NARUTO -紫電の人柱力   作:ぐちロイド

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第33話 禊(みそぎ)の刻、紅蓮の再現

 

 

北方の要衝、鉄鋼の街。そこは岩隠れの抜け忍たちが徒党を組み、軍事拠点を築き上げた「鋼鉄の要塞」だった。街の周囲を囲む高い防壁と、常に稼働する蒸気機関の煙が、空を重く覆っている。

 

その街の入り口近く、連は隠れ家となる廃屋の奥で、湯気の立ち上る古い浴槽に身を沈めていた。

 

一年前、里を捨てて以来、初めての「風呂」だった。

お湯に浸かった瞬間、身体中にこびり付いていた一年の垢と、乾ききった返り血、そして絶望の泥がゆっくりと溶け出していく。茶黒く濁っていくお湯を見つめながら、連は無言で自分の肌を洗った。

 

フケで固まっていた髪を何度も洗い流し、泥にまみれた指先を研ぐ。

こびり付いていた死の臭いが消え、代わりに石鹸の淡い香りと、今朝方ティアラたちが残していった「日向の匂い」が立ち上がる。

 

連「……ふぅ」

 

浴槽から上がった連は、濡れた髪を無造作にかき上げた。

鏡に映る自分は、驚くほど白く、そして冷徹だった。汚れを落としたことで、首筋の呪印と、両目に宿る「永遠の万華鏡写輪眼」の紅さが、より鮮明に、より禍々しく際立っている。

 

新しい「暁」の外套を羽織り、帯を締める。

心身ともに「さっぱり」としたその感覚は、清々しさよりも、戦場という名のキャンバスを塗り潰すための、真っ白な準備が整ったことを意味していた。

 

躯「あはっ……綺麗になったね、連。……でも、前のドロドロのあなたも、野良犬みたいで好きだったよ?」

 

脱衣所で待っていた躯が、物欲しげに連の濡れた首筋を覗き込む。だが、連はその視線を冷たく遮り、漆黒の雷を指先に宿した。

 

連「……行くぞ。この街を、モモカへの供物にする」

 

---

 

 

 

街の広場に降り立った連の姿を、岩隠れの残党たちが見咎める。

「何だ……!? 暁だと? 一人か……いや、二人か!」

 

連「……一人じゃない。」

 

連は静かに印を結んだ。

 

連「口寄せの術!!」

 

ドォォォォン!!

爆煙と共に現れたのは、三つの尾を美しく、そして猛々しく揺らめる妖狐・**九重**だった。

九重は連の横に並び立つと、その碧い瞳を「万華鏡」と同じ深紅に変質させた。連と九重のチャクラが完全に同調し、周囲の空間がビリビリと鳴動を始める。

 

連「九重……見せてやれ。彼女(モモカ)がいた証を」

 

九重が天に向かって咆哮した。

連の右眼が激しく回転し、九重の全身を「紅蓮の炎」と「黒い雷」が包み込む。それはかつてモモカが九重と共に見せたコンビネーションを、連の「永遠の万華鏡」でさらに一段上の次元へと引き上げたものだった。

 

連「**紅蓮・九重流——『焔雷鳳(えんらいほう)』!!**」

 

九重の尾から放たれた九つの火球が、空中で漆黒の雷と混ざり合い、巨大な鳳凰の姿を成して街の中央へと降り注いだ。

ドガァァァァァン!!

鉄鋼の街の誇る蒸気機関が一瞬で融解し、鋼鉄の建物が紙細工のように燃え尽きていく。

 

「あぎゃあああ! 熱い、熱いぃぃ!!」

 

悲鳴が響き渡る中、連は一歩も動かず、その惨劇を眺めていた。

九重は連の意思を汲み取り、次々とモモカが得意としていた術を、連の「紅蓮雷鳴」を燃料にして再現していく。

 

連「視えるぞ……モモカ。お前はこうして、世界を視ていたんだな」

 

連の視界では、逃げ惑う敵の動きがスローモーションのように止まって見える。

左眼の「比良坂」で逃げ場を消し、九重の炎で追い詰め、右眼の「紅蓮雷鳴」でトドメを刺す。

それはもはや戦闘ではなく、精密に計算された「虐殺の組曲」だった。

 

---

 

 

街が半分以上灰になった頃、生き残りの上忍たちが決死の覚悟で連に突っ込んできた。

 

「貴様……! よくも我らの街を……死ねぇぇ!!」

 

連「……邪魔だ。」

 

連の背後に、紅緋色の巨像——**須佐能乎(スサノオ)**の腕が出現した。

スサノオは右手の「雷槍」を振るい、一振りで上忍たちの肉体を消し飛ばした。さらに連は、スサノオの左手に持たせた「比良坂の大弓」を引き絞る。

 

連「九重、入れ」

 

九重「(『……御意』)」

 

九重が自身のチャクラを一本の巨大な「火矢」へと変え、スサノオの弓につがえられた。

連の「紅蓮雷鳴」と、九重の「妖狐の炎」が融合し、太陽にも匹敵する輝きを放つ。

 

連「**奥義——『紅蓮・神産巣日・九重奏(かみむすび・ここのえそう)』!!**」

 

放たれた矢は、空間を突き抜け、街の最深部で炸裂した。

その衝撃は街全体を「無」へと帰すほどの威力を持ち、巨大なキノコ雲が夜の空を真っ赤に染め上げた。

 

静寂が訪れる。

かつて活気に満ちていた鉄鋼の街は、今や赤く熱せられた瓦礫の山へと変貌していた。

 

連は、役目を終えて霧散していく九重の背を、最後にもう一度だけ撫でた。

 

連「……よくやった、九重。……お前の主も、喜んでいるだろう」

 

九重は静かに頷き、連の眼を慈しむように見つめてから消えた。

 

---

 

 

 

任務完了。

連は崩れ落ちた広場の噴水跡に腰を下ろした。

清潔になった身体は、返り血一つ浴びていない。精密すぎる術の制御が、返り血を浴びることすら許さなかったのだ。

 

躯「あは……凄い。凄すぎるよ、連!」

 

影から現れた躯が、狂ったように拍手しながら駆け寄ってきた。

彼女は連の隣に座ると、洗いたての彼の髪を、うっとりとした表情で撫で回した。

 

躯「今の術……街一つが『消えちゃった』ね。……ねぇ、連。お風呂入って綺麗になったあなたの身体、もっと汚したくなっちゃった。……今のあなたのチャクラ、すっごく熱くて、美味しそう」

 

躯は連の首筋に顔を埋め、深呼吸した。石鹸の匂いと、破壊の熱気が混ざり合った連の匂いに、彼女の術式が反応して赤く発光する。

 

連「……触るなと言ったはずだ」

 

連は冷たく彼女を突き放したが、躯は幸せそうに笑いながら、地面に転がる敵の残骸を指差した。

 

躯「次はどこに行く? 次はどの里を消す? ……私、あなたについていけば、最高の『痛み』に出会える気がするの」

 

連は立ち上がり、燃える街を背にして歩き出した。

身体はさっぱりとし、術は完璧だった。

だが、その心に空いた穴は、どれだけ敵を殺しても、どれだけ身体を清めても、埋まることはない。

 

永遠の万華鏡写輪眼。

その紅いレンズ越しに世界を見続ける限り、連の旅路は終わらない。

「暁」の外套を風になびかせ、少年は再び闇へと消えていく。

その隣で、小柄な狂犬が歌うように笑いながら、彼に寄り添い続けていた。

 

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