ギルドの受付嬢ですが、残業が嫌なので定時に帰ろうと思います   作:can'tPayPay

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第25話:甘い祭典の翌朝と、第7ギルドの「異常事態」

 

バレンタインの狂乱から一夜明け、第7ギルドの朝は静まり返っていました。

窓口に現れたアリナは、いつもの制服の襟を、これでもかというほどきっちりと上まで閉めていました。その首元には、昨夜ゼノスが刻み込んだ「精算の痕」が、チョコレートの甘い残り香と共に隠されています。

(――死ね。死ね死ね死ね! 腰が抜けるかと思ったじゃない。……。……あんな、どろどろに溶けた愛なんて、二度と御免よ……。……。……嘘。本当は、少しだけ……またやられたいなんて、思ってないわよ!)

アリナは顔を赤くしながら、八つ当たり気味に受付のハンマーを磨いていました。

一方、その隣に座るゼノスは、いつも以上に涼しい顔で、恐ろしい速度のタイピングを披露しています。

ギルドの震撼:ゼノスの「事務的復讐」

「お、おはようございます……ゼノスさん」

昨日、ゼノスにチョコレートを渡した女性職員の一人が、おずおずと話しかけました。

ゼノスは画面から目を離さず、冷徹な声で返しました。

「……。……ああ、おはよう。……昨日いただいた『感謝のしるし』だが。……。……。事務的に精査した結果、原材料に含まれる特定の成分が、アリナさんの健康を害する可能性があると判断した。ゆえに、すべて適切に『熱処理(焼却)』したよ」

「えっ……? 全部、捨てたんですか……?」

「……。……捨てたのではない。僕たちの『愛の潤滑剤』として、最大限に有効活用させてもらった。……。……不服があるなら、これからはチョコレートではなく、業務効率を15%向上させる報告書を持参してくれ」

ゼノスの眼鏡がキラリと光り、琥珀色の瞳が「これ以上関わるな」という無言の圧力を放ちます。

彼女は泣きそうになりながら逃げ出しました。

「……あんたね。……。……。あんな言い方しなくてもいいじゃない。性格悪いわね」

アリナが呆れたように毒を吐くと、ゼノスはタイピングの手を止め、彼女の耳元に身を寄せました。

「……。……。……アリナ。……昨夜、あんなに甘い声を出しながら僕を求めていたのはどこの誰だい? ……。……僕は、君を汚したチョコレートの余韻を、まだ舌が覚えているんだ。……仕事にならないよ」

「……っ!? バ、バカ! ここでそんなこと言わないでよ!!」

緊急事態:平和を切り裂く警報

その時、ギルドの緊急警報が鳴り響きました。

街の近郊にある「嘆きの森」で、異常な魔力反応。かつてアリナが蹂躙したはずの魔神の「残滓」が、何らかのきっかけで再活性化したという知らせ。

「――チッ。……。……よりによって、こんな時に。……。……。ゼノス、行くわよ。……。……私の機嫌、最高に悪いんだから。……一秒で更地にしてやるわ」

アリナが戦槌(アイアン・ローズ)を具現化させ、獰猛な笑みを浮かべます。

しかし、ゼノスは彼女の肩を優しく、だが力強く押さえました。

「……。……待って、アリナ。……。……君の体には、今、守らなければならない『未来』がある。……。……。魔神の残骸掃除なんて、事務員の仕事だ」

ゼノスはデスクの引き出しから、昨日アリナが渡した「不格好なチョコ」の最後の一欠片を取り出し、口に含みました。

「……。……。……。アリナ、君の愛(糖分)を補給した今の僕は、……神ですら事務的に抹消できる。……。……。君はここで、定時に帰る準備だけしていればいい」

ゼノスが指を鳴らした瞬間、彼の影から無数の魔力糸が溢れ出し、空間を裂いて森へと直通する「処刑の道」を作り出しました。

黄昏の帰還:二人の新しい「通常業務」

数分後。

森の魔力反応は、物理法則を無視した「消去」によって完全に消失しました。

ギルドに戻ってきたゼノスは、服の乱れ一つなく、ただ無機質な報告書をギルド長の机に叩きつけました。

「魔神残滓の処理、完了しました。……。……。付随して発生した周辺の瓦礫は、……。……アリナさんの午後の昼寝を邪魔しないよう、すべて別次元へ廃棄済みです」

「……。……。……相変わらず、やりすぎよ、あんた」

アリナは呆れながらも、戻ってきたゼノスの手に自分の手を重ねました。

バレンタインの甘い夜を経て、二人の執着はもはや、この世界の理(ルール)さえも書き換えるほどに強大になっていました。

「……。……。……さあ、アリナ。定時だ。……。……。帰って、昨夜の『お返しの続き』をしよう。……。……今度はチョコレートなしで、君の肌の味を、もっと深く精査したい」

「……っ。……。……死ね!……。……。……でも……、今日のご飯、あんたの奢りだからね」

二人は夕暮れの街へと歩き出します。

第7ギルドの伝説は、二人の愛の重みと共に、これからも残酷に、そして甘く刻まれていくのでした。

 

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