ギルドの受付嬢ですが、残業が嫌なので定時に帰ろうと思います   作:can'tPayPay

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今回、メール的なものが出るんだけど、ギルマスってそう言うやりとりどうやってるかわかる人いる?
わかる人いたら教えて〜


第9話:不在の要塞と、遠隔の共犯者

 

その日の朝、アリナは人生で最大級の「絶望」と共に目覚めた。

「……ゼノス。顔が真っ赤よ。熱、何度あるの?」

「……38度5分。……すまない、アリナ。昨夜、君が『寝るまでトントンして』って言うから、薄着のまま付き合って……少し冷えたみたいだ……」

ゼノスはいつもの「死んだ魚の目」をさらに虚ろにさせ、枕に沈んでいた。

(――死ね! 私の細胞! なんで私の我が儘を完璧に叶えようとしたゼノスを風邪にさせるのよ! この役立たず! ……っていうか、ゼノスがいないギルド? 嘘でしょ? 私、あいつのサポートなしで、あの無能なドブネズミ共を一人で捌かなきゃいけないの!?)

「寝てなさい、ゼノス! 私が帰るまで一歩も動いちゃダメよ! 完璧な看病セットを用意しておくから!!」

アリナは超高速でゼノスのためにスポーツ飲料と薬、そして栄養満点の粥を用意し、断腸の思いで家を飛び出した。

【ギルド・戦場と化した窓口】

ゼノスという「防波堤」を失ったアリナの窓口は、午前中から悲惨なことになっていた。

「おい、この依頼の達成条件だけどよ……」

「あの、すいません、この書類の書き方が……」

(――……死ね! 死ね死ね死ね!! 一回言ったら理解しなさいよ! なんでゼノスがいないだけで、こんなに書類の不備が直接私に飛んでくるのよ!? ゼノス、あなたがどれだけ私の周りの『ノイズ』を裏で消してくれていたか、今さら痛感してるわよ!!)

アリナの笑顔は、もはやピキピキと音を立てて崩壊寸前だった。彼女の魔力が、怒りに呼応してカウンターをミシリと軋ませる。

その時、アリナの足元に置かれた「ギルド内専用魔導端末」が、静かに振動した。

一通のメッセージ。送信者は「備品管理室」。

もちろん、そこにいるはずのゼノスは欠勤している。

『――アリナ。左から三番目の男は、規約第8条を盾に強気に出れば黙る。右の男の書類は、僕が昨夜のうちに「予約済み」のタグを振っておいたから、スキャンするだけで終わる。……無理はするな。後ろの列の五人は、今から「別窓口」へ誘導するよう、僕がさっき裏から操作した』

「……!?」

アリナは驚愕して端末を二度見した。

ゼノスは、寝込んでいてもなお、自宅の端末からギルドのサーバーに「事務的に」潜入し、アリナの窓口を遠隔でコントロールし始めていたのだ。

(――……ゼノス! あんた、病人でしょうが! なんで寝込みながらハッキングまがいのことして私を助けてるのよ! ……でも、ナイスよ、最高よゼノス! おかげで私の殺意が5%くらい収まったわ!!)

『アリナ。深呼吸して。……君の魔力が漏れて、ペンが折れかけてるよ』

メッセージの追撃に、アリナは顔を真っ赤にしてキーを叩き返した。

『寝てなさいって言ったでしょ! バカ! 琥珀色の瞳をしたストーカー事務員!! ……でも、……助かるわ。愛してるから、早く治りなさい』

【定時・帰宅後の甘い制裁】

ゼノスの「遠隔事務サポート」により、アリナは奇跡的に定時退勤を勝ち取った。

玄関を蹴り開けるようにして入ると、そこには申し訳なさそうに身を起こしているゼノスがいた。

「……ただいま、アリナ。……遠隔操作、少しやりすぎたかな」

「やりすぎよ! バカ! 正体がバレたらどうするのよ!!」

アリナは仕事着のまま、ゼノスの布団にダイブした。彼の胸に顔を埋め、今日一日の鬱憤をすべて吐き出すようにしがみつく。

「……でも、……あなたがいないと、私、本当にダメかも。あいつら、本当に話が通じないんだもの。……ゼノス、私の隣には、やっぱりあなたがいなきゃダメ。……怖い。あなたがいない世界で事務仕事なんて、私、三日でギルドを物理的に消滅させちゃう……」

アリナの震える声に、ゼノスは微熱のある手で彼女を優しく、強く抱きしめた。

「……ごめんね、アリナ。……明日からは、ずっと隣にいるよ。君の笑顔が本物の毒に変わる前に、僕が全部、受け止めてあげる」

「……。……ん。……当たり前よ。……さあ、看病の時間よ。まずはその熱を私が『処刑』してあげる。……ゼノス、あーんして。お粥、食べさせてあげるから。……あと、今日は私がトントンしてあげる。……いいわね?」

「……はい、喜んで」

弱っているゼノスを、これ以上ないほどの献身(と少しの独占欲)で世話し始めるアリナ。

窓口で見せる完璧な笑顔よりもずっと深い、慈愛と執着に満ちた表情で、彼女は自分の「盾」を大切に、大切に癒していくのだった。

 




【次のステップ】
第10話では、ゼノスが回復!
しかし、アリナが看病に熱を入れすぎたせいで、**「ゼノスの部屋着(あるいは匂い)」**がアリナの制服に染み付いてしまい、ギルドで「アリナさんから男の香りがする……!?」と大騒ぎになるハプニングはいかがでしょうか?
二人の秘密の同棲がバレそうな危機を、アリナがどう毒舌で乗り切り、ゼノスがどう裏工作するかのお話です。
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