ファーストの内容を1ミリも知らない俺が介入したせいで、宇宙世紀の歴史がおかしくなったかも 作:フェルトファン
〈とある一人の連邦パイロット side〉
『ジオンの奴ら、またコロニーを落とそうとしているなんて!一体何を考えてやがるんだ!』
『だがこちらも第4艦隊に変わって、レビル将軍の第1連合艦隊が来ている。』
自身の愛機であるFF-S3《セイバーフィッシュ》の通信越しから仲間達の声が聞こえてくる。ジオンによる再度のコロニー落としを阻止すべく、ルウム付近にて連邦軍の各部隊が次々と戦場へ集結している。その中でアンダーソン艦長を務めるサラミス級巡洋艦《サンタフェ》に所属する俺達
『絶対に止めてみようぜ……
「………あぁ、そうだなフランク。絶対に止めるぞ!」
部隊の仲間でもある一人にそう答えた直後、艦のハッチが開かれた。艦内に響いていた警告音が大きくなり、それはいよいよ俺たちの出番がやってきたという合図だ。
《戦域におけるジオン軍との交戦が確認されています。各機、十分に注意してください。》
オペレーターから戦況が伝えられ、俺は操縦桿を強く握りしめる。正直まだ正確な情報は回っていないが、軍人としてここを退くわけにはいかない。
「ブルー1、出る!!」
深く息を吐き出した俺はスラスターを全開にし、戦場へと向かうべく機体を一気に加速させる。
◇ ◇ ◇
現場に到着したものの、戦況は酷い有様だ。戦闘を開始した俺達はジオンが投入された人型機動兵器を前に苦戦を強いられている。
「これが……MSなのか!」
初めて交戦した俺は、敵機の前に言葉を失っていた。旋回性能があまりにも違いすぎてこちらが機体を旋回させるよりも早く、敵は方向を変える。追撃しようとすれば簡単に回避され、逆に敵から襲ってくる攻撃を避けるだけで精一杯。人型機動兵器MS━━━まさにそれはこれまでの戦争そのもの常識を大きく変えてしまうほどの兵器だった。
『畜生なんなんだよあれ!こんなの勝てるのかぁ!?』
「落ち着けフランク!一度態勢を立て直し、その後連携して攻撃を仕掛けるぞ!」
『了解!』
困惑している仲間の声が通信から聞こえるが、小隊長を務める以上俺も動揺を見せるわけにはいかない。なんとか態勢を立て直そうとしたその時、通信にノイズが走る。
《━━━こ……こちら、サンタフェ……》
それは聞き覚えのあるオペレーターからの声だった。しかしいつもの落ち着いた声ではなく、明らかにどこか焦っている。
《敵からの襲撃を受けています……大至急、応援を━━誰でもいいから早く助けに━━━》
何事なのかと思い声を掛け合うも、通信が途切れてしまった。しかし声からして只事ではないと察した俺達ブルー小隊は救援へ向かうべく、機体を一気に加速させる。そしてなんとか戻った俺達だったが、そこで目にしたのは
艦体には大きな損傷が酷く、周囲には破壊された戦闘機や装甲の残骸が漂っていた。ついさっきまで俺達が乗っていた艦は、今では宇宙空間を漂う巨大な残骸へと変わり果てていた。艦のメインブリッジから炎が舞い上がっており、恐らく中にいる艦長や仲間も無事ではないと分かり、その光景を目にした俺は唖然とする。
「アンダーソン………艦長ッ」
助ける事もできなかった自身の無力さを悔やんだ俺は拳を強く握りしめる。しかしそんな感情に浸っている暇すら戦場は与えてくれるはずもなく、緊張した通信が入る。
『ユウ隊長!3時の方向にMSらしき姿を確認!』
仲間から声を聞いた俺は反射的に視線を変え、そこには《サンタフェ》を見下ろすかのように残骸の上に立つ一機の
『あの野郎……まさか艦長や仲間を!』
『畜生!絶対に許さねぇ!』
仲間達から恨みの声が響き、中には艦長達の仇撃ちをしようと動く者もいる。しかしそんな事態をあまり良く思わない俺は、冷静に頭を回す。指示を出そうと通信を入れ為、俺はほんの僅かだけ視線を逸らした。
「ここで感情的になれば敵の思う壺だ!各機は速やかに行動し、距離を置いてあのMSに警戒を━━━」
そう伝えながら再び視線を戻すと、瓦礫の上に立っていたはずの青いMSが消えていた。慌てて探そうと視線を動かしたら、
「………は?」
思わず間抜けな声を漏らしてしまう。数メートルもそれなりに離れているはずが、いつの間にか目と鼻の先まで接近している。何が起きたのか理解ができておらず、俺の前に大型バズーカ*1を構える。
そうして思考が追い付いた俺は撃たれてしまうと思い咄嗟に身体が勝手に動き、操縦桿を思い切り倒し機体を急旋回させたおかげでなんとか免れた。あと一歩遅れたら俺は餌食になっていたかもしれない。ついさっきまで相手にしていたMSとは違い、動きそのものから逸脱している。
『な、なんだ今のは!?』
『見えなかった……速すぎて見えなかったぞ!』
皆も先ほどの動きを目で追いついていなかっただろうか、誰もが驚愕していた。一瞬の速さで俺も見える事ができず、まるで瞬間移動したかのような動きだ。そう思っている内に、進路を変えた奴は再び俺達の方へ向かってきた。
『野郎…また来やがった!』
『げ、迎撃しろ!動きが早いだけで、たかが相手は一体だけだぞ!』
「よせ!まだ攻撃をするn━━」
俺は慌てて制止しようとするも間に合わず、攻撃を始めてしまった。複数の機関砲が一斉に火を噴き、無数の弾丸が青いMSへ向かって飛んでいく。対して青いMSは方向を変えず、向かってくる弾丸と弾丸の間を縫うようにして次々と回避していく。
『なんだとぉ!?』
『ありえない……あんなのまぐれだ!』
『だ、ダメです!照準が追い付きません!』
こっちの攻撃をまるで予知しているのではないかと錯覚するほど、瞬時に動き回る。視界に捉えたと思った瞬間にはもう別の場所へ移動していて、目で追うことすら一苦労だ。しかしそんな矢先に、奴は俺達の目前まで迫っていた。
「━━━ッ!全員、今すぐ散開しろ!」
俺は咄嗟に叫んだ途端、皆は一斉に四方八方へ散らばっていく。しかしその際に青いMSは突然と方向を変え、仲間の一人が乗るセイバーフィッシュの方へ向かっていく。移動中に装備してある大型バズーカを構え、まるで狙い撃とうと照準を合わせていた。
『き、来やがった!誰か援護を.....このままでは撃墜され──』
仲間の悲鳴が通信に響き、俺は援護射撃を行おうと動く。しかし奴は一切速度を緩めることなくバズーカの引き金を引いた。放たれたロケット弾は一直線に飛翔し、外す事なく仲間の機体へ直撃。内部から広がる爆炎が機体の装甲を大きく抉り取られてしまい、炎と共に黒い鉄屑の塊へと変えられてしまった。
「そ、そんな……マルク!」
たった一撃で仲間が撃墜されていたのを目撃した俺は、ただ呆然と見ていることだけしかできなかった。だが次の瞬間、もう一人の仲間が青いMSの方に向かって突っ込んでいく。
『よくも……よくも友をぉ!!!!』
「ダメだ、よせジェイク!」
怒りに任されたせいで俺の声が届かず、機関砲を撃ちながら追撃に向かった。それでも奴はその攻撃も意に介していないかのように軽々と回避し、そのまま宙に漂うデブリの中へと姿を消した。
『あの野郎どこへ逃げた!?』
周囲を見回すも奴の姿が見当たらないと思ったその時、気配もなくジェイクが乗る機体の背後に近づく。しかももう片方の手には棒状の刃*2が握られていて、姿を見せた途端に距離を詰める。
『い、いつの間に背後を━━』
気がついた時にはすでに遅かった。振り抜かれた棒状の刃がセイバーフィッシュの機体を真っ二つに斬り裂かれた直後、機体は内部から爆炎を噴き上げ無数の破片を撒き散らしながら爆散した。
「ジェイク!」
『おいどうするユウ!?このままだど俺ら本当に全滅してしまうぞ!』
「──クッ!」
俺は歯を食いしばる。今からこの場から離脱するとしてもあの青いMSの速さなら追いつかれる可能性は十分あり、もはや援軍が来てくれると願い奴と戦い続ける選択しか残されていない。
「……やむを得ない。プロモーションBで戦闘を続行する!」
もはや迷っている暇などなく、俺たちは再び青いMSに向かって再び攻撃を開始した。援軍は来てくれるとそんな根拠もない希望を抱えたまま戦闘を続けるが、またしても俺たちの攻撃は当たらない。どれだけ撃ち続けても、僅かな動きだけで次々と弾丸を回避していく。
『ダメだ……いくらなんでも早すぎる!』
「落ち着け!奴をポイントSまで誘導させ、そこで迎え撃つぞ!」
正面から戦っても勝ち目はない━━━ならば、罠に誘い込むしかない。
俺とフランクが囮となって青いMSを指定されたポイントまでおびき寄せ、先行して待機している仲間が一斉に迎撃する。ついさっき考えた作戦だが、もちろん上手くいく保証などない。そもそも本当に誘導できるのかすら分からないが、それでもやるしかなかった。
「なんて速度だ……ジオンのモビルスーツはあのような化け物が存在するのか!?」
滅多に口にしない言葉を漏らした俺は、目を離さず必死に誘導し続ける。俺たちの作戦が罠であると気づいていないのか、思い通りに付いてくる。焦らず危機感を持ち続け、なんとか奴をポイントまで誘導することに成功した。
“今だ!”と声を上げた瞬間、待機していた二機のセイバーフィッシュが姿を現した。
『うおぉぉ!仲間の仇だぁ!』
『喰らいなさい!』
青いMSの背後と取った二人はミサイルを放とうと狙いを定める。対して奴は気づいていないのか後ろを振り向かず、それを目にした俺は“今度こそやれる!”と思い込んだ─────その瞬間、
「ッ───避けろぉ!!!」
咄嗟に叫ぶも、既に遅かった。二丁のマシンガン*3を装備したサブアームは動き出し、二機のセイバーフィッシュに向かって銃口から凄まじい勢いで弾丸の雨が放たれる。
『な、なんであんなところ武器があr━━グワァ!』
『嘘...どうしt━━キャァ!』
「ボルボ!ユーリア!」
マシンガンの弾をまともに浴びた二機のセイバーフィッシュが次々と爆炎に包まれ、反撃する気もなくそのまま爆散した。やがて宇宙空間へ無数の残骸を撒き散らしていき、俺は唖然とする。
まただ───また仲間が死んでしまい、残されたのは俺を合わせた三人だけになってしまう。何事もなかったかのように佇む青いMSの姿は、今まで以上に恐ろしく見えた。
『───ぁ....ぁ......うわぁぁ!!!』
そんな時、仲間の一人が突然悲鳴を上げながら何処かへ逃げ出した。通信越しに聞こえてくるその声は、どこか怯えているとすぐに分かる。
『死にたくない.....こんな所で死にたくない!』
声の主である一人の若者は、ついこの間まで訓練生でありながら俺たちブルー小隊に配属されたばかりの新人である。そんな彼にとって初戦であるにも関わらず、目の前で仲間が次々と撃墜されていく光景を目の当たりにしてしまう。殺される恐怖に耐えきれず、逃げ出したくなるのも無理はない。
だがそんな彼を逃がすつもりなどなく、再び向きを変えた青いMSは逃げていくセイバーフィッシュを追いかける。
『ヒッ──く、くるな………こっちに来ないでくれ!』
「モーリス!」
もうこれ以上仲間を死なせたくないと、そう決意した俺はすぐさま援護射撃を試みた。しかし奴の動きが速すぎて照準が追い付かず、放った弾丸はことごとく避けてしまう。一向に速度を緩めることなく徐々に迫っていくその先には、敵と交戦中である一隻のサラミス級宇宙巡洋艦の姿が見えた。
『み、味方の艦だ…』
友軍の艦を発見したことで安堵したらしい。“これで助かる!”とそう思い込んだ彼は救援を求めようと通信を開く━━━だが、その一瞬の油断が命取りとなった。
背後に迫っていると気付かず、青いMSが装備している棒状の刃を振り下ろす。セイバーフィッシュのエンジン部分が切り裂かれた直後、損傷した内部から炎が噴き出した。その反動で機体はさらに加速し、制御を失ったままサラミスへ向かって突き進んでいった。
『あ、あれ……なんで?』
「モーリス!これ以上加速し続けると、機体が耐えきれず爆発するぞ!」
『ダ、ダメです!さっきからコントロールが効かなくて━━━』
「なんだと!?まさか、操縦制御まで失ったのか……」
俺は思わず息を呑み込み、急いで状況を確認する。このままでは、サラミスに激突するのは時間の問題だ。
「今すぐ機体を放棄し、急いで脱出を!」
必死に呼びかけるも完全にパニック状態となっていて、声が届いているのかさえ分からない。
「モーリス落ち着け!とにかく脱出装置を作動しろ!」
それでも俺は叫び続けるしかできないが、その間にもセイバーフィッシュの暴走は止まらない。制御を失った機体はただ真っ直ぐ飛び回り、炎を噴き上げながらサラミスへと突き進んでいく。
その光景を目にした瞬間、俺の胸中に
『とまれ……止まってくれよぉ!嫌だ……嫌だ、嫌だ、嫌だ!まだ死にたくないよ!!』
通信越しに、モーリスの悲痛な叫びが響く。
『フランクさん!ユウ隊長!誰か……誰か助けてぇ!!!』
どうすることもできなかった━━目の前で仲間が死にかけているというのに、俺には援護することも助けに向かうこともできない。
『嫌だぁぁぁ!!!お、お母さん助け───』
その言葉を最後にセイバーフィッシュはサラミスの艦体へと激突し、その瞬間に凄まじい爆発が巻き起こった。閃光が宇宙空間を一瞬だけ照らし、機体の破片が四方八方へと飛び散っていく。爆発の衝撃で巻き込まれたサラミスにも被害に遭い、艦体の一部が大きく損傷してしまった。
もはや無惨とも呼べるその光景を目にした俺は、ただ見つめることしかできなかった。ブルー小隊に配属されたばかりのまだ何も知らない新人だった彼を見た俺は、いつか立派な軍人に育ててやろう決めた───しかしそんな彼は目の前で命を落としてしまった。仲間を守ると決めていたはずなのに俺は何一つできず、自分の無力さがどうしようもなく腹立たしい。
『嘘だろ……モーリスまで…』
通信越しにフランクの震える声が聞こえてくるが、返す言葉が見つからない。沈黙の中、爆発の向こうに青いMSの姿が見えた。あれだけの戦闘を繰り広げ仲間を次々と葬り去ったというのに、まるで何事もなかったかのように宇宙空間を漂っている。そんな奴の姿を目にした瞬間、
『おいユウよ……俺たちこれからどうすれば』
「────フランク。この場から離脱して、奴の情報を何としてでも友軍に届けてくれ。」
『はぁ!?仲間が殺されて逃げろっていうのか!』
「できるだけ時間を稼ぐから……それまでになんとか到着してくれ!」
『まさかお前……一人でどうできる敵じゃないz━━おいユウ!考え直せユウ!』
俺はそれ以上答えず機体を一気に加速させ、青いMSへ向けて再び攻撃する。もちろん自分一人で奴を撃墜できるなどとは思っていなし、これまでの戦闘で俺たちの攻撃がほとんど通用しなかったことは嫌というほど理解された。
正面から挑んだところで勝ち目などないが、それでもやるしかない。何よりフランクにはここで見た戦闘の情報を持ち帰ってもらう必要がある。奴の機動力に武装、そして俺たちの攻撃をことごとく回避する異常な戦闘能力。それらを友軍に伝えられれば、今後の戦いで何かの役に立つかもしれない。
だからこそ俺はここに残り、フランクが無事に離脱できるよう奴の注意を引きつける。そんな思いを胸に抱く俺は、ひたすら攻撃を続けた。当然のように奴は軽々と回避しながらバズーカを捨ててマシンガンに持ち構え、銃口から凄まじい勢いで弾丸が飛来し反撃してくる。
「グッ……ぉおおおおっ!!」
必死に操縦桿を操作し、機体を急旋回させる。額に冷や汗が嫌というほど流れ、肺が押し潰されそうな圧迫感に息が詰まってしまいそうになる。少しでも長く奴をここに引き留めるためだけしか頭になかった。
だがその最中、青いMSが放ったマシンガンの弾丸がついに俺の機体を捉えた。機体の各所に弾丸が命中してしまった事で装甲が次々と削られていき、更に被弾の衝撃で片翼までもがへし折れた。なんとか姿勢を立て直そうと必死に操縦し続けるが、損傷した機体は思うように動かず操縦するだけでも精一杯だった。
「振り切れないっ……!」
『ユウ!!』
このままでは撃墜されると思ったその時、一機のセイバーフィッシュを操縦する
「ふ、フランク!?友軍の元へ向かっている筈じゃ!」
『お前一人で戦わせるかよぉ!俺が来たんだからなんとか持ち堪えてくれ!』
「馬鹿野郎なぜ来た!今すぐ引き返せ!」
咄嗟に怒鳴り声を上げた俺は友軍のところへ向かうよう叫んだが、既にミサイルを発射してしまう。
『喰らいやがれぇぇぇ!!』
複数のミサイルが尾を引きながら飛翔するも、マシンガンを構えた奴は迫り来るミサイルに向けて次々と弾丸を撃ち込む。その直後にミサイルが次々と爆破し、凄まじい爆炎が広がる中で青いMSは煙の向こうへと姿を消した。
「警戒しろフランク!奴はまたやってくるぞ───」
危険を伝えようと語っている最中、煙の中から奴が飛び出してきた。爆発によって生じた煙と破片を利用した奴はフランクが乗る機体の背後に回り込み、片足を高く持ち上げている。それはまるで、獲物を踏み潰す直前の捕食者のように…
「よせ……やめろぉぉぉ!!」
『………すまねぇユウ、せめてお前だけでも生きて───』
振り下ろされた蹴りはフランクがいるセイバーフィッシュのコックピット付近を直撃し、次の瞬間に機体が激しく爆発する。爆炎が一瞬にして機体を包み込み、砕け散った装甲や部品が宇宙空間へと飛び散っていった。操縦者を失った機体の残骸は、黒煙を引きながら虚空の彼方へと流れていく。
「フランク────ッ!!」
目の前で仲間を失った俺は喉が張り裂けるほど叫んだ。しかし意識をそっちに向けてしまった俺は迫り来る危険に気づくのが遅れ、奴は既にマシンガン俺の方に向けていた。
気づいた時にはもう遅かった。マシンガンの銃口から放たれた弾丸が俺の機体へと殺到し、避けられなかった。何発もの弾丸が機体に直撃し直後、背後から凄まじい爆発音が響く。その衝撃でコックピットが激しく揺れ、何が起きているのかもう分からない。
「(…………くそ……俺に……俺にもっと力があれば────)」
その瞬間、俺は意識を失った。
◇ ◇ ◇
目が覚めた時、いつの間にか医務室のベッドの上にいた。
どうやら機体の爆発に巻き込まれながらも運よく脱出した俺は、意識を失って宇宙空間を漂っていたところを偶然通りかかった友軍の部隊に救助されたらしい。まさかそんな奇跡があるとは思わず、自分が生きていることさえ信じられなかった。
しばらくぼんやりと天井を見つめていると、面会に訪れた上官が姿を現した。俺が意識を失っている間に何が起きたのか、あの戦いの顛末を説明してくれた。
あの戦闘の最中で地球連邦軍の総司令官であるレビル将軍がジオンの捕虜となった事で、艦隊の指揮権はロドニー・カニンガン准将へと引き継がれた。だがその直後、正体不明のMSと巨大な砲による攻撃を受けた《ネレイド》は撃沈。指揮権を引き継いだばかりのカニンガン准将もあっけなく戦死。
今度こそ指揮官を失った連邦軍は大混乱に陥り、勢いを増すジオン軍の攻撃を食い止める手立てもない連邦軍は苦戦を強いられ続けた。甚大な被害が出る中、ようやくティアンム中将が率いる艦隊が援軍として駆けつけた。しかし戦況は既に取り返しのつかないところまで悪化しており、連邦軍は後退を余儀なくされた。どうにかルナツーへの撤退には成功したものの、残された艦隊の規模はあまりにも少なすぎる。
幸いにも二度目のコロニー落としは阻止できたが、その代償はあまりにも大きかった。投入された宇宙軍の
その事実を聞かされたとき、何も言えなかった。しかし連邦軍はこの敗北をただ受け入れたわけではなく、ジオンに対抗する為に本格的なMS開発計画が動き始めていた。
MSの運用方法を確立するには、実際の戦闘で得られるデータが必要だった。その為には前線でMSを運用しながら戦闘データを収集するMS実験部隊────通称:モルモット部隊の編成が計画されていた。そしてその部隊への転属を打診された俺だが、迷うことなく承諾した。
その時に俺の脳裏に浮かんでいたのはあの青いMS。仲間たちを次々と撃墜し、俺たちの部隊を壊滅させたあの異形な姿は今でも覚えている。
上官にもあのMSについて報告したが、該当する機体の情報は見つからず正体は依然として謎に包まれたまま。それでもあの機体を目撃した友軍の兵士たちは、恐怖に震えながら口々にこう語っていたという。
『ルウムの青い悪夢』
その呼び名を聞いた俺は妙に納得してしまい、あれはまさに悪夢そのものだった。
ほかのMSとは明らかに違う圧倒的な力を持った存在で、初めて俺に本当の恐怖を押し寄せてくる存在でもあった。今でもあの光景を思い出すだけで手が震え、思い出すたびに胸の奥が締めつけられる。それでも俺は、もう二度と目の前で起こる惨劇を見過ごしたくない。何もできなかった己の無力を断ち切るには、力が必要だ。あの青いMSに立ち向かい、いつか必ず打ち倒すための力。だからこそ俺は強くなる。
「サンタフェ所属ブルー小隊、ユウ・カジマ少尉。新設されるMS実験部隊への転属を希望します!」
あの青い悪夢を乗り越える為に────
〈ユウ・カジマ side end〉
読んでいただきありがとうございます。
久々だというのに、今回は幕間のお話でした。
ルウム戦で本来なら残存艦隊は戦線離脱に成功しているロドニー・カニンガンですが、早々にリタイアした事で撤退は遅くなってしまった。その結果原作よりも被害が多く、連邦側の宇宙艦隊は多く沈められたという結果となりました。
ちなみに人気キャラである外伝THEBLUEDESTINYの主人公であるユウ・カジマが登場しましたが、これからは彼の活躍を期待してください………多分←おい
次回も遅くなるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。