雨隠れの里。絶え間なく降り注ぐ雨が、鉄の塔を打ち鳴らしている。
その最上階、神の座と称される玉座の前で、連と躯(ムクロ)は膝をついていた。
ペイン「……連、躯。次の任務だ」
ペインの輪廻眼が、無機質に二人を見下ろす。「暁」としての活動が本格化する今、最初の尾獣――「一尾」の回収が始まった。
ペイン「一尾の人柱力、砂隠れの我愛羅を捕縛する。主攻はデイダラとサソリだ。……貴様ら二人には、その『露払い』と『後方支援』を命じる。砂隠れの伏兵、および木ノ葉からの増援を国境付近で完全に遮断しろ。一人たりとも、砂の里へは近づかせるな」
躯「あはっ、砂の忍びかぁ。乾燥してて、血の出が良さそうだね!」
躯が自らの腕を抱きしめ、快楽に肩を震わせる。連は無言でペインを見据えていた。
連「……了解した。砂の障壁も、木ノ葉の追手も、俺の雷で灰にする」
ペイン「期待しているぞ。……特にお前にはな、連。その『永遠の眼』の真価を、我々に見せてみろ」
連は立ち上がり、外套の襟を立てた。
清潔になったばかりの身体に、再び戦場の砂と血が混ざり合う予感を感じながら。
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数日後。砂隠れの里を囲む峻険な岩場、通称「死の砂丘」。
上空では、デイダラの粘土鳥が砂隠れの里へと侵入を開始していた。里の内部で爆発音が響き渡り、騒乱が始まったことを告げる。
連「……来たぞ。砂の迎撃部隊だ」
連は岩山の頂から、眼下の砂漠を眺めていた。
そこには、里の異変を察知し、外周から戻ってきた砂隠れの精鋭たち、および国境警備の小隊が数十人、必死の形相で里へと急いでいた。
躯「連、連! どっちから殺す? 私、あの先頭を走ってる風影直属っぽい人、中からグチャグチャにしたい!」
躯が外套を脱ぎ捨て、剥き出しの身体に刻まれた術式を脈動させる。
連「……好きにしろ。ただし、里の入り口には一歩も通さない」
連が跳躍した。
着地と同時に、砂漠の熱気を切り裂く漆黒の雷が弾ける。
「なっ……暁だと!? 伏兵か!」
砂の忍たちが即座にフォーメーションを組むが、連の「永遠の万華鏡写輪眼」はその配置を瞬時に無効化する。
連「【紅蓮雷鳴】」
視界に捉えた三人の砂忍が、悲鳴を上げる間もなく紅い電光に包まれ、その場で蒸発した。
「ヒ、ヒィッ!? 何だこの威力は……!」
躯「あははは! 逃げないでよ、痛いのは一瞬だけなんだから!」
躯が戦場に飛び込む。彼女の背中の術式から、阿修羅の如く十数本の刀の柄が突き出し、**「千手抜刀」**が開始された。
躯「**口寄せ忍法・遍身武装!!**」
躯は自分の肉体を切り裂きながら刀を振るい、砂忍たちのガードを強引にこじ開ける。切られるたびに「あぁっ!」と恍惚の声を上げる彼女の狂気は、砂の忍たちを戦慄させた。
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連「……数が多いな。一掃するぞ」
連は印を結んだ。
連「**口寄せの術!!**」
爆煙の中から、白銀の巨虎・**ティアラ**と、三尾の妖狐・**九重**が現れる。
ティアラは咆哮と共に砂塵を蹴り、その巨大な爪で砂忍たちの防砂壁を紙細工のように引き裂いた。九重は連の隣で尻尾を揺らし、その瞳を紅く染める。
九重「(『主よ……この砂、モモカが嫌いそうな乾燥具合ですな。妾が少し、湿り気を与えてやりましょう……返り血という名の湿り気を』)」
連「……ああ。頼む」
連と九重のチャクラが混ざり合い、砂漠に異様な「熱」が満ちる。
連の永遠の万華鏡が回転し、九重の炎に漆黒の雷を編み込んでいく。
連「**紅蓮・九重流——『雷火螺旋(らいかせん)』!!**」
九重の周囲に発生した九つの炎の渦が、黒い電撃を纏いながら砂漠を蹂躙した。砂は超高温によって瞬時にガラス状に溶け、そこに閉じ込められた忍たちは、自らの里を目の前にして、美しいが残酷な透明な墓標へと変わっていった。
「ば、化け物か……。これが『暁』の力なのか……!」
絶望に染まる砂忍たち。連は冷徹に、一人一人の命を確実に刈り取っていく。
彼にとって、これはもはや戦いではない。「掃除」だった。デイダラたちが一尾を捕獲するまでの間、この場所を完全な真空地帯に保つための、ただの作業。
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その時、後方から木ノ葉の紋章をつけた増援――先行していた偵察班が到着した。
連「……木ノ葉か。タイミングが悪いな」
連の視界に、かつて見知った顔がいくつか映る。だが、その瞳に迷いはない。
左眼の**【比良坂】**が空間を捉える。
連「逃がさない。……躯、トドメだ」
躯「了解っ! あはは、最高だよ連!!」
連が空間を歪ませ、木ノ葉の忍たちの位置を一箇所に圧縮して固定する。逃げ場を失い、身動きが取れなくなった彼らの前に、躯が腹部から巨大な**「大鎌・断頭台」**を引き出しながら躍り出た。
躯「**さようなら、木ノ葉の皆さん! 痛いの、たっぷりあげるね!**」
巨大な鎌が一閃し、空間ごと敵を切り裂く。連の雷と、躯の刃。
その完璧な連携の前に、里への増援は文字通り「塵」と化した。
夜が近づき、砂漠の気温が急激に下がり始める。
里の方向では、巨大な粘土鳥が「一尾」と思われる物体を掴んで上昇していくのが見えた。
連「……任務完了だ。デイダラたちが一尾を仕留めたな」
連はスサノオの腕を消し、静かに九重とティアラを還した。
戦場には、ガラス化した砂と、躯が散らかした鉄屑、そして物言わぬ遺体だけが残されていた。
躯「あは……あはは……。ねぇ、連、今の最後の人、死ぬ間際に『連さん……?』って言ってたよ。知り合いだったの? おかしいね、あははは!!」
躯が血まみれの顔で笑いながら、連の外套を掴んだ。
連は無言でその手を振り払う。
連「……知り合いなど、もういない。俺には、お前のような狂犬と、眼の中にいる死者だけがいればいい」
連の視界には、遠く夕陽に沈む砂の里と、自分たちが通ってきた凄惨な血の跡だけが映っていた。
彼は一度も振り返ることなく、次の集合場所へと歩き出す。
「暁」が動き出した今、世界は加速度的に崩壊へと向かっていく。その先頭に立つのは、愛を捨て、永遠の闇を瞳に宿した、一人の少年だった。
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