NARUTO -紫電の人柱力   作:ぐちロイド

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第37話 神の進軍静観する眼、木ノ葉崩壊

 

 

火の国の空は、不気味なほどに晴れ渡っていた。しかし、その静寂は間もなく訪れる破滅の前触れに過ぎない。

木ノ葉隠れの里を一望できる高台の崖。そこには、赤雲の外套を翻し、微動だにせず里を見下ろす連の姿があった。

 

その隣には、相変わらず血の匂いを振り撒きながら、自らの腕に刻まれた術式を爪で愛撫するように弄る躯(ムクロ)が座り込んでいる。

 

躯「あはは……凄いね、連。ペイン様、本当に一人で里を消しちゃうつもりなんだ。あの高い壁も、平和ボケした忍たちも、全部『痛み』で塗り潰されるんだね!」

 

連は躯の狂言を無視し、ただ「永遠の万華鏡写輪眼」の焦点を里の中央へと合わせていた。

彼の脳裏には、数日前に雨隠れで起きた「ある死」の残像が消えずに残っている。

 

自来也——ナルトの師であり、木ノ葉の伝説。

彼がペインの手によって、冷たい雨の底へと沈んでいったあの瞬間。連はその場にいた。ペインの影に潜み、かつての恩師が命を散らす様を、ただ無機質な観測者として見届けたのだ。

 

連(……自来也先生。あんたの死は、ナルトを強くするのか。それとも、俺のように壊すのか)

 

さらに、もう一つの大きな波乱が忍界を駆け抜けた。

うちはサスケとイタチの決戦。

兄を殺し、真実を知ったサスケは「鷹」となり、暁と手を組んだ。彼は既に雲隠れの八尾を襲撃し、その「獲物」をゼツへと引き渡している。

 

連「……サスケも、ようやくこちら側に辿り着いたか。だが、あいつが見ているのは『復讐』という名の過去だ。……俺が見ているのは、その先にある『無』だ」

 

連の首筋に刻まれた呪印が、黒い脈動を上げた。大蛇丸が死んでもなお消えないこの呪いは、今や連のチャクラの一部として完全に定着し、彼の負の感情を吸い上げて増幅させている。

 

---

 

 

 

連「……始まったぞ。」

 

連が呟いた瞬間、里の各地で爆発が巻き起こった。

ペイン六道が里の結界を強引に突破し、侵入を開始したのだ。上空からは小南の紙吹雪が舞い、地上の至る所で悲鳴と火の手が上がる。

 

連の万華鏡は、混乱に陥る里の様子を鮮明に捉えていた。

かつての学び舎が、仲間たちと笑い合った通りが、ペインの召喚した巨大な猛獣たちによって蹂躙されていく。

 

躯「あはっ! 見てよ連、あの鼻の高いおじさんが吹っ飛んだ! あっちの医療忍者たちも、自分の臓器を片付けるのに必死だよ! 最高、最高のショーだね!」

 

躯が歓喜に身体をくねらせ、自らの腹部から鎌を半分ほど引き出して、その痛みに悦んでいる。だが、連の瞳に宿るのは、憐れみでも歓喜でもない。ただの冷徹な「確認」だった。

 

連「……ナルトはまだか。……妙木山で修行しているという噂だが、主役が不在ではこの舞台も締まらない」

 

連は、里の防衛に奔走する忍たちの中に、かつての師・出雲の姿を探した。

彼女は今、何を想い、誰のために戦っているのか。一年前、病院で自分を拒絶し、化け物を見るような目で震えていたあの女性。

 

連(……先生。あんたが守ろうとしているものは、これほどまでにも脆い。……『神』の一撃の前には、思い出も絆も、すべては塵に等しいんだ)

 

その時、ペイン天道が里の上空へと高く舞い上がった。

連の「比良坂」の能力が、空間に満ちる莫大なチャクラの密度を感知する。ペインが、その絶大な力を一点に集束させていた。

 

連「……来るぞ。躯、伏せろ」

 

躯「えー? もっと近くで見たいのに……」

 

連「……死にたくなければ従え。」

 

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ペイン「世界に、痛みを。……神羅天征」

 

ペインの静かな宣告と共に、不可視の斥力が里の全方位へと放たれた。

ドォォォォォォォォォォォォォン!!

 

連たちのいる高台まで、凄まじい衝撃波と土煙が押し寄せる。連は瞬時にスサノオの腕を顕現させ、自分と躯の周囲に盾を作った。

 

視界を覆っていた土煙がゆっくりと晴れていく。

そこに広がっていたのは、もはや「里」とは呼べない光景だった。

家も、壁も、道も、木々も。すべてが巨大な円形のクレーターへと押し潰され、中心部にはただ瓦礫の山が積み重なっている。

 

躯「……あは……。……あははははは! 凄い! 凄すぎるよ! 全部無くなっちゃった! 人間の形をした肉片が、あんなにたくさん転がってる!」

 

躯が狂ったように笑い転げる。

連は、スサノオを解き、静かにクレーターの底を見つめた。

数千、数万の命が一瞬で消えた場所。そこには、連がかつて持っていた「暁連」という少年の形見さえも、もう残っていないはずだ。

 

だが、連の右眼が微かに脈動した。

万華鏡の視界の端。クレーターの中央に、巨大な煙が立ち昇る。

そこには、大蝦蟇の背に乗り、赤い羽織を纏った一人の少年の姿があった。

 

連「……ナルト。」

 

連の唇が、その名をなぞった。

仙人モード特有の横一文字の瞳。自来也の遺志を継ぎ、里の仇(かたき)と対峙するその姿は、闇の中にいる連とは対照的な、あまりにも眩しい「光」そのものだった。

 

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躯「ナルトだ! ナルトが帰ってきたよ、連! ねぇ、あいつを殺しに行こうよ! あなたの黒い雷で、あの金髪を真っ黒に焼いちゃおうよ!」

 

躯が連の腕に縋り付く。だが、連は彼女を乱暴に振り払った。

 

連「……まだだ。……今は神(ペイン)と予言の子の戦いだ。……俺たちが介入する段階じゃない」

 

連は再び瞑想するように目を閉じた。

だが、その心根では、九重が、ティアラが、アローが、主人の心の激しい揺れを感じ取って鳴いていた。

 

モモカの眼が、連の内で疼く。

かつてナルトとサクラと一緒に任務をこなした日々。

出雲に叱られながら、必死に食らいついた修行の日々。

それらすべてが、目の前の瓦礫の山の下に埋もれている。

 

連(……ナルト。お前が勝てば、俺はまたお前を殺す理由を探さねばならない。……お前が負ければ、俺はこの世界に完全にトドメを刺すだけだ)

 

連は、永遠の万華鏡写輪眼をゆっくりと開いた。

そこには、神と人の領域を超えた、凄惨な決戦の始まりが映し出されていた。

 

連「……俺の地獄は、まだ終わらないな。……モモカ、見ていろ。……この世界の終焉を」

 

連は冷徹な監視者のまま、崩壊した故郷に背を向けることなく、その紅い瞳にすべてを焼き付けていた。

ナルトとペイン。光と影、神と人。

木ノ葉の焦土の上で、忍界の運命を決める最後の一戦が、今、幕を開けようとしていた。

 

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