陰の実力者のお友達   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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また長すぎ謙信になりそうだったので一旦切り上げました
次回のサブタイトルどうしよう、と考えたとこでアプリ版のやつ参考にしようとおもいますまる
まぁ今回は原典のサブタイじゃないんですけども()


15 瞳の中のヴァイオレット

会場の外のとある建物の屋上。

そこにシドはいた。

ふぅ、と軽く溜息を吐きながら

 

「今頃会場は、謎の実力者シャドウのうわさで持ち切りのはず。モブの僕のことなんか覚えてないだろう。…大丈夫? 結構派手に動いたけど」

 

肩掛けバッグのジッパーを開けると、そこから目を回したキバットとタツロットが出てきた。

 

「いや、普通にぐわんぐわんだぜ…」

「目が回ってますぅー…」

「ははは、ごめんごめん。ワタルもまだ時間かかりそうだし…今日は頑張ったから、温泉にでも浸かろうよ」

「お、いいねー。あ、でも俺たち入れるかな…」

「あ、そっかぁ…最悪朝風呂の誰もいなさそうな時間帯を…」

 

そういって背伸びをした、その時だった。

ぶぉん、と大きい赤い光を放つ魔法陣の扉みたいなのがシドの前に現れた。

 

「…なにこれ」

「大きめの扉ですかねぇ」

 

タツロットが首を傾げながら呟く。

大きめな扉はなんだか入ってほしそうにじっと動かない。

でも入るとめんどくさそうな予感がしたシドは

 

「二人ともまたバッグ入って」

「どーすんだ」

「逃げる」

 

バッグにキバットたちが入るのを確認して、シドは魔力を用いた高速移動で別の建物の屋上へと瞬間移動に見えるほどの高速移動をする。

これで扉から離れたと思ったら、移動した先で扉も瞬間移動してきた。

 

「…」

 

マジぃ? と思いながら何度も移動を繰り返すとその都度扉も移動を繰り返してシドの近くについてくる。

 

「…異世界式どこでもドア、かな?」

「これはもう入るしかないんじゃねーか…?」

「…それしかないか。さっさと終わればいいんだけど」

 

ひょっこり顔を出したキバットに言われ、シドは仕方ないと思いながらもその赤い扉に入っていく。

扉を潜り抜けると、その魔方陣みたいな扉は消えるようになくなった。

後に残るのは、何もない、どこにでもある風景だけだった。

 

 

「何かしら、赤い、扉…?」

「あ、新たな戦士が出てくるのでしょうか」

「魔女の後よ、魔人でも出てくるのかしら」

 

赤い扉を見ながらそんな会話をするアレクシアとローズ。

ナツメ、ことベータはそんな扉を目にしながら静かにじっと見つめていた。

 

「ま、まさか…シャドウに聖域が応えたというのかっ」

 

ネルソンが焦りを見せつつそんな言葉をつぶやく

当然ながらその言葉はほかの人の耳に入る

 

「司教さま、応えた、とは」

「え、あ、ああいえ、ご存じの通り、今日は年に一度、聖域の扉が開かれる日です。しかし、女神の試練の最中に扉が現れるなんてこれまでは…」

「聖域の扉は聖協会にあると聞いていましたが」

「えぇ、ですが扉は一つだけではないのです。聖域はその扉を叩く者によって迎える扉を変えるのです。あの扉がなんなのかは、入ってみるまではわかりません…」

 

ローズとアレクシアの言葉に、ネルソンは返答していく。

ワタルの方もへぇーなんて考えながらじっとその扉を見ていた。

やがてその扉の黒い線に白い光が通っていく。

 

「いかん、扉が開いてしまう、信徒たちを外へ出せ! 一人も近づけさせるなぁ!」

 

ネルソンの言葉もそこそこに、観客や来賓の人たちを外に誘導していく。

その間も扉は少しづつ開いていく。

やがて一人分の扉が開いたところでローズやアレクシア達にも声がかかる。

 

「ささ、皆様にも万一のことがあってはなりません。退室を───」

 

そう王女たちに促したその時、アレクシアとローズは剣の柄に手をかけて、背中合わせになって身構えた。

ワタルは知ってはいるのでとりあえず形だけ剣に手をやり、いつでも抜けるよう身構えたフリをする。

それにネルソンは狼狽える。

 

「な、なにがっ」

 

そしてネルソンが周囲を見渡すと、いつのまにか黒い装束を着込んだ集団が辺りを囲んでいた。

ローズやアレクシアも、直前までその気配を察することも出来なかった。

 

「悪いけど、扉が閉まるまでの間、大人しくしていてちょうだい」

 

美しい声が聞こえてくる。

 

「は、はわわわわ…」

(ちょっとベータわざとらしいって)

 

今ここにいるのは小説家ナツメなのでベータは怯えたフリをする。

ちょっとあざといかぁ?()

 

「き、貴様ら…まさか、〝シャドウガーデン〟かぁっ!?」

 

ネルソンの言葉に、先ほど言葉を発した金髪の女性が前に出る。

彼女の視線が、アレクシアとローズを一瞬捉える。

それだけて、二人は身震いした。

 

(この人…っ!)

(強い…っ!)

 

視線だけでも感じるほどだ。

チラリとワタルも見やる…こんな強者が彼の上司なのだろうか。

ローズとオリアナにとって、剣での最強はシャドウ、次点でスカーだ。

だがこの目の前の金髪の女性は、少なくともその二人の足元に届いてる…そんな気がしてならない。

 

「イプシロン。後は任せたわ。いい子にしててね、お嬢様方」

「了解しました、アルファさま」

「! 待て、勝手に聖域に入るんじゃないっ!」

 

いつの間にか現れていた女性にそう告げ、アルファらは歩いていった。

ネルソンの怒号を無視して、アルファは部下と思われる人たちと吸い込まれるように扉に入っていく。

 

「消えた…」

「何をしようというのです、あなた達はっ!」

 

アレクシアの呟きをしり目に、ローズはイプシロンと呼ばれた女性にそう問いかけた。

イプシロンはこちらに向かって歩み寄りながら

 

「あなた達には扉が閉じるまでの間、大人しくしていてほしいだけ。ただ、そこのハゲには一緒の来てもらう」

「! 聖域で一体何をするつもりだ!」

 

ネルソンの頭が光った。

 

「何をする、かではない。何があるか、だ」

 

そうイプシロンが口にしたとき、再び別の黒装束を着た人たちがネルソンとナツメの近くに現れ、二人を拘束する。

 

「う、うわぁぁぁぁぁん」

「動いたら…わかってるわね?」

 

イプシロンはアレクシアとローズへそう牽制の意味を込めて言った。

っていうかベータ演技があざといって。

動くたびに主張している胸にアレクシア白けた目線を向ける。

 

「ナツメ先生!」

「…見捨てるというのもありなのでは」

「だめですよ!」

 

アレクシアの提案を当然ながらローズが一蹴する

 

「わ、わたしなら大丈夫ですぅ」

 

そう言って胸がたゆんと揺れた。

揺らしたのだろうか。

アレクシアは思わず「うさんくさ…」と口にした。

イプシロンも(その気持ちわかる)と心の中で同調した。

そしてチラリと扉を見やる。

 

(…入る人は選ばない…でも開きっぱなし、というわけでもないか)

 

イプシロンの推察通り、入る人は誰でも構わないようだ。

しかし少しずつその扉は閉じてきている。

イプシロンは部下の方へ目線をやりながら。

 

「我々も内部へ向かう。来いハゲ」

「───はっ! 向かうなら一人で行くが良いわ! あの世へなぁ!」

 

そうネルソンが叫んだ刹那…今まで闇に隠れていた〝処刑人〟が動き出す。

処刑人は常人には見えないであろう速度でイプシロンを斬り殺そうと刃を降り…下ろそうとした所で、ワタルがナックルから放った衝撃波が処刑人を吹っ飛ばした。

 

「な、なに!?」

 

ネルソンが驚きの声を上げる中、ワタルはイプシロンの隣に移動しつつ服の下に巻き付けていたイクサベルトを取り出して再度巻き付ける。

ワタルは〝処刑人〟を見ながら改めてナックルを構え直し

 

「来賓席に来た時から妙な視線をずっと感じてた。…正体はアンタだな」

「ワタルっ」

 

アレクシアの声が聞こえる。

ワタルは軽く手で返事をしつつ

 

「ガードの仕事は一旦おしまい。…ここからはガーデンとして動くよ」

<レ・ディ・イ>

 

アレクシアに返事をしながらワタルはナックルを左手に押し付ける。

そしてナックルを持った右手を左側に突き出してゆっくりと右側に動かしながら

 

「変身」

<フィ・ス・ト・オン>

 

伸ばした手を一瞬顔の近くに構えながらベルトにセット。

今回の変身は音也リスペクトだ。

ナックルから現れた幻影がワタルに重なり、その姿を仮面ライダーイクサへと変える。

ローズと、ついでにネルソンがその姿を見て表情を驚きに染めた。

 

「わ、ワタルくん…!?」

「な、なんだとっ…!? 貴様、関係者だったのか!?」

「一緒にするなハゲ。…宵闇に紛れ女性を手にかけようとする不届き者め。───その命、神に返しなさい」

 

イクサとなったワタルがそう〝処刑人〟に向かって言い放つとクロスシールドが展開、バーストモードとなったイクサの赤い複眼が敵を見据える。

今回はカリバーを用いず、素手で行こうとゆっくりと〝処刑人〟に向かって歩き出す。

〝処刑人〟とやらは喋れないのか喋らないのか知らないが刀…小太刀かな? を逆手に構えながらバーストイクサに向かって、一瞬で距離を詰めて攻撃を仕掛けてくる。

最も、一瞬と言ってもそれはローズやアレクシアなどが見て一瞬であり、バーストイクサやイプシロンから見ては目で追える速さでしかない。

繰り出される小太刀の一撃を容易く防ぎ、そのまま小太刀を持ってる腕を掴みながら、地面に身体を叩きつける。

〝処刑人〟の身体を足で踏みつけて動きを封じながらちらりと扉の方を見る。

少しずつ閉じているから、のんびりしてられない。

とっとと消そう。

 

「じゃあな」

<イ・ク・サ・ナッ・ク・ル ラ・イ・ズ・アッ・プ>

 

足に力を入れて動きを封じつつダメージを与え、フエッスルをベルトにセットし、チャージ。

流れるようにナックルを外して、〝処刑人〟にブロウクンファングを叩き込んだ。

上半身が吹き飛ぶ寸前まで、〝処刑人〟は声を出さなかった。

ボン、と先ほどまで〝処刑人〟だったものが広がる。

 

「ば、バカな…ヴェノムがこうも…っ!?」

「出過ぎた真似でした、イプシロンさん」

 

変身を解除しながらイプシロンの部下のフリをする。

報告でアレクシアにはシャドウガーデンに所属している、ということを言っていることは知ってるはずだ。

とりあえず七陰の部下ということにでもすれば大丈夫だろう。

 

「───いいえ。礼は言わせてもらうわ、ワタル」

 

すかさずイプシロンも上司のフリをしワタルに答えた。

だがイプシロンの内心は穏やかではなかった。

 

スカー様のお手を煩わせてしまった。

 

彼が手を出してくれなければ間違いなく攻撃されていたのはイプシロンだろう。

油断も慢心もしてたつもりはなかったが、不意を突かれたのは事実だ。

まだ精進が足りない。

 

「おら、とっとと来いハゲ」

「ぬ、ぬぉぉぉっ」

 

イプシロンに連れられてネルソンやナツメも扉の中に入っていく。

他のガーデンのメンバーも入るのを確認すると、ワタルも入ろうとしたその時

 

「ワタルっ」

 

アレクシアが追おうとしてるのが目に入ってきた。

ワタルは手で静止するジェスチャーを取りながら

 

「本音を言うと関わってほしくはない。…でも選ぶのは君だ」

「ワタルさん…貴方は何者なのですか…?」

「好奇心は猫を殺す、とも言いますよローズ先輩。僕はシドの友達…それだけです」

 

問いかけてきたローズにもそう返事をしてワタルもその扉の中に入って消えていく。

残されたのは、アレクシアとローズだけ。

 

「選ぶのは、私、か。…ならわかってるでしょう!」

 

閉じかけてる扉に向かって、アレクシアは飛び込んだ

 

「あ、アレクシアさんっ!? ───あぁもうっ!!」

 

扉に入っていくアレクシアに制止の声をかけるが時すでに遅し。

こうなったらどうにでもなれ、そう思いながらローズもアレクシアを追いかけるようにその扉に飛び込んだ。

ローズが中に入ったとき、扉は完全に閉じ切り、あたりには静けさだけが残るのだった。

 

 

扉の中はなんだかよくわからない場所に繋がっていた。

薄暗くはあるが、それでも皆の顔が見えないほどではない。

イプシロンは一旦ネルソンを近くにいた仲間───カイに任せてワタルのとこへ歩いていく。

彼の前に行くと跪きながら

 

「スカー様…先ほどはお手を煩わせてしまい、大変申し訳ございません…」

「気にしないでいいよ。誰だってミスはする。あいつは隠密特化だったからね、姿を見せるまで視線しか感じなかった。そこそこの手練れだったよ」

 

無論、イプシロンのが強いけどね、とワタルは付け足してくれた。

 

「失敗を気に病むことはない。認めて次への糧にすればいい、経験は強さを形作っていくんだから。ね」

 

そういってイプシロンの頭をぽんと優しく撫でてくれる。

頭の中にうっすらと彼のぬくもりが伝わり、少しだけイプシロンは頬が熱くなった。

その後彼はせっかくだからカイやオメガにも挨拶しようかな、と歩こうとしたその時だった。

 

「───わあぁぁぁぁぁぁっ!?」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

まだ開いていた扉から二人の王女が落ちてきた。

ワタルはやっぱりなあ、と思いながら今なお落下してくる王女たちを、落ちてくる場所に当たりをつけて受け止める。

アレクシアは身体と右腕で、ローズは頑張って左腕で胴の部分を受け止めた。

鍛えてなかったら折れてたかもしれん。

 

「い…づ!」

 

それでも痛いもんは痛い。

アレクシアは恐る恐る目を開け、ワタルが受け止めてくれたと気が付くと僅かに頬を朱色に染めて

 

「あ、ありがと…」

 

気づいたのはローズも同じタイミングだった。

そしてワタルの体制が結構辛そうだと判断してすかさずローズは彼の腕から離れる。

 

「あ、ありがとうございます、ワタルさん…」

「い、いえ。お気になさらず」

 

ぶんぶん、と軽く左腕を振って調子を整えつつ、アレクシアに離れるよう背中を軽く叩く。

 

「アレクシア? そろそろ離れて?」

「いいじゃない、もう少しこのまま」

「いやいろいろ困るから。マジで」

「いつまでそうしてらっしゃるのでしょう」

 

駄々をこねるアレクシアをにこやかな笑顔で見つめるナツメことベータ。

あら、と周りの状況に気づきしょうがないわねと言わんばかりにアレクシアはワタルから離れた。

そしてローズも周りの視線やアルファの視線を受けてとりあえず敵意がないことを示すように両手を上げる。

はっとしたナツメがワタルの近くで震えだした。

ぷるぷるしている彼女を見て、私がどうにかしないと───ローズがそう思ったとき「ん、んっ」とアレクシアが一歩前に出た。

 

「ごめんなさい、躓いて転んでしまったの。転んだ先に扉があって、どうしようもなかったのよ」

 

堂々たる振る舞い。

説得力というものは、そういう堂々とした姿勢から生まれるということをローズは学んだ。

あからさまに噓だろうといっそ目的を果たした悪役のように、堂々としていればもう指摘するのも面倒になる。

だからといって堂々としすぎだねこれねって感じではあるのだが。

 

「…大人しくしてるのなら好きにしなさい。それに、もしかしたら貴女たちも知るべきかもしれない」

 

そう言ってアルファは踵を返し歩いていった。

他に行くところもないので、アレクシアやローズもワタルと一緒にアルファの後ろをついていく。

時折自然とワタルの隣をいくアレクシアにベータの視線がすごい刺さるが、一旦ワタルはスルーすることにした。

 

「この地は、〝英雄オリヴィエ〟が討ち果たした魔人ディアボロスの残骸、その左腕を封じた地と伝えられている」

「そ、それがどうしたっ、おとぎ話を頼りに左腕でも探しにきたのかっ」

「それも楽しそうだけれど、私が知りたいのはディアボロス教団のことよ」

「んな、っ、何の話だ」

 

動揺が言葉に漏れている。

とはいえ答えれるはずもないか、とワタルはまたアルファを見ながら話に集中した。

 

「答えられないのはわかってたわ。だから直接見に来たの。歴史の闇に葬られた真実を探しに」

 

アルファの先にあるのは英雄オリヴィエと思われる銅像だ

なんだかアルファに似てる気がする

けど地上にあった銅像は男性の形をしていた気がする

 

「…英雄オリヴィエの像」

「そんな、男性のはずでは…」

 

ワタルの疑問を代弁するかのようにローズが言った。

ナイスタイミングである。

 

「我々はおおよその事は理解している。歴史の真実も、教団の本当の目的も、そしてなぜこの英雄が…私と同じ顔をしているのか」

 

そう言ってアルファはこちらに向かってスライムで生成していたフードを解除し、ガーデンスタイルでの姿をさらけ出す。

ネルソンはその顔を見て驚きを隠せない様子で

 

「き、貴様はエルフの悪魔憑き…!? だ、だが適合できずに死んだはず───」

「やはり何か知ってるな?」

 

ギリギリ、とイプシロンは拘束している力を強くした。

強められた力に、ネルソンは顔を歪める。

 

「我らは〝悪魔憑き〟の真実を知っている。今の秩序を維持したい教団にとっては、さぞ邪魔でしょう」

 

一方で離れたところにいるローズやアレクシアは、アルファの言っていることの一割も理解できないでいた。

当然だ、言ってしまえば彼女たちは部外者なのだから。

けど、でたらめを言っているようにも見えなかった。

そんな彼女たちを気にするでもなく、アルファは続ける。

 

「教団の目的も単なる魔人の復活ではないことも察している。だが確信はない。だから───みんなで直接見に行きましょうか」

 

そう言ってアルファは石像に魔力を込めていく。

 

「かつて、ここで大きな戦いがあり、数多の命が散った」

 

魔力が高まり、大気が震える。

そのあまりの魔力の量に、ローズは戦慄を覚えた。

もしこれの矛先が国に向いたのなら、かなりの戦力が費やされるだろう。

 

「こ、この魔力やはり〝悪魔憑き〟…!? 自力で覚醒したとでもいうのか…っ!!」

 

アルファの魔力に呼応するように、象の奥にある扉のようなものが開いていく。

ネルソンはその光景にまた驚いた。

 

「馬鹿な、なぜ起動するっ!?」

「魔人と戦士たちの魔力が渦巻き、その魔力の渦に行き場を無くした記憶が封じ込まれた。ここは、古の記憶と魔人の怨念が眠る、いわば墓場…」

 

いつしかアルファの隣には、もう一人の誰かが立っていた。

それはアルファによく似た、英雄オリヴィエだった。

 

「さぁ、御伽の世界に旅立ちましょうか」

 

光が辺りを包み込むころ、そんなアルファの声が聞こえた。

 

◇◇◇

 

「やあ」

 

シドが扉を開けた先に、彼女がいた。

彼女は彼を認識すると、そのヴァイオレットの瞳に彼を移しながら

 

「…やぁ?」

「もしかして、君が僕を呼んだのかな」

「そんなつもりはないのだけれど。でも、さっきの戦いは楽しかったわ」

「僕も楽しかったよ。親友とやってるみたいだった」

「私の記憶は不完全だけど、それでもあなたが一番強かったわ。その口ぶりだと、そっちにもあなたみたいに強い人がもう一人いるみたいね」

「うん。僕の友達は、きっとヴァイオレットさんといい戦いができるよ」

「いいなぁ。あなた達が私の時代にいてくれればよかったのに」

「光栄だね」

「いや吞気に世間話してる場合かよ」

 

ぱったぱったと羽を動かしてバッグからキバットが出てきた。

そんなマスコットみたいなコウモリを見たヴァイオレットさん…もとい、アウロラはまぁ、と声を零す。

 

「見慣れない使い魔ね、あなたの?」

「いいや、さっき言ってた友達の。ちょっと色々あって預かってるんだよね」

「そうなの? そういえば、どうしてあなた達はここに?」

「変な扉に付きまとわれて、諦めて入ったらここだったんだよ」

「…よくわかんないわ」

「僕もだよ」

「言葉にすると意味わかんねーもんな」

 

シドはふぅ、と息を吐きながら

 

「ここから出る方法とかわかる?」

「さぁ。私も出た記憶もないもの」

「さっき戦ったけど」

「気付いたらあそこにいたんだもの。あんな事初めて。覚えてる限りでね」

 

参ったな、とシドは頭を掻く。

彼女も知らないとなると八方塞がりである。

となると、もう来た道を引き返すしかないわけで。

 

「それじゃあとりあえず引き返してみるよ」

「ちょっと待って」

 

引き留められた。

 

「ここに四肢を拘束された美女がいます」

「うん」

「とりあえず助けてみませんか」

「…ごめん、そういう修行かと思ったよ。僕も昔そうやって修行したから」

「…斬新な修行ね」

「斬新って言葉で片付けていい奴じゃねーと思う」

 

とりあえず学園支給の剣でアウロラの拘束を斬り裂いた。

解き放たれた彼女は気持ちよさそうに身体を伸ばす。

 

「んー。ざっと千年ぶりの自由ね」

「そうなの?」

「適当。まぁ最低それくらい」

「お前よく落ち着いてられんな。裸だぞこの人へぶぅ!」

 

べちんとキバットが叩き落とされた。

普通に見てたからね仕方ない。

彼女は優雅に歩き出すと、闘技場で姿を現した時のローブ姿になるとシドを見て

 

「さて。私たちの目的は一致してるわ。私は解放、あなた達は脱出」

「そうだね」

「協力しましょう?」

「出方わかるの?」

「わかんないわ。でも解放の仕方はわかる。聖域(ここ)は記憶の牢獄、中心に魔力核があるの。それを壊せば私は解放される。私だけじゃない、何もかも全部解放されるわ、多分あなたも出られる」

「聖域なくならない?」

「困るの?」

「全然」

「じゃあ決まり。あと、気づいてると思うけど魔力は使えないわ。ここは中心に近いから、練るとすぐ核に吸い取られるの」

「みたいだね」

「だからいつものスライム剣使わなかったんだな、お前」

 

いつの間にか回復したキバットがシドの肩に乗ってくる。

 

「うん。以前のテロの時よりずっと強力だ。これは時間かかりそうだね。こんな時ワタルがいてくれたらって思うよ」

「キバはそこらへん関係ねーからな。ワタルも最近魔力なしスタイルに磨きかかってきたし」

「随分買ってるのね、そのお友達。なんだか妬けちゃうわ」

「ところで、ヴァイオレットさんは魔力なしでいける人?」

「残念、か弱い乙女よ。一度ナイト様に守られてみたかったの」

 

いたずらっぽく微笑む彼女は、とてもか弱そうに見えない。

アウロラは先導するように先を歩き、シドはそれについていく。

どうでもいいがタツロットはまた寝ている…というより、バッグの中で大人しくしている。

 

「解放されたらどうなるの?」

「消えてなくなるわ。ただの記憶だから」

 

アウロラはシドの言葉に振り返らなかった。

キバットはそんな重いことさらっと言わないでくれと言いたかったが、空気を読んで黙っていた。

 

 

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