摩天楼が艦これ入り   作:rahotu

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第2話

一方的に深海悽艦を葬ったヴォルケンクラッツァーであるが、勝利したにしては彼女の顔はういていない。

 

それもそのはず…彼女は今、

 

「お腹…減った」

 

ゴツい艤装に対して華奢な細い手をお腹に当て、彼女は初めて感じる空腹を覚えていた。

 

本来兵器であれば空腹等覚えなかったらだろうが、肉体を得た今彼女を耐え難い飢えが襲っている。

 

そう某ボーキサイトの女王やヤマトホテル等比べ物にならない程、彼女は物凄く燃費が悪いのだ。

 

「とにかく何か食べ物を探さなくちゃ」

 

彼女は空きっ腹を抱えながらとりあえず移動を開始した。

 

幸運な事に彼女のいた場所から近くに深海悽艦の大規模補給艦隊がおり、しかも深海悽艦達は正面から来る艦娘を相手にしていた為ヴォルケンクラッツァーには気付いていなかった。

 

護衛の艦隊は先程彼女が海に沈めたため、補給艦隊には全く無防備である。

 

こうして、人間が北方海域と呼ぶ場所に規格外の存在が敵の背後から殴り込みをかけてきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「カエレ、カエレ」

 

北方海域の門番深海悽艦の中でも特に際立った鬼姫の中で、北方悽姫と呼ばれる幼女が海域に暴力の嵐をふるっている。

 

白い肌に白い髪、大きなまん丸お目めに白いワンピースがよく似合う幼女が幼女があばれまわり、拳の一振りで海が泡立ち地団駄を踏めば波がたった。

 

なんども言うが幼女である、黒の紐パンを履いた紛れもなく幼女である。

 

彼女の周りには5基の護衛要塞が主を守る様に浮かび、艦娘達の攻撃を受け止めている為所々傷が目立つ。

 

「皆いってや」

 

その実際平坦な独特な形状が有名な軽空母龍驤が巻物を展開し、式神式艦載機を飛ばす。

 

紙で出来た飛行機、しかし龍驤の指示によって天高く舞い上がり、本物の艦載機となって極寒の空に編隊を組む。

 

その正面には黒い球体が何百と浮かび、敵意を剥き出しに襲いかかってきた。

 

互いに編隊が崩れ、空の各地で巴を描き次から次へと火を噴き堕ちてゆく。

 

北方悽姫の艦載機と龍驤は熾烈な制空権争いを行いながら、その隙に他の艦娘が北方悽姫に迫る。

 

「全砲門、ファイアー‼︎」

 

巫女服の上衣にスカートという出で立ちの高速戦艦金剛は41㎝砲を北方悽姫の至近距離で火を噴く。

 

堪らず後退する北方悽姫、金剛の砲弾は飛行場型深海悽艦に有効な三式弾。

 

如何に強大な力を持つ姫であろうと本調子でない今戦艦の主砲は重く響く。

 

先のAL作戦でその存在が確認された北方悽姫は、受けた傷を癒すため北方海域の奥地に潜んでいたが、人間に察知され完全に回復仕切れていない状態での戦闘を余儀なくされた。

 

個体として好戦的でない北方悽姫だが、鬼姫はいるだけで深海悽艦を引きつけ資材を食い荒らす。

 

放っておけば何れ飽和を迎え、溢れ出すのは目に見えている。

 

故に最悪を回避すべく人間は討伐艦隊を送り込んで来たのだ。

 

北方悽姫としては唯居心地がいい場所に住んでいるだけで、自分から何かする事は無いが彼女は存在そのものが人間にとって悪なのだ。

 

そこに北方悽姫も深海悽艦も艦娘も、人間の提督の都合は無い。

 

唯一方的なエゴイズムのおしつけであり、それ故人間と深海悽艦との間に相互理解と言う発想さえない。

 

側から見れば幼女を相手に全力でぶっ放す少女と言う大変シュールな絵ズラの理由はここにある。

 

だが現実はシュールを超えた速度で展開していくものだ。

 

 

 

 

 

突如としてこの世のモノとは思えない金切声が響く、艦娘達は何だと不思議がり北方悽姫は白い顔が青く染まる。

 

それは輸送ワ級が上げた断末魔であった。

 

北方悽姫は目の前の艦娘を放り出し、全力で海域の奥地にむかい、突然の行動に慌てて艦娘達は北方悽姫を追撃する。

 

そして海域の最深部で彼女達は出会った。

 

バリムシャムシャゴキュ、バリバリムシャムシャモグモグ

 

それは出来の悪いホラーが現実に浮かび上がったような光景だった。

 

巨大で禍々しい艤装に対し、酷く不釣り合い細い長い手足をした艦娘がいた。

 

喪服と水面まで垂れる黒い髪に赤い目という今時ホラー映画でもお目にかかれない女がいた。

 

細く小枝の様に簡単に折れてしまいそうな手で、ワ級を掴み妊婦の様に膨れ上がった下腹部にせの艦娘は牙を突き立て中身をすすり出す。

 

口元から溢れるドロっとした黒い液体と時々覗く赤黒い物体。

 

彼女の足元には既に空となったワ級だったものが無数にうかんでいる。

 

最後の一雫を飲み干し、幽霊の様な女は北方悽姫や艦娘達を無視し海域を去っていった。

 

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