雲隠れの地にて、激しい戦闘の末に二尾の人柱力・ユギトが沈黙した。「暁」の不死コンビ、飛段と角都は、息を切らしながらもその戦果を満足げに眺めている。
飛段「おい、連! こいつを預かっておけ。儀式の準備ができるまで、こいつの『死に損ない』のチャクラを管理するのはお前の役目だ」
飛段が血に濡れた三枚刃の鎌を肩に担ぎ、吐き捨てるように言った。連は岩影から音もなく現れ、意識を失ったユギトの体を無造作に肩に担ぎ上げる。
連「……いいだろう。ただし、俺は貴様らの戦いには一切関与しない。……リーダーからの命令はあくまで『二尾の保管』と『増援の監視』だ」
飛段「フン、冷てえ野郎だ。だがまあいい、俺たちの『宗教活動』を邪魔しねえならな」
連の「永遠の万華鏡写輪眼」は、二人の背後にある死相を明確に捉えていた。しかし、彼は何も言わない。かつての仲間である木ノ葉の忍たちがこの二人を追っていることも、そしてこの二人の「不死」という傲慢さが破滅を呼ぶことも、連にとってはただの「確定した未来」に過ぎなかった。
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数日後、火の国国境付近。
連は遠く離れた樹上の陰から、漆黒の外套に身を包み、眼下の惨劇を静かに観察していた。
そこでは、飛段の呪術によって、木ノ葉の上忍・猿飛アスマが命を落とそうとしていた。
シカマル「アスマぁぁぁぁ!!」
シカマルの悲痛な叫びが、連の耳に届く。
万華鏡の視界は、アスマの肺を貫く飛段の黒い槍を、スローモーションのように映し出していた。
連(……救える。俺が今、この場所から『紅蓮雷鳴』を放てば、飛段の首を飛ばし、アスマを救うことは容易だ)
連の手が、無意識に印を結ぼうとして止まる。
バアルのチャクラが、彼の内で嘲笑うように渦巻いた。
バアル「(『連よ……何を迷う。あれはもう、主の守るべきものではない。……絶望こそが、今の主を形作る唯一の糧であろう?』)」
連は右眼を閉じた。
一瞬の静寂の後、アスマの体から力が抜け、シカマルの腕の中でその命の火が消えた。
連の心に、痛みはなかった。ただ、一年前の自分を見ているような、ひどく冷めた虚無感だけが漂っていた。
連「……さよならだ、アスマ先生。あんたの教えは、俺にはもう届かない」
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時が経ち、シカマル、カカシ、そしてナルトが飛段と角都への復讐のために動き出した。
場所は「森の迷宮」。連は相変わらず、高い樹上からその全てを俯瞰していた。
躯「あはっ……連、あっちの縫合マニアの死神さん、もうすぐバラバラにされちゃうよ? 助けなくていいの?」
隣で、躯が自分の爪から小さな針を引き出しながら、楽しそうに笑う。彼女にとって、味方が死ぬことも、敵が絶望することも、等しく最高の娯楽だった。
連「……言ったはずだ。俺は介入しない。……これが彼らの選んだ『結末』だ」
連の視界では、シカマルが圧倒的な知略によって飛段を森の深部へと誘い出し、無数の起爆札を纏わせていた。
ドガァァァァァン!!
爆辞が森を震わせ、不死の男は地下深くの闇へと葬られた。
一方、カカシたちを相手に五つの心臓を駆使して圧倒していた角都の前には、新たな術を完成させたナルトが降り立っていた。
連「……ナルト、か」
連の瞳が鋭く細められる。
ナルトの手の中で、耳を劈くような高周波の音が響き渡った。風の性質変化を極限まで高めた、禁忌の術。
ナルト「**風遁・螺旋手裏剣!!**」
その術が放たれた瞬間、連の万華鏡は見た。
数えきれないほどの極小の風の刃が、角都の全身の細胞一つ一つを寸断し、経絡系を完膚なきまでに破壊する様を。
ドォォォォォン!!
大地を抉る巨大な風の渦。
かつて初代火影と戦ったという伝説の忍・角都は、ただ一撃の「少年の一撃」によって、再起不能の肉塊へと成り果てた。
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戦闘が終わった。
静まり返った森に、ナルトたちの荒い息遣いだけが残る。
連は、角都の息の根が止まったことを確認すると、預かっていた「二尾」のチャクラを、自身のスサノオの腕で強引に引き出し、保管用の封印札へと移し替えた。
連「……終わったな」
連は、撤収しようとするナルトたちの背中を、ずっと見つめていた。
ナルトは成長していた。かつて自分と拳を合わせた時よりも、遥かに力強く、眩しい光を放っている。
躯「連! 見て、ナルトがこっちを見てるよ!」
躯が騒ぐが、連は動かなかった。
ナルトは、遠くの樹上に誰かがいることを察知したように、一瞬だけ視線を向けた。だが、そこに連の姿はない。連は「比良坂」の能力で空間を歪ませ、自らの存在を完全に隠していた。
連「……ナルト。お前は光の中にいろ。……俺は、この闇の底から、お前がどうやってこの腐った世界を変えるのかを見届けてやる」
連は踵を返し、躯と共に雨の降る方向へと消えていった。
飛段と角都。二人の暁が消えたことは、組織にとっては痛手かもしれない。だが、連にとっては、自分が手に入れた「永遠の眼」の威力を、ナルトという「対極の存在」と比較するための、ただの観測実験に過ぎなかった。
その夜、連は再び九重を呼び出し、彼女の柔らかい毛並みを撫でながら、暗い洞窟の中で眠りについた。
万華鏡の奥では、モモカが泣いているのか、笑っているのか。
連にはもう、それすら判別できなかった。ただ、右手に残る「二尾」のチャクラの冷たさだけが、自分がまだ死神の役目を果たしていることを教えていた。
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