太平洋の辺境にある某鎮守府、そこの沖合いで所属不明の艦娘を発見したとの報告を秘書艦である高雄から受けた提督は早速救助された艦娘に合うため、工廠へ向かった。
「いや、しかしこんな辺境ではぐれ艦娘と出会うとはいささか信じられないね」
この鎮守府の提督である、御布少佐は二十代半ばのまだ若い男性である。
ここに来る前は海軍の兵站と輸送網にシーレーン関係で功績を挙げたがある事件で上司の反感を買い上層部にへきへきしていた本人に余りやる気が無いのか、少佐の階級でありながら、辺境の鎮守府に左遷されても気にする事なく仕事をし暇な時は釣りを楽しんだりするようなこともあった。
「ここ最近、はぐれ艦娘が発生するような大規模な海戦や行方不明はでていませんから、確かに妙ではありますね」
重巡型の艦娘である秘書艦の高雄は自身の記憶と手元の資料に目を通しながら提督に同意を示した。
最新鋭の重巡として生まれた高雄型の一番艦高雄だが、どうしてこんな辺境にいるかというと、以前所属していた鎮守府で同じ様に秘書艦として任務に着きそこの提督に無理やり“夜戦”を挑まれ敢え無く返り討ちにした結果、上層部の不興をかい、ここに送られた経緯がある。
二人とも同じくらい上層部にウケが悪くそれを歯牙にも掛けない姿勢に共感し二人の仲は良好であった。
「だとしたら一ヶ月前に起きた謎の爆発でも影響しているのか?あれで大分潮の流れが変わって苦労した」
御布提督の言う爆発とは太平洋中心部で起きた爆発の事であり、調査に派遣された艦娘が大量に浮遊している深海棲艦の残骸を調べた結果かなりの規模の海戦が起きたこと以外依然として原因不明の事件の事である。
この鎮守府にも情報だけは伝わっていたので、その事を知っていたが為それが原因不明と考えたのだ。
「撃沈した深海棲艦から艦娘が時たま自然発生することもありますし、長い間放浪して辿り着いたのかもしれませんね」
「だとしたらそいつはとんでもなく運がいいな、案外雪風や時雨だったりしてするかもしれん」
そう言うが早いか、御布提督は若干歩くスピードを速め高雄もそれに続いた。
「やっと来たか、遅えぞ提督」
鎮守府工廠、そこで提督の到着を待って居た軽巡の天竜は提督に対し開口一番にそう言った。
「あら〜、天竜ちゃんたら提督にそんな口きいたらダメじゃないまた高雄に怒られるわよ」
クスクス嗤いながら天竜型軽巡二番艦である龍田は口ではそう言いながらも目は全く真剣ではなかった。
「全く、相変わらずだな天竜、龍田、待たせて他所に悪いが報告を聞きたい」
提督は二人が口で言う程怒ってないことを感じていた、この二人は一言二言相手に何か言わなければ気が済まない性格だと知っていたからだ。
だがこの口が災いして辺境に飛ばされたが、二人とも改めるどころか口煩い連中から解放されたと思う始末、けっこうイイ性格をしている。
だが、それさえ目を瞑れば非常に優秀で面倒見も良く駆逐艦艦娘からは慕われているらしい。
「じゃっ早速と言いたいが、実際に本人を見た方が早いな」
天竜、龍田が先頭その後に提督と高雄が付いて行き四人は入渠ドックへ向かった。
「こいつがそうだ」
天竜が指差した先には一人の艦娘が修復液に首から下を漬け横たわっている。
身長は駆逐艦サイズ、長い黒髪に白い肌をしたお人形のような艦娘がそこにはいた。
「これがそうか、見たこともない艦娘だなこれは」
御布提督は振り返り秘書艦の高雄に知っているかと目で問い、高雄は首を横に振った。
高雄も知らない艦娘、しかも所属不明ときている。
「提督、こいつこんなナリしてるが調べてみたらクラスは戦艦。しかも相当強力な」
「戦艦⁈こいつがか、どう見たって見た目は駆逐艦、良くて軽巡にしか見えないが…」
「嘘じゃないわよ〜、私も天竜ちゃんと確認したし工廠の妖精さんがそう言ったんだもの」
そう言われたら本当なんだろうだとしたら益々不思議だ、現在確認されている戦艦型艦娘は出尽くしており、同盟国のドイツ艦娘ビスマルクはそもそも容赦が違う。
既存の艦娘に全く該当しない艦娘、そんなものが今目の前にいた。
「…まあ暫く様子を見よう。全てはこいつがおきてからだ」