戦場には、肉が焼ける嫌な臭いと、冷たい死の気配が混じり合っていた。
十尾の人柱力となり、白き衣を纏ったマダラの背後には、九つの黒い球体――**求道玉**が静かに浮遊している。それは万物の理を無に帰す、究極の矛であり盾。
連「……っ、ぐああああああ!!」
連のバアル・モードが放った漆黒の雷槍は、マダラの手のひらから伸びた求道玉の盾に触れた瞬間、パチンと泡が弾けるように霧散した。忍術そのものが、概念ごと消滅させられたのだ。
マダラ「無駄だ。今の私には、この世のあらゆる術は届かない」
マダラが指先を僅かに動かした。一本の求道玉が黒い杭へと形を変え、光速を超えて連の胸を貫いた。
連「なっ……!?」
防御は間に合わなかった。心臓を正確に貫通した黒い衝撃が、連の細い体を後方へと凄まじい勢いで吹き飛ばす。数キロ先の岩山が砕け、連は瓦礫の山に埋もれて物言わぬ肉塊となった。
出雲「連!!」
出雲が絶叫し、動かなくなったナルトとサスケ、そして飛ばされた連の元へ、サクラと共に必死に駆け寄る。だが、そこへ立ち塞がる絶望を、一人の「男」が遮った。
ガイ「……これ以上、俺の生徒や部下たちに指一本触れさせんぞ」
マイト・ガイ。
彼の全身から放たれるのは、赤い蒸気。命の炎を燃料とした、八門遁甲の最終奥義、**「死門」**。
ガイ「夕象(せきぞう)!!」
空気を踏みつけ、一足ごとにマダラを押し潰す空気の圧力。しかし、マダラはそれを笑って受け止める。
マダラ「良いぞ! もっと私を楽しませろ!!」
ガイ「……これが最後だ。……**『夜ガイ』!!**」
空間そのものを歪めるほどの超高速移動。マダラの求道玉の防御さえも、歪んだ空間によって間に合わない。龍の形を成した赤い蒸気がマダラの右半身を直撃し、その肋骨、心臓、肺を木っ端微塵に吹き飛ばした。
マダラ「……ぐ、はははは!! 死ぬかと思ったぞ!!」
マダラは半身を失いながらも、狂ったように笑った。そして、信じがたい速度で肉体を再生させていく。
「最強の物理攻撃」ですら、今のマダラにとっては「極上の娯楽」に過ぎなかった。
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意識が、白濁した闇へと溶けていく。
連の精神世界。そこにはもう、荒々しいバアルの姿も、血の海もなかった。
静寂。果てしなく続く水面の上に、連は横たわっていた。
連(……俺は、死んだのか。……心臓を貫かれて……。……モモカ、今行くよ……)
女神「いいえ。まだ、あなたはここで終わる器ではありません」
透き通るような声が響いた。
連が目を開けると、そこにはナルトやサスケが対峙している「大筒木ハゴロモ」とは異なる、異質な神々しさを纏った一人の女神が立っていた。
連「……誰だ。人間……じゃないな」
女神「私は、この世界の理の外から来たもの……。あなたが『転生者』としてこの地に降り立った時、その魂に宿った『外の神』です。連……。うちはの血を持たぬあなたが、なぜここまで戦えたか。それは、あなたがこの星の法則に縛られない『異物』だからです」
女神が連の額に手を触れた。
女神「ナルトとサスケには、この地の祖であるハゴロモが陰陽の力を授けています。ならば私は、あなたに『外の理』を授けましょう。……奪われた心臓の代わりに、万物を統べる眼を。……失われたチャクラの代わりに、すべての尾獣と繋がる絆を」
光が溢れた。
一尾から九尾までの尾獣たちのチャクラが、女神の導きによって連の魂へと流れ込んでいく。連は、かつて自分が奪い、保管し、そしてマダラに奪われた尾獣たちの声を、初めて心で理解した。
女神「……『高天原(タカマガハラ)』。……それが、あなたの新しい眼の権能です」
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出雲「ハァ……ハァ……! ダメ……心臓が……戻らない……!!」
出雲が、涙を流しながら連の胸に医療忍術を注ぎ続けていた。サクラもまた、ナルトの心臓を直接揉みながら必死に繋ぎ止めている。
だが、その時。
連の停止していた指先が、ぴくりと動いた。
ドクン。
出雲「……あ……」
出雲が息を呑む。
連の胸の穴が、内側から溢れ出す圧倒的な紫の光によって修復されていく。そして、連がゆっくりと瞼を持ち上げた時、その瞳はもはや「万華鏡」ではなかった。
紫の波紋が重なり、六つの勾玉が浮かぶ眼。
**「輪廻眼」**。
連「……出雲先生。……もう、大丈夫だ」
連が立ち上がると同時に、戦場の逆側ではナルトとサスケが同時に目覚めた。ナルトは黄金の六道モードを纏い、サスケは左眼に輪廻眼を宿している。
しかし、連の変貌はさらに異質だった。
彼女の背中には、マダラと同じ十個の**「求道玉」**が浮かび、スサノオの鎧は、背中に巨大な「輪廻の光輪」を背負った神々しい姿へと進化していた。
ナルト「……連、お前……!?」
ナルトが驚愕の声を上げる。
連「……待たせたな。……マダラ。……ここからは、俺たちの番だ」
連の輪廻眼が、マダラを冷徹に見据えた。
右眼の**【焔の呼吸】**が、周囲の熱量を奪い去り、燃え盛る戦場を一瞬にして絶対零度の極寒へと変える。マダラの求道玉の動きが、分子レベルで強制停止させられた。
マダラ「……面白い。……外の世界の理か」
マダラが初めて、その表情から余裕を消した。
連「……行くぞ。……今度こそ、本当の平和を創るために」
連の右手に、輪廻の力を宿した**『六道・紅蓮大雷槍』**が顕現した。
ナルトの陽、サスケの陰。そして、連という「外の理」。
三人の救世主が、神の領域へと至ったマダラの前に並び立ち、忍界史上最大の反撃が今、幕を開けた。
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