陰の実力者のお友達   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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今更ですがこの作品は

アニメ版
漫画版
書籍版
カゲマス版

を参考にしてます

あの今回本当はテロ襲撃までとこまで書きたかったんですが長くなりすぎそうなのでやめました

基本は書籍版になってます


9 色々渦巻く剣術大会

「ともかく、無事でよかった…」

 

アレクシアは医者に適切な処置を受けた後、自室のベッドで横になっていた。

先の言葉は見舞いに来てくれたアイリスのものだ。

 

「それと、通り魔事件はシャドウガーデンを名乗る何者かの仕業、ということね」

「はい。スカーと名乗る男はそう言っていました」

「…結局、彼らの実態も掴めないまま。…私も、先の王都襲撃事件でシャドウガーデンに関係する強力な魔剣士の存在を確認したわ」

「アルファと名乗ったそうですね」

 

アレクシアの言葉にアイリスは頷きながら

 

「他の報告からも、シャドウガーデンは極めて高い戦闘能力を持ってるのがわかったわ。そして、貴方からはシャドウとスカー…二人の男の存在と、シャドウガーデンという組織の名前も判明した。…逆に言えばそれくらいしかわかってない、奴らの目的もわからず、他は謎に包まれたまま…」

「シャドウたちは〝ディアボロス教団〟と敵対していました。彼らの目的は、やはり教団にあるのでは」

「現状の手がかりはそれだけ、か」

 

ふぅ、とアイリスは一度深くため息をついた。

 

「魔人ディアボロスを信仰する宗教団体だと思っていたけれど…思った以上に根が深いわね」

「例の放火の件ですか?」

「それもあるけど、〝紅の騎士団〟の予算が通らないの。しばらくは実費で運営することになりそうね」

 

その言葉にアレクシアは眉をひそめる。

思った以上に根深い、という姉の言葉から推察するに…

 

「教団の者は、文官にも潜んでいる…?」

「それはまだわからないわ。教団関係か、あるいは単に金で言いなりになってるだけなのか…。ま、騎士団設立が強引だった私が言えた立場ではないけどね」

「お金なら私も」

「気持ちだけで十分よ。騎士団が何人いるか知ってるでしょう?」

「…八人です」

「そ、たったの八人。私の資産だけでも十年は安泰だわ。今大きくしても意味もないしね、まだ敵も味方もわからないし」

 

苦笑いするアイリスに、アレクシアは少し言いずらそうに言葉を繋ぐ。

 

「…姉様の敵は、シャドウガーデンとディアボロス教団、どちらなのですか…?」

「───両方ね。この国で好き勝手なことはさせない」

「…姉様、シャドウガーデンと…シャドウやスカーと戦ってはいけません!」

「アレクシア、まだそんなことを言ってるの…?」

 

アレクシアはベッドから上半身だけを動かしてアイリスを見つめながら

 

「姉様はシャドウを知らないからそんなこと言えるんです! 王都の夜を染めた一撃もシャドウが放ったものです、今日遭遇したスカーも、計り知れない力を必ず持ってる…!」

「王都の光はアーティファクトの暴走という話で答えは出たはずよ。あれは人間が放てるものじゃない」

「そんな! 私は確かに見たんです、この目で!」

「貴女は何日も監禁されてて、記憶が曖昧だった。変な薬で幻覚を見てたのかもしれない。…私は貴女が嘘をついてるとは思わないけど…少し疲れていたのよ、色々あったあの時は」

「アイリス姉様っ!」

 

ついぞ手を伸ばしてアイリスの手を掴む。

アイリスは掴まれた手を優しく握り返して

 

「それに、それが本当だとしても、私は逃げるわけにはいかないの。私が後ろを向いてしまっては、この国を守れなくなる」

「…姉様」

 

アイリスは掴まれていない手で優しくアレクシアの頭を撫でる。

 

「今はゆっくり休んで、怪我を治しなさい。いいわね?」

 

◇◇◇

 

翌日。

登校しいつものメンツと合流するとヒョロが「ふふふ」と笑いながら

 

「お前ら、昨日のチョコは持ってきたか?」

「持ってきましたよ、ヒョロくん」

「うん。一応僕も持ってきたよ」

「僕も」

 

とはいえ今日渡そうと思ってた人(アレクシア)が今日休みらしいのだ。

まぁ深手負ってたみたいだし仕方がないか。

 

「いよっし! それじゃあ昼休みに作戦決行だ!」

 

 

まずは手本を見せると一番手ヒョロ。

向かったのは二年生の教室だ。

狙うは上級生らしい。

 

「あああああのこれ」

「おいお前、俺の婚約者になんか用事でもあんのか」

 

チョコを差し出した瞬間強面の男子学生に肩を掴まれた。

 

「え、あいやその」

「ちょっと話でもしようや」

「チョコはもらっとくねー」

「え!? あ、ちょ、まっ」

 

「行きましょうか」

「ね」

「骨は拾ってあげようか」

 

背後から聞こえるヒョロの絶叫を無視しつつ、三人はその場を離れたのだった。

 

 

二番手ジャガ。

彼の向かう先は図書館だ。

この学園の図書館は学術学園と共有しているからか結構広い。

とはいえ魔剣士学園の連中は脳筋が多いから利用なんてしない。

ワタル自身は暇になったらたまーに寄って時間を潰すくらいしかないが。

シドは適当に本を取り、戻しながらジャガに

 

「学術の生徒さんなんだ」

「はいっ。僕はヒョロくんと同じ轍は踏みません、相手のことは全て調査してあります! 交友関係から食事の好み、家族関係に実家の名産、寮の部屋番号に普段使いするお店、普段よく利用してるトイレに靴のサイズにその匂い、よく使う消臭剤と普段使う下着にスリーサイズに勝負下着、さらには使用済みのコップや歯ブラシ───」

「もういいはよ行け」

 

シンプルにキモいのでワタルはジャガを蹴っ飛ばし押し込んでとっとと帰ることにする。

 

「いやぁぁぁぁぁ!! この人ストーカーですぅぅぅ!! だれかぁぁぁぁ!!」

 

もう見るまでもない。

シドは適当にチョコを弄びながら歩いている。

 

「誰に渡すの?」

「適当に最初にすれ違った人かな。ワタルは?」

「まぁアレクシアに渡そうとしてるんだけど…今休んでるっぽいからね。最悪自分で食べようかな」

 

適当に雑談でも交わしながらシドと二人歩く。

すると何やらたくさん本を持った一人の桃色の髪の女の子が席に座った。

 

「この暗号…やっぱりお母さまが研究してたのと酷似している…」

 

何やらとても真剣なご様子。

シドとしても適当な誰かに渡せばいいのでとりあえず彼女に渡すことにしたようだ。

 

「はい」

「え?」

 

視界に入るように本の上にチョコの包みを置く。

当然ながらピンクの女子は困り顔だが素知らぬ顔で

 

「チョコあげる」

「え? え?」

 

いきなりチョコ渡して去っていくって結構変な人なのだが。

そういえばあのピンクの女子ってどっかで会ったような気がしたが、思い出せないからまぁいいや。

 

「…あのひと」

 

 

「なんだろう、これ」

 

甘い匂いのする包みを開けて、その物体をとってみる。

触れた感じは固めで、この物体からも甘い香りがする…なんだかいい匂いだ。

がちゃり、とドアを開けて入ってくるルスランが

 

「おや、シェリー。どうしたんだい」

「お義父さま」

「お、それはチョコレートだね。最近人気の高級菓子だ」

 

ルスランに言われそういえばと思い出す。

実物を見るのは初めてだった。

 

「さっき、男の子からもらったんです」

「ほう。だとしたらきっと、君へのプレゼントかもしれないよ、シェリー」

「───えっ」

「一目惚れ、というやつかもしれないね。それは並んでもなかなか手に入らない最高級のものだ、きっと君のために無理をしたのだろう」

「一目惚れ…」

 

そう言って初めて会った時のことを思い出す。

だとしても手を借りて立ったあと、散らばってしまった本を集めてくれた程度の出会いだ。

それも一目惚れに入るのだろうか。

 

「きっと君の答えを待ってるかもしれない。一目惚れでなくとも、友達にはなってくれるかもしれないよ」

「で、でも、私は…」

「人付き合いも大事なことさ。学園とはそういうものだ。それで、話は変わるが、解読は順調かな?」

「そっちは、まだ始めたばっかりで…」

「はは、それもそうだね…──ごほっ、ごほっ」

 

不意にルスランがせき込んだ。

シェリーは慌てて彼の背中をさする。

 

「お義父さま…! すぐにお医者様を」

「大丈夫、大丈夫だよ。…最近は調子が良かったのだけどね、病とは難しいものだ。でもありがとう、私は良い娘を持った」

「そんな。お義父さまが私を養子に迎え入れてくださらなかったら…」

「…君のお母さんは、優秀な研究者だった。研究、頑張りなさい」

「───はい、お義父さま」

 

そんなどこにでもいるような二人の親子を、夕焼けが包んでいた。

だがその夕焼けに照らされたルスランの瞳の奥に、誰も知らない思惑が潜んでいるのを、この時は知る由もなかった。

 

◇◇◇

 

本日は珍しくヒョロもジャガもいない学園生活。

シドはいたが、少し前ヒョロたちに無理やりエントリーさせられたブシン祭の選抜剣術大会の紙を受け取ってとにらめっこしてたが、何やらなんかやってみたいモブムーブを思いついたらしく今日は早めに帰ってしまった。

イメトレとか準備とかするんだろうなぁ。

ちなみにワタルは出る気はないのでエントリーはしていない。

いやさせられそうになったがなんとか阻止したわけである。

 

「ねぇ君、少し話せる?」

 

不意に誰かが声をかけてきた。

っていうか知ってる声だ、ワタルは声のほうへ振り向く。

そこには二年生の制服を着込み、お団子ヘアーの丸眼鏡をかけたニューの姿が

 

「…ニュー?」

 

小声で聞くと彼女はうなずいた。

 

「ほえー…化粧と眼鏡で変わるもんだなぁ」

 

カバンから覗いてきたキバットがつぶやく。

とりあえずこのまま音量は小声で会話を続ける。

 

「通うの?」

「いいえ、これは借り物です。着てれば目立たないので」

「そういうことか」

 

まぁ学園には知った顔より知らない顔のほうがいい。

木を隠すなら森の中、ということだろう。

 

「それじゃあ人気のないベンチにでも座ろう。シドには僕が伝えておく」

「ありがとうございます」

 

そんなわけで庭園を一望できるベンチに二人は腰を下ろした。

少々夕陽がまぶしい。

 

「先日の黒ずくめについて、ご報告いたします」

「ん」

「あの男を尋問しましたが、やはり情報を引き出すことはできませんでした。強い洗脳によって精神が破壊されており、その他の特徴からもその黒ずくめは教団のチルドレンサードであると思われます」

「ふむ」

 

ディアボロスチルドレン。

連中は少しでも魔力適正のあるものを見つけると孤児だろうが貧民だろうが誘拐、専門の施設で育てるのである。

そこでは厳しい訓練に洗脳、薬物の投与が繰り返されて、生きて卒業できるものは一割と噂されている。

サードとはその中でも出来損ない、捨て駒として運用される存在である。

精神崩壊してるので情報漏洩の心配もなく、戦闘力もその辺の騎士を上回る。

セカンドで精神は安定して、ファーストになると世界有数の実力者なんだとか。

 

「一連の事件に教団の影があるのは確かです。その目的は、我々を誘い出す事と思われます」

「なるほどね」

「ですが、目的はそれだけではありません。先日、王都でネームドチルドレンが確認されました。現在確認されたのはファースト、〝反逆遊戯〟のレックスです。奴らは何らかの目的をもって集結してると思われますが、現在は調査中です」

 

ネームドチルドレン。

チルドレンの中でもとりわけ組織に貢献したものに与えられる名前だ。

大体がファーストだが、稀にセカンドからネームドになったものもいる。

そしてネームドからラウンズに上り詰めた者もいて、連中の中ではネームドがラウンズへの登竜門となってるらしい。

余談だが元チルドレンファーストのネームドが現在ガーデン側に属している。

それらの情報はすべて彼女からの提供だ。

 

「連中は何かを企んでいます。我々も調査を続け、何か分かり次第報告に参ります」

「わかった、ニューも気をつけて。己の命と使命を天秤にかけないように。最優先は生きて戻ることだからね」

「───もったいないお言葉です」

 

ニューは少し声を震わせながら短く感謝の言葉を口にする。

生きて帰ること…七陰の皆もそんなことを常々言われてたらしい。

実際に言われてみると、何だか少し来るものがある。

常に先を行き、自分たちを見守ってくれるシャドウ。

自分たちに寄り添い、共に歩んでくれるスカー。

 

我らが盟主二人は、それぞれのやり方で今日も自分たちを導いてくれる。

 

「やっぱり学園には未練あるかい?」

「…本音を言えば、少し。本当なら今頃は二年生でした」

「オッケー。…それじゃあ、少しエスコートしようか」

 

そう言って立ち上がると、右手をニューへと差し出してきた。

ニューは戸惑いながらもおずおずと差し出してきた手を取り、ゆっくりと立ち上がる。

 

「歩くぐらいだけど、勘弁してね」

「…そんな。ですけど、ありがとうございます…」

 

繋がる手の温もりを感じながら、ニューは少しの間だけワタルに身を任せる。

…時間の流れがゆっくりになればいいのにな、なんてことを考えながら。

 

◇◇◇

 

学園最強の魔剣士は誰か。

一昨年くらい前は口を揃えてアイリスだと答えただろう。

故に彼女が卒業すれば王者不在の時代が訪れる…そう思っていた時、忽然のその人物は現れた。

 

名前をローズ・オリアナ。

 

芸術の国、オリアナ王国からの留学生であり、ラファエロの娘だ。

オリアナ王国はミドガル王国の同盟国であり、ローズの留学は予定されていたが、まさか芸術の国のお姫様がまさかミドガル魔剣士学園の王者となるとはさすがに誰もが想像できなかったわけだ。

そんなローズ・オリアナがシドの一回戦の相手であるという。

 

ヒョロは上級生のかわいがりで負傷中で、ジャガは女子寮への侵入で無事謹慎。

うちのモブ友はアホしかいない。

ちなみにシドには棄権という選択肢があったが、それをするなんてとんでもない、と言っていた。

 

彼曰く、一回戦で絶対王者に敗北する役っていうのはとても〝モブ〟っぽくない?

 

らしい。

うちの友達もアホしかいない()

まぁ本人がやる気になってるからいいとしよう。

 

「偉く気合入ってたなシドのやつ」

 

会場の隅っこのほうでキバットと会話する。

そんなわけで闘技場? のほうでシドとローズが向かい合っている。

金髪…蜂蜜色? そんな髪を戦いの邪魔にならないように巻いて、ファッショナブルな戦闘服…運動着? を着ていて、細身の剣を構えている。

スタイルも悪くなく、仕草の一つ一つがオサレだ。

当然ながら会場でシドを応援する声なんて一人もいない。

 

「お、なんかシドの剣少し震えてないか? アイツも緊張とかするんだな」

「別の意味の緊張だと思うけどね」

 

その気になればこの魔剣士学園で一番強いのはシドで二番目がワタルである。

絶対にその気になんてなんないが。

 

「一回戦、ローズ・オリアナ対シド・カゲノー! ───試合開始!!」

 

始まった瞬間だった。

ローズの剣がシドに迫る…当たり前だが試合に使う剣はちゃんと刃を潰しているが、当然当たればすごい痛い。

 

「ぺぎょぇぇぇぇぇえぇぇぇっ!!」

 

そんなローズの剣がシドに当たった刹那…吹っ飛びながら錐揉み回転して血をまきちらしながらシドがダウン。

いや、よく見れば血じゃない血のりだあれ。

会場は大歓声である。

そのまま吐血したようにまた血袋を破いた。

いやどんなモブでもそんな重症はしないだろ。

まだ目が死んでない、アイツまだ負ける気だ、と思いながら試合を見守った。

 

 

やりすぎやりすぎ。

やりすぎコージーである。

何回甦るねんアイツ、とワタルは軽くあくびをしながら、今もなお立ち上がっては多種多様な血しぶきをまき散らすシドを見守る。

まだだ! で立ち上がってもう十回目を超える。

ローズから見れば不屈の闘志を持っているのでは、とか思われてるんじゃないだろうか。

とりあえず言えることはあれはモブではない。

〝絶対に諦めないと胸に誓った不屈の騎士〟である。

どれだけの実力差があろうとも食らいついてくる、折れない心を持った男。

いつしか会場の声は静かになっていた。

あんまりにもしつこいシドに引いてるんだきっと。

 

「ストップ!! やめなさい、試合終了だ!!」

 

審判が割り込んで試合を強制終了させた。

おせぇよ、三回目くらいで止めろよ、と思いながらシドと合流しようとその場を後にするのだった。

 

 

選手用の入り口から入ると控室に戻る途中であろうローズとエンカウントした。

 

「あら、貴方は…」

「あーすいません、さっき貴方と戦ったシドの友達のワタルです。さっきの試合見事でしたよ」

 

そう言うとまぁ、と声をあげながら

 

「彼の友人でしたか。こちらこそ彼に伝えてください。勝負は私の勝ちでしたが…間違いなく心の戦いは私の完敗でした。…いい友人を持ちましたね」

「は、はい。伝えておきます、それじゃあアイツが心配なんでちょっと行きますね」

 

会話を適当に区切るとローズに一礼しつつ先を急ぐ。

担架で運ばれてたから医務室方面に向かってたはずだ。

とはいえ多分無傷だと思うので実際に医務室に入ったわけではないだろうが、とりあえず一旦医務室狙って歩いてみよう。

 

 

選手用の出口に向かったらちょうど向かってくるシドと合流。

見かけだけの包帯をしており、一応怪我人感が出ている。

シドはワタルを見やりながら

 

「どうだった? 僕の無様っぷりは」

「最初の一回は無様だったよ。それ以降はただ不屈なだけだった」

「えー?」

 

世界で二人しか理解できない雑談を交わしていると、ふとシドの方へと誰かが歩いてくるのが見える。

ピンク髪の女子生徒…いやこれ確か図書館でシドがチョコあげた子じゃなかろうか。

 

「あ、あの…」

「…ん? 僕?」

「はい…お怪我、大丈夫ですか…?」

「う、うん。重症は免れた、かも」

 

本当は傷一つ負ってないけどね。

そんなツッコミを飲み込んだ。

ピンクの女子は続ける。

 

「し、試合見てました。あんまり試合とか見たことないんですけど…何回も立ち上がって、カッコよかったですっ」

「そ、そう…?」

「はい…っ」

 

ほんのり顔を赤くしているピンク女子。

まさか友人のシドがフラグ立てたというのだろうか。

問題なのはシド本人がそういうのに一才興味がないことなのだが。

 

「その、これ…」

 

おずおずと小さめな包みを取り出すとそれをシドに渡す。

シドは頭に疑問符を浮かべながらその包みを受け取りつつ

 

「く、クッキー、焼いてきましたっ、ぜひお友達と食べてくださいっ…えと、あと、私とも、お友達になってくれませんかっ」

「? いいよ」

 

そうシドが返すとはわぁぁ、と笑顔になっていく。

 

「やった、お友達になれましたっ、お義父さまっ」

 

おとうさま?

女の子の視線の先から一人の初老男性が歩いてくる。

その男性には流石にシドとワタルも見覚えがあった。

 

「ルスラン・バーネット副学園長」

 

ワタルが呟く。

かつてブシン祭での優勝経験もある剣豪で、そんな彼を義父と慕う彼女の名前は───

 

「シェリー・バーネット…?」

「?」

 

今度の呟きはシドのもの。

っていうか思い出した、この子以前外でうっかりシドとぶつかった女の子じゃないか。

あんまり接点ないものだったから記憶から飛んでいた。

 

「シド・カゲノーくんだね。そして君は、ワタル・クルムズくん」

「は、はい」「どうも」

 

ルスランがシェリーの隣に立ち

 

「シドくん、怪我はいいのかい?」

「は、はいっ、なんとか、あ、加減してくれたのか、全然、意外と」

 

だとしたら絶妙すぎるな、とワタルは内心で思う。

ルスランは顎を撫でながら

 

「ふむ。まぁ彼女なら加減を間違えないだろうね。けど、念の為に診てもらいなさい。いいね?」

「は、はい、絶対に」

 

絶対に、医者にはいきません。

シドの目はそう語っていた。

ルスランはシェリーの肩に手を置くと

 

「仲良くしてあげてくれ。この子は研究一筋で友達があまりいなくてね。これは父としてのささやかなお願いだ」

「は、はぁ」

「僕らでよければ」

 

まぁ別にそれくらいなら構わない、か?

ルスランは二人の言葉を聞き届けると笑みを浮かべながら

 

「では、後は若い世代に任せるとしよう」

 

そう言ってルスランは踵を返しこの場を去っていった。

残ったのはシェリーとシド、そしてワタルだ。

はわはわしながらシェリーが口を開いた。

 

「えと…そうだ、まずお医者様に…」

「あ、いや、いい。大丈夫」

「え? で、でも…」

「大丈夫、あとで絶対行くから。絶対。あそうだ、お茶しよう、ね、ワタル」

「そ、そうだね。クッキーもいただいたしね」

「大丈夫なんですか…?」

「大丈夫、魔剣士は頑丈ですごいんだ、ね、ワタル」

「そうだね。魔剣士は頑丈ですごいからね」

 

半ばゴリ押し感が否めないがシェリーは微笑んでくれたのでヨシ!

その後三人でお茶してシェリーからもらったクッキーを食べて解散した。

何やら彼女は騎士団から依頼されアーティファクトの解析をしてるようだ。

研究一筋って言ってたものね、あとでちょっと調べてみようかな。

 

あと翌日から一応シドは怪我の治療ということで五日間休んだ。

休み明けにシドが登校した時、クラスメイトが少し彼にやさしくなった。

まぁあんなの見せられたらネ…

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