予選大会が全て終了し、本戦開始を告げる電光掲示板が会場に冷たく光ります。
満身創痍でドスを退けた連でしたが、その代償は小さくありませんでした。経絡の痛みは増し、チャクラは底をつきかけています。
連「本戦開始まで……あと二時間。それまでに、少しでも回復させないと……」
連は、会場の隅にある静かな控室へとなだれ込みました。壁に背を預け、ずるずると床に座り込みます。
モモカ「連、ここを使って。私が入り口で見張ってるから」
モモカが手際よく自分の上着を丸めて枕代わりにし、連を横にさせました。
彼女の肩では、モモカの契約獣である**九重**が、主人の意思を汲み取るように「コン」と短く鳴き、その三巴の瞳を周囲に向けます。九重はモモカの足元に座り込み、幻術の気配を薄く広げて、連の存在を外部の喧騒から隠す「隠れ蓑」の術を施しました。
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連「……すまない、モモカ。一時間半経ったら、叩き起こしてくれ」
連の意識は、言葉を終える前に深い闇へと沈んでいきました。
その眠りは決して安らかなものではありません。精神世界では、バアルが荒れ狂うチャクラを無理やり器(連)に馴染ませようとしており、連の眉間には苦悶の皺が寄っています。
モモカ「……九重、大丈夫そう?」
九重「(……クゥン)」
九重はモモカに寄り添い、鼻先で連の頬を優しく撫でました。モモカは九重の頭を撫でながら、静かに写輪眼を起動させます。
モモカ「……誰も、ここから先は通さない。連を邪魔する奴は、私が相手よ」
控室の入り口には、連を慕う**巨虎のティアラ**が、巨体を丸めて扉を塞ぐように横たわっています。さらに、天井の梁には**大鷹のアロー**が静止し、微かな物音すら聞き逃さない鋭い視線を廊下へと向けていました。
モモカ(と九重)、そして連が命を懸けて信頼し合う二体の猛獣。
最強の布陣に守られながら、連の細胞は驚異的な速度でチャクラを再構築していきます。
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モモカ「……時間よ、連。起きて」
モモカの優しい声と、頬を舐めるティアラのざらついた舌の感触で、連は目を開けました。
わずか二時間の仮眠。しかし、九重の幻術による精神安定と、猛獣たちの守護のおかげで、連の瞳には確かな鋭さが戻っていました。
連「……ハァッ。……チャクラは三割。呪印の痛みは……まだあるが、動ける」
連は立ち上がり、ゆっくりと拳を握り締めました。
精神世界のバアルが、低く笑いながら二本の尾を揺らすのが分かります。
連「行ってくるよ、モモカ。……九重、ティアラ、アロー。お前たちの力、次で全部使わせてもらうぞ」
ティアラ「(ガルルゥッ!)」
アロー「(キィィィッ!)」
猛獣たちの咆哮が控室に響きます。
連は首筋の封印を指でなぞり、決戦の舞台——我愛羅が待つ中央演習場へと、一歩を踏み出しました。
不完全な「二本の尾」を解き放つ、その時が目前に迫っていました。
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中忍試験本戦、第一試合。
電光掲示板に表示された名前は——**『暁連 vs 我愛羅(砂隠れ)』**。
会場は地鳴りのような歓声に包まれています。
互いに演習場の中央へ歩みを進める連と我愛羅。その間には、すでに殺意と殺意がぶつかり合う、目に見えない火花が散っていました。
我愛羅「……フフ。やはりか。お前の血の匂いは、私をいつも高ぶらせる」
我愛羅が冷酷な笑みを浮かべ、背中の瓢箪からじわりと砂を漏らし始めます。
連は、呪印の疼きとチャクラ残量の少なさを感じながらも、静かに目を閉じました。
連(……モモカ、ティアラ、アロー、九重……。最初から全開で行く。後は任せた)
観客席で見守るモモカが、連の覚悟を写輪眼で読み取り、小さく頷きました。
「……始め!」
ハヤテの号令が響き渡ると同時に、我愛羅が両手を広げ、周囲の砂を一気に操り始めました。
我愛羅「——**砂漠送葬(さばくそうそう)!!**」
砂が津波のように連へと押し寄せ、演習場全体を飲み込もうとします。それは単なる砂嵐ではなく、殺意とチャクラで練り上げられた、我愛羅の絶対的な「防御」であり「攻撃」でした。
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### 第82章:雷龍、顕現
連「……来るぞ、バアル」
連の全身から、紫の電位が爆発的に噴き上がりました。
チャクラ残量は三割。だが、この状況で出し惜しみする理由など、どこにもありません。
連「**紫電流・弐ノ型——『雷龍解放・弐ノ尾(らいりゅうかいほう・にび)』!!**」
ドォォォォン!!
連の背後から、実体化したかのような巨大な紫電の尾が二本、天を衝くように噴き出しました。それはただのチャクラの放出ではなく、バアルの肉体の一部が、連という器を媒介にして具現化したかのような威容を誇ります。
雷の尾は荒れ狂う砂の津波を瞬時に蒸発させ、演習場全体に雷鳴が轟きました。
その強烈な殺気は、観客席の忍たちですら息を呑むほどです。
カカシ「な、なんだあのチャクラは……!?」
カカシが、その写輪眼で連の背後の紫電の尾を凝視します。
出雲「……連、あれを使う気か!」
出雲が酒瓶を落としそうになりながら、身を乗り出しました。
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### 第83章:砂と雷の死闘
我愛羅「……面白い。その力、どこまで私を殺せるか」
我愛羅の瞳が、血のように赤く輝きました。
バアル「(『ククク……小僧よ。たった二本だが、この一撃で奴の砂の盾をぶち破れ!』)」
バアルの声に呼応し、連は雷の尾を鞭のようにしならせ、一直線に我愛羅へと突進しました。
連「**紫電流・奥義——『雷光螺旋突(らいこうらせんとつ)』!!**」
紫電を纏った連の拳が、我愛羅の目の前で渦を巻き、砂の絶対防御に叩きつけられます。
ズガァァァァァン!!
演習場の地面が陥没し、砂と雷の衝撃波が会場を震わせました。
連の背後で、ティアラが地を這うように低く唸り、アローが上空で雄叫びを上げます。そして、モモカの肩では九重が、連の激しいチャクラ放出に耐えながら、いつでも幻術を放つ準備をしていました。
全てを懸けた、砂と雷の激突。
中忍試験本戦の幕開けは、まさに嵐のような地獄絵図と化していました。
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