ファーストの内容を1ミリも知らない俺が介入したせいで、宇宙世紀の歴史がおかしくなったかも 作:フェルトファン
全話から結構時間が経ってしまい、申し訳ございません。
それと遅くなってしまいましたが、感想と評価、誠にありがとうございます。
<イオリ・サカイ side>
前回までのあらすじをざっくり説明しよう。
輸送船を操縦できそうなオッサンを適当に拉致って、色々と改善したばかりの新型ヅダとその辺でかき集めたMS用の武器を艦内へ放り込んで即座に出発。そんでルウムの近くでジオンと連邦がドンパチやり合っている戦場近くへ到着した俺は、ついさっき命名したばかりの青いMS━━ヅダアメイジングのコックピットへ乗り込み、そのまま戦場のど真ん中へと向かって戦闘開始………というのが今の現状だ。詳しい内容が気になるなら前話で起きた出来事を読んでくれ。
さて、俺にとってこれが初めてのMS実戦な訳だが……心の底から本音で言おう───────クソ楽し過ぎる
ヅダを操縦し始めてから最初の敵を撃墜した瞬間、興奮が一気に湧き上がった。今まで散々シミュレーターで訓練してきた反動だろうか、目の前に迫る本物の敵と戦うことが楽しくて仕方がない。”吐き気がする”や”死にたくない”とか、そういう恐怖とかも不思議と感じなかった。更に敵とはいえ戦闘機に乗っていた連邦軍の兵士を殺してしまったはずなのに、何故か
前世で当時ガンダムに夢中だった頃の俺は、MSに乗ってみたいと夢見たいな願いを持っていた記憶を思い出す。そしてその願いが叶った嬉しさのあまりなのか、俺は無我夢中で目に映る敵を攻撃する。機体性能の確認なんて既に頭の中に入ってなく、ただヅダと共に戦場を駆け回った。ただそれだけで楽しかった……自分で言うのもあれなんだが、さっきからサイコパスみたいな発言してなかったか?
まっ、それはさておきだ。今更だけどジオン側はMSを戦場へ投入しているのに、連邦側から出てくるのは戦艦や戦闘機ばかりで連邦製のMSが一つも出てこない。流石にガンダムがまだ出てこないのはなんとなくわかるけど、てっきりジムくらいは出てくるものだと思っていた。もしかしたらジムが本格的に登場されるのはまだ先かも知れないが……ぶっちゃけファーストガンダムを観ていないから本当かどうかも分からん。
それに欲を言ってしまえば、なんかこう全火力を使って敵にまとめて仕留めるような展開は少しやってみたい気持ちもあるけど……
「バズーカの予備弾はほとんど使い切っちまったし……弾も結構無駄遣いしてしまったな」
改めて確認したらジャイアント・バズの弾は完全に空となり、ザクマシンガンはまだ使えるがそれでも弾数はあまり残ってない。接近戦用のヒート・サーベルなんかはもうすぐ使い物にならなくなってしまうのも時間の問題。あまりにも夢中になり過ぎて、残弾なんて考えいなかった。
それにまだ少し時間があるから、このまま戻ってしまうのもなんだか物足りない。
「面倒だけどそこら辺を飛んでるザクから適当に武器でも奪おうかな〜」
━━と、そんな物騒なことを考えながら武器の一つや二つ転がっていないか周囲をありったけ探し回る。そうしてしばらく索敵を続けていたその時、戦場から少し離れた宙域で異様に
しかもそれはまるで宇宙空間にただポツンと浮かんでいる。なんというか“THE・宇宙に浮かぶ巨大な鉄の柱”と、そんな表現が一番しっくりくる。
「なんじゃありゃ?」
長大な砲身を中心に複数のリング状フレームが取り付けられた独特な形状で、周囲の戦艦と比べても桁違いの大きさだ。しかも戦場へ参加しているようには見えず、まるで宇宙空間へそのまま放り出された巨大な鉄柱が浮かんでいるようにしか見えない……つーかアレ、
見た感じ要塞や基地の防衛設備ならまだ分かるが、何でわざわざこんな戦場のど真ん中へ持ち出しているんだ?しかもあのサイズどう見ても“どうぞ狙ってください”と言わんばかりの的になっているぞ。ぶっちゃけこう言っちゃ悪いが、MSが実用化されているんだからわざわざこんな巨大な大砲を運用する必要なんてないと思うんだけどな。なんというか敵の目を引き付ける囮にしか見えないし……でもなんか複数の戦艦を一撃で吹き飛ばせそうな気もする━━━━あ。
「俺、いいこと思いついちゃった(笑)」
不意に一つの考えが頭の中をよぎった瞬間、思わず口元が吊り上がる。内心で閃きを得た俺は迷うことなく機体の進路を巨大砲へ向け、そのまま高速移動をする。“あの大砲はかなり使えるかもしれない”と、心のどこかでそう期待していた。
<イオリ・サカイ side end>
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QCX-76A試作艦隊決戦砲『ヨルムンガンド』
その主砲は通常の艦砲を遥かに凌ぐ威力を誇り、敵連邦軍のマゼラン級戦艦すら一撃で撃沈可能とされる超兵器だった。艦隊決戦の切り札として開発されたヨルムンガンドは実戦データの収集も兼ねて第603技術試験隊へ配備される事となり、砲術長のアレクサンドロ・ヘンメ大尉に運用を任された。この時誰もが、この巨大砲こそがジオン軍の新たな切り札になると信じていた。
しかし艦隊戦が始まって数時間が経過してもなお前線から観測データは一向に送られず、突如としてやってきたザクを始めとするMS部隊が戦場へ投入された事で状況は一変。
実は巨大兵器の存在をあえて連邦に見せつけることでその脅威に意識を向けさせ、その隙にMS部隊で奇襲を仕掛ける━━
つまりヨルムンガンドは最初から主役では無く、MSという本命を隠すための囮に過ぎない。その事実を知った第603技術試験隊の面々は言葉を失い、ヨーツンヘイム艦内は重苦しい沈黙に包まれ誰も口を開こうとしない。
「我々は期待されるどころか……相手にもしてもらえなかった……」
紅髪の女性士官モニカ・キャディラックは力なく俯き、小さく呟いた。上層部から自分達に託された任務は栄誉あるものだと信じていたが、作戦の為に囮として利用されたという残酷な事実を知り裏切られた気分だった。そんな薄暗い空気の中、通信機越しからアレクサンドロの声が聞こえてくる。
『今更……今更何言ってるんだ!俺たちは最初から冷や飯を喰わされているんだ!たとえ戦力外であろうと俺は撃つぞ!分かったか!?』
━━と怒声を上げるが誰も返事ができず、モニカですらただ俯き視線を逸らす事しかできなかった。そんな矢先に、艦内中から警報アラームが鳴り響く。
「敵ミサイルの接近を確認……狙いはヨルムンガンドです!」
オペレーターの叫びと同時に、3発のミサイルが一直線にヨルムンガンドの方へと迫る光景が目に入る。急いで退避を呼び掛けようと声を出すも間に合わない━━━と誰もがそう思っていたその瞬間、
「あれはザク……いや違う、あのMSは一体?」
ヨーツンヘイムの艦長であるマルティン・プロホノウが目を細めるが、その疑問に答える暇すらなかった。
「敵艦隊接近を確認!マゼラン級、サラミス級合わせて十隻です!」
「何だと!?何故そこまでの数がやってきて………まさか!」
ヅダを追撃しようと連邦艦隊は進路を変え、一斉にヨーツンヘイムがいる宙域へ向かってくる。ミサイルの脅威は去ったものの、今度は敵艦隊そのものを相手にしなければならないという事態に、我に返ったモニカは思わずへ恨み言を漏らしてしまう。
「余計なことをっ!」
今いる宙域には味方のMSは存在せず、状況的に不利だと判断したマルティンは苦渋の決断を下す。
「やむを得ん……ヨルムンガンド砲術員は本艦へ撤収せよ!可能であれば、あの青いモビルスーツに我々の援護を頼めるよう伝達してくれ!」
「あ、あの艦長。先ほどの青いMSですが……」
報告を受けたオペレーターは言いづらそうに口ごもり、ようやく伝えたい言葉を語る。
「
「「───はぁ?」」
撤収準備を進めようとしていたマルティンとモニカは、その一報に揃って間の抜けた声を漏らしてしまう。
観測データを得る為に小型観測機へと乗り込んで戦闘区域へ向かおうとしていたオリヴァー・マイとヒデト・ワシアは、眼前で起きている光景に目を疑っていた。
「なぁ、アイツ何やってんの?」
「い、いや。さっぱり分からん...」
突如やってきたヅダが何をしてくるのかと思った矢先、
『おいテメェ!いきなり何を勝手にいじくっているんだ!おい!聞いているのかぁ!?』
オープン回線越しに怒鳴り散らすも、ヅダはまるで聞こえていないかのように作業を一向に手を止めようとしない。あまりにも不自然な行動にヒデトは首を傾げるしかなかったが、ヅダの動きをじっと見つめるオリヴァーだけは一つの可能性に思い至る。
「(嫌がらせというのも見えない。それにアレはいじっているというより修復しているのかのようにも見えるが……)」
そう内心で呟いていると作業を終えたのか、ヅダは外した装甲を元の位置へ戻した。
『聞いているのかおい!さっさと退けってんd「合図を出すからそん時に撃て」……は?何を言っt━━ちょ、おい!』
ようやく返ってきた返事は、意味不明な一言だけだった。そしてそれ以上何も説明しないまま、ヅダは連邦艦隊のいる宙域へ向かって一気に加速し飛び去った。
「な、なんだあのスピードは……いやそれよりも、無事ですか砲術長!?」
その圧倒的な加速性能に目を奪われたオリヴァーだったが、すぐに我に返えいヨルムンガンドの砲術員たちの安否を確認する。程なくして“問題ない”という返答が返ってきたことで、胸を撫で下ろした。
「ともかく、今はヨーツンヘイムへ撤収を!あの青いMSが敵艦隊を相手にしているうちに━━」
『待て技術屋……せめてあともう一発だけ撃たせてくれ。』
通信越しに聞こえてきたアレクサンドロの言葉に、オリヴァーは目を見開く。
「な、何を言っているのですか!?」
『正直まだあの野郎の言葉を信用できていねーが、親切にも敵を引き付けてくれてるんだ。だったらここは騙されたと思って、アイツの案に乗ってみようじゃないか。』
「そんな……無茶苦茶だ!それに今のヨルムンガンドは安全に作動できるかどうかも分からないんだぞ!」
オリヴァーの言葉はもっともだった。つい先ほどまで内部をいじっていた以上、安全に発射できる保証はどこにもない。ましてあの青いMSが自分達の為に敵を引き付けているというが、なぜそんな事をしてくれると理由も分からない以上信用もできない。仮に撃てるとしても、本来のデータだって得る事もできないだろう。
しかし、アレクサンドロに迷いはなかった。
『確かにこれからはMSが主役なのかもしれねぇ………けどなぁ、俺は何があっても大砲屋としての意地は貫かせてもらうぞ!!』
通信越しから響くその声には、力強い意志が篭っていた。
『それにこれが最初で最後のチャンスかもしれねんだー!例えコイツが時代遅れの兵器だったとしても、決してただの飾り物じゃないって証明してーんだ!俺たちは今、コイツと一緒に戦っているんだ!!』
いずれMSが戦場の主役となれば、ヨルムンガンドの出番は二度と訪れないかもしれない。歴史の闇へと消えていき、人々の記憶から忘れ去ってしまうだろう。それでもアレクサンドロは、この大蛇が戦場で戦ったという証だけは残したかった。
「決してただの飾り物じゃない、か……」
その言葉はオリヴァーの胸にも深く響いており、やがて静かに頷くと決意を込めて通信を開く。
「砲術長!ハッキリ言って、確実に命中する保証はありません……ですが!あの青いMSから合図が来た瞬間にいつでも発射できるよう、準備を進めます!あなたとヨルムンガンドの戦いを最後まで記録させてください!!」
一瞬の沈黙の後、通信越しから小さく笑う声が聞こえた。
『へっそうこなくっちゃな...頼んだぜ技術屋!』
「はい!ワシア中尉、申し訳ありませんが引き続き操縦をお願いします!」
「おっしゃ!こうなったら最後まで付き合ってやるよ!」
そう言って苦笑いをするヒデトは、観測機を再び加速させる。その間にオリヴァーはヨルムンガンドを1秒でも早く発射できるよう、データの再確認を続けた。しかしそんな最中、とある疑問がオリヴァーの脳内に浮かぶ。
「(そういえばあの青いMSから聞こえたあの時の声……
同時刻、マゼラン級三隻とサラミス級七隻を合わせて十隻もの艦隊を率いる地球連邦軍はヅダを血眼になって捜索し続けている。
ザクと呼ばれるMSへの対処だけでも手を焼いていたというのに、突如として戦場へ乱入してきた正体不明の青いMSが連邦軍に向かってへ攻撃を開始した。その猛攻によって戦艦や戦闘機は次々と撃破され、戦況はたった一機のMSによって戦況は更に大きく覆されてしまう。
更にそこで追い打ちをかけるようなのか、旗艦《アナンケ》が撃沈されたとの情報が艦隊中を駆け巡った。しかもその艦には連邦軍の司令官であるレビルが乗艦しており、生死は未だ確認されていない。指揮系統が不在という非常事態の中、艦隊の指揮権はマゼラン級《ネレイド》艦長であるロドニー・カニンガン准将へと委ねられることとなった。そのタイミングなのか、ヅダは突如として戦闘区域を離脱。
いち早くその様子を目撃したロドニーは今すぐにでも撃破しなければならないと判断し、《ネレイド》以下の艦隊を率いて追撃に向かった。しかし肝心のヅダはどこにも見当たらず、捜索を繰り返しても敵影を捉えることはできなかった為ただ時間だけが無情に過ぎてしまう。
やがて艦内に焦りが徐々に広がり始め、士官達の口からは苛立ちと不満の声が漏れ始めていた。そんな部下達の様子を見つめる《ネレイド》艦長ロドニーは、険しい表情でただ様子見をする事しかできない。ただでさえレビル将軍の安否が判明せず、艦隊全体が混乱に陥っている。それでも艦長としての責任を持つロドニーは何とか部下達を落ち着かせようと必死に声を掛け続けるが、その言葉とは裏腹に艦内を包む不安は増すばかり。
もはや事態の深刻さが増していく中、更に追い打ちをかけるような報告が飛び込んでくる。
「艦長!つい先ほど撃沈された《アナンケ》についてですが、レビル将軍は無事脱出できたとの情報が入りました。」
「おぉそうか!それは良k「しかしその直後、黒い三機のMSに捕捉され……レビル将軍は敵の捕虜となった模様です。」──っ」
安堵の息を吐いた矢先に、その一報を聞いた瞬間に艦橋は一気に静まり返った。
「……やむを得んな。今すぐ残存艦艇に通達し、この宙域より早急に撤退を━━」
「艦長!前方より青いMSがこちらへ高速接近してきます!」
撤退命令を下そうとしたその矢先、最悪のタイミングでヅダが再び姿を現した。その報告を聞いて誰もが息を呑み、メインスクリーンの向こうから青い機体が連邦艦隊へ真っ直ぐ突っ込んでくる。
「せめて━━せめてあの化け物だけでも仕留めねば…っ!」
士官たちは焦りを隠せぬまま、一斉に砲撃を開始した。しかし放たれた砲弾や機銃掃射はことごとく空を切り、ヅダは紙一重で攻撃をかわしながら一直線に突き進み続けた。何度照準を合わせてもその機体はまるでこちらの攻撃を読んでいるかのように避けられ、ついには
迎撃したくとも下手に撃てば味方を巻き込んでしまう為、誰も引き金を引くことができず艦隊は完全に動きを封じられてしまった。対してヅダは反撃する様子も無く、ただ艦隊の周囲を悠然と飛び回っている。何を仕掛けてくるのか分からないが、その動きはまるで連邦軍を嘲笑い挑発しているかのように見える。そう思い込んだ士官達は怒りを滲ませながらも、何もできないまま歯噛みするしかない。
「ち、畜生!明らかに我々を馬鹿にしているぞ!こうなったら全砲門を開いて──ッ」
「待て!ここで挑発に乗ってしまえば敵の思う壺だ!急いで進路を変え、体制を立て直せ!」
ロドニーは部下の言葉を遮るように叫ぶ。指示を受けた部下達は慌てながらも急いで艦を動かそうとした直後、“ガコンッ!”と何かに衝突したような鈍い音が響き艦内が大きく揺れる。
「えぇ〜い!今度は何事だ!?」
「か、艦長!周囲の艦艇が突然……
「━━━は?」
何を言っているのか未だ一つも理解ができていないロドニーは、慌てて外の様子を確認する。そこで目にしたのは、連邦艦隊の艦艇同士がまるで磁石に引き寄せられたかのように接近している異様な光景だった。
「な、何だこれは……」
よく見ると各艦の装甲には細いワイヤーが幾重にも絡みついており、他の艦艇へと引っ掛かり艦隊全体をまるで
「まさか……我々はあの青いMSの罠へ誘い込まれたというのか!?」
ロドニーの顔から血の気が引いていくその瞬間だった。
「2時の方向から高エネルギー反応を確認!こ、こちらを狙っています!」
オペレーターの叫び声が艦橋に響き、全員が一斉に視線を向ける。その先にあったのは、
「か、回避だ……急いで回避しろ!」
「駄目です!ワイヤーが邪魔で動けません!」
「だったらさっさと切り離せ!このままでは狙い撃ちされるぞ!」
「そんなことを言われても無理です!もう間に合いません!」
艦橋が一気に騒然となり、互いに絡み合った艦艇は動くことすらできない。中には艦を捨てて脱出しようとする者もいるが既に遅く、ヨルムンガンドの砲口から凄まじい光が放たれる。一条の光は瞬く間に巨大な塊となり、身動きの取れなくなった連邦艦隊へ向かって突き進んでいく。
「う、うわぁぁぁぁっ!」
「こんな……こんなところでッ!」
士官や上官達から悲鳴を上げるも、逃れる術はない。凄まじい閃光が襲ってくる光景を目にしたロドニーは、ただ黙って見つめていた。
「……どうやら私は、誤った判断をしてしまったらしいな───」
その言葉を最後にロドニー・カニンガン准将は《ネレイド》と共に、ヨルムンガンドから放たれた光の中へと呑み込まれてしまう。
レビル将軍の捕縛、そして連邦艦隊の総指揮を引き継いだロドニー・カニンガン准将と《ネレイド》の轟沈。相次ぐ指揮官の喪失によって、連邦艦隊の指揮系統はあっけない最期を迎えた。
こうしてルウム近郊で行われた戦いは、連邦軍にとって最悪の結果を残す事となった。
一方、その頃。
《ファルメル》の艦橋にいたジオン兵達は、ヨルムンガンドから放たれた凄まじい砲撃による威力を目撃する。しかもたった一撃で十隻近くもの敵艦隊をまとめて撃墜し、目の前で起きた光景に誰もが言葉を失っていた。
「まさかあれほどの数を一撃で……」
「何なのだあの兵器……どこの所属のものだ?」
つい先ほどまでただの囮として扱われていた
「あの青い奴……まさかあそこまで考えていたとは。」
遠くを飛び回るヅダを目撃したドズル・ザビは、静かにそう呟いた。敵艦隊を自らの周囲へ誘導し、味方の誤射を恐れて攻撃できない状況を作り出す。更にワイヤーを使って艦艇同士を絡ませ、逃げ場を奪ったところへヨルムンガンドの砲撃を誘導するといった行動を見せると言ったその一連の戦術にドズルは思わず感心する。
そんな矢先、《ファルメル》の近くで通過していくヅダの姿を目撃する。
「……おい、今すぐ回線を開け。」
「え?しかしオープン回線では敵にもこちらの通信が聞こえてs━━「いいからさっさとやれ」……は、はい!」
有無を言わせぬドズルの迫力に押された通信士は、慌てて回線を開く。
「そこの青いMS、聞こえるかぁ!こちらはジオン公国宇宙攻撃軍、ドズル・ザビ中将だ!」
まさに武人とも呼ばれるその大声が響いたのか、ヅダはピタリと動きを止めた。そしてゆっくりと《ファルメル》へ視線を向け、それを目にしたドズルは笑みを浮かべる。
「貴様の戦いは見事だったぞ、まさかあれだけの敵を一網打尽にするとはな!」
ドズルは豪快に笑いながら続けると、すぐに真剣な表情へと切り替える
「だが勝手に戦場へ乱入し、好き放題に暴れ回るというのは感心できん!まずは名を名乗れ!場合によっては軍規違反として、貴様を裁くz━━」
『うるせぇ、バーカ』
最後の言葉を聞かずヅダは通信越しから短い言葉を返すと、そのまま《ファルメル》に向かって
「「「「…………」」」」
シン━━━と艦橋が静まり返り、誰も口を開かなくなった。
全員はまるで時間が止まったかのように固まってしまい、開いた口が塞がらなくなった。公国軍の中でも階級が上であるドズル・ザビを知らない者はいない。しかしそんなドズルに向かって、よりにもよって通信越しで暴言を言い放った。加えて最後には中指まで立つと言う、あまりにも堂々とした無礼。
誰もがそれを理解していながら、いつの間にか艦内では気まずい空気となっていた。何をどう反応すればいいのか分からず、当の本人は黙ったまま通信機を握っているまま呆然と経っているだけ。
「あ、あの……閣下」
そんな時、一人の士官が恐る恐るドズルに声を掛ける。
「先ほどのMSなのですが……「━━しろい」え?」
「俺を知らずにあそこまで言い放ちやがったって………実に面白いではないか」
「ヒッ━━━」
青筋を浮かべながら笑うドズルは、近くにあった鉄製の手すりを強く握っている。“ギギギ……”と凄まじい握力によって、分厚い鉄が見る見るうちに“くの字”へと曲がっていった。その様子を目にした士官達の表情が青ざめたり、中には小さな悲鳴を漏らす者もいた。
笑っているが士官達の目からは怒っているようにしか見えず、それはあまりにも恐ろしすぎて思わずドン引きしてしまう。しかしそんな彼らの反応を全く気にしないドズルは、再び通信機を手に取る。
「全軍に通達!このまま戦闘を続行し、残りの敵を徹底的に追撃しろ!」
ブリッジ中へ響き渡る大声を上げるドズルは、一瞬だけ先ほど飛び去った青いMSの方向へ目を向ける。
「それともし戦場であの青いMSを見かけても気にする必要はないと伝えろ!なんなら最悪撃墜しても構わん!」
最後にそう叫んだドズルは、通信機を握り潰した。この怒声を合図にジオン軍の勢いは更に増していき、指揮官を失い統率を完全に崩された連邦軍は徐々に追い詰められてしまう。もはや戦場の天秤は完全にジオン側へと有利となっていた。
そんな状況を知る由もなく、今もヅダは自由気ままに飛び回っている。
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〈イオリ・サカイ side again〉
あの馬鹿デカい大砲が狙いやすいように連邦軍の艦を一箇所へまとめて撃たせたわけだが……意外と使えるじゃねーかあの大砲。ただ実際に見て思ったのは、あれは戦場のど真ん中で運用する兵器というよりどこかの拠点に据え付けて防衛用として使う方が向いているな。
何せあのサイズだ。あんなデカい大砲が戦場にいたら嫌でも目立つし、敵からすれば“そこに撃てばいいですよ”と言わんばかりの標的になっちまう。実際にさっきも敵さんに狙われまくってたんだしな。
「つーか、さっき俺に声を掛けてきたドズ━━何ちゃらだったけ? なんかどっかで聞いたことがあるような、ないような……」
『ほう……近くで見ると、ザクとはまったく違うMSだな。』
そうこう考えている内に、近くから一機の赤いザクが近くにやってきた。しかも通信越しから聞こえてきた声を耳にした俺は、ファーストを観ていなくとも
「おいおいマジか、赤いロリマザファミコン野郎じゃねーか」*1
やっべ、間違えてつい本音を漏らしてしまった。
『ろ、ロリこ……なんだって?』
通信越しでも分かるほど、赤いザクのパイロットが困惑しているのが伝わってくる。まぁそりゃそうだよな。いきなり初対面の相手から意味不明な言葉を言われたら、そりゃ誰だって困るよな。ぶっちゃけ一体誰なのかを答えてしまえば、この赤いザクを操縦しているのは間違いなくあのシャア・アズナブルだろうな。ガンダム界の中では人気のキャラだったし、確か逆シャアの頃になると色んな意味でネタ扱いにされていたんだよな。
ファーストの時はどう言った活躍したのかは分からんけど、喋っている感じだとこの時点ではまだ大丈夫な方だろうか?
「いや、別に何でもねーっす。気にしないでくだせぇ。」
『そうか……ま、まぁそれはともかく。そのMSを見るのは初めてだな。あの加速性能も避能力を抱えるその機体、目で追うだけでも苦労させられたぞ。』
「こいつはヅダアメイジングだ。こう言っちゃアレだが、ザクとは違ってスピードだけは自信があるぜ。」
『ほう、なかなか変わった名前だな。しかしそんなMSを持っていながら、
そう言われながら赤いザクのモノアイは動く。その視線に釣られた俺も振り返ると、そこにあるのはついさっきの馬鹿デカい大砲。
『先ほど君はあの巨大兵器が敵艦隊を狙いやすくなるよう、自ら囮となって連邦艦隊を一箇所へ誘導しただろう。しかしこれからの戦場ではMSが主力となる。それに君の機体の性能なら、艦隊を自力で撃破することも十分なはずだ。それなのにわざわざ自分から囮になってまで、何故あの巨大兵器を使わせようとした?』
何故だと言われ、少し考える。確かに言われてみればその通りかもしれないし、なんなら俺が攻撃した方が手っ取り早く片付けられたかもしれない。
「そのなんだ……別に大した理由じゃないけどいいっすか?」
『聞こうか。』
「別に意味はないけどさ、何となく見て見てーんだよ。例え使い道が無くとも、あんなデカい大砲が実際に戦場でどんな使い方をされるのかちょっと気になってたんだよな。」
『………まさかそれだけなのか?』
「言っただろ別に大した理由じゃないって。」
俺がそう答えてからしばらく、回線越しから小さな笑い声が聞こえてきた。
『ははは……いやすまない。別に君を馬鹿にしているわけではない。ただその答えは、少々意外だったものでな。』
「そうっすか?」
『あれほどの機体を操りながら、戦果よりもあの巨大兵器の方に興味を持つとは……君は、なかなか面白い人物のようだな。』
お〜もし俺が熱狂的な宇宙世紀ファンだったなら、大興奮していたかもしれない。もちろん前世ではアニメの世界にしか存在しなかったキャラが、こうして目の前で普通に話しかけてくる光景はかなりレアだけど……なんやかんや普通に会話できるんだって自分にも驚く。
『ところで、既に知っているかもしれないが一応自己紹介だけはしておこう。私は宇宙攻撃軍に所属するシャア・アズナブル中尉だ』
そう言って名前を明かしてくれた
「えっと〜俺は『まさかその声は、イオリの坊ちゃん!?』━━へ?」
適当な偽名でも答えようかなと考えたその時、突然もう一機のザクⅡがこちらへと近づいてきた。しかもそのザクも回線をオープンにしているらしく、そこから聞こえてきた声が一体誰なのかをすぐに分かった……というか、俺を「坊ちゃん」呼ばわりする人なんて心当たりしかない。
「も、もしかして……
『やはり坊ちゃんなんですね!なんでMSなんかに乗って……と言うか、こんなところで何やっているんだす!?』
「うげぇ……マジかよ」
どっかへ出掛けている時にたまたま仕事仲間と鉢合わせする……なんてそんな話を聞いたことはあるけど、まさか自分の身に起こるとは思わないだろ!つーかこんな偶然あり得るのか!?
いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。さっさとここから逃げなければ━━━よぅ〜し一か八かだ!
「あ……あそこにUFO!」
『いや、そんな子供騙しが通用するわ━━って、早っ!?』
ツッコミをするその一瞬の隙を見逃さず、俺はヅダを一気に加速させそのまま貨物船の方へと向かわせる。ヅダのスピードならなんとか逃げ切れる事もできるし、とりあえずあばよコズンのとっつぁん!!!
そう内心で叫びながら、俺は全速力でその場から離脱したのだった。
〈イオリ・サカイ side end〉
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〈オリヴァー・マイ side〉
試作艦隊決戦砲・ヨルムンガンド━━技術試験報告書。
ルウムにおける艦隊決戦に際し、ヨルムンガンドは合計三発を発射。そのうち一発はマゼラン級三隻、サラミス級七隻を撃沈・轟沈せしめた。
その威力、まさに抜群なり。
然れども間接射撃指示の到着が間に合わなかったため、艦隊決戦における決定打とはなり得ず……だが、決して悪いことばかりが起きるわけではない。
ルウムでの戦果を挙げたヨルムンガンドは偶然にもドズル閣下の目に留まり、今後は
もちろんMSを上回るほどの生産コストが掛かるため量産されることはないだろうが、それでも再びヨルムンガンドが活躍できると知ったヘンメ大尉が大いに喜んでいた様子は今でも記憶に残っている。
しかし、それ以上に私が気になっていたのは━━━あの青いMSだ。
ザクとは明らかに異なる圧倒的な機動力。あれほどの加速性能と運動性を持ちながら戦場を自在に駆け回る姿には、正直なところ技術者として強い興味を抱かずにはいられない。あの機体は一体、何なのだろうか。
その戦いを目撃した人々は、後に青いMSを後にこう呼ぶことになる。
『ルウムの青い悪夢』
〈オリヴァー・マイ side end〉
ルウムでの戦いを終えた翌日、何も知らないツィマッド社では……
社員「あの所長……昨日の戦いで我が社のヅダが乱入し、いきなり勝手に戦っていたとの情報が出ています。何かご存知でしょうか?」
所長「いや知らん……ナニソレ怖」