落第騎士の英雄譚 意識低い系風味 作:一般落第騎士
《連盟》。正式名称、国際魔導騎士連盟。
《
また、《連盟》の歴史は三大勢力の内で最も古い。元を辿れば西欧諸国の貴族や騎士階級を由来とする彼らは、当然ながら"権謀術数"という物をよく理解している。連盟の重鎮は海千山千の古狸達であり、イギリス、ドイツ、フランス等、西欧の強国たちの意見を取り纏め、巨大な超国家機関である《連盟》を滞りなく運営している。
掛け値なしに、《連盟》とは優秀な組織なのだ。
そんな彼らが、なぜ"対日本"の政治工作については数々の失敗を犯しているのか。
要因は大小二つある。
まず一つ、月影獏牙が100年に1人レベルの傑出した政治家であること。
そして、
「報告! 《
「内部工作員、連絡断絶しました! 定時報告自体は送られてきますが、符牒がありません。敵による偽装だと思われます!」
「魔力計が震度7……超高位伐刀者による異能行使を確認しています! その後の沈黙を鑑みるに、すでに《解放軍》は組織としての
「《同盟》のアメリカがスエズ付近で"国際犯罪の捜査"だとよ……。《解放軍》の残党を、片っ端から"重要参考人"って名目で《同盟》に引き込んでる。ウチも乗り遅れない方が……」
「バカ言ってんじゃねぇ! テロリストどもを内部に引き込んで何の得がある! イタリア支部に通知文送れ、共同でアメリカに抗議声明出すぞ!!」
「……長年、《連盟》と《解放軍》は不倶戴天の敵同士だった。残党の引き抜き合戦で、《同盟》に勝てる訳がない。思考を切り替えろ、海峡封鎖も視野に入れるぞ。《同盟》にこれ以上《解放軍》残党を吸収させるな!!」
《連盟》内部が混乱の極みにあり、リソースが不足している事。
暁学園の暗躍を許し、日本において反連盟の世論を作られた最大の要因がこれであった。
月影獏牙が予知した未来、
バタバタと人が慌ただしく行きかう様子を己の執務室から見下ろしながら、一人の老女が葉巻をくゆらせて舌打ちをする。
「……チッ……ツキカゲめ。《大英雄》といい、あの国は時々ああいうバグを産んでくるから嫌なんだよ。十数年前はただの教師だった男が、いつの間にか老練の政治家になってやがる」
国際魔導騎士連盟フランス支部長官。《
《連盟》の重鎮である彼女は、連盟脱退を掲げて動く日本国について頭を悩ませていた。
現在、この世界は《連盟》、《
そのバランスが崩れた。
内部からの裏切りにより、《解放軍》は壊滅したらしい。すでにドローン調査によって残骸と化した《解放軍》本部の跡地が確認されている。内部工作員からの連絡は途絶しており、誰が裏切ったのか、誰が生き残っているのか等の詳細は掴めないが、既にアメリカやロシアなどの《同盟》諸国に多数の武器や伐刀者が流れ込んでいる。
世界秩序の構造が、大きく変わろうとしている。
今の《連盟》はその再構築へ血眼となっており、対日本への人員は枯渇状態であった。
「……日本の脱退を翻意させる手は幾つもある。こっちの息がかかった財界人だって幾らでもいる。だが、その全てにおいて
「お
皺の寄った眉間を揉みほぐしながら呟く彼女に、金髪の女性が気づかわしげに声をかける。
普段は
「……アイリス……」
彼女を見て、レヴィは脳内で複数の試算を走らせる。
《黒騎士》アイリス・アスカリッド。彼女は世界的犯罪者である《傀儡王》オル・ゴールの実姉でもある。故郷を滅ぼした《傀儡王》を殺す為に、彼女は刃を手に取ったのだ。
《解放軍》十三使徒が一人、傀儡王オル・ゴール。
彼の操る無数の人形のうちの一つが、『暁学園』所属生徒、
女傑である彼女の思考が、高速で回転する。
《解放軍》の壊滅。そして残党の引き抜き合戦。
それが終われば、《連盟》と《同盟》はいまだかつてない緊張状態となる。世界二大勢力となった両者のうち、どちらが
そして。
最悪の、最悪の場合―――想像したくもない程の戦火が起きる。
『第三次世界大戦』という炎が、この星全てを焼き尽くすだろう。
最悪の事態を想像し、レヴィは僅かに身震いした。
「……《連盟》は、"強く"在らねばならない」
呟く。
《連盟》は、かつてなく困難な局面に突入しようとしている。
《連盟》の加盟国は非常に多い。ヨーロッパ諸国や一部の東洋国、その他様々な地域の小国が参画している。アメリカ、中国、ロシアという名だたる超大国が在籍する《同盟》に対し、《連盟》は寄り集まることで対抗しようとしたのだ。
『数の連盟、質の同盟』などと一部の口さがない者は言う。しかし、ある意味でその言葉は当たっているのだ。《同盟》の中でも、特にアメリカの軍事技術は群を抜いている。《連盟》が結束しなければ、個々の国が一つ一つ大国に押しつぶされて、何もかもがお
連盟は、固く
結束が崩れれば、《同盟》に対抗することはできない。
それが分かっているから、《連盟》は日本の脱退を防ぐために様々な手段を講じてきた。
だが、それが叶わないなら。
せめて―――
「(……日本国の民意は、実のところ大いに
月影獏牙は怪物的な政治家だ。国民の性質は血気盛んで、反連盟に世論が大きく傾いている。
なら、もうそれはそれで良い。その前提を元に、レヴィは考えをまとめるだけだ。
「……日本の脱退を、最も有効に利用するなら……」
政治の世界において、勝利とは決して正解を意味しない。
勝つ事、成功する事自体が、次の大いなる
日本は《天譴》甘木悠を呼び込み、【暁計画】において大きな成果をあげた。
しかしそれが《連盟》の怒りを買い、《七星剣武祭》に対する裏工作が行われた。
それと同じだ。
《連盟》による裏工作を
だが。それによって、もはや《連盟》は日本を"味方"とは見なさなくなったのだ。
「……アイリス。貴方に、お願いがあるわ」
この世界において、古今東西、国は"切り札"と呼ぶべき最強の伐刀者を抱えている。
一人で万軍を
アイリス・アスカリッド。《黒騎士》の異名を持つ彼女もまた、レヴィが重用する懐刀である。
レヴィは彼女の実力を高く評価している。伐刀者はスペックが決まっている兵器とは違う。戦況に応じて揺れ動く"勝機"を掴める者が真の強者であり、アイリスはその強者に該当するとレヴィは信じている。
積み重ねた無数の実績。輝かしい勝利の歴史。
故に。彼女は、己の義娘である《黒騎士》アイリス・アスカリッドを強く信頼しており―――
「……貴女に。世界を惑わす、《傀儡王》逮捕の任務を命じます」
―――その信頼こそが、女傑レヴィ・アスカリッドの判断を誤らせる、最後の
◆
「あーまぎっ♡」
「おわ、西京さん」
《七星剣武祭》は準決勝を終え、あとは俺と東堂会長の決勝戦を残すばかりとなった。
月影総理が築き上げた遠大なる【暁計画】。その第一の難所である《七星剣武祭》も、いよいよ大詰め。激戦が予想される明日のため、今日は日課のPokemon Uniteも止め、ぐっすり睡眠をとろうと思っていたのだが。
柱の陰からひょこっと首を傾けて出てきた西京さんによって、ホテルに戻ろうとしていた俺の足が止まる。西京さんの顔はこれ以上ないってくらい笑顔だ。
「ど、どうしたんですか……?」
「えっへへへ……良い事聞いちゃったからさぁ♡ ダメだと思ったんだけど、我慢できなくて……来ちゃった♡ えへ」
「オヘ」
かわいっ。
酒に酔っているような上気した顔で、西京さんがすりすりとこちらに身を寄せてくる。やめなされやめなされ、むごい真似はやめなされ……。
「んー……まずは、これ♡」
酒気と共に、彼女自身の甘い匂いが漂ってくる。あまりの衝撃体験に身を硬直させていると、彼女が着物の裾から分厚い封筒を取り出した。……分厚い封筒?
「財布の中にあんま入ってなかったから、まずはキリよく100万♡ これでお前の10日を買えるって事で良いんだよな? じゃ、まずこれで10日分予約で♡」
「え」
「黒坊に言ってたもんな? 10万で決闘するって♡ そんな都合のいい事さぁ、おねーさんの前で言っちゃダメじゃんね……♡」
「え、え、」
黒坊……って、黒鉄のことか。
いや確かに最後『1回10万で決闘するよ』みたいなこと言ったけど、あれは普通に冗談というか……。普通に考えてそんなクソ高い金、真に受ける人なんて居ないと思ってたって言うか……。
「いやあの、あれは……」
「んーん、ダメ~。ウチはちゃんと聞いちゃったから、もう撤回できませーん♡」
言葉を遮り、西京さんが俺の胸板にペト、と両手を這わせた。
言い訳を口にする俺を逃がさないとばかりに、彼女の柔らかな体重がグッと押し付けられる。
「ウチの月収、300万なんて余裕で超えてるからさぁ? やろうと思えば、お前のこと一生買ってやれちゃうんだけど……♡ んふふ、エロい奴だなぁ甘木ぃ~、大人のおねーさんに貢がれたいのかぁ♡ いいぜ? お望み通り、どろっどろに甘やかしてやるからな……♡」
「ピ」
俺の首元へしなだれかかりながら、熱い吐息と共に西京さんが耳元で囁く。
全身に伝わる柔らかい感触。視界がピンク色に染まるような錯覚と共に、西京さんの熱い息が耳朶を叩き、俺の脳まで染みわたっていく。
「はぁぁ~……♡ あはっ、吐息で体跳ねた♡お前、ずっっとこういうのには弱いままなのかよ♡」
「アッアッアッ」
「……やば。からかうだけのつもりだったけど、マジで喰いたくなってきちゃった。黒坊との闘い見て
「アェイヤソノ」
西京さんの手が艶めかしく蠢き、俺の手をしゅるりと握って引っ張ろうとした刹那。
「―――《クイックドロウ》!!!!!!!!」
「ミ゛ッ」
真横から飛んできた銃弾によって、西京さんはこめかみを撃ち抜かれた。
「殺すぞ!!!!!!!!!!!」
「普通そういうの撃つ前に言わない……? アッ痛い痛い、やめてやめてくーちゃん」
直球の暴言を吐きながら、悪鬼のごとく顔を歪ませるスーツ姿の女性。破軍学園新任教師、《
地に伏せた西京さんへ追加の銃弾をお見舞いしながら、彼女がズカズカと近寄ってくる。
「帰るぞ」
「うえぇ……ひどいぜくーちゃん。もうウチの脳内で勝利の
「帰るぞ」
「はぁ~? やーだね。
「帰るぞ」
「……だ、だいたい、甘木も喜んでたしぃ~? ちゃんと見てたか? ウチの胸元に釘付けになってたんだぞ? 役得って甘木も思ってたって、絶対。そ、そうだ、甘木の気持ちはちゃんと確認したのか? エロ可愛いおねーさんに迫られるチャンスを逃した甘木が可哀想じゃんか。なあ?」
「帰るぞ」
「……ッス……。はい……すみませんでした……」
圧すごっ。
有無を言わせぬ新宮寺先生の迫力に、西京さんがしおしおと
何となく、こう……この二人の間にある真のパワーバランスという物が垣間見える瞬間である。本気でキレたら、新宮寺さんが一番強いんだな……。
「行け」
「はい……西京寧音、ホテルに帰ります……」
フワーッと重力で浮かびながら、西京さんはしょんぼりとした様子で帰宅する。後には、深くため息を吐く新宮寺先生と俺の二人だけが残されたのであった。
気まずい。
西京さんに迫られて正直嬉しかったが、しかしあまりの展開の早さに戸惑っていたのも事実。新宮寺先生には感謝しか無いのだが、それはそれとして俺、この人の職場をチリ一つ残さず消し炭にしてるんだよな。「ありがとうございます」と「誠に申し訳ありませんでした」、果たしてどちらを先に伝えるべきだろうか。
「……甘木」
「は、はい」
機先を制され、ビクッとしながら返答する。
す、すみません……あれも仕事で……責めるなら先に総理を責めて欲しくて……。
「……《七星剣武祭》決勝進出、おめでとう。その……どうなんだ、暁学園での生活は」
「は、い……?」
視線を左右に彷徨わせながら、新宮寺先生がそう声をかけてくる。
なんだ……? 思春期の娘に話しかける父親の真似?
「と、特に何事も無く。順調です……」
「……そうか。向こうでも、友人を作れたんだな」
「ッスー……まあ、ッスネー……」
いいえ、桃井しか友達がいません。
「その、こちらからも質問なんですが……破軍学園の再建は、どんな感じでしょうか……?」
「え? あ、ああ。心配いらない。各所からの支援のお陰で、伐刀者を雇えたからな。破軍学園総出で手伝った事もあって、ちょうど再建し終わった所だ。綺麗になった分、壊してくれて得したとさえ言えるな! は、ははは……!」
「ぐっ……その節は、大変申し訳ありませんでした……」
「あっいや! 違うんだ、皮肉じゃない! その……単に、大丈夫だと言いたかっただけで……」
「……っす……」
「はは、は……」
沈黙。
さ……西京さん!!!!!!!!!!!!!!!!!
俺が悪かったです!!!! 今すぐ帰ってきてください!!!!!!!!!!!!!!!!!
距離を詰めて来てくれる人って有難かったんだなぁとしみじみ思う。西京さんは勿論、桃井とか東堂会長も。彼女たちが積極的に話しかけてくれるから、まだ何とかなっていたのだ。多少は人間レベルが上がってきたと思っていたが、この地獄のような空気を覆すにはまだ力が足りないらしい。一生かかっても無理かも。
一刻も早くこの場を切り上げて帰ろうと考えていると、唐突に新宮寺先生がこう言ってくる。
「その……あれだ。破軍学園では、す……すまなかった」
「え?」
「……つまらなかっただろう。お前に対し、誰も、何も教えてやれなかった。私も含めて、破軍学園の教師全員が、だ。
「……い、いえ……そんな事、全然無いですけど……?」
困惑。深く頭を下げる新宮寺先生に対し、俺はもう罪悪感で胸が一杯になっていた。
破軍学園、良い人が多すぎる。
最近思うのだが、こう……もし破軍学園に居た頃、俺のコミュニケーション能力がもっと優れていたら。実は、色々な事がもっとうまく行ったんじゃなかろうか。俺の主観だと特に何の変哲もない普通の学園だったが、それ止まりだったのは実のところ俺にも大いなる責任があり。何か一つ違えば、破軍学園は素晴らしい学び舎だったのでは無いだろうか。
そう思ってしまうくらいには、破軍学園の人がみんな良い人すぎる。教師が『何も教えてやれなかった』って悔やむってどういう事? 普通逆じゃないか? 生徒が『学校でもっと勉強しとけばなぁ』と後悔するってのはあり得るけど、その逆は普通あり得ないだろ。
「"何も教えてくれなかった"なんて、そんな訳無いじゃないですか。新宮寺先生の授業が無ければ、俺は数列とか二次方程式とかで散々に
「……そういう、表面上の知識ではない。生き方を……"騎士道"を、教えてやれなかった事を悔いているんだ」
「
地面を見つめる先生に向かって、そう言う。
何がどうなってそんな勘違いをしているのか分からないが、先生の誤解はここで解いておいた方が良いだろう。
《
彼女は、かつてKOKリーグの頂点まで上り詰めた超一流の伐刀者だ。
そう。すごく当たり前の話だが、彼女は物凄く
この図抜けた"強さ"というのは、並大抵のレベルではない。破軍学園の他の教師たちより強い。理事長や教頭よりも上。《連盟》日本支部の全員よりも格上だし、本気を出せばきっともっと化ける。恐らく、世界で比肩するのはエーデルワイスさん程度になるだろう。
それほどに強い彼女が、破軍学園の
やろうと思えば、彼女を止められる人間など誰も居ないだろうに。力に身を任せれば、幾らでも楽に生きられるだろうに。彼女は
そんな彼女の姿を、俺はちゃんと見てきたのだ。
誰も敵わないであろう強者が、それでも自ら苦労を背負い込んで、社会に適応している姿を。
何も教わっていないなど、口が裂けても言えるわけがない。
「その、上手く言えませんが……生き方とか騎士道とかそういう物は、言葉だけで学ぶものでは無いと思います。先生が仕事を抱え込んで苦労してる姿とか、空き教室で授業の練習をしてる所とか……そういうの、時々見ましたよ。立派だなぁと思いましたし、凄いなと素直に思いました」
「…………」
「こう……
新宮寺先生の事を、俺は当然ながら尊敬している。
……まあ、尊敬が実を結んだかと言うと……ちょっと俺の人間レベルが低すぎたかもしれない。先生を見て"仕事はちゃんとやろう"というプロ意識は学習できたが、騎士道云々はあんまり分からないままだったしな。ちなみに、今もまだ良く分かってない。
「……そう、か」
「はい。……その……じゃあなんで破軍学園ぶっ壊したのかとか聞かれると、口を
「……ふ。
「すみません……」
「いや、いいさ。それでも、私の心は十分軽くなったからな」
ポンポン、と頭を軽く撫でられる感触。
驚いて顔を上げると、新宮寺先生が優しい顔で俺の顔を覗き込んでいた。
「何かが違えば、いい教師と生徒になれたかもな。いや、今からでも遅くは無いか?」
「はい」
「ふっ……決勝戦、がんばれよ。東堂とお前、二人とも応援しているからな」
最後に柔らかく微笑み、新宮寺先生は身体を離した。
これ……コミュ、成功じゃないか……!? すげぇ……成長してるんだな、俺って……。口が上手くなりつつある。前回新宮寺先生と話した時は、弟子入りとかいう最悪な話を持ち掛けられたから速攻で逃げ出してしまったのだったか? あの時と比べれば雲泥の差だ。
達成感に浸っていると、さっきまで爽やかな顔をしていたはずの新宮寺先生が、非常に悩まし気な表情でこう質問してきた。
「……忘れていた。あと、寧音に関しては……その……実際、どうなんだ……? 親友が男を金で買おうとしている
「えぁ、い、いえいえ。西京さんってほら、美人ですし服装も隙が多いですから。緊張してたので助かりました」
「……お前、そんなぬるい拒絶だといつか捕食され……いや、まあ、……人間には自己破壊の権利、愚行権という物があるからな……蓼食う虫も好き好きと言うし……」
「酷すぎる。せ、先生の友達ですよね? 西京さん、普通に良い方だと思うんですけど……」
「お前……」
新宮寺先生がものすごく哀れな物を見る目をした。食虫植物に囚われる羽虫を見る目だった。
「本気で言っているなら人を見る目が無さすぎる……わ、私はどうすべきなんだ……? 親友の恋路を応援して、純粋な生徒を地獄に突き落とすような真似をしていいのか……? いや、このまま放っておけば、割れ鍋に綴じ蓋となる可能性もあるのか……? 私の一存で人の恋路へ干渉するのは傲慢か? いや、だが……流石に崖へ進む者へ声をかけるのは良心の範疇というか……良心と過干渉の境目はどこにあるんだ……?」
「せ、先生?」
「…………帰る。甘木も、明日は決勝戦だろう。早めに身体を休めておけ」
ふらふらと頭を揺らしながら、先生が繁華街の方へと歩いていく。
帰ると言いつつ、その視線は暖色の光を放つ『生ビール 199円』の看板へと吸い込まれている。めちゃくちゃ呑む気だ、この人。飲み屋街へと向かう彼女の背中へ、最後に声をかける。
「新宮寺先生! ありがとうございましたー!」
「……こちらこそ、だ。教師というのは、いい仕事だな」
ぼそりと呟いた言葉が、風に乗って耳に届く。
振り向かずに手をひらひらと振りながら、先生は繁華街へと消えていった。
◆
《七星剣武祭》準決勝の夜が更けていく。
選手たちも、関係者も、観客も。抱く気持ちは全て同じだ。
――――どちらが強いのか、知りたい。
《雷切》東堂刀華。雷を司る自然干渉系能力者。
《天譴》甘木悠。因果干渉系を拒絶する超天才。
《天譴》だ、いや東堂だ、自然干渉系は応用幅がとんでもなく広い、甘木は結局無傷のままだ、それを言うなら東堂だって傷らしい傷は負っていない、過去のデータによれば勝率は。剣術が、異能が、伐刀者ランクが、年齢が。
喧々諤々の議論が、国中で行われている。
どちらが強いのか。どちらが勝つのか。その熱狂は、テレビ番組やインターネットの海を埋め尽くし、夜の暗闇すら焼き尽くさんばかりに燃え上がっている。
しかし。
彼らがどれほど言葉を尽くし、過去のデータを引っ張り出し、緻密な理屈を並べ立てようとも。全ては予測に過ぎない。答えはまだ、世界の何処にも存在しないのだから。
明日にならなければ。
試合の時刻を迎え、決着がつくまでは。出場する二人にさえ、勝敗を読むことは出来ないのだ。
星々が瞬く夜空の下。数万の歓声を飲み込んだ湾岸ドームのリングだけが、水を打ったような静けさの中で、二人の怪物がやって来るのをじっと待ちわびている。
「……会長。まだ寝ないんですか?」
「寝ません。―――黒鉄さん。貴方も、私に付き合ってください」
『4分の1の水、クウォーター。……はい、ちょっとでも面白かったら今日はスマホを閉じるっす!
明日ちゃんとラインするんで、今日は早めに寝るっすよ~!』
「『分かってるよ。おやすみ』……と。ふぅ……ちゃんと8時間は寝ないとなぁ。試合には万全の体調で行かないと」
一途な努力と、規格外の才能。
研ぎ澄まされた経験と、世界を裁く超常。
道を切り裂く雷光と、天から降り注ぐ神の怒り。
相反する二つの強者が、明日、真正面から激突する。
第六十二回《七星剣武祭》、決勝戦。
日本最強の学生騎士を決める、最後の戦いの夜明けが―――すぐそこまで迫っていた。
GWなのに文字数が少なく申し訳ありません。
後書きにアンケートを設置しております。ぜひご回答ください。
・《雷切》東堂刀華 (ロウヒロイン)
真面目委員長系ヒロイン。ヒロインの中で最も人間的に優れている。
獲得称号:『《侍局》の再興者』、『天雷』、etc...
・《夜叉姫》西京寧音 (カオスヒロイン)
合法ロリ和装お姉さん系ヒロイン。ヒロインの中で最も包容力がある。
獲得称号:『リーグ蹂躙』『パワーカップルってそういう意味じゃねえから』『世界最強最高お前らがいるとリーグ壊れるからさっさと産休入ってください永世王者』、etc..
・《蟲使い》桃井新香 (ニュートラルヒロイン)
ダウナーギャル系ヒロイン。ヒロインの中で最も屈折している。
獲得称号:『ツキカゲ・マジックの立役者』『和製007』、etc...
・《比翼》エーデルワイス (隠しヒロイン)
クール天然不思議系ヒロイン。 ヒロインの中で最も強い。
言うほど隠れてたか? >隠しヒロイン
獲得称号:『祝・東京都洋菓子店"プチ・フルール"開店』、『5年連続食べログ4.5以上』、
etc...
※アンケートにルート分岐・ルート決定などの意図は欠片もありません。単なる興味本位のため、お気軽にご投票ください。
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西京寧音
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エーデルワイス