NARUTO -紫電の人柱力   作:ぐちロイド

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第二部 暁編
第27話 絶望の帰還 禁忌の契約、永遠の眼


 

 

モモカ「連……くん……。いいの、泣かないで……。私の、この眼を……あなたに……。そうすれば、ずっと一緒に……」

 

モモカの手が力なく連の頬から滑り落ち、その瞳から光が消えました。

連の慟哭が夜の森を切り裂きます。しかし、まだ終わらせるわけにはいかない。隣では、腹部を貫かれた出雲が微かに喘いでいました。

 

バアル「(『……連よ、正気を保て。まだ救える命がある! 妾の力を全てくれてやる!』)」

 

バアルの紫電が、連の悲しみと共鳴して青白い閃光から、どす黒い漆黒の雷へと変質しました。連はモモカの遺体と出雲を抱き抱えると、無意識に空間を固定する「左眼・比良坂」を全開にします。

 

連「おおおおおお!!」

 

空間が歪み、連の体は雷光となって消失しました。二代目の「飛雷神」すら凌駕する、バアルのチャクラによる超空間転移。次の瞬間、連は木ノ葉隠れの里、病院の屋上に降り立っていました。

 

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綱手による懸命な処置により、出雲は一命を取り留めました。しかし、彼女は深い昏睡状態に陥り、いつ目覚めるか分からない「生ける屍」のような姿で横たわっています。

 

連は、誰もいなくなった深夜の病室で、冷たくなったモモカの遺体の傍らに座り込んでいました。

瞳には、かつての輝きはなく、ただ絶望と、己への底知れぬ憤怒が渦巻いています。

 

連(……俺が殺した。……俺の不甲斐なさが、全てを壊したんだ)

 

その時、脳裏に一人の男の声が響きました。

 

大蛇丸『……その眼の真実を知りたくなった時は、いつでも私の元に来なさい……』

 

大蛇丸。里を裏切り、恩師を殺した宿敵。

しかし、今の連にとって、モモカを「永遠」にするための手段を持つのは、あの蛇のような男しかいませんでした。

 

連「……行くぞ、モモカ。……お前を、独りにはさせない」

 

連は、モモカの遺体から慈しむようにその両眼を摘出し、保存液の入った小瓶へと収めました。その背中は、かつての少年忍者のものではなく、復讐と執念に憑りつかれた「修羅」のそれでした。

 

---

 

 

音隠れのアジト。暗く湿った石造りの部屋で、大蛇丸は待ちわびた客人を迎えました。

 

大蛇丸「クフフ……思ったよりも早かったわね、連。……その眼、素晴らしいわ。絶望の味がする」

 

連「……黙れ。約束通り来た。……この眼を、俺に移植しろ。……モモカの眼を、俺の眼に」

 

連は机の上に、モモカの両眼が入った小瓶を置きました。

大蛇丸は愛おしそうにその瓶を眺め、舌なめずりをしました。

 

「『永遠の万華鏡写輪眼』……。うちはの一族ですら到達し得なかった至高の領域。……いいわ。君が私のための『最強の器』になるというなら、喜んで執刀してあげましょう」

 

手術台に拘束された連の視界が、大蛇丸の怪しい術によって暗転していきます。

麻酔の朦朧とする意識の中で、連は感じていました。自分の眼窩に、モモカの温かいチャクラが、彼女の記憶が、そして彼女の「呪い」が、一筋の熱となって流れ込んでくるのを。

 

数日後。

包帯を解いた連がゆっくりと目を開けました。

 

そこに宿っていたのは、連の「三つ巴」と、モモカの「八重桜」が複雑に重なり合い、完成された究極の模様。

 

**『永遠の万華鏡写輪眼』。**

 

連「……フ、フフ、フフフ、フハハハハ!視える。見えるぞ!……モモカ、お前の見ていた世界が!……」

 

連は虚空を掴むように手を伸ばしました。

光を失うことのない永遠の視界。しかし、その代償として連の心は、もはや二度と木ノ葉の陽光の下へ戻ることはできない、深い闇に染まりきっていました。

 

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大蛇丸のアジトを去ってから一年。

連は「暁」でも「木ノ葉」でもない、ただ死を撒き散らす孤独な亡霊として、各地の犯罪者や抜け忍を狩り続けていました。その両目には、失われることのない紅い双眸——**永遠の万華鏡写輪眼**が冷たく宿っています。

 

ある日、連は吸い寄せられるように、かつて捨てたはずの里、木ノ葉へと足を踏み入れました。目的はただ一つ、未だ昏睡から覚めぬ師・出雲の安否を確認すること。

 

しかし、里の門をくぐったところで、聞き慣れた、しかしどこか成長した太い声が響きました。

 

ナルト「……そのチャクラ、連か!? 連なんだな!」

 

そこには、自来也との旅を終えて帰還したばかりの**ナルト**が立っていました。ナルトの瞳には、かつての親友を見つけた喜びと、同時に信じられないほどの「闇」を纏った連への戸惑いが混在していました。

 

---

 

 

 

連「……ナルトか。騒がしいな、相変わらず」

 

連が足を止め、ゆっくりと振り返りました。

その瞳を見た瞬間、ナルトは息を呑み、一歩後ずさりました。三巴と八重桜が複雑に重なり合う、呪われた深紅の紋様。

 

ナルト「連、お前……その目はどうしたんだよ!? それに、その体から漂う血の匂いはなんだ……! サクラちゃんも、カカシ先生も、みんなお前を心配して……!」

 

連「心配?」

 

連は、感情の欠落した声で短く吐き捨てました。

 

連「ナルト。お前は修行の旅で、何を学んできた? 友情か? それとも里を守るための力か? ……そんな温いもの、俺にはもう必要ない」

 

ナルト「何言ってんだよ! お前と一緒に戦った、あの時を忘れたのかよ! モモカちゃんだって、こんなお前を見たら……!」

 

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「モモカ」という名が出た瞬間、連の周囲の空間がミシミシと軋み、漆黒の雷が地を這いました。

 

連「……モモカは俺の眼の中にいる。……俺が殺し、俺が飲み込んだ。……今の俺は、彼女の『死』そのものだ」

 

ナルトは震える拳を握りしめ、叫びました。

 

ナルト「お前……変わっちまったよ! 昔の、少し不器用だけど優しかった連はどこに行っちまったんだよ! 今のお前は、まるで……化け物じゃねーか!」

 

連は自嘲気味に口角をわずかに上げました。その瞳の奥で、モモカの遺志とバアルの破壊衝動が静かに共鳴します。

 

連「……それがなんだ?」

 

冷徹な一言が、ナルトの胸を貫きました。

 

連「化け物……。ああ、そうかもしれないな。だがナルト、光の中にいるお前には一生理解できないだろう。愛する者を自分の手で引き裂き、その返り血で世界を視る感覚を」

 

連はナルトの横を通り過ぎ、病院の方へと歩みを進めました。

 

連「俺に構うな。……次、俺の邪魔をするなら、たとえお前でも『断罪』する」

 

背後に立ち尽くすナルトの叫びも、里の活気も、今の連には届きません。

永遠の眼に映るのは、昏睡する師の姿と、永遠に繰り返される紅い夜の記憶だけ。

かつての親友は、もはや交わることのない別々の修羅の道を歩み始めていました。

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病院の廊下に、異質な臭気が漂いました。

消毒液の匂いをかき消す、鉄錆のような血の腐臭と、長期間手入れされることのなかった獣のような体臭。

 

連は、一年前から一度も着替えていない、乾いた血でバリバリに固まった忍装束を纏い、病室の扉を開けました。髪はフケと泥で束になり、肌は不衛生な環境での逃亡生活を物語るように荒れ果てています。しかし、その汚れきった姿とは対照的に、両目の**「永遠の万華鏡写輪眼」**だけが、宝石のように不気味な輝きを放っていました。

 

連「……先生」

 

ベッドに横たわる出雲の傍らに歩み寄ったその時、天井の四隅から音もなく暗部が舞い降りました。

 

暗部「そこまでだ、暁連。……貴様は現在、里への無断立ち入り、および国外での不審な殺害行為の容疑で拘束対象となっている」

 

四人の暗部が抜刀し、連を包囲します。かつての英雄候補は、今や里にとって「排除すべき狂犬」に成り下がっていました。

 

 

 

連「……退け。俺はただ、先生に会いに来ただけだ」

 

連の体から、どす黒い漆黒の雷が漏れ出します。殺気だけで部屋の酸素が薄くなるような重圧。暗部たちが気圧され、引き金を引こうとしたその瞬間でした。

 

出雲「……ぅ……ん……っ……」

 

一年もの間、死の淵を彷徨っていた出雲の指先が動き、ゆっくりと、その瞼が開かれました。

 

暗部「い、出雲さん!?」

 

暗部の一人が声を上げます。奇跡的な覚醒。しかし、出雲が最初に視界に捉えたのは、かつての愛弟子の姿ではありませんでした。

 

そこに立っていたのは、血と泥にまみれ、異臭を放ち、怨念の塊のような眼光を放つ、正体不明の「怪物」でした。

 

出雲「……あ……あぁ……」

 

出雲の瞳に、歓喜ではなく、底知れぬ恐怖と絶望が広がりました。

 

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連「先生……俺だ、連だ。……目覚めたんだな」

 

連が汚れた手を差し伸べようとします。しかし、出雲はその手を、まるで毒虫を見るかのような目で見つめ、ガタガタと震えながらベッドの隅へと後ずさりました。

 

出雲「……来ないで。……あんた、誰なの……? 私の教えた連は……そんな、そんな目をして……人を殺して笑うような、汚い子じゃなかったわ……!」

 

連「…………」

 

出雲「……モモカちゃんは……? モモカちゃんはどこ!? どうして、あんたがその眼を……! 嫌……嫌ぁぁぁ!!」

 

出雲の悲鳴が病室に響き渡りました。彼女にとって、連の変わり果てた姿と、その瞳に宿る「モモカの成れの果て」は、死よりも残酷な現実でした。

 

連の差し出した手が、空中で止まりました。

自分の存在そのものが出雲を傷つけ、絶望させている。その事実が、永遠の眼を持つ彼に、かつてない鮮明さで突きつけられました。

 

連「……そうか。先生も、俺を拒むんだな」

 

連は静かに手を下ろしました。

汚れきった頬を、一筋の涙が伝い、血の汚れを洗うように落ちていきます。

 

連「……なら、もういい。俺は俺の地獄へ戻る」

 

連の姿が漆黒の雷と共に掻き消え、病室には出雲の嗚咽と、鼻を突く血の匂いだけが残されました。

 

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