マダラ「……ようやく、この肌で血が沸くのを感じられる。これが『生』だ」
穢土転生の塵が剥がれ落ち、うちはマダラは真の意味でこの世に蘇った。しかし、その眼窩は空っぽであり、両目は失われている。普通であれば絶望的な状況だが、伝説の忍にとって「視覚」など、もはや些細な情報の一つに過ぎなかった。
ナルト「マダラ……! 目が見えねえなら、今がチャンスだ!」
ナルトが九喇嘛の腕を伸ばして殴りかかる。同時に、我愛羅が砂の奔流で足元を掬い、守鶴を含む尾獣たちが一斉にその巨体でマダラを圧殺しようとした。
だが、マダラは嘲笑うように動いた。
マダラ「甘いな」
目が見えていないはずの彼は、風の揺らぎ、チャクラの微かな振動、そして空間の密度だけで、すべての攻撃をミリ単位で回避してみせた。逆に、柱間を千手の一族さえ驚愕する体術で圧倒し、仙術チャクラをその身に吸収していく。
サスケ「連、来るぞ!」
サスケの声に、連はバアル・モードを最大出力で解放した。
連「……分かっている! 『紫電・時空穿孔(じくうせんこう)』!!」
連は比良坂を介さず、純粋な速度と空間圧縮でマダラの死角から漆黒の雷槍を放った。しかし、マダラは背後に目があるかのように、首を僅かに傾けてそれを避けると、横から飛んできたサスケの草薙の剣を、指先だけで弾き飛ばした。
マダラ「良い眼だ……。お前たち二人の万華鏡は実によく馴染んでいる。だが、まだ私の『領域』には届かない」
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白ゼツが戦場に現れ、奪い取っていたマダラの「右目」を差し出した。
マダラがその輪廻眼を自身の眼窩に収めた瞬間、戦場の空気は凍りつくどころか、物理的に「断絶」された。
マダラ「……さて。少し遊んでやろう。『輪墓・辺獄(りんぼ・へんごく)』」
連「……っ!? 何だ、この気配は!」
連の永遠の万華鏡が、異変を察知して激しく回転する。
見えない。感知できない。だが、何かが「そこにいる」。
ドガァァァァァン!!
次の瞬間、九匹の尾獣たちが、何の説明もなく同時に空へと吹き飛ばされた。目に見えない強大な衝撃が、山のような巨体を持つ彼らを紙切れのように蹂躙しているのだ。
ナルト「ぐ、あああああ!!」
ナルトが叫ぶ。見えない敵からの連撃。連はバアル・モードの超感覚で「存在しないはずの質量」を辛うじて察知し、ナルトの前に割って入った。
連「ナルト、伏せろ! スサノオ・黒雷盾(こくらいじゅん)!!」
ガキン!! と、空間が軋む音がした。
連の完成体スサノオの盾に、目に見えないマダラの「影」が衝突したのだ。バアルの漆黒の雷が、その不可視の攻撃と激しく火花を散らす。
バアル「(……連よ、危ういぞ。これは『隣り合わせの別世界』に存在するマダラ自身だ。我の力をもってしても、完全には防ぎきれぬ!)」
バアルの警告が脳内に響く。連の足元の地面が、その見えない重圧によって数十メートルも陥没した。
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マダラは印を組み、魔像を呼び出した。
マダラ「さらばだ、人柱力ども。……**外道魔像、吸印!!**」
魔像の口から吐き出されたチャクラの鎖が、一瞬にしてすべての尾獣を捕縛する。ナルトの体内にいた九喇嘛も、その強引な引き抜きに抵抗すらできない。
ナルト「九喇嘛ぁぁぁ!!」
ナルトの叫びも虚しく、わずか数分。戦場に君臨していたすべての尾獣が、魔像の腹の中へと引きずり込まれた。
九尾を抜かれたナルトは、人柱力の宿命である死の縁へと叩き落とされ、その瞳から光が消えていく。
サスケ「ナルト!!」
サスケが上空から突進し、マダラに切りかかる。
マダラ「……遅い」
マダラは輪墓の力でサスケを空中に固定した。サスケの身体が、まるで見えない拘束具に縛られたように静止する。マダラはサスケの手から溢れた草薙の剣を奪い取ると、何の躊躇もなく、その切っ先をサスケの心臓へと突き立てた。
サスケ「っ……、が、は……っ」
マダラ「……せっかくのその眼だ。私が有効活用してやろう」
マダラが剣を引き抜くと、サスケの体は重力に従って地面へと墜落した。
連「……ナルト……サスケ……!」
連は、二人を救おうとバアル・モードの出力を上げ、空間を跳躍しようとした。
だが、連の腹部にも、見えないマダラの影から致命的な一撃が撃ち込まれた。
バアル「(……ぬ、おぉぉぉぉっ!? 連! 踏みとどまれ!!)」
バアルが自身の全チャクラを連の魂に直結させ、魔像への引き込みを必死に押しとどめる。連の背中から生えた漆黒の羽が、バキバキと音を立てて砕け散った。
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戦場は、完全な静寂に包まれた。
忍連合軍の数万の忍たちが、息を呑んでその光景を見つめていた。
希望の象徴であったナルトが事切れ、天才とうたわれたサスケが地に伏した。
血まみれで膝をつく連の前に、白ゼツが嘲笑うように現れる。
ゼツ「あはは、見てよ! これが君たちが必死に守ろうとした世界の結末だ。本物の救世主……マダラ様の誕生だ。もう誰も、この流れを止めることはできないんだよ」
マダラは、魔像を取り込み、十尾の人柱力としての進化を始めようとしていた。
その背後、沈みゆく月が赤く染まっていく。
連は、血を吐きながら、動かなくなったナルトとサスケを交互に見た。
連(……嘘だろ。……俺たちが、守るって決めたのに……。モモカ……出雲先生……!)
遠くで、出雲が「連!!」と叫ぶ声が聞こえた。
だが、その声も、マダラから放たれる圧倒的な絶望の波動にかき消されていく。
連「……まだだ……。……まだ、終わらせない……」
連の右眼——モモカから託された「永遠の万華鏡」が、死の淵で一際強く、血の涙を流しながら回転した。バアルの漆黒の雷が、連の命そのものを燃料にして、最後の一欠片の光を灯そうとしていた。
神の如き力を得たマダラと、崩壊した希望。
第四次忍界大戦は、今、人類が経験したことのない「真の絶望」へと足を踏み入れた。
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