NARUTO -紫電の人柱力   作:ぐちロイド

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第31話 鋼の体温と紅き執着 目覚めの告白

 

 

国境付近、火の国へと続く要衝に築かれた砦は、一夜にして「鉄の墓場」と化した。

連の放つ漆黒の雷が大地を焦がし、躯の体内から溢れ出した無数の刃が、逃げ惑う忍たちの肉をひき肉へと変えた。初任務の結果は、生存者ゼロ。連の冷徹な効率性と、躯の快楽主義的な殺戮は、最悪の形で噛み合っていた。

 

その日の深夜。里から離れた荒野の野営地で、連は焚き火の傍ら、瞑想に耽っていた。

永遠の万華鏡写輪眼を閉じても、まぶたの裏には常にモモカの最期の微笑が焼き付いている。

 

躯「……ねぇ、連。起きてるんでしょ?」

 

静寂を破ったのは、衣擦れの音と、鼻を突く血の匂いだった。

目を開けるより早く、連の視界は「影」に覆われる。

躯が、暁の外套を完全に脱ぎ捨て、術式が刻まれた剥き出しの身体で連の上に跨っていた。月光に照らされた彼女のオッドアイが、爛々と輝いている。

 

連「……何の真似だ、躯。そこをどけ」

 

躯「嫌。……任務の時から、ずっと見てた。あなたのその『眼』。……すっごく綺麗。私の身体を切り裂く刃よりも、ずっと鋭くて、冷たくて……あぁ、ゾクゾクする」

 

躯は連の頬を、自らの指先――術式から僅かに突き出させた「針」の先でなぞった。連の頬から一筋の血が伝う。

 

躯「……その眼、私に頂戴? ダメなら、その眼で私をもっと見て。……もっと、もっと壊して。あなたの雷で、私のこの術式を全部熱くして、中までボロボロに焼いてほしいの」

 

躯の呼吸が荒くなる。彼女の手が連の胸元に伸び、血塗れの指が彼の肌を弄り回す。彼女にとって、性愛と殺意、そして苦痛は完全に同一の快楽(エロス)だった。

 

連「……死にたいなら、そう言え」

 

連の右眼が、カッと見開かれた。

万華鏡の紋様が回転し、躯を至近距離から睨みつける。それと同時に、連の全身から漆黒の火花が弾けた。

 

躯「あはっ!! 熱い、最高……!!」

 

躯は電撃に焼かれながらも、逃げるどころか、連の首に抱きついた。彼女の喉元の術式から小さな刃がせり出し、連の喉を微かに切り裂く。

だが、連は容赦しなかった。スサノオの腕を具現化させ、躯の華奢な身体を掴んで地面へと叩き伏せる。

 

連「……勘違いするな。俺はお前の遊び相手じゃない。次、許可なく俺に触れれば、その四肢を切り離して二度と口寄せできないようにしてやる」

 

連の冷徹な宣告に、躯は地面に這いつくばりながら、血の混じった涎を垂らして笑った。

 

躯「あはは……怖い。……あぁ、連、大好き。……また明日も、私を殺すみたいに戦ってね」

 

連は溜息すらつかず、再び目を閉じた。

狂った相棒、失われた故郷。そして、心に刻まれた永遠の喪失。

彼が行く先には、救いなど欠片も存在しなかった。

 

---

 

 

一方、木ノ葉隠れの里。

病院の特別病室では、一人の女性が、あまりに長い眠りから目を覚ましていた。

 

出雲「……ここは……?」

 

不知火出雲は、ひび割れた声で呟いた。

窓から差し込む朝日は眩しく、平和な里の音を運んでくる。だが、彼女の記憶は、血の匂いが立ち込めるあの凄惨な「真保」との戦いで止まっていた。

 

出雲「……連……くん……モモカ……ちゃん……」

 

脳裏をよぎるのは、血塗れで現れた、あの怪物のような愛弟子の姿。

ガタガタと震え出した彼女の前に、扉を開けて入ってきたのは、五代目火影・綱手だった。

 

綱手「……気がついたか、出雲」

 

出雲「綱手様……。私、どうして……。連くんたちは!? あの後、何があったんですか!?」

 

出雲はベッドから身を乗り出そうとしたが、一年のブランクがある筋肉は言うことを聞かず、そのまま床へと崩れ落ちた。綱手は静かに歩み寄り、彼女を抱え上げてベッドへ戻した。その表情は、火影としての威厳と、同胞への深い悲痛に満ちていた。

 

綱手「……落ち着いて聞きなさい。……お前が眠っていたのは、一年だ」

 

出雲「一年……!? そんな、そんなに……。じゃあ、連くんは……あの子はどこにいるんですか!? ずっと傍にいてくれたはずじゃ……」

 

綱手は短く溜息をつき、窓の外に視線を向けた。

 

綱手「……暁連は、もうここにはいない。……あの子は里を捨てた。……いや、『捨てさせた』と言うべきかもしれないがね」

 

---

 

 

綱手は、一年の間に起きた出来事を、一つ一つ、出雲の胸を抉るように語り始めた。

 

綱手「真保の件は、あの子の単独任務として処理された。だが……あの日、連はモモカを自らの手で殺めたショックで、万華鏡写輪眼を開眼させた。そして……」

 

出雲「殺めた……? 連くんが、モモカちゃんを……?」

出雲の顔から血の気が引いていく。

 

綱手「幻術にハメられたのよ。……そして連は、お前とモモカを連れて、自らの空間転移術で里に帰還した。だが、その時のあの子は、もはや正常ではなかった。……モモカの両眼を抉り取り、姿を消したわ」

 

出雲の脳裏に、あの日の病室の光景がフラッシュバックする。

血と泥にまみれ、不衛生な姿で、狂気に満ちた眼光を放っていたあの少年。

 

綱手「あの子は大蛇丸の元へ向かい、モモカの眼を自分に移植した。『永遠の万華鏡写輪眼』を手に入れるためにね。……その後は各地を転々としながら、犯罪者を虐殺して回っていたようだが……一ヶ月前、ナルトとカカシが接触したのを最後に、あの子は『暁』へと身を投じた」

 

出雲「暁……?」

 

綱手「そうだ。……今はもう、木ノ葉の忍ではない。Sランクの犯罪者として、全大国に手配されている。……これが、お前が眠っている間に起きた『現実』だ、出雲」

 

出雲は言葉を失った。

自分が教育し、慈しみ、共に戦ってきた少年。

不器用だが真っ直ぐで、仲間を誰よりも大切にしていたはずの連が、なぜ。

どうして神様は、あの子にあれほど残酷な運命を与えたのか。

 

出雲「……私の……私のせいだ……。私が、あの時、もっとしっかりしていれば……あの子を独りにしなければ……!」

 

綱手「……自分を責めるな。あの子を選んだのは、あの子自身だ。……だがね、出雲。カカシの話では、連はまだ、どこかで自分を律しようとしている節がある。……あの子を救う方法があるかは分からない。だが、あの子を止める権利が一番あるのは、師であるお前だ」

 

綱手は出雲の肩に手を置き、強く握った。

 

綱手「体を戻しなさい。……次に連と会う時、お前が泣き崩れていては、あの子は救われない。……いいわね?」

 

出雲は、溢れ出す涙を拭うこともできず、ただ白く冷たいシーツを握りしめた。

窓の外では、ナルトたちが次なる戦いに備えて修行する声が聞こえてくる。

光溢れる里の喧騒。その対極にある闇の底で、今もなお血にまみれて戦い続ける愛弟子の姿を想い、出雲は決意した。

 

出雲(待ってて、連くん……。……私が、あんたを連れ戻してあげる。たとえ、あんたが私のことを忘れてしまっていても……!)

 

一年の空白を超え、師弟の絆は「敵対」という最悪の形で再び結ばれようとしていた。

 

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