陰の実力者のお友達   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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書きたくなっちゃった


0 終わりは突然だが始まりも突然

瀬戸嶋亘(せとじまわたる)

 

唐突だが自分の名前だ。

突然だけど自分のクラスには一人変わった人がいる。

隅の席に座っている男子生徒───影野ミノル。

何故だか彼は徹底した目立たない存在───いわゆるモブというのをやるのを徹底していた。

一応友人関係にあった自分はある日なんとなく聞いてみた。

 

そうすると返ってきたのはこんな返答だった。

 

 

「陰の実力者になりたくて」

 

 

彼曰く、その実力を普段は隠し目立たないもの。

彼曰く、ひそやかに事件に介入しその存在を知らしめるもの。

彼曰く、主人公でもラスボスでもない立ち位置で、ゲームクリア後の隠しボスのようなもの。

 

それが彼がなりたいと思っているもののようだ。

心なしかなりたいものについて語っているミノルの顔はとても輝いていた気がした。

とてもいいと思う。

なりたいものに対して全力で取り組める彼に当時の自分は素直に感心したものだ。

 

だから自分もお返しにこちらもなりたいものについて話したのだ。

 

「…俺は、仮面ライダーになりたいんだ」

 

仮面ライダー。

昭和から平成を駆け抜け、今もなお走り続けている日本が誇る特撮。

もちろん本当に改造とかされたり、突然社長になったりとかして仮面ライダーになりたいわけではない。

ていうか今の日本にそんな技術あったら偉いことである()

 

正確には仮面ライダーの中の人…いわゆるスーツアクターというものに憧れているのである。

まぁ俳優になって仮面ライダーに変身するのもいい。

一番最初の人だってそうだったのだし。

 

そんな亘の告白にミノルも好印象であり、またスーツアクターとかと陰の実力者っぽいねなんて言ってくれた。

確かに基本的にスーアクは顔は表に出ないものだ。

そう考えるとこれも陰の実力者に近いかもしれない。

 

そんなこんなで定期的に亘はミノルと話すようになった。

ていうかいつのまにか二人して夜中にトレーニングとかするようになった。

なんで? と問われれば正直自分でもわからない。

けどなんか将来見越すと今のうちに身体作っといた方がいいよ、とミノルに言われてそんなことになってた気がする。

 

でも言われてみれば確かにって速攻首振ってた記憶もあったのでぜひもない。

 

陰の実力者を目指しているミノルはマジでありとあらゆる格闘技に精通していて普通にビビった。

いつの日か〝陰の実力者〟として暗躍できる日のためにひたすら鍛えて隠していたのだとか。

そうか、だからなんか一時期ぱっつんぱっつんな感じだったんだ。

今はそのフィジカルを隠しているというかちょっと邪魔に感じたからしまっているらしい。

フィジカルってしまえるんだ()

 

そんな日常的にミノルとトレーニングしたりしていたころ、それは起こった。

 

影野ミノルが、交通事故に遭い亡くなったと。

 

 

生まれて初めての葬式は、思いの外あっさりだな、と思った。

涙こそ出なかったが、流石に気持ちは沈んでしまった。

それなりに親しい間柄だったから、なおさらだ。

つい最近彼に誘われて近所迷惑の暴走族を〝優しく〟追い返しに行こうとか言われて一緒に暴れてきたのだから尚更。

…いや冷静に考えると結構ヤバいことしてるな自分。

まあどれくらい動けるかわかったしちゃんと顔はミノル共々しっかり隠していたからモーマンタイだ。

とにかく、天国で見守ってるかもしれない彼に報いるためにはこっちもがんばってアクターやら俳優を目指さないといけない。

そんな感じでしっかり覚悟を決めてた自分は。

 

その一週間後、コンビニで雑誌を選んでいたとき突っ込んできたボケ老人の車の直撃を受け、あっさりとお亡くなりになったのだった。

 

◇◇◇

 

きっとそれが、前世の記憶というのだろう。

 

気づいたとき、自分は貴族の一家に生まれ落ちた。

目が覚めたら赤ん坊だった時は流石にマジでビビった。

そして同時に理解した…これはあれだ、異世界転生だと。

まさか人生…人生? 二回目の人生? …ともかく、人生で経験することになるとは思わなかった。

 

「おぉ、生まれたのか!?」

 

そして覗き込んでくる父親の顔がすごく武田⚪︎平に似ていることにまた目を丸くするのだった。

 

 

というわけで

 

ひょんなことから瀬戸嶋亘はクルムズ一家の長男、ワタル・クルムズとして第二の生を受けたのだった。

先も言ったが父親が武田…もとい紅音也にそっくりだったり同じく母も真夜にそっくりだったり、など違和感のようなものもあったものの、そういうものかと割り切りせっかくだからこの第二の生を謳歌することにした。

 

アクターとか俳優とかになれそうにないのは少し残念だが…原理は知らんがこの世界には魔力というものが溢れている。

そしてこの世界には魔剣士という職業がある。

さらに貴族の子は十五になるとミドガル魔剣士学院に通わないといけないという。

とりあえず当面の目標として魔剣士を目指してみよう。

あくまでも目標なので、他に面白そうなのがあったらそっちにシフトする感じで。

 

昔は昔、今は今

 

こういうのは切り替えが大事なわけである。

 

そう窓際で景色を楽しみながら一人思考していたとき、パッタパッタと羽を動かしながら自分の肩に降り立つ一匹の存在。

 

「どうしたワタル、考え事か?」

「まぁそんなとこ」

 

肩に降り立ったのはキバットバット三世。

まぁオトヤがいるならいるのかなぁ、なんて過ごしていた幼少期、十歳を迎えた誕生日オトヤから受け取ったのがこのキバットだ。

また、この場にはいないがタツロットも受け取っている。

何やら大昔オトヤの先祖はこのキバット一族らと共に〝魔人ディアボロス〟なる存在と戦った過去があるという。

ほーん(鼻ほじ)とキバットを受け取る前までは、御伽話として半信半疑だったがキバットを受け取って以降はもしかしてマジなの? くらいには思うようになった。

 

「そういえばワタル、ここ最近近所の森に盗賊団の連中が住み着いたって話知ってるか?」

「盗賊団? それはまた怖いね」

「全く持ってその通りだぜ。だから夜間に外に出回るのは控えろよ?」

「そうだねぇ…───でもちょっと試したいこともあるんだよね」

「試したい? なんだよいきなり」

「父さんがキバットをくれたみたいにさ、父さんにもいるんでしょ? キバットみたいなの」

「あ、あぁ。俺の父ちゃんがオトヤのパートナーだぜ」

 

二世もいるんだ、そりゃいるか、キバットがいるんだから。

 

「ちょっとその盗賊相手に試したいんだ、付き合ってよキバット」

「おいおい、盗賊とはいえ相手は人間だぜ? 殺しちまうかもしれないし、その逆も然りだ」

「殺されたならそれまでだし、相手は人に迷惑かける盗賊だから殺しても問題ないでしょ」

「オウ! 俺のパートナー物騒!!」

 

 

 

「まぁ、いずれ慣れとかないといけないしね」

「そりゃあそうなんだが…」

 

盗賊の根城であると噂されている場所目指して森の中を歩きながら、右手に持ったキバットが口を開いたのを見計らい左手に嚙みつかせる。

 

───ガブッ!

 

「…っ」

 

結構痛い、だが耐えれないほどじゃない。

それと同時に純度の高い魔力が体中を駆け巡るのを感じる。

腰に赤い止まり木が現れた、きっと自分の顔にはステンドグラスのような特徴的な模様が現れてるに違いない。

そしてそのままキバットを止まり木にかけ───

 

「…変身」

 

ついにその言葉を呟く。

キバットが止まり木に収まり、力が弾ける感覚の後、その身を確かに変えていた。

視点も高くなっている…身長も伸びたんだ。

複眼の先に盗賊団の連中が汚い笑いをあげながら宴が何かをしているのが見える。

とりあえず一番近いやつに向かってストンプでもかましてみよう。

というわけで。

 

「…さ、キバっていってみよう」

 

闇夜の中、キバとなったワタルはその場から跳躍したのだった。

 

 

ギャハハ、と下品な笑いが森の中に響く。

音の出所は件の盗賊団、彼らは守備よく家族で営んでいた行商人一家を全滅させ、連中は宴を楽しんでいた。

積み荷の中にあった食料を盛大に使い、彼らは飲んでや食えを繰り返していた。

 

「ったくよおぉ、美術品やらをあんなに詰め込んでこんな森ん中ほっつき歩くなんてよぉ、不用心な商隊もいたもんだぜえ」

「全くだぜ、あのババアの最後のツラ見たかよ!? 〝息子だけはぁ、息子だけは殺さないでぇん〟だとよ」

 

盗賊の連中は襲撃したときの光景を肴にしているようだった。

コップに入っている酒をグイっと飲み干して

 

「そんなわけで言ってやったわけよ、命が惜しくば金目のモノを───」

 

そう言おうとしていた男の言葉は続かなかった。

上空から現れた何者かが着地と同時に頭を踏み潰したからだ。

ごしゃり、と踏み潰され辺りに命だったものが散らばっていく。

 

「んー…流石の力だ、結構力も込めたしね」

 

何者か───キバとなったワタル───は周囲を見渡し盗賊の数を数える

 

「…ざっと十数人ってとこかな。試運転にはもってこいだ、今度は壊さないよう力加減を考えつつ、きっちりトドメも刺して行こう」

「俺の相棒こえーよ…」

 

何やら腰のベルトっぽいのが喋りだす。

訳の分からないまま、盗賊たちは仲間の仇を取るべくキバに剣を抜き放ち襲い掛かる。

しかし盗賊たちの持つ剣程度ではキバの鎧には傷一つつけられない。

そうこうしているうちに一人、また一人とキバの拳によって消されていく。

おまけにさっき呟いていた通り、一撃で殺せるはずなのに加減をしているように見える。

剣や攻撃を受け止めて、ガードしたり、いなしカウンターを叩き込みダウンを奪い、完全に動けなくなったモノをそのままトドメ…

 

なんて奴だ、と盗賊の一人は思った。

 

「ん。やはり前世の記憶が生きてるな。いい感じに動けてるし加減もバッチリ。…なぁキバット、タツロットって呼んでみていい?」

「こんなのに呼ぶなよタッチャンを。それでなくても、今のお前にはキバ本来の姿は暴走を招く恐れがあるからやめときな」

「ちぇー」

 

何の会話をしてるか分からない。

それでも盗賊の一人には一応のプライドがあった。

そうだ、自分はこれでもブシン流の免許皆伝なんだ。

せいぜい一矢報いるくらいは───

 

「───おぉぉぉぉっ!!」

 

咆哮と共に踏み込み、剣を振りかぶる。

狙いは胴、そのまま一気に接近し──狙おうとした盗賊の頭は、キバの放った回し蹴りと共にどこかに消えた。

 

「なかなかいい踏み込みだったな。もしかして今話題のブシン流ってやつかな」

「かもしれないな。そんでもって一応将来お前が学ぶ剣だぜ」

「…勿体無いことしたかな。もう少し動き見てから殺せばよかった」

「発想よ()」

 

一通り盗賊団は殲滅したキバはふむ、と考えながらそんなことをキバットと話した。

とりあえず弔っておこうか、と考えながら犠牲者の一人に近づこうとして。

 

「へぇ」

 

不意に気配を感じた。

そして同時に、その声も耳に入ってくる。

振り向くとそこには漆黒を纏った少年の姿が目に入った。

 

「驚いたなぁ。まさかこんなところで〝仮面ライダー〟に会えるなんて」

 

その単語を、耳にする。

この世界の人間では決して知ることのないその単語。

 

「…なぁ、今なんて言った?」

「え? …〝仮面ライダー〟って…」

「それだよ、今君、この〝キバの鎧〟を見て、確かにそう言ったんだ」

 

キバットが「?」と変な声を漏らす。

しかしキバはこんこん、とキバットをつっつき変身の解除を促した。

 

「い、いいのかよ、こんな得体の知れない奴の前で」

「いいんだ。…たぶん、知り合いなんだ。…古くからの、ね」

「…古くから…?」

 

目の前の漆黒の少年が訝しげにその言葉を返す。

そして一瞬逡巡したのち、ハッとしたように。

 

「…亘…?」

「───うん。久しぶり、ミノル」

 

キバの変身を解除し、ワタルは人としての姿を現す。

それに返すように漆黒の少年もフードを取った。

そこにはクルムズ家と親交のあるカゲノー家の長男…シド・カゲノーの姿があった。

察するに、彼もこの世界に転生していたのだ。

 

「驚いたなぁ、亘もこっちにいたんだ」

「…色々言いたいことはあるけど…また会えてよかったよ、ミノル…いや、シドっていうべきかな」

 

困惑するキバットを尻目に、亘とミノルは別世界で再会を果たしたのだった。

 

この再会が、世界にとって吉と出るか凶と出るか…それは誰にも分らない───

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