陰の実力者のお友達   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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短いですが区切りがいいので

それとおうにょ編あたりまで。をつけるように編集しました
つけないスタイルでずっとやってきたけど意識改革()的な感じで
前書きとか後書きにつけません
ちょっとずつ付け足してきますね


16 英雄オリヴィエ

気がついたとき、白い廊下に立っていた。

ワタルが左右を見渡すと、そこは鉄格子のある牢のような部屋。

光がないのに変に明るい、まるで夢のような感覚のするふわっとした空間。

先頭をオリヴィエとやらが歩き出す。

その後ろをアルファが追い、他の人たちも後に続く。

歩きながらオリヴィエは大人から子供の姿となり、鉄格子をすり抜けて牢の中でうずくまった。

察するに、これはきっと記憶なのだろう。

今幼くなって座り込んだ、オリヴィエとやらの記憶。

 

「かつて、身寄りのない子たちが集められた」

 

語りながら、アルファはまた歩き出す。

牢には色んな子供たちがいる。

男子に、女子。

そして種族は人間、エルフ、獣人。

幼い、という以外に共通点は見当たらない。

本当に身寄りがなかったら誰でもよかったのだろう。

 

「子供たちはある実験の被験者となった」

 

牢の中には暴れる女の子がいた。

痛みから逃れるように壁に頭を打ち付けて地面を転がって。

また別の牢にも女の子がいた。

彼女は自傷による傷だけでなく、肉体の変異に体が耐え切れず裂けた肌から血が滴っていた。

腐り落ちるようなその様に、ワタルは見覚えがあった。

 

「〝悪魔憑き〟…」

 

誰かが呟く。

 

「ほとんどの子たちは、適応できずに死んでいった」

 

次の牢には誰もいない。

ただ助けを求めるような手形と、血にまみれた壁と床があるだけ。

どの牢も大体そんな感じだ。

子供が苦しみ、死んでいく。

 

やはりディアボロス教団ってばクソでは?

 

所属してる連中はもう有無言わずブチ殺すスタイルに切り替えてもいいかもしれない。

元々ブチ殺してるけど。

 

「ひどい…」

 

ローズが口元を押さえて呟いた。

言葉にしていないがアレクシアも似たようなことを思っているだろう。

 

「適合できたのは、わずかな女の子だけ」

 

言われてみると死んだ子供たちには共通点がある。

女子は〝悪魔憑き〟になったが、男子は普通に死んでいる。

アルファが不意に足を止め、一つの牢に目をやった。

そこには少し成長したオリヴィエがいた。

特に怪我もなく苦しんだ様子もない…ただ体育座りのままの姿勢でじっと壁を見ていた。

そして向かいは血塗れだった。

その度に掃除され、別の子が来て、死んでいく。

まさに無限ループ。

 

「…なんでこんなことを…」

 

ローズの声は震えている。

そりゃこんな凄惨な光景を見せられたらそうもなる。

 

「なんでですか? 大司教代理」

 

アルファがハゲに聞いた。

ハゲはしばらく黙った後、絞り出すように声を発する。

 

「魔人ディアボロスに対抗する力が、必要だったのだ…!」

「それは教団側の言い分。真偽がどうであれ、実際オリヴィエは魔人の左腕を落としている。オリヴィエは〝それ〟…ディアボロス細胞に適合したわずかな子供の一人だった」

 

そう言ってまたアルファは歩き出した。

 

「ディアボロス、細胞…」

 

アレクシアが呟く。

 

「我々はそう呼んでいる。魔人に対抗するために、教団はその力を取り入れる事を選択した」

「おとぎ話ではなかったのですか…?」

「実際に見たわけではない。歴史にそう書かれていた、というだけ。そう思うのは、ローズ王女の自由よ」

 

アルファは歩みを止めない。

止めないまま、時折牢に視線を向ける。

 

「今更過去の審議を討論する気はない。この記憶だってどこまで事実かはわからないし、記憶というのは時間とともに色褪せるもの。本人の望んだ形に作り変えられる」

 

次第にオリヴィエは美しく成長する。

その背格好はやはりアルファにそっくりだった。

 

 

「ここは?」

「記憶の中よ」

 

扉の先は早朝の森。

少なくともシドの記憶にはなかった。

 

「君の?」

「覚えはあるわ」

 

そう言ってアウロラは進んでいく。

シドはその後ろをついていった。

 

「…一回こういう森ン中でキャンプとかしてみてーな」

「テントとかキバット持ってるの?」

「ワタル頼み」

「潔い」

 

しょうもない雑談をしながら、二人はぐんぐん進んでいく。

やがて視界に違う景色が見えてきた、何やら広場に一人の女の子が膝を抱えて座っている。

 

「泣いてるみたいだね。それになんだか君にそっくり」

「似てるだけよ」

「なんで泣いてるのかな」

「おねしょでもしたんじゃない」

 

そういってアウロラはその女の子の前に座った。

女の子の体には蒼痣が目立つ。

 

「それでどーすんだ」

「先に進みたいのなら、この記憶を終わらせればいいの」

「つまり?」

 

シドに答えるように、アウロラは女の子の顔を持ち上げた。

 

「泣いてたって変わらないわ」

 

そして女の子の頬をパチーン、とひっぱたいた。

 

「ありがとうございます!」

「…何言ってるのキバット」

「あ、いや、なんか反射で…」

 

へへへ、と羽でキバットは頭を掻く。

改めてシドはアウロラに言った。

 

「ひどくない?」

「いいのよ、自分だし」

「認めるんだ、結局」

 

そして再び、世界が割れる───

 

 

「そして成長し、ディアボロスの力を得たオリヴィエに、一つの任務が与えられた。それが、ディアボロスの討伐」

 

アルファの視線はハゲに向けられる。

 

「と、歴史ではそうなっているけど、我々はそれは偽りだと判断した。おそらく本当の任務は、新たなディアボロス細胞の採取」

「でたらめを言うな!! うぐぅ」

 

ハゲが吠えるが、拘束しているイプシロンが力を入れたことにより苦しそうなうめき声に変わる。

 

「オリヴィエは教団に従順だった。理由はわからないけど、彼女はディアボロスを倒して平和な日々が訪れると心から望んでいたからだと考えられる。だから、彼女は協力した」

 

いつしか、オリヴィエは鎧に身を包み、剣を携えて旅に出る。

きっとアルファの推察通り、彼女はきっと世界の平和を望んでいたに違いない。

その顔に宿ってるのは間違いなく覚悟と希望。

 

「だけど、教団の目的は違った」

 

ひとたび世界が割れる。

次の世界は、戦場だった。

だが戦士はいない、あるのはただ死屍累々とした亡骸ばかり。

そこにオリヴィエの姿はなく、黒い肉塊のようなものに白衣の研究者たちがそれを取り囲んでいた。

 

アルファがまた先を行く。

その後ろをついていき、その黒い塊に近づいてから、アレクシアが言った。

 

「なにこれ…」

 

よく見るとそれは腕のようにも見える…っていうか腕だ。

黒く、太い、醜い化け物の腕。

鋭い爪には肉片がこびりついている。

キショ。

 

「ディアボロスの左腕よ。ディアボロスの腕は斬り落とされてもまだ生きていた」

 

言う通りその腕はまだ生きている。

タフな腕は不用意に近づいた白衣の男を貫き殺す。

その腕は鎖や杭で拘束されるが、そこからは膨大な魔力が漏れていた。

 

「やがて高度なアーティファクトによって封印には成功した。だけど封印は完全ではなく、やがて(ひず)みが生じて聖域となる…。ま、これは別の話ね。教団の目的は、ディアボロス細胞の驚異的な生命力だった」

 

封印されたその腕から、白衣の男が血を抜いて肉を削いだ。

それらの傷も、時間が経てば再生した。

 

「教団はそのディアボロスの腕の研究によって、人を強化する薬品を開発する。それは副作用もあるが、これまでと違うのは男性でも使用できる物」

 

そういってアルファは懐から錠剤の入った瓶を取り出し、放り投げた。

投げたそれはハゲの足元に落ち、そのまま転がり靴の先に当たる。

ハゲの顔色が目に見えて変わった。

その錠剤をアレクシアは見たことがあった。

ゼノンが飲んでいたやつだ。

 

「これが教団を支える力となるのだけれど、真の力の源は違った。教団はディアボロスの肉体を封印し、長い年月をかけてその薬を作り出す」

 

また場面が変わる。

そこは白い研究室、白衣を着た男達が机を取り囲み、それの完成を待っていた。

小さな器に、一滴、何かが落ちる。

 

「バカな! ここを暴くつもりかっ! 止せ見るな、実験体の末裔ごときが───」

「おいハゲ」

 

少し低いワタルの声が、ハゲの言葉を遮った。

じろり、と睨みを利かせながら

 

「少し黙れ」

 

うぐぅ、と睨まれたハゲは歯を噛み締めて押し黙る。

アルファは続ける。

 

「赤く輝くそれは、まるでディアボロスの血のようだったという。それを舐めれば莫大な力と、老いることのない肉体を得ることができる…」

「不老不死、ということですか…?」

「それが、教団の狙い…」

 

ローズとアレクシアが呟いた。

そしてワタルもなるほど、と納得する。

魔力増幅剤とかいう生易しいものじゃなかったんだ()

 

「さて、そこにいるネルソン司祭。そして、向こうにいる白衣の男性…なんだかよく似てると思わない?」

 

アルファが一人の研究者を指さしながら言った。

指を指された研究員を見てみると、確かに髭の感じがとても似ている。

違うところはハゲてないということくらい。

それくらい似ているのだ、頭以外は。

 

「この素晴らしい薬の名前はなんていうのかしら」

「…〝ディアボロスの雫〟だ」

 

イプシロンに促され、ハゲは言った。

 

「ありがとう。でもこの薬は完全ではなかった…。二つほど欠陥を抱えていた。とても大きな、ね」

「欠陥の一つは予想がつくわ。過去の司祭は髪がある、でも今はない…不老は完全ではなかった、ということね」

「…髪が抜けたのはストレスだ」

「…ごめんなさい」

 

アレクシアは謝罪した。

あからさまに自分が悪いときは素直に謝る、これが大事なのである。

アルファは続けた。

 

「欠陥の一つは、定期的に摂取しないと効果を失うこと。年に一度、といった感じかしら。違う?」

「その、通りだ…」

「そして二つ目は、その雫とやらは一度に極めて少量しか生産できない、ということ。一年でいくつかしら」

「…十二滴、だ」

「そしてナイツオブラウンズとやらも、十二人だったわね。偶然かしら」

 

ラウンズ、という単語を聞いてアレクシアは思い出す。

そういえばゼノンもラウンズに内定だとかなんか言ってた気がする。

 

「教団はその雫をより完璧なものにするために、研究に力を入れている。そしてその研究のカギとなるのが、各地に封印されてるディアボロスの身体と、英雄の地を色濃く注いだ子孫。…私みたいな、オリヴィエの血を色濃く継いだ子孫にね。どうかしら? ラウンズ十一席殿」

「───ふ、ふふふっ。教団では、誰もがその雫から得られる力と、永遠の命を求めるっ…!! いかにも! 私こそが、強欲のネルソンぶぁぁぁぁぁっ!!」

 

拘束を無理やり脱出したハゲの目が赤く光る…そしてそんな言葉の途中でイプシロンの近くにいた別の仲間…デルタが、あっさりハゲを刺し貫いた。

ハゲは力なく項垂れる。

そしてデルタはそのまま下にあった水辺? にそのハゲを放り投げた。

ばしゃーん、と水の中に入ったと思ったら、赤い色が浮かび上がってくる。

イプシロンはため息混じりで

 

「…デルタ。殺すのは情報聞き出してから、と言われたでしょう」

「───はっ! す、すいませんアルファさまっ、でもこいつは狩ったほうがいいと思ったのです! この前も山でイノシシを───」

「黙りなさい。それと、いつも言ってるでしょう? 仕留めたかどうか、ちゃんと確認しなさいって」

 

デルタを叱りながら、アルファはハゲが落ちた場所を見た。

ぶくぶくと泡が立っている…と思ったその時だった。

 

「ぶぅーわっはっはっはぁぁ!!」

 

変な笑い声をしながら、ハゲが自ら飛び上がってきた。

どういうことか、下半身が気持ち悪い肉の触手みたいな姿で。

うわきも。

そしてあのハゲがまた大きく腕を振りぬいたと思ったとき、再度世界が割れる。

 

 

今度は白い空間だった。

その空間にいるのは、デルタと、アルファ。

そして王女の二人にナツメ、もといベータ…。

ふとベータはキョロキョロと見まわす…イプシロンたちと、ワタルもいなくなっている。

分断されてしまったようだ、これも聖域とやらの防衛システムなんだろうか。

 

「聖域は我らの領域…」

 

がつん、と地面に紫色の、拳を模したハンマーを突き立てながらハゲ…ネルソンがデルタと見ながら言い放つ。

 

「教団に牙をむいたことを、その身で悔いるがよい!!」

 

ネルソンの体がブレる…と思ったら一人、また一人とネルソンが増えていった。

分身の類だろうか、それとも聖域の近づくにつれ奴らの力にブーストがかかるのか…それはわからないが…。

 

対峙するデルタは、低く身構えた。

その口元に、獰猛な笑みを浮かべて

 

「───ぅぅぅうがぁぁぁぁっ!!」

 

吠えて、駆ける。

戦いが、始まった。

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