ファーストを1ミリも知らない俺が介入したせいで、宇宙世紀の歴史がおかしくなったかも 作:フェルトファン
リアルの都合上で投稿はなかなか進めませんでしたが、なんとか書けました。
<イオリ・サカイside>
宇宙に出ればキラキラと瞬く星々が視界いっぱいに広がっていると、俺がまだ子供だった頃から信じていたが……いざ目にすると実際に違った。地球から見上げた夜空の星は輝いているはずなのに、宇宙空間から見ればただの光っている点にすぎない。それに光瞬くきらめきもなければ、宇宙空間に関しては完全な無音で不気味さもある。もしコックピットの中でなければ、俺はとっくに気が狂っていたかもしれん。
━━そんで俺は今なにをしているのかというと、現在
《よ、よし……動いたぞ!》
《良いぞ頼む、今度こそ上手く行ってくれ!》
コックピット内の通信越しから興奮と緊張が入り混じった開発スタッフ達の声が次々と飛び込んでくるけど、ぶっちゃけそのセリフ何回も聞いたからな。それについさっき通常起動をしたばっかりなのにまだまだここからなんだぞ……とまぁそう思い込んでいる俺は足元のペダルを軽く踏み込んだ直後、機体が微かに震えながら滑るように前進する。ちなみに俺が乗っているのは様々な
《イオリさん、エンジンの出力の方はどうでしょうか?》
「出力に関しては安定しているし、今のところ問題は無いっすね。ただ脚部の方は若干の振動を感じるけど、今のところ不満な点は見当たらないっすね。」
《それは良かったです……それと一応お伝えしますけど、この前みたいにヅダをあまり無茶な動きをさせないでk「大丈夫っぽいので、このまま最高速度試験に移りまーす。」━━い、イオリさん!?》
なんか最後の方だけ注意されているのが聞こえたんだが、大丈夫だし今は気にしなくて良いっしょ*1。そう気軽に思い込んだ俺はペダルを更に踏み込み、それからスピードを加速しつつエンジンは問題無く安定したまま動いてくれる。やがて機体を姿勢制御へと切り替えた俺は指定ポイントに向けて急加速し、スラスターが唸る機体が激しく揺れる。急旋回に急制動で最初は吐きそうになるほどきつかったが、今はだいぶ慣れてきている。
「それじゃここからが本番だなぁ!」
新たな武装として360mm試験型バズーカ*2を装備し、いくつか所々に設置されている訓練用の的をロックオンした途端にトリガーを引いた。砲口から発射された弾頭は一直線に飛び、命中した標的は見事に爆散する。
「おしっ、次──」
一発のみ終わらず、障害物を回避し続け射撃を繰り返す。全弾命中し弾倉が空になったところでバズーカを投棄した後、腰のウェポンラッチから試験型ヒート・サーベルを引き抜く。
「3……2……1……行くぜぇッ!」
白熱する刃を確認した俺は更にヅダを加速される。標的を一刀のもとに溶断し急旋回。更に斬撃し再加速するなど、流れるような連撃で次々とターゲットを切り裂いていく。やがて最後の標的を両断した瞬間、再び通信が開く。
《す、すごい……全弾命中だ!》
《これならツィマッド社の信頼も取り戻せる!》
《まだバズーカの調整する必要はあるが……ザクの240mmより遥かに期待できるぞ!》
《うぅ.....本当によかったなヅダ……廃棄せずに済んで……》
興奮に分析、そしてどこか嬉し泣きをする声も混じっている。そんなスタッフ達が歓喜の声を上げているのを聞いた俺は、思わず笑みを浮かべる。
「なぁ先輩、大丈夫だって言っただろ?しかも結構いいデータも取れたんじゃn━━━」
《イオリさん前!前を見てください!!》
自慢げに語りかけようとしたら先輩の悲鳴に近い声が響き、俺は反射的に正面へ視線を戻す。そこにあったのは
「へ………あ、やべぇ……
急いで回避スラスターを吹かそうとするが時すでに遅く、気がついた時に鈍い衝撃音と共にコックピットが激しく震えた。
「も〜〜〜〜うイオリさん!何度も言いましたよね……どうして最後の最後でヅダを
「いや~それは……で、でもそのおかげで良いデータが取れたんすy「いい加減に少しは反省してくれますか」……スンマセンデシタ、ミア様」
ヅダと共に工房へ回収された俺は、今はミア先輩から絶賛お説教を受けている。ちなみにまたというのは、以前から何度目か行われたテスト終了間際に何故か毎回岩壁へ激突するという謎のパターンを繰り返していたからだ。そのたびに整備士たちは壊れたのかと青ざめ、その間に俺は先輩にきっちり叱られる……と、気づけばこれがすっかり日常茶飯事となっていた。自分で言うのもあれなんだけど、なんで俺は毎回ラストでやらかすんだろう?
んなことより、俺がヅダのテストパイロットなんてものをやっているのか。まぁその理由を話すと少し長くなる。
俺が半分冗談で描いたヅダのスケッチを先輩が目にした日のことだった。その日を境にツィマッド社の空気はがらりと変わり、ミア先輩はもちろんどこか沈んでいた社員達まで一斉にやる気を取り戻したらしい。一応先に言っておくが、あれはほぼ思いつきで半分どころか八割くらいノリで描いただけだぞ。何故か会社全体が覚醒イベントみたいな雰囲気になっていたけど、つーか俺が描いた絵ってそこまですごいのか?なんか色々とんでもないことが起き過ぎていて何が何だか分からないが、ミア先輩の両親とツィマッド社の所長が揃って俺に感謝を述べてきた。
しかも何故か俺をMSの開発関係者として正式にチームへ組み込んでくれるだけでなく、加えて俺をアルバイトではなく正式に社員として迎えたいときた。まだ一週間も経ってないのに、いくらなんでも流石に大袈裟すぎだろ。バイトの名札が温まる前に正社員って、出世ルートバグってない?
それから格納庫の奥に封じ込められていたヅダは再び引き出され、開発チームのスタッフ達は改修作業に大忙しとなった。工具の音が響き図面が飛び交い、工房には久しぶりに活気が戻っていたと言う声も上がっている。開発中で“他に何か案はないか?”、“この構造をどう思う?”などなど、チームに加わったばかりの俺に何故か次々に問い詰めてくる。
色々とツッコミを言いたいが、とりあえず思いつくままに案を出し絵を描きながら改良案を提示した。それが本当に正しいのかどうかは今でも分からないけど、スタッフ達が揃いも揃って本気で聞いてくるから割と本気で考え込んでいる。前世ぶりの仕事だったから大変なんだけど、これがMSの仕事なんだなと正直楽しい。こうして改修を重ねたヅダの機体テスト運用を行うはずだったが、
当時ヅダのテストパイロットである男はもう一人いたと聞き、確か名前はデュ……デュ……なんだっけ忘れちゃった*3。とにかく、そのオッサンとは何故か連絡は取れないらしい。仕方がなく所長は社員全員に誰か代わりに操縦してくれないかと頼むが、誰一人として名乗り出なかった。もちろん別に操縦資格がないからではなく、
まぁ、そりゃそうだろうな。いくら改良したからと言ってヅダはかつて空中分解を起こした機体。今さら“乗ってくれ”と言われて“はい分かりました”と手を挙げる者はいないだろう。ちなみにミア先輩は自ら操縦しようと手を挙げるが、それを聞いた彼女の両親は猛反対。やがて工房の片隅で言い合いが始まり、声は次第に熱を帯びていく。ぶっちゃけそんなやり取りを延々と聞かされるのはもう聞き飽きた俺は、仕方なく手を挙げる。
もちろんその言葉を聞いたスタッフ達に却下された挙句、加えて“そもそもまだ子供である君が操縦できる訳ないだろ”とまで言われ、少しムッとした俺は……
『んな事を言ってよ、いつまで経ってもまともなテストなんてできねーだろ。』
━━っと思わず口から出た言葉にその場の空気がぴたりと止まり、この場にいる全員が一瞬だけ口をつぐむ。それから他に候補もいないという事で、仕方がなく俺をテストパイロットとして任されることになった。もちろんMSの操縦なんてしたことはないが、正直に言えば乗ってみたいという気持ちもある。
もちろんMSの操縦に関しては完全に素人だから、最初の時はミア先輩に基礎から操縦方法を叩き込まれた。車を運転すると似たようなもんだろと甘く考えていたが、実際に乗ると全然違し思っていた以上に難しかった。それでも“俺がやる”と言った以上、引くわけにはいかない。そう思いながら本気で練習を重ねた結果、
そこから俺や先輩、そしてツィマッド社の技術者達によるヅダの運用テストと機体の改良をする作業が大きく動いていく。
「イオリさん、ヅダの性能について何か意見はありますか?」
「ホバー走行中に微妙な振動があったから、高速時の武器照準システムの調整も必要っすね………つーかさ、もう少し挙動を滑らかにできねーのか?」
「無理を言わないでください、これでも可動範囲は精一杯です。大体そもそも、
「ギク……そ、それはマジで反省してます……」
なんとか機体を動かせたのはいいものの、俺が調子に乗って機動を何度も無理矢理変えたせいでテスト中にヅダがオーバーヒートを起こしてしまった。その度に技術スタッフ達は絶叫しながら修復に追われ、中には酷い疲労で倒れる者まで増えたとか……いやほんとマジでなんかすんません。皮肉にもその時に取れた戦闘データは確実に活かされていているか、しかも俺の操縦特性に合わせてくれる形でヅダは少しずつ進化していく。機体性能だけではなく気づけば装甲の形状までもが変わり、もはや完全な別物となりつつあった。
まず最大の課題だった『木星エンジン』だが、幾度もの改修を経てて新たに『
脚部には熱核ジェットエンジンを内蔵し、ホバー推進機構を搭載した事で地表近くでの高速移動が可能になった。エンジンを加えた事で、両脚は大型化されている。ちなみにこの脚のフォルムデザインなんだけど.....うん、やっぱどう見てもドムやな。
確か俺がスケッチを描いていた時、“これ両脚がドムだったら面白くねw”と考えなし割と軽い冗談で描いていただけのはずが、それを技術スタッフの連中は本気で採用しちゃった。いくらなんでも流石に開発できないだろうと最初はそう思い込んでいたが、まさかここまで再現するとは予想外だ。ちなみにその時のスタッフ達は徹夜を続けてあまりに、何人かが睡眠不足と過労によってぶっ倒れていたとか。
それはそうと、ドムって確か一年戦争の中盤あたりにに登場するんじゃなかったけ?なんか前世の俺がネットで調べていた気がするけど......まぁ別に気にする必要ないだろ。
「ところで先輩、バズーカは問題ないけどヒート・サーベルの発熱時間はちょっと遅くないっすか?」
「やっぱりそう思いますよね……ザクのヒート・ホークを上回る近接兵装を目指していますが、まだ調整する時間が必要かと。」
接近戦として一応実用化はできたが、発熱時間は五〜六秒程度。ハッキリ言って俺にとっちゃ遅すぎるし、敵が迫る中で発熱を待っていたらその隙にやられて即終了だ。土星エンジンと同じく、ヅダの推進性能に関しては問題なかった。けど機体構造そのものに限界かあるからだろうか、俺が思うように自由自在な動きはまだ難しいらしい。今後の開発にあれやこれやを考えているうちに、横から先輩が声をかけてくる。
「イオリさん、こんな事を言うのは今更なんですけど....
「.....え?」
「大変失礼かもしれませんが、最初は相当苦戦するかも知れないと思っていました。でも今は、一般兵レベルの操縦技術を既に身につけています。」
「あ〜〜〜〜〜〜多分、進研◯ミでやったからじゃないっすか?ほら、付録でMS操縦講座とか。」
「なるほどそうでしたか!小学生だった頃の私もたくさんやりましたね。それでしたら納得でき──いやできませんよ!?MSの極秘情報をそんな学校の教科書みたいに載っている訳じゃないですからね!?」
お〜思ってたより、ツッコミが早いなこの眼鏡っ娘先輩。つーかさっき言われてみれば、なんで俺MSを操縦できるんだ?何となく勘で動かしてみたんだが……まぁとりあえず、今は
けど何より、欠陥品と呼ばれていたヅダがどこまで進化できるのかが楽しみで仕方がない。
それから数日後.....U.C.0078 10月24日
なんか偉いハゲ頭のおじさん*4がジオンを共和国から公国制への移行を決定し、同時に連邦からの独立を宣言した。
更に二ヶ月後が経ち、U.C.0079 1月3日...ジオン公国は地球連邦政府に対して宣戦布告し、連邦側であろうサイド1、2、そして4を奇襲する。ジオン艦隊が連邦の宇宙軍巡航艦隊を撃破&殲滅すると同時に、モビルスーツ部隊を使って月面都市グラナダを制圧。そんで眉無しのオッサン*5が会議場で演説している頃、サイド2第8番コロニー“アイランド・イフィッシュ”を地球へ落下する。目的であるジャブロー*6の破壊ができず作戦は失敗したものの、落下した地球に大きな被害が広がった。
──というのが、ニュースで知った話題だ。ちなみにその時の俺はツィマッドで色々と仕事をしていただけで、特に異世界あるあるみたいに対して大きな活躍もしていない。そんな訳で、俺がエデンへ帰ろうとしている道中の事であった。
「おい見たか!ジオンは俺達の為に動き出してくれたぞ!」
「ただの共和国だの自治権じゃない、本当のスペースノイドの独立がいよいよ始まるぞ!」
「ジオン公国万歳!ザビ家万歳!」
「「「「「ジークジオン!!!ジークジオン!!!ジークジオン!!!ジークジオン!!!ジークジオン!!!」」」」」
演説を聞いていた民衆は熱狂的な反応を見せていた。もちろん全ての住民って訳じゃないけど、それでも大多数の人間が今のジオンに支持していた。つーかぶっちゃけテレビで演説していたあのオッサンの眉、マジで無くて逆にそっちの方がびっくりなんだけど。
とまぁそんなこんなで、民衆の声を聞き流しながらようやくエデンに到着した。とりあえず今は飯食って休もうと、軽く考えながら店に入ったら...
「おぉ〜帰ったか坊主〜!いいかよく覚えておけ!お前はジオンどころかザビ家の為に尽くさなくてよい!奴らは血も涙もない、ただの人殺し野郎どもだぁ〜!!」
何故かラルさんは、今まで見たことがないくらい
<イオリ・サカイside end>
<ミア・ブリンクマンside>
あれは、改修途中のヅダのデータを整理していた時の頃。
入社したばかりのイオリさんが協力してくれたおかげで、私たちツィマッド社はこれまでにないほど大量の実戦的データを収集できている。今やヅダは推進系にフレーム補強、そして制御プログラム━罫線あらゆる面が更新され、かつてのEMS-04とは別物と言っていいほど変貌していた。
けれど、私が本当に驚かされたのは機体の変化ではありません。
「すごい……こんな数値、初めて……」
モニターに映し出された操縦データを前にして、私は思わず息を呑む。
イオリさんの操縦ステータスは正直とても素人とは思えない。反応速度に姿勢制御の精度、加減速時の入力判断など……どれを取っても一般兵の平均値を大きく上回っている。かつてのテストパイロットであったジャン・リュック・デュバルさんの記録にすら迫る勢い。しかも度重なる改修を受けた最新仕様のヅダをほぼ初見に近い状態でここまで扱いこなしているけど……解決できない問題がそこにあった。
彼の操縦技術にヅダの機体性能が追いついていない。ログを追うたびに四肢の駆動系が限界に達し、局所的なオーバーヒートを起こしまうという事態が度々あった。特に近接戦闘時の急加速と急旋回しようとしたあの動きは、明らかに想定以上の負荷を機体に与えていた。
「映像を見返してもやっぱり近接戦闘が中心。もしかして白兵戦が得意なのかもしれない……それなら!」
私は再生映像を止め、フレーム負荷のグラフと推進ログを並べる。
もし彼の戦闘スタイルに合わせて、瞬間的な推力変化に特化した制御系を組み込めばどうだろう。持続出力ではなく、短時間の高応答加速できるかもしれない。パルス的な噴射制御で姿勢と推進を細かく刻むシステムさえできれば━━━いつの間にか私は、
けどこの時の私は、まだ何も知らない。後にとある白兵戦特化型モビルスーツに搭載されることになる技術、
<ミア・ブリンクマンside end>
EMS-04RE
ヅダ(再試験型)
全長 17.6m
本体重量 61.9t
出力 1270kw
推力 58400㎏
武装
360mm試験型バズーカ
試験型ヒート・サーベル
特徴的な土星エンジンのリミッター強化により機体崩壊リスクを克服し、高機動性と安定性を両立する事に成功。ぶっちゃけ言えば、本来なら後の一年戦争末期に登場するはずだったヅダF(EMS-10F)を一年も早めに開発してしまった。また脚部を大型化することで、ホバー走行による高機動も可能となった。加えて左肩に装備されていたシールドを見たイオリは「これ邪魔じゃね?」と言って取り外し、可動範囲を広げる為に両肩に新たな装甲を取り付けた。
そこに後にギャンの流体パルスアクセラレーターを加える事で脚部の反応速度と駆動力を向上させる事で、ヅダを更にスムーズに動かせる事もできる。
言ってしまえば見た目の頭部と胴体、そして腕部はヅダのままで、両肩と下半身はドムである。
※ちなみにデメリットとして、一機あたりの開発コストが倍以上に上がっている。
今思い返せば、正史のツィマッド社って結構不遇な扱いしていましたね。それに比べてジークアクス版……製作者の中にツィマッドのファンが混じっているだろ。
一応またお伝えしますが、本作はファースト、オリジン、そして劇場版が混じった世界線です。また主人公は“ファースト原作内容に関してほぼ無知”という縛りを持っています。
ご了承いただけますと幸いです。