陰の実力者のお友達   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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今作ではシドはディアボロス教団を認知してはいますがそれだけです
基本は原作と同じ感じに自由にやります

またガーデンの存在も認知してますが流石に構成員全員は覚えてないです、これは定期的にアレクサンドリア行ってるワタルも覚えてない

認知してる関係でシドも七陰の皆に対してちょっと意識が変化しみんなを認識してます
わかりやすくいうとセカンドシーズンのオープニングの最後に七陰でてくるシーン、原典だと顔が見えないけどこっちだと顔が見えてるくらいには


10 狙われた魔剣士学園

そんなわけでシドが五日振りに登校したその日、午前の最後の授業が早めに終わった。

 

「今から生徒会選挙の候補者と、応援の生徒会長からの演説があるので、まだ席を立たないように」

 

生徒たちにそう言うと、先生は一度教室を出て行った。

教師はいいんだ、とワタルが思っているとヒョロが。

 

「そういや三年は今どこ行ってんだっけ」

「今週は確か課外授業で…」

 

ヒョロに答えようと前の席に座っていたジャガがこちらに顔を向けながら答える。

話している最中、教室の扉が開かれて二人の生徒が入ってきた。

二人のうちの一人は現生徒会長のローズ・オリアナだ。

ただの制服姿なのにどことなくオシャレオーラを感じるのは何でだろう。

 

「えと、本日は貴重な時間を頂きまして…」

 

慣れてない様子でローズと一緒に入ってきた一年の女子生徒が緊張した面持ちで話し出す。

前世の頃もそうだがこういうマジでどうでもいい会話は基本的にワタルはスルーしがちである。

ジャガが何かメモっている中、ヒョロとシド、そしてワタルの三人は適当に聞き流しているとふとシドがワタルに向かって小声で何か言ってきた。

 

「…今生徒会長こっち見てた気がしたんだけど」

「だね」

「もしかして一回戦で無様にやられたモブを覚えてる…とか?」

「かもね」

「ほぇー…たいしたもんだね」

 

そりゃ覚えるだろあんな何回も打ちのめされて起き上がるようなヤツ。

ローズだけでなく多分全校生徒に名前くらいは覚えられたと思う。

そう言いたくなる気持ちをワタルは堪えた。

そんな感じで生徒会長の話も聞き流すうちに───奇妙な違和感を覚えた。

 

「…あれ」

 

違和感を覚えたのはワタルだけではなかった。

常に体内で微細な魔力を練って訓練してるシドもまた、その違和感に気がついた。

魔力が練れなくなっている…?

ワタルもそのトレーニングをやってはいるが、常に、ではない。

しかしなんと言えばいいのか、纏う空気に違和感があるのだ。

しかしシド以外の人間は気が付いた様子はない…これは何か…来る?

 

「───来る!」

 

ワタルが思うのとシドがそうつぶやくのは同時だった

ドォォン! と大きな音が響き教室のドアが吹き飛んだかと思うと、そこから黒ずくめの男たちが入り込んでくる。

 

「全員動くな!! この学園は、我ら〝シャドウガーデン〟が占拠したっ!!」

 

そう叫んで出口を固めると、クラスの入り口に置いてあった皆の剣を破壊する。

 

「噓だろ…」

「マジかよ」

 

シドとワタルのつぶやきは周囲のどよめきにかき消された。

動ける生徒はいない、訓練か、いたずらか…本気なのか。

ほとんどの生徒が状況を理解できていないのである。

 

きっとワタルとシドだけがこの状況を把握できていた。

連中が本気であり、ほかのクラスでも同様のことが起こっており、なおかつ、魔力が阻害されているという事実。

 

「…すげぇ…!」

 

思わずシドの口からそんな言葉が漏れた。

感嘆の言葉だった。

でもまぁちょっとわかってしまう…連中はいわばテロリスト。

 

つまり、男の子なら一回は妄想したことがあるであろうシチュエーションなのである。

 

そう、〝学校がテロリストに襲撃されるシチュエーション〟が目の前に広がっているのだ。

 

流石にワタルも中学校あたりだったころ妄想したことがないわけじゃない。

やっぱり妄想したくなるのだあの頃は。

年を重ねるたびに流石に妄想はしなくなったが。

 

「席を立つな! そのまま全員手を挙げろ!!」

 

恐らく向こうはディアボロス教団で間違いない。

正直ワタルもちょっと興奮している。

まさかこんな状況が起こるとは思わなかった。

 

「ここがどんな場所か理解していないようですね」

 

凛とした声が響き渡る。

腰の細剣を抜き放ち、黒ずくめの一人と対峙するのはローズ・オリアナだ。

黒ずくめの一人は剣をローズに向けて

 

「武器を捨てろ小娘」

「お断りします」

「…見せしめにはちょうどいい」

 

黒ずくめも剣を構える。

いけない、彼女は魔力を使えない事に気が付いていないのではないか。

 

「! 一体何が…!?」

 

構えたローズが動揺する。

彼女も魔力が封じられていることに気が付いたのだ。

 

「───まずい」

「シド?」

 

不意にシドが小声で呟く。

ワタルは彼を見やり聞き返すと

 

「一番最初に殺されるのは、モブの役目だっ…!」

 

また変なこと言い出した。

とか短いやり取りをしてたのも束の間

 

「気づいたか、だがもう遅い!」

 

魔力を込めた剣がローズに向かって振り下ろされる。

刹那、隣のシドが飛び出した。

 

「やめろぉぉぉぉぉっ!!」

 

魂の叫びとも言うべき絶叫が教室の中にこだまする。

そのまま駆け寄るとローズを突き飛ばし───そのままざしゅり、とシドが斬られた。

シドは地面に倒れ伏す…っていうかマジで斬られたのか? 流石に無計画ではないと思うが…正直少し心臓に悪い。

とはいえあれは誰が見ても致命傷だろう。

 

「バカ…っ! どうして私を…っ」

 

いつの間にかシドはローズに抱きかかえられていた。。。

そんな呟きに応えるように、シドはうっすら目を開ける。

なんかやり遂げた男の顔をしてる。

そのままゴホッゴホッと血を吐き出すと、そのまま動かなくなった。

 

「シドくんっ!!」

 

彼女の言葉には涙が混じっていた。

ローズはシドの亡骸を抱え、嗚咽をこらえている。

…もしかしてなんかアイツはフラグを立ててしまったのでなかろうか。

 

「いい見せしめになったな。歯向かう気も失せただろう」

「っ!! …従います」

 

唇を噛んでローズは黒ずくめの一人を睨んだが、さすがにもう抵抗はできなかった。

とりあえずどうしよう、流石にこのまま拘束とかはされたくないが。

 

「今から大講堂に移動する」

 

生徒たちを立たせると拘束具で後ろ手に拘束していく。

続々と連れ出させる連中から一番最後になるように上手く列に並び最後の黒ずくめの男にワタルは賭けとして言ってみた。

 

「す、すいません…! トイレにだけ行かせてください…!」

「なに? 我慢しろ」

「おおねがいじまず…! すぐ済みますからぁ…!!」

 

全力で懇願する。

涙目になって声を震わせ這いつくばってお願いしてみた。

 

「…ち。仕方がないな」

 

そのまま少し列から黒ずくめと一緒に離れる。

大講堂に後から行っても問題はないのだろう、とりあえずトイレに一緒に向かって入って───油断してる黒ずくめの足を全力で踏み砕いた。

 

「おごっ!! 貴様!」

 

そのまま頭の側頭部に向かってハイキック。

バイオのメレー並みにいい蹴りがホワーッ! と叩き込まれ、黒ずくめはそのままダウン。

そしてトドメと言わんばかりに両足で全体重を込めて頭を踏み砕いた。

一瞬で物言わぬ肉塊となった元黒ずくめを尻目に、後ろ手の拘束をパワーで引きちぎると軽く背伸びをして

 

「とりあえずシドと合流するかな…」

 

そんな風につぶやいて一度教室へと戻るのだった。

 

 

教室に戻るとシドは蘇っていた。

いや完全に死んではいないのだろうが、とりあえずそう表現した方が適切だからそう呼んだのだ。

 

「やぁ、ワタル。どう? 僕のモブ式奥義、〝十分間の臨死体験〟」

「無策ではなさそうとは思ってたけど…また危ない橋渡るね、一歩間違えたら死んでたでしょあれ」

「まぁね。ギリギリを狙って、斬られたし。致命傷ももちろん避けたから…」

「やれやれ…。別に怒りはしないけど…友達を二度も〝見送りたくない〟からね、僕」

 

そうワタルに言われシドはハッとする。

そういえば彼は生前ミノルとしてのお葬式に参加していたのだ。

…流石にちょっとだけシドは反省した、いくらなんでも軽率だった。

今度からは事前に相談してからやろう、と心に誓いつつ

 

「それで、応急処置はできそう?」

「うん、魔力を細く加工すれば妨害を無視して使えそう。ワタルのほうは?」

「別に僕は魔力なくても戦えないことはないけど…なるほど、細く、か」

 

シドを見習いワタルも手のひらで細く加工した魔力をイメージして生成する。

 

「こんな感じかな」

「いいねー、さすがワタル」

 

そんなワタルを尻目にシドは斬られた部分を応急処置。

完全に治るのは時間がかかるだろうが、とりあえずなんか見つかっても奇跡的に一命を取り留めたとかで通じるだろう。

 

「さって。それじゃあ行こうかワタル」

「わかった、と待ってて、キバット連れてくるから」

 

 

そんなわけで二人(と一匹)して一度屋上に移動、そこから学園全体を改めて見回した。

どうやら皆大講堂に拘束されているようだ、講堂に移動するとか言ってたみたいだし。

生徒だけでなく学園の関係者は講堂に集められてるようだ。

 

大講堂とは全校生徒が余裕で入る大型のホールだ。

入学式や卒業式、終業式始業式なんかも執り行い、演劇や有名人の演説とかもする。

 

「外には騎士団の人たちもいるね」

「けど一定の距離を保ってる。きっと阻害されてるエリアとの境目なんだろうね」

 

そして今現在の学園は黒ずくめの連中がほかに生徒がいないか探し回ってるだけみたいだ。

そんな様子を見ながら、シドは思わず笑ってしまった。

 

「───ふっ」

「どしたの」

「いや、僕のやりたい事リストが一つ埋まったと思ってね。…〝屋上から見下ろす〟。ってやつ」

「あー、そういうやつ?」

「まぁちょっと前に高い所から街を見下ろす、という上位互換も達成できたんだけど…さてワタル、夜までどう時間潰す?」

「えー、夜まで待つの? とことん楽しむつもり満々じゃん」

「そりゃそうでしょ。こんな事もう数えるほどあるかないかなんだから」

 

ウキウキした様子でシドは色々と見回す。

ふーむ、と考えてやがて思いついたように

 

「そうだ、スナイパーごっこしよう」

「なにゆえ」

「連中の美的センスが欠けてると思ったからさ。こんな真っ昼間にあの黒ずくめ…正直どうよって」

「…あー…まぁ違和感、かな?」

「でしょ? 例えるならこれは白シャツでカレーうどんを啜り食べるようなものだ。そんな連中がシャドウガーデンだと周知されるのも嫌だ。だから今殺そうかなって」

「こえー会話すんなよ」

 

キバットのツッコミもシドはハハハと返す。

まぁ理由はなんにせよ邪魔な連中ではあるので殺すことに異存はないが…せっかくなら自分もちょっと遊びたい、とワタルも思った。

もう少し魔力を練れればスナイパーライフルみたいなやつでも練ったんだけど。

ちらりとシドを見るとスライムを小さい弓矢のように加工し、それを使ってスライム矢を放っていた。

器用なやつである。

バッシャーマグナムがあればなー。

 

「…ん? シド、あれ」

「え? なに?」

 

不意に視界に入ってきたピンク髪の女子。

何かを大切そうに握っているあの子の名前はシェリー・バーネットだ。

 

「シェリーじゃん。何やってるんだあの子…ていうかバレてるバレてる」

 

てちてちと動くシェリーは普通に黒ずくめにバレてるのですかさずシドがスナイプ。

ビューリホー、である。

 

「…僕のモブ直感が告げてる。彼女、何かあるね」

「そういえばアーティファクトの研究かなんかしてたとか言ってたね。もしかしたらこの状況どうにかできるかも。行ってみる?」

「もち。そんなわけで…高いところから颯爽と飛び降りる、も達成っ!」

 

そんなこと言いながら屋上からシドがジャンプした。

キバットはやれやれと言った様子で

 

「元気だなぁアイツ」

「ま、なんだかんだこのシチュエーションは男の子は興奮するものさ。僕も少し浮かれてる」

「テロリスト…もとい教団の連中が可哀想だぜ」

 

キバットの言葉に笑って返すとワタルもまた、屋上から飛び降りるのだった。

 

 

ペタペタと音が響きながら、シェリーは先を急いでいた。

 

「っ」

 

不意に背後から物音がした…が、何もない。

気のせいだ。

はふぅ、と一息。

慎重に彼女なりに警戒をしながら、シェリーは手に抱いたアーティファクトをぎゅ、と強く握りしめる。

 

「魔力が使えない…これが事実なら、原因は多分…! 副学長室に急がないとっ」

 

ペタペタと可愛らしい音が廊下に響く。

曲がり角を曲がった時、黒ずくめと鉢合わせしてしまった。

すかさず戻り目を瞑る…殺さないでと念じながら…気がつけば静かになっていた。

恐る恐る目を開けるとそこにはもう誰もいなかった。

 

「き、気のせいだったんだ」

 

安心した。

はふぅ、と息を吐くと再び目的地目指してぺたぺたと走り出す。

そうして走っていると後ろの方に視線を感じて振り返る…が、誰もいない。

やっぱり気のせいだ、シェリーはまたぺたぺたと歩を進めた。

道中教室からも声がしたと思ってちらっと確認したがやっぱり誰もいなかった。

状況が状況だから神経が過敏になっているんだ、と結論づけてもう一度走り出した刹那、足がもつれて転んだ。

べちゃりと倒れた視線の先に、空中に投げ出されてしまったアーティファクト。

地面に落ちる…寸前で誰かがぱしっとキャッチした。

キャッチしてくれたのは最近できた友達二人。

 

「し、シドくん…ワタルくんっ…まって、シドくん、その怪我…!」

「大丈夫、奇跡的に一命を取り留めたんだ。奇跡的にね」

 

何故か二人は少し疲れた様子だった。

先にワタルが口を開いた。

 

「…色々いいたいことがある。独り言はやめようね、とか思考しながらの移動もあぶない、とか足元注意、とか色々あるが」

「とりあえず、最初にそのペタペタうるさいスリッパを脱ごうね」

「…は、はい」

 

ちょっぴり顔を赤くしながらシェリーは頷くのだった。

 

 

合流するまでの間、シドはスライムを用いたステルスキル、ワタルは物理的なステルスキルを用いてジャマなディアボロス教団を始末した。

っていうかシンプルに疲れた…あの子警戒とか一切しないんだもの。

見つかりそうになったとき適時こっちで始末したのである。

因みにワタルは首狩り…もとい首をへし折って始末した。

仕事人みたいなことやってみたかったんだよね。

あるいはハンク。

さらに一緒に向かう途中も数人ほどあの世に送らせていただいた。

シェリーと一緒に向かった先は一階奥にある副学長室だった。

少し重厚な扉を開けると、趣味のいい応接セットがまず目に入ってくる。

奥にある実務用の机に資料が重なり、窓から光が差し込んでいる…が、副学園長であるルスランはいないみたいだ。

上手く逃げているのか…はてさて。

 

「えっと…確か、この辺に」

 

勝手知ったる様子でシェリーは机の引き出しなどを漁りだす。

手慣れた様子から察するにシェリーはこの副学長室によく来てるみたいだ。

まぁ養子だから当然か。

 

「あったっ」

 

そんな声が聞こえてきた。

彼女は資料を抱えて戻ると応接セットの机に並べていく。

 

「…シド、わかる?」

「いや流石に。専門外だよいくらなんでも」

「だよね」

 

流石に文字やら図形やら数式の意味はシドと二人まったくわからん。

シドが問う。

 

「これは?」

「〝強欲の瞳〟というアーティファクトです。そして、魔力阻害の原因が、恐らくこれです」

 

そういってピンポン玉のようなサイズの球体のデッサンを見せてくる。

…モンスターファームのスエゾーみてぇだ、と思ったのは内緒。

 

「この〝強欲の瞳〟は周囲の魔力を吸収、貯め込みます。だから、これが発動するとその周辺は魔力の錬成が難しくなるんです」

「黒ずくめの連中は使ってたけど…それも何かトリックが?」

 

ワタルが聞いた。

 

「予め魔力の波長を覚えさせたんだと思います。そうすれば吸収されないことは確認済みです。でないと、使用者本人の魔力まで吸収してしまいますから。他には、瞳が感知できない、極めて繊細な魔力や、用量を超える強大な魔力とかは吸収できないと思いますけど、そんな魔力は今の人間には使えませんし…推測の域を出ません」

 

お、そうだな()

ワタルは苦笑いした。

 

「これだけなら扱いが難しいアーティファクトですが、〝強欲の瞳〟は貯め込むだけ溜め込んだ後、一気に解放してしまうみたいなんです」

「一気に」

「解放」

 

シドとワタルが呟く。

そしてシェリーも二人の顔を見て頷いた。

 

「はい。一気にすべてを。たしか、学園の生徒はすべて、大講堂に集められているんですよね」

 

シドとワタルはうんうんと首を縦に振る。

 

「魔力吸収の効率を考えると、当然大量の魔力…在学する多くの魔剣士が囚われてる大講堂に、〝強欲の瞳〟を配置するはずです。もし、貯め込まれた魔力が許容量を超えて一気に解放されてしまったら…」

「学園が吹っ飛ぶね」

「あぁ。木端微塵だ」

「はい…この〝強欲の瞳〟は、以前私が研究し、解明したものです。その危険性を考えて、お義父さまは学会に公表せず、国に保管してもらってたはずなんですが…なんでこんなことに」

「同じのがもう一個あったか、或いは盗まれたのか…」

 

───そもそも、保管なんて頼んでなかったか、だ。

シドの言葉に合わせて、ワタルは思考した。

まぁ杞憂だったらいいのだけれど…

 

「対処方法は」

「これです」

 

ワタルの言葉にシェリーはずっと持っていた十字のアーティファクトを見せてくる。

 

「これは〝強欲の瞳〟の制御装置なんです。解読してやっとわかりました。本来、〝強欲の瞳〟はこの制御装置を使って、魔力を長期保存するためのアーティファクト…」

「長期保存…つまり解放を止められるわけだね」

 

シドの言葉にシェリーはぱっと顔をあげ

 

「はいっ、すごいですよね、この自在に魔力を保存、運用する記述を再現できれば、蒸気機関に代わるブレイクスルーにだって…」

「っと、テンションが上がる気持ちはわからないでもないけど、具体的にはどうするの」

 

何やらヒートアップしそうだったのでシドが話を促した。

こほん、とちょっと恥ずかしそうに咳払いしてからシェリーは続けた。

 

「これの解析が終わったら、地下から大講堂に向かいます」

「地下から」

 

ほう、という感じでシドがいった。

地下なんてあるんでチカ(激ウマギャグ)

 

「はい。この学園の施設はすべて、緊急時用の脱出に使うための通路に繋がってるんです」

 

隠し通路というわけでチカ。

テンション上がるでチカ。

もうしつこいからやめよう。

 

「起動したアーティファクトを〝強欲の瞳〟に近づけたら、機能が停止するはずです」 

 

ふむ、とシドが小声でワタルに相談してくる。

 

「割とイイ感じの作戦だね。最後が少し弱いかな」

「その時は僕たちで暴れればいいよ」

「だね。───うん、それでいこう」

 

相談を終えてシドがシェリーに言った。

ただシェリーはバツが悪そうに

 

「ただ、調整に必要な道具を、研究室に置いてきてしまって…」

「それなら、僕がとってくる」

 

そういって立ち上がるのはワタルだ。

 

「僕もいけるよ、ワタル」

「お前は一応怪我人でしょ。今は休んでおいて、念のため」

「───それじゃあ、お言葉に甘えようかな」

 

ワタルはシドに小声で。

 

「ここに敵が来ないとも限らないしね。一応守ってあげなよ」

「りょーかい。トイレとか行ってくるついでに見かけたら始末するね」

 

シドと軽くグータッチして、ここは彼に任せることにしワタルが扉へと向かう。

 

「あ、あの、ワタルくんっ、気をつけてくださいねっ」

「大丈夫、任せて」

 

シェリーにそう言うとワタルは扉を開けて廊下へと躍り出た。

そして扉近くの窓で待機していたキバットと合流。

 

「さてさて、面倒なことになってきたなぁ、ワタル」

「取りに行くくらい、わけないさ」

 

そのままキバットは肩に降り、一人と一匹は歩いていくのだった。

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