ギルドの受付嬢ですが、残業が嫌なので定時に帰ろうと思います 作:can'tPayPay
第7ギルド近くの、年季の入ったアパート。
王都の豪華な官舎に比べれば、壁は驚くほど薄い。隣室の住人がページをめくる音さえ聞こえてきそうなその密室で、アリナは今、人生最大の窮地に立たされていた。
「……んっ、……ちょ、ちょっと……ゼノス、待って……っ」
玄関の鍵を閉めた直後、背後から覆い被さるように抱きしめられ、アリナは壁に押し付けられた。
夕闇が差し込むだけの薄暗い部屋。ゼノスの眼鏡の奥にある瞳は、琥珀色の欲望を隠そうともしていない。
「……静かに。アリナ。……ここの壁がどれほど薄いか、君が一番よく知っているだろう?」
ゼノスの低く、熱を帯びた声が耳朶を打つ。
王都での激務、そして隣国への遠征。溜まりに溜まった彼の「独占欲」が、この慣れ親しんだ狭い空間で一気に決壊したのを、アリナは本能で悟った。
1. 蹂躙される唇と、消される悲鳴
「……っ、ふ……ん、んんっ!」
強引に奪われた唇。
ゼノスのキスは、いつも以上に強欲で、容赦がなかった。アリナの小さな抵抗など事務的に処理するように、彼は彼女の両手首を片手で頭上に固定し、逃げ場を完全に塞ぐ。
「……っ、ん、はぁ……っ」
「声を出すなと言っただろう。……。……それとも、近所の人たちに、あの『完璧な受付嬢』がこんなに甘い声を漏らしていると教えたいのか?」
「……っ、し、死ね……っ。あんた……本当に、最低よ……」
アリナは震える声で毒を吐くが、その瞳はすでに潤み、足元は覚束ない。
ゼノスは彼女の毒舌を、さらなる深い口づけで飲み干した。舌が絡み合い、互いの唾液が混ざり合う音が、静まり返った部屋の中で異様に大きく響く。アリナは酸欠と快楽の混濁により、意識が白濁していくのを感じていた。
2. 指先が暴く、処刑人の脆弱
ゼノスの自由な方の手が、アリナのブラウスの裾から侵入した。
ひんやりとした、だが確かな熱を持った事務員の指先。
「……や、め……そこ、……ひっ……」
脇腹を這い上がる指先が、アリナの最も敏感な場所に触れる。
アリナは身体をビクンと跳ねさせた。彼女にとって、脇や腰のラインは戦槌を振るう際の要であり、同時に誰にも触れさせたくない聖域。そこを熟練の事務処理のような手際で弄られ、彼女の理性はボロボロと崩れ去っていく。
「……ここか? 君の呼吸が乱れるのは。……。……面白いな。処刑人の筋肉が、僕の指一本でこんなに怯えている」
ゼノスの手は止まらない。脇から胸へと這い上がり、薄い布越しに、彼女の柔らかな膨らみを容赦なく揉みしだいた。
「……あ、……ん、っ……! ……んぐ……っ」
アリナは必死に自分の唇を噛み締め、声を殺した。
胸を圧迫されるたびに、脳の芯が痺れるような感覚が走り、指先まで力が抜けていく。
あんなに重い戦槌を軽々と振り回していた腕が、今はゼノスの肩に力なく回されることしかできない。
ゼノスはアリナの耳元に唇を寄せた。
「……耳も、赤くなっているよ。アリナ」
「……っ、うる、さい……っ」
熱い舌先が耳の輪郭をなぞり、耳たぶを甘噛みする。
「ひうっ……!」
アリナの喉から、漏れてはいけないはずの、か細い悲鳴が漏れた。
彼女の身体は、すでにゼノスの与える刺激に対して無防備な、ただの「一人の女」へと作り替えられていた。
3. 逃げられない「足マッサージ」という名の調教
ゼノスはふらふらのアリナを抱え上げると、そのまま安物のソファへと押し倒した。
彼は彼女のヒールを無造作に脱ぎ捨て、むき出しになった足首を掴む。
「……アリナ。今日はよく歩いただろう。……。……僕が、隅々まで『調整』してあげるよ」
「……え、ちょっと……何……っ、あ!!」
ゼノスの指が、アリナの土踏まずを強く押し込んだ。
足の裏は、身体中の神経が集中する場所。ゼノスは、どこをどう刺激すれば彼女が抗えなくなるか、すべてを「事務的」に把握していた。
「……あ、……ん、あ、っ! ……やだ、そこ、……痛い、……い、イイ……っ!」
「静かに。……お隣さんに聞こえるぞ」
ゼノスは冷徹に告げながらも、指先の動きを早める。
ふくらはぎを揉み上げ、膝の裏を執拗に攻める。
アリナは抵抗しようと足を動かすが、ゼノスの強靭な腕に押さえ込まれ、逆に彼の身体に深く抱き込まれる形になってしまう。
「……っ、んんぅ……っ! ……っ、はぁ、……ぜ、ゼノス……もう、許し、て……っ」
「……許さない。……君が、僕のいないところで一人で背負っていたこの街の重さを、全部僕に吐き出すまで……。僕は君を解放しない」
アリナはもう、毒を吐く気力さえ残っていなかった。
足から全身に伝わる痺れるような感覚と、ゼノスの放つ圧倒的な独占欲の香りに包まれ、彼女はただ、彼のシャツを強く握りしめる。
4. 終わらない夜の事務処理
部屋の壁は薄い。
けれど、二人の間に流れるこの濃密な空気は、どんな魔法障壁よりも強固に二人を外の世界から隔絶していた。
「……アリナ。……顔を見せてくれ」
ゼノスがアリナの顎を持ち上げ、熱にうなされた彼女の瞳を覗き込む。
そこには、処刑人の冷酷さなど微塵もなく、ただ一人の男を求め、震えている可憐な少女の姿があった。
「……。……死ね……。……。……死ぬまで、私を、離さないで……」
アリナが消え入るような声で囁いた。
それは彼女なりの、最高の降伏宣言だった。
「……ああ。了解したよ、アリナ」
ゼノスは再び、静寂を切り裂くような深いキスを落とした。
薄い壁の向こう側で誰かが生活しているというスリルさえも、今は二人の愛を燃え上がらせる薪にすぎない。
古巣の街、狭いアパート。
ここから始まる二人の新しい日常は、かつての孤独を塗り潰すほどに、深く、重く、そして救いようのないほど甘いものになるのだ。