ギルドの受付嬢ですが、残業が嫌なので定時に帰ろうと思います   作:can'tPayPay

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今回からアリナとゼノスの過去編やってきます
ある程度プロットはできているが、みんなの反応見ながら作っていきたいので
気になることがあったらコメントしてくれたら嬉しい


アリナの凄まじい内面の毒と、ゼノスの底知れない有能さ、そして二人の距離が近づく過程を濃密に描きます。
それでは第1話どうぞ


過去回:出会い編:第1話「鉄の笑顔と、死んだ魚の目」

 

王都ギルド「アイゼン」の受付カウンター。そこは、夢を追う冒険者たちの玄関口であり、事務職員にとっては終わりのない戦場である。

「――はい、受領いたしました。怪我もなく無事の帰還、何よりです。お疲れ様でした(微笑)」

アリナ・クローバーは、完璧な角度の会釈と共に、冒険者に報酬の金貨袋を手渡した。その姿は「ギルドの聖女」と囁かれるほどに美しく、慈愛に満ちている。

(――死ね。今すぐその汚い革袋ごと、自分の体液で煮込まれて消えてなくなれ。なんで定時五分前に、しかも報告書のインクが乾ききってない状態で持ってくるのよ。このドブネズミ共! 指先が真っ黒になったじゃない。あんたの脳細胞、一回全部取り出して洗濯機で回してやりたいわ!!)

アリナの内面は、あらゆる汚言雑言を煮詰め、毒を抽出した地獄そのものだった。彼女が望むのはただ一つ。「定時退勤」と、その後の平穏な隠居生活。それを阻む者は、たとえ神であろうと彼女の神器で地平線の彼方まで消し飛ばす覚悟だった。

その時、カウンターの端で、一人の地味な男が淡々と書類を仕分けていた。

ゼノス。備品管理部門から異動してきたばかりの、覇気のない青年だ。彼は常に「死んだ魚のような目」をして、誰とも目を合わせず、ただ機械的にペンを走らせている。

「ゼノスさん。その書類の束、後で確認をお願いしてもよろしくて?(微笑)」

(――こいつもよ。何考えてるか分からない不気味な男。でも、余計な私語をしない分、他の無能な職員よりはマシかしら。さっさとその仕事を終わらせて、私の視界から消えなさい)

「……了解です。アリナさん」

ゼノスは顔も上げず、ボソリと呟くだけだった。

しかし、アリナはあることに気づく。自分が最も忌々しく思っていた「書類の山」が、ゼノスの手に渡った瞬間、魔法のように整理され、自分に回ってくる頃には最も処理しやすい順番に整えられているのだ。

(……え? なにこれ。さっきまでバラバラだった依頼番号が、全部昇順に並んでる? しかも、不備のある書類にはこっそり付箋まで……)

アリナの超人的な事務処理スピードに、唯一、遅滞なく食らいついてくる男。

だが、その時のアリナはまだ知らない。この「死んだ魚の目」をした男が、自分と同じように「裏の顔」を持ち、自分以上にこのギルドの深淵を知り尽くしていることを。

その日の夜、アリナは苛立ちをぶつけるように、王都郊外で暴れていた魔物を一撃で粉砕した。

黄金の戦槌を振り下ろし、大地を砕く。

「定時を邪魔する奴は……万死に値するのよおおお!!」

絶叫と共に魔物を塵に変えた彼女は、返り血を拭いながら、再び「聖女」の仮面を被って闇に消えた。

翌朝、ギルドに出勤したアリナの机の上には、一輪の小さな花ではなく、彼女が昨日消費したはずの「最高級の事務用インク」が、新品で置かれていた。

送り主の名はない。ただ、隣の席でゼノスが、いつも通り死んだ魚の目でペンを握っているだけだった。

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