貸してくれている人に向かって言えるセリフではない。
ニコはかなり焦っていた。
「っ、隠れて!」
様子見に徹していたアンビーが突如として声をあげる。
「な、何だ?また化け物がきたのか?」
「試練を与える頻度が高過ぎませんか...?」
2人は戦闘態勢に入ってコンテナに背を向けて立ち上がる。
「エーテリアスじゃない、ホロウ調査チームよ。この前にいる」
それを聞いて2人は戦闘態勢をすぐさま解除する。
先程エーテリアスの群れが通っていた大通りに武装をしている10人規模のチームが歩いていた。
「なんだよ、調査員か。待て──調査員!?」
「彼らについていけばワタシ達は助かるのではありませんか?」
「その通りだぜサンデー!ニコの親分、調査協会の連中ならキャロットを持ってるはずだ!」
ビリーはニコの側に駆け寄り、提案をする。
「助けを求めれば奴らと一緒にホロウから出られるぞ!」
「なにバカなこと言ってんの、あれって治安局の仲間でしょ?あたしたちはホロウレイダーなのよ。あいつらについてここから出られても、最後は逮捕されちゃうわ」
「え?ワタシ達は犯罪者なのですか?」
「まあ、簡単に言うとそうだ!そして、俺たちだけじゃそうかもしれねぇが──こいつも一緒なら...」
ビリーはリンが憑依したボンプを指差す。
「覚えてるか?治安局の政策で、プロキシを突き出せば手柄として減刑してもらえるって...」
「今の状況を考えると、ビリーの提案は実現できる可能性が高い。プロキシ先生の身柄と私たちの安全を引き換えにするか、引き続きここを彷徨いながらボンプが直るのを待つか」
ビリーの言葉を後押しするようにアンビーが付け加える。
サンデーは自分が犯罪者であるというショックの方が大きかったのか話を完全にスルーしている。
「ニコの親分...無理強いはしないぜ。どんな選択だろうと、俺たちはあんたに従う」
赤い双眸がニコを見つめる。ニコも赤い双眸を見つめ返す。
「......」
「ニコの親分?」
急に押し黙ったニコに対してビリーが声をかけると、ニコは目を閉じて何かを決心したようだった。
そして、抱き抱えていたリンを地面に降ろして掴んでいた体を離してあげる。
「うるさいわね...ここは長く留まっていい場所じゃない」
そう言って立ち上がりながらビリーの頭にチョップをする。
「行きましょ」
アンビーはやれやれ...という様に頭を振り、ビリーはなぜ自分がチョップされたのかが理解できずに頬をぽりぽりと掻く。最後に、サンデーはようやくショックから立ち直って思考が再起動を果たす。
.........
「ガウゥゥ、ホロウに侵蝕されて化け物になった。ガジガジ」
アンビーはビリーの手をガジガジと噛む。まさか、本当に侵蝕症状が進み始めてしまったのか....!?
「おいアンビー、手ぇ噛むのはやめろ...つーか歯は大丈夫なのかよ!?」
「ごめんなさい、ニコを笑わせようと思って。私はこういうことには向いてないと再確認した」
急に流暢に喋り出した。結構大丈夫かもしれない。
「ブラックジョークもほどほどに、ですよ」
「でも確かに、随分長くホロウの中にいるよな、俺たち。エーテル適応体質だっていっても、化け物になるスピードが遅いだけで──
「はぁ...あたしらしくないことをしたわ...」
「金銭至上主義の邪兎屋...自分のこと以外はどうでもいいのがあたしの信条だっていうのに」
「ニコは自分が思うほど、銭ゲバじゃないってこと」
「そうですよ。一人一人の信条は違うとはいえ、必ずしも全員に悪があるわけでも、善があるわけでもありません。それらに属しないアナタがアナタの考えで動いたことこそ賞賛すべき事です」
「はは、別に慰めてくれなくていいわよ。ストリートで育った人間の本質は、あたしが一番よく知って──
「ニコ、もうちょっと嬉しそうにしてくれてもいいのに」
まるでニコは生き返った死体を見ている様な気分だった。
「プロキシ!?本当にあんたたちなの!?」
だが、プロキシが復活したという事実に口角が上がっていくのを止められない。
「お待たせ。実はさっきからいたんだけどね。アンビーとビリーとサンデーが騒いでたのに、ニコは感傷に浸ってて気づかなかったみたいだね」
「ってことは...全部聞かれて...うっ、うぅぅぅ〜〜〜!」
ニコは言葉にならない声をあげながら顔がどんどんと赤く染まっていった。
「長い付き合いだし、恥ずかしいとか、情けないとか思わなくていいから!」
「は、恥ずかしいだなんて思ってないわ!」
流石に取り繕うには無理がありすぎる。まずはその顔の赤さを無くしてから言ったほうが説得力がある。
「無駄話はいいから!プロキシ、一体何があったの?」
(パエトーン事情説明中...)
「...なるほど。連絡が途絶えたのは、店長の設備が謎のハッカーに乗っ取られたのが原因だったんだな」
「ニコが依頼料をケチったことを怒ってたわけじゃないんだ」
「何はともあれ...お二人が無事で安心しました」
アンビーは割と本気でそう思っていそうなのが怖いところである。
「ちょい待ち、本当はもっと払えたの?」
アンビーの口をすぐにニコが塞ぎにいく。
「アンビー!余計なことを言わないで!」
本日二度目である。
「それで...プロキシの話を聞く限り、一番怪しいのはパスワードが保存されてたメモリディスクよね。そのハッカーはそれを介してあんたを見つけたのかしら?」
アキラがホロウに接続し直す前に行った解析結果をニコに教え始める。
「H.D.Dの脆弱性診断を行なったけど、確かにその可能性が一番大きい」
「それじゃ、赤牙組の連中も誰かに依頼されて金庫を奪ったってことになるわね...」
ニコの頭が珍しく冴えている。
「俺たちと一緒だな!」
「プロキシ先生の介入がなかったら、私たちが正体不明の黒幕と対峙することになっていたはず」
「やっぱ店長は頼りになるぜ!まるでスターライトナイトの相棒犬、メテオマットみてぇだな!」
謎の褒め方にリンは素直に喜んでいいのか犬扱いされた事にツッコめば良いのが微妙に判断できなかった。その結果が...
「えっと、ありがとう?」
疑問系の感謝である。
「ビリーにとっては、最上級の褒め言葉なの」
「と、言うことは...ワタシも最上級の褒め言葉をもらっていたと言うことですか...ありがとうございます」
サンデーはあの時のことを思い出してほわほわしている。
「はぁ...あの時は多額の報酬に目が眩んだけど、結局今回もろくな仕事じゃなかったわね。サンデーっていう逸材との人脈は出来たけど、もう二度と情報屋の口車には乗らないんだから!」
「帰ったら、さっさとこの火の粉を振り払って仲介業者に2倍の追加報酬を要求してやる!」
そんな状態のニコにアンビーが口を挟む。
「ニコ、ホロウ内での捜索を急ぐ必要がある。私たちの滞在時間がエーテル適応体質の限界に迫ってる。侵蝕の影響で戦闘力が下がったりしたら、金庫の捜索中に起こり得るアクシデントに対応できなくなると思う」
ビリーがそれを聞いて首を傾げる。
「アクシデント?侵蝕で異化しちまった赤牙組のおっさん──つまり、あの上級エーテリアスのことか?」
「そう。恐らくデュラハンは、今もホロウの中で私たちを探している」
「まるでストーカーみたいですね」
「アンビーの言う通りよ。あの化け物より先に金庫を回収しなくちゃ!急いでターゲットを追うわよ!プロキシ、引き続きガイドをお願い!」
「申し訳ないですが、一つ宜しいでしょうか?」
サンデーが挙手し、言いたいことがあると全員の前に出る。
「そのエーテル侵蝕とやら...ワタシ、治せますよ?」
沈黙が場に流れる。
「「「「ええええ!?」」」」
次回「いざという時以外にも頼りになる司祭」