ギルドの受付嬢ですが、残業が嫌なので定時に帰ろうと思います   作:can'tPayPay

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第13話:深夜の独白と、暴かれた本心

 

アリナの熱は、翌日の夜にはだいぶ落ち着いていました。

けれど、ゼノスの「過保護」という名の監禁は解かれる気配がありません。

薄暗い寝室。アリナは意識が戻っていましたが、隣で自分の手を握りしめたまま、椅子に座って俯いているゼノスの気配を感じて、なんとなく目を開けるタイミングを失っていました。

(――なによ。あんなに威勢よく「僕が見張ってる」なんて言っておいて。……あんたの方が、今にも折れそうな顔してるじゃない……)

アリナが狸寝入りを決め込んでいると、静寂の中に、ゼノスの衣擦れの音と、低く掠れた声が響きました。

「……アリナ。……君はいつも、自分を『処刑人』だと言って、僕を『共犯者』だと呼ぶけれど」

ゼノスが、アリナの指先に自分の唇を押し当てる感触。

いつもは冷徹な彼の指が、微かに震えていました。

「……僕は、君が強かろうと弱かろうと、そんなことはどうでもいいんだ。……ただ、君が呼吸をして、僕の隣で毒を吐いてくれている。……それだけで、僕の崩れかけた世界は辛うじて形を保っているんだよ」

(……え? ゼノス……?)

「……君を傷つけるものがあれば、僕は迷わずこの王都ごと抹消するだろう。……君を奪おうとする奴がいれば、僕は笑顔でその存在を歴史から消す。……僕は、君が思っている以上に、もう壊れているんだ……アリナ」

ゼノスは、アリナの手を自分の頬に押し当て、祈るような、あるいは縋るような声を漏らしました。

「……行かないでくれ。……君がいない静かな朝なんて、僕には耐えられない。……君を愛しているなんて言葉じゃ、このドロドロした執着は説明できないんだ……」

反撃の処刑人:愛の包囲網

アリナの心臓が、熱のせいではなく、彼の「重すぎる愛」によって激しく打ち鳴らされました。

(――死ね。死ね、私の理性……! 何よその告白……。事務員が聞いていいレベルの重さじゃないわよ。……。……。……最高じゃない……!!)

アリナはゆっくりと目を開け、自分の手を握るゼノスの指を、逆に力強く握り返しました。

「……っ、アリナ!? 起きて……」

「……聞いてたわよ。全部。……一言一句漏らさず、私の脳内ハードディスクに保存させてもらったわ」

アリナは上体を起こすと、驚きで固まっているゼノスの首に、熱の残る腕を回しました。

「……なによ、『壊れてる』なんて。……そんなの、出会った時から知ってるわよ。……あんたみたいな有能な男が、私みたいな性格の悪い処刑人と一緒にいて、まともなわけないじゃない」

アリナはゼノスの鼻先に、自分の鼻先をコツンとぶつけました。

「……いいわよ。消しなさいよ、王都でも世界でも。……その代わり、私を一人にはさせないって言ったわよね? ……あんたが壊れてるっていうなら、私がその破片を全部繋ぎ止めておいてあげる」

「……アリナ……」

「……愛してるなんて言葉じゃ足りないんでしょ? ……じゃあ、体に刻みなさいよ。……私の熱が引く前に、あんたのその『重すぎる執着』を、私に全部ぶつけてきなさい。……受け止めてあげるわよ。処刑人の名にかけてね」

深夜の精算:毒と執着の混濁

ゼノスは、一瞬だけ目を見開いた後、観念したように深い溜息をつきました。

彼の瞳から「事務員」の光が完全に消え、深淵のような黒い熱がアリナを飲み込もうと揺らめきます。

「……。……後悔しても、もう遅いよ。……君がそう言ったんだから」

ゼノスはアリナをベッドに押し戻すと、彼女の唇を、昨夜よりも、そして今までのどんな時よりも強欲に、深く、蹂躙するように奪いました。

熱にうなされるような夜は、まだ終わらない。

二人は互いの「壊れた部分」を噛み締め合い、毒を回し合い、逃げ場のない愛の要塞の中で、さらに深く沈んでいくのでした。

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