木ノ葉隠れの里を囲む巨大な門。かつては帰郷の喜びを分かち合ったその場所も、今の連にとっては、ただの忌々しい「檻」の境界線に過ぎませんでした。
一年前から一度も洗うことのない、血と泥にまみれた忍装束を風にたなびかせ、異臭を放ちながら歩く連の姿は、まるで黄泉の国から迷い込んだ亡霊のようでした。
連(……先生も、俺を拒絶した。ならば、この「眼」の力を真に振るえる場所は、もはや闇の中にしかない)
大蛇丸という蛇の甘言さえも、今の連には生ぬるい。彼はより深い、世界を塗りつぶすほどの絶望を抱えた組織——「暁」の噂を思い出していました。彼らならば、この呪われた永遠の万華鏡を受け入れ、使いこなす術を与えてくれるのではないか。
しかし、里の境界線を越えようとしたその瞬間、冷たく、そして熱い殺気が、正面の森から溢れ出しました。
カカシ「……そこまでだ、連」
木の上から飛び降り、静かに着地したのは、かつての師・はたけカカシ。その隣には、拳を固く握りしめ、目に涙を浮かべたナルトが立っていました。
連「どけ、カカシ。今の俺に、教育的指導は通用しない」
連の言葉に、カカシは重く息を吐き、額当てを跳ね上げました。
カカシ「教育じゃない。これは、里を、そして君自身を守るための拘束だ。その姿……そしてその眼。君が何を犯し、何を手に入れたのかは察しがつく。だが、それを持って『暁』へ行くというのなら、全力で止めさせてもらうよ」
ナルト「連! 目を覚ませってばよ!」
ナルトが叫びました。
ナルト「お前が苦しんでるのはわかってる! 先生のことだって、モモカちゃんのことだって……でも、暗闇に逃げたって何も解決しねーんだよ!」
連「……解決? 解決など求めていない」
連の両目が、怪しく紅い光を放ちました。三つ巴と八重桜が交差する、永遠の万華鏡写輪眼。
「俺はただ、この『痛み』を世界に刻みつけたいだけだ」
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連「……強行突破する。」
連の体から、どす黒い漆黒の雷が爆発的に噴き出しました。バアルのチャクラが連の負の感情と共鳴し、もはや「紫電」ではなく「黒電」へと変質しています。
カカシ「いくぞ、ナルト!」
カカシの合図とともに、二人が左右から連に肉薄しました。
カカシ「**水遁・水陣壁!**」
カカシが瞬時に結印し、連の周囲を巨大な水の壁で囲み、逃げ場を奪います。そこへナルトが上空から飛び込みました。
ナルト「**大玉螺旋丸!!**」
連「無駄だ。比良坂(ひらさか)」
連の左眼が微かに回転しました。
空間が紙を折るように捻じれ、ナルトの螺旋丸が直撃する寸前、その衝撃は連の背後の空間へと転送され、虚しく空を切りました。
カカシ「空間転移だと……!?」
カカシが驚愕した瞬間、連の右眼が火を吹きます。
連「**【紅蓮雷鳴(ぐれんらいめい)】!!**」
連の視界の焦点に、深紅の雷光が収束しました。カカシは瞬時に身を翻しましたが、その速度は音速を超えています。カカシのベストの一部が焦げ落ち、背後の大樹が跡形もなく融解しました。
ナルト「……っ、カカシ先生! 避けて!」
ナルトが再び多重影分身で連に群がりますが、連の動きは写輪眼の域を超えていました。永遠の眼は、ナルトたちの筋肉の動き、呼吸、チャクラの揺らぎを、数秒先の「確定した未来」として映し出します。
連「遅い。全て視えている」
連は最短の動きでナルトたちの本体を見抜き、黒い雷を纏った拳で次々と分身を霧散させていきます。その一撃一撃に、バアルの咆哮が混ざり、周囲の空気を振動させました。
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ナルト「連……! だったら、俺だって本気で行くぞ!!」
ナルトの体から、禍々しい赤いチャクラが溢れ出しました。尾獣の衣——二本の尾が揺らめき、ナルトは獣のような四足歩行の姿勢で連に突っ込みます。
カカシ「……ナルト、危ない!」
カカシの警告も間に合いません。
連は深く溜息をつきました。その瞳の紋様が激しく回転し、圧倒的なチャクラの奔流が、一年前から洗われていない汚れた体を包み込みました。
連「**須佐能乎(スサノオ)。**」
ドォォォォォン!!
森全体を揺るがす衝撃波とともに、紅緋色の巨大な骸骨の腕が顕現しました。
ナルトの紅い一撃は、スサノオの骨格に触れることすらできず、巨大な掌によって地面に叩き伏せられました。
ナルト「な……んだ、これ……」
地面にめり込んだナルトが、愕然として見上げます。
そこには、第一形態を超え、女性的な甲冑を纏い始めたスサノオの第二形態が、優雅に、かつ冷酷に鎮座していました。その左手には、空間を歪ませる**「比良坂の大弓」**が握られています。
連「カカシ、ナルト。……あんたたちは、今の俺には勝てない。この眼は、モモカの命そのものだ。里という安寧に守られた力では、この重みには耐えられない」
連の声は、スサノオの鳴動と重なり、地響きのように響きました。
カカシ「……連、君は……そこまで遠くへ行ってしまったのか」
カカシは震える手で雷切を練ります。しかし、その瞳には愛弟子への情けが混じっていました。
連「情けをかけるな。……今の俺には、それは毒でしかない」
連がスサノオの弓を引き絞りました。矢としてつがえられたのは、右眼の熱量を極限まで圧縮した「紅蓮の雷槍」。
連「**『熾盛・神鳴矢(しじょう・かみなりのや)』**」
放たれた紅い閃光が、空間を無視してカカシの目の前で爆発しました。カカシは写輪眼で辛うじて軌道を読み、ナルトを抱えて退避しましたが、爆風だけで二人は遠くへと吹き飛ばされました。
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もうもうと立ち込める土煙の中、連はスサノオを解きました。
再び訪れる静寂。吹き飛ばされたカカシとナルトは、すぐには動けそうにありません。
連は、自分の汚れた手のひらを見つめました。
かつては仲間と握り合ったその手。今は、人殺しの腐臭と、呪われた力の感触しか残っていません。
連(……これでいい)
連は振り返ることなく、森の深淵へと足を踏み出しました。
向かう先は、闇の底。そこには、同じように世界に絶望し、神になろうとする者たちが待っています。
連「モモカ……行こう。……次は、世界を焼き尽くす番だ」
永遠の万華鏡に映る世界は、どこまでも紅く、そして冷徹でした。
木ノ葉の里の門が遠ざかるにつれ、連の心から、かつての「暁連」という少年の最後の一片が剥がれ落ち、風に舞って消えていきました。
その日、木ノ葉隠れの里は、最高の天才と、最愛の仲間を同時に失いました。
そして数日後、国境付近の闇の中で、紅い雲が描かれた黒い装束を纏った男たちが、一人の「血塗れの少年」と接触することになります。
物語は、里の英雄譚から、世界を震撼させる「暁」の厄災へと、その姿を変えていきました。
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