バアルを宿してから1年、6歳になった連が忍者アカデミーに入学する日。
出雲に「適当に友達でも作ってきなさいよ、イケメンなら紹介してね」と酔い覚ましに送り出された連は、他の新入生とは明らかに異なる「静謐な威圧感」を纏って教室の扉を開けた。
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教室は、入学初日の浮足立った空気で満ちていました。
大声で笑う金髪の少年、ナルト。それを見咎めて小言を言う真面目そうな少女、サクラ。そして、自分の髪型を気にしながら周囲を観察するイノ。
そこへ、白髪混じりの髪を無造作に流し、紺色の瞳に底知れぬ冷たさを湛えた連が入ってきた瞬間、教室の温度が数度下がったかのような静寂が訪れました。
バアル(『ふん……。群れる猿どもめ、反吐が出るわ。連、さっさと一番後ろの席へ行くが良い。妾の眠りを妨げるな』)
脳内でバアルが不機嫌そうに毒づきます。
ナルト「おい、お前! 見ねー顔だな。俺はうずまきナルト! 未来の火影だ、ってばよ!」
そんな静寂を、ナルトがいつもの大声でぶち破りました。連の目の前まで歩み寄り、天真爛漫な笑顔を向けます。
連は足を止め、ナルトを無機質な瞳で見下ろしました。
連「……暁連。火影に興味はない」
ナルト「な、なんだとー! つれない奴だな……」
サクラ「ちょっとナルト、いきなり馴れ馴れしいわよ」
横からサクラが呆れたように割って入ります。彼女は連の腰に差された、訓練用とは思えないほど手入れの行き届いた刀に目を留め、鋭い視線を向けました。
サクラ「あんた、その目……ただの新入生じゃないわね。どこの一族?」
連「……名乗るほどの一族ではない」
連はサラダの追及をさらりとかわし、窓際の席へと歩き出します。その背中を、イノが頬を染めて見つめていました。
イノ「ちょっと、今の格好良くない? サスケくんとはまた違う、なんていうか……ミステリアスな感じ!」
連はそれらの声をすべて、出雲の家の情事の騒音と同じように「背景音」として処理し、席に座りました。
しかし、その瞬間。
連の腹部の封印式が、ナルトの腹部に眠る九喇嘛(クラマ)のチャクラに反応し、微かに熱を持ちました。
バアル(『……ほう。あの方のチャクラか。九尾の狐め、随分と騒がしい器を選んだものよ。だが連よ、あやつだけは警戒せよ。あやつの中に眠る力は、妾と同じく……いや、それ以上の呪いよ』)
バアルの警告を受けながら、連は窓の外、遠くに見える「火影岩」を見つめました。
出雲に仕込まれた「紫電流」と、腹の中の「バアル」。
木ノ葉の平和な教室の中で、連一人だけが、すでに戦場と同じ冷たい風を纏っていました。
連「……面倒なことになりそうだ」
連の独り言は、ナルトの賑やかな笑い声にかき消されましたが、その瞳には一瞬だけ、鋭い紫の電光が走りました。
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アカデミーの演習場。入学から数日、初めての対人組手の授業が行われていました。
教師のイルカが名指ししたのは、クラスの注目株であるサクラと、謎多き転校生、連でした。
イルカ「はじめ!」
イルカの合図とともに、サクラが鋭く踏み込みます。
サクラ「しゃーんなろー!」
その拳には、幼いながらも類まれなチャクラコントロールの片鱗が見え、ナルトが「いけー!サクラちゃん!」と身を乗り出して叫びます。
しかし、連は動きません。
サクラの拳が鼻先に迫ったその瞬間、連の体が**「紫色の残像」**を残してブレました。
サクラ「え……?」
サクラの拳は空を切り、次の瞬間、彼女の首筋には連の指先が、刀を突き立てるかのような鋭さで添えられていました。
連「……終わりだ」
連の移動に伴い、周囲の砂埃が静電気でパチパチと舞い上がります。それは「瞬身の術」というより、雷そのものが移動したかのような速さでした。
ナルト「す、すっげぇ……。あいつ、今何したんだってばよ!?」
ナルトが驚愕で身を乗り出し、影分身の練習でボロボロになった服を揺らします。
サクラ「……信じられない。私の動きが完全に見切られてた……?」
サクラはその場に立ち尽くし、連の瞳の奥に宿る「冷徹なプロの輝き」に戦慄しました。
一方、その様子を離れた場所で見ていたシカマルは、面倒くさそうに頭を掻きながら呟きました。
シカマル「ありゃ、ただのアカデミー生じゃねーな……。チャクラの『質』が、俺たちの知ってるそれとは別物だ。めんどくせー奴が来たもんだぜ」
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驚嘆の視線を背に、連はさっさとアカデミーを後にしました。
バアル(『ククク……。あの程度の稚児相手に本気を出すとは。連、お主も焼きが回ったか?』)
連「……バアル、黙れ。出雲先生の課題よりは簡単だっただけだ」
静まり返った隠れ家。
扉を開けた瞬間、連の鼻を突いたのは、濃厚な酒の香りと、少し湿り気を帯びた「女」の匂い、そして男の低い吐息でした。
出雲「あ、連? お帰り……。あはっ、ちょっと待って、今いいトコなのよ」
居間の畳の上では、出雲が昨夜とは別の、屈強な雲隠れの抜け忍(らしき男)と絡み合っていました。出雲の自慢のポニーテールは解け、汗ばんだ背中が月光に照らされています。彼女の大きな胸を男が荒々しく掴んでいますが、出雲自身は余裕たっぷりに、男の首に脚を絡めていました。
連「先生、今日の組手の報告ですが……」
出雲「んっ……あぁ、報告は……明日でいいわよ。あ、その代わり、台所にある『私の脱ぎ捨てた下着』、洗濯しといてくれない? 飲みすぎて吐いちゃったやつもあるから、気をつけてね」
出雲は男の耳を甘噛みしながら、連の方を向きもせずに言い放ちました。
連は無言のまま、散乱した酒瓶と、床に放り出された出雲の紫の着物を拾い上げました。
連「……明日はSランク任務だと聞いていましたが」
出雲「大丈夫よ、この人を『使い潰した』後に、一眠りすれば……。あ、おにぎり、今日はツナマヨにしといたから」
出雲が艶めかしい声を上げ、部屋の中に再び激しい衣擦れの音が響き始めます。
連は無機質な表情のまま、男の荒い呼吸を背中で聞きながら、台所へと向かいました。
(『連よ、あのアバズレ女は……やはり一度、妾が雷で焼いてやるべきではないか?』)
連「……いい。慣れた。洗濯機を回してくる」
外では木ノ葉の平和な夜が更けていきますが、暁連の日常は、常に紫の雷と、師匠の不摂生な熱気の中にありました。
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