俺と私の文フリTS顛末記   作:深海くじら

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第24話 提案~あいりんの夜はこれから

 深夜まで()いているというその喫茶店(この時間だとカフェバーと呼ぶべきか)で、六人は頭を突き合わせていた。ふたつ繫げたテーブルの中央にはくじらのFMV(ノートパソコン)。180度に開ききり、ディスプレイを真上に向けている。安楽椅子分析官(ひとかげとかげ)とのチャット画面を全員で共有するのにスマートフォンでは画面が小さすぎるのだ。

 

――――

いただいた情報を元に、僕なりにTS発動時の状況を整理してみました。今回のTSが可逆性のものと仮定して(でないと、くじらさんとみう先生はご自身の身体に戻れない!)再現するための発動条件を洗い出してみたのです。

以下に列挙します。ちなみに頭に付けてある◎とか△とかは、僕が勝手にイメージした重要度ですので、ご参考まで。

 

△発動時刻:午前十時四十分から五分間程度の幅

△発動場所1:こだま703号東京→新大阪 9号車後方トイレ

○発動場所2:京都―新大阪間

△発動状況1:時速二百キロ超の高速移動体内部

○発動状況2:目撃者不在(人目のない状況が必要?)

◎対象者位置:隣接 壁等遮蔽物も可(材質不明)

▲発動時行為:排尿後

◎意識途絶:入眠等 ノンレム睡眠?

△付帯物:対象者の服、装飾品等

◎ブラックボックス:くじらさん×みう先生という組み合わせ

 

こだま703号の該当トイレ自体がTS発動装置である可能性はむろん否めないのですが、そうなると超巨大組織による陰謀論にまで発展しちゃうので話がちょっとでか過ぎます。またその場合、他の症例についてのSNS報告がまったくないというのも時代性を考えれば不自然ですので、いまのところは考えにくいかな。

「詳しくは憶えていないがとくに変わった印象は無かった」というくじらさんの証言もあることですし。

その他、個々の項目についての説明は割愛しますが(必要なものがあったら言ってください。個別に解説しますので)、僕が重要再現ポイントと考えるのは、「隣接」と「意識途絶」です。

そしてなによりも重要なのは、対象者がくじらさんとみう先生のお二人であること。

 

見たことも会ったことも無いお二人を相手に言うことでもないですが、お二人にはなにか特殊な共通項があるのではないか、と僕は睨んでいます。DNAレベルとか、もっと深い素粒子レベルとか。とにかく何かのもしくは複合的で唯一無二の一致性があって、たまたま隣り合わせで同時に意識を失ったことにより偶発的に発動した、というのが僕のラノベ脳が導き出した勝手な結論です。

この結論はもちろん与太話ですが、どっちにしたってやれることが見当たらないなら試してみる価値はあるんじゃないですかね。

 

むろん、よくある魔法使いモノみたいに「時間が来たら勝手に戻る」って可能性も考えられますし。

 

ていうか今日一日、これを考えるだけでもめちゃめちゃ楽しかった。

マジ、最高のネタをありがとうって感じ。

仕事が無ければ今すぐでもそっち行っちゃうんだけどなぁ(笑)

――――

 

「どう思います、これ?」

 向かい合わせで覗き込んでいる山之上くじら(一ノ瀬みう)一ノ瀬みう(山之上くじら)の顔を交互に見やり、いんかむげいんが切り出した。

「なんて言えばいいかわからんが、とにかくやってみる価値はある……と思う」

 みうの顔がアニメ声でそう応え、くじらの顔が無言でうなずく。

「ただ……」

 困惑した表情でアニメ声のくじらが続けた。不思議そうな様子で顔を上げた一ノ瀬。その視線から逃れるように、頬を染めた少女のくじらが目を逸らす。

「……これって要するに、二人並んで寝ろってことなんだよな。俺と一ノ瀬さんで」

 一瞬で絵面を想像できた千百閒が「ヤベェ」と呻いて身を反らせた。

 まったくだよ。めちゃくちゃヤベェ話だよ。齢五十のおっさんと二十歳の美少女に同衾しろって言ってんだぜ。ほとんど犯罪じゃんよ。

 遅れて理解した一ノ瀬も顔を伏せた。少女のしぐさで肩をすぼめたおっさんの耳が真っ赤になっている。

「でも……今できることは、そ、それしか……」

 消え入るような一ノ瀬の台詞に、抑揚の無い宮部の声が重なった。

「一ノ瀬氏、今夜の宿泊場所は押さえられてるのですか?」

「え? あ、チェックイン……してない。わ、忘れてた」

 あわててスマートフォンを取り出す一ノ瀬。いつまで経ってもホーム画面にならなくて焦る一ノ瀬にくじらが手を伸ばし、自分の顔でログインまで済ませて差し出した。

 ありがとうも言わずにスマートフォンをひったくってメールのアプリを開く。ずらずらと並ぶタイトルの中から予約時の返信を見つけ、マイページを開こうとしたが、どうやらうまくいかないようだ。

「ちょっといいですか」と横から手を伸ばした桃山が、一ノ瀬のあとを継ぐ。

 あれこれと探って状況を理解した桃山は、仕事での会話のように淡々と報告した。

「あーこれ、予約が解除されてますね。みう先生、予約したとき確認メールに返信してないでしょ。手続きが完了してないですもん」

「え? そうなの? 私てっきり予約できてるって……」

予約確認(リコンファーム)は重要ですよ。とくに今の大阪は万博の所為でホテル満杯だから。もしかしてみう先生、旅行の予約とかってはじめて?」

 いんかむげいんがまたもや一ノ瀬を詰めている。くじらはハラハラしながら聞いていたが、今回は暴発は避けられたようだ。

「うちに泊まりますか、って言ってあげたいんですが、私のとこは社員寮で同室の子がいるからちょっと」

 桃山が申し訳なさげに語尾を濁す。

「どうしよう」と言いながら目を泳がせる一ノ瀬に、千百閒が満を持した勢いで声をかけた。

「ちょうどいいじゃないですか! 今夜こそ、ひとかげさん推奨のお試しをやってみる絶好のチャンスでしょ!」

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