陰の実力者のお友達   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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3 偽りの告白

がたんごとん、とワタルとシドは列車に揺られている。

なんだかんだと時が過ぎ、晴れて十五となったワタルとシドはミドガル魔剣士学院へと入学するべく今現在、列車に揺られているのである。

 

「はぁー…それにしても信じられないなぁ、まさか適当に言ってたと思ってたのに、的中してるだなんて」

 

列車に揺られながらシドが呟く。

そう、アルファらと離れたその日、キバットと一緒に色々とディアボロス教団について教えていった結果、ようやっと教団の認知に成功したのである。

もちろんシャドウガーデンについても全容ではないにしろ、とりあえず組織はちゃんとある、ということも認知済みである。

とはいえ───

 

「ま、気にしなくていいと思うよ。正直僕も眉唾だったしね。基本的に教団の調べとかはアルファたちに任せて、なにかあったらその都度振る舞っていけばいい」

「───そうだね。あんまり考えすぎるのも疲れるし」

 

ワタルの言葉にシドがうなずく。

基本は今まで通り、シドはそれっぽいムーブをしてワタルはそれに乗っかる感じに落ち着いた

こちらにも学生という生活があるし、正直自由に動けない立場だ。

そんな時だ。

 

「───お、お客様の中に、魔剣士の方はいらっしゃいませんかっ!! 盗賊たちが乗り込んできてッ!?」

 

そんな旅客機に医者はいませんかみたいなテンションで車掌さんと思しき男性が駆けこんでくる。

彼の後ろには、盗賊と思しき男性も。

 

「無駄だ、まともな魔剣士がいないことは調べてある」

「そ、それは、どういうことでしょう…?」

 

車掌さんが疑問符を浮かべて問いかけた。

すると同じ列車に乗っていた一人の乗客が盗賊の横に立って

 

「察しが悪いなぁ、俺が内通者だよ」

 

そこからは阿鼻叫喚である。

女性の悲鳴やらがこだまするなか、一人の盗賊がげっへっへ、という笑みが似合いそうなつらをしながら

 

「おっと動くなよ? お前さんたちはこの車両でぐっすり寝てもらう」

「ど、どういう…あれ、意識が…」

「へっへっへ。仕込んでおいた催眠ガスが回ってきたみたいだな、おらお前ら、仕事だ!」

 

ずいぶんと用意周到な盗賊たちだ。

周りの乗客たちは次々と意識を失い、スヤスヤと寝息をたて始める。

そんな乗客を尻目に、続々とこの車両に盗賊の連中が入ってきた。

 

「情報通り、この車両には富豪が多いぜ、たんまり稼ぐとするか?」

 

言われてみれば確かにこの車両に乗ってるのは基本的には富豪っぽい人が多い気もする。

シドは少し声のトーンを落としながら

 

「ねえ、この場合僕たちはどう行動すればいいのかな」

「シドが陰の実力者ムーブするほどじゃなさそうだし…お金盗られるのはやじゃん? 自業自得ってことで…皆殺しでいいんじゃないかな」

「そうだね。僕も王都の盗賊の実力には興味もあるし…」

「あ? テメェらさっきからなにぺちゃくちゃと…待て、なんでテメェらガスが効いてねぇ!?」

 

ゆったりと席から立ちながらシドと二人盗賊の連中を見やる。

シドは魔力を用いて身体を鍛えてる? 作り替えてる? ともかく色々してるみたいだからガスとかにも耐性があるのだろう。

そんなシドを倣ってワタルも魔力を使って、自分の身体を弄っているので同じくガスの類は効かない。

 

「とりあえず列車に迷惑はかけられないから、表でやろうか」

「だね」

 

ワタルの提案にシドが頷く。

そんなこんなで入学間近に盗賊襲来なんてイベントがあったものの、無事にシドとワタルはミドガル魔剣士学院に入学することができたのでした。

 

◇◇◇

 

ミドガル王国。

その王都は、人口百万人を超える大都市である。

十五となってシドとワタルが入学したのが、そんな大都市にあるミドガル魔剣士学園。

大陸最高峰の魔剣士学校であり、国内外からも将来有望な生徒が集う名門校である。

とはいってもこの世界は中世の階級社会…その気になればモブの貴族とて入学できる。

クルムズ家はそれなりに名が売れていたみたいだから、いい部屋も用意できると言われたが、シドと同じでいいとワタルは突っぱねた。

知り合いがいる方が安心するのだ、こういうのは。

 

そんなわけで現在住んでるのが下町の安アパートのような部屋。

正直この狭さは結構落ち着く。

適当に髪をセットして制服に袖を通して、友人たちと合流する───まだシドは来ていないようだ。

 

「うっすワタル、シドはまだかよ?」

「みたいだね。とりあえずおはよう二人とも」

「ええ、おはようございますワタルくん」

 

今言葉を交わしたのが、シドが見つけてきてモブ友、という奴だ。

最初に言葉を発したのが、ヒョロ。

ガリ男爵家の次男であり、挨拶を返してきたのがジャガ、イモ男爵家の次男である。

いや言いたいことは分かる。

アイツはどこからこういうのを見つけてくるんだ、ここまで名は体を表しているのを見たことがないぞ僕は、と初めて会った時から心の中でツッコんでいたほどだ。

 

「ごめーん、お待たせ」

「お、やっと来たかシド」

「遅刻しますよ、急ぎましょう」

 

そしてシドも合流、四人はそのまま登校するべく移動を開始したのだった。

ちなみにキバットはカバンの中で待機させているので、いざという時も安心なのだ。

 

 

間もなく発射してしまう列車にどうにか駆け込み乗車成功。

現実では危ないからあんまりやってはいけないよ。

ふぅ、と一息つきながらヒョロが呟く。

 

「ったく、俺らも崖の中の寮にいれてくれりゃあいいのに」

「お姫様たちが暮らすようなところに、僕らみたいな木っ端貴族の居場所はありませんよ。あ、そういえばワタルくんはそれができたかもなのにわざわざ断ったんですよね、なんでです?」

「んー? ま、友達と一緒の方が気楽そうだったからかな。みんなも特待生とかなれればいけるかもしれないよ、シドのお姉さんみたいに」

「ブシン祭優勝候補になれって? 無理言うなって」

「あはは、姉さんすごいからなー」

 

入学して半年とちょっと…具体的には七か月。

シドは順調にモブ生徒として馴染んでいた。

そんなワタルはシドの友人をしながら、二度目の学園生活をほどほどにエンジョイしている。

最も目立つのは嫌なので、基本的には大人しくしているのだが。

不意にヒョロがにやりとした顔でワタルに向かって。

 

「それより昨日のテストでビリだった時の罰ゲーム、覚えてるよな」

「そうでしたっ、約束は守ってもらいますからねワタルくん」

「…わかってるよ」

「いいなーワタル」

 

なんでお前が残念そうなんだ、と心の中でツッコみを入れつつ、シドを見やる。

そう、昨日ちょっとした賭け事として、この四人の中でテストの点数が最下位だったものに罰ゲーム、という高校生らしい他愛もない遊びをしていたのだ。

そして───シンプルに勉強してなかったのでワタルがビリになってしまったのだ。

数年前にキバ本来の姿であるエンペラーの変身に成功して、定期的にトレーニングを重ね変身時間を延ばせるよう今日まで特訓をしていたので、ぶっちゃけその時は勉強なんかどうでもよかったのだ。

 

ちなみに罰ゲームの内容は、この学園のアイドルに告白して、盛大にフラれること、である。

どんな罰ゲームだ、と思いたいがまぁこの際それはいい。

シドが残念がっている理由がこれだ、学園のアイドルに告ってフラれるだなんてすごいモブっぽい、とのこと。

そうかなぁ、なんて思いつつもギャルゲーとかならそんな光景もあるかもしれない。

 

◇◇◇

 

そんな告白のお相手は───

 

「あぁ、麗しのアレクシア王女…どうか私と、清い交際を───」

「ごめんなさい、興味ないの」

 

登校途中、ある貴族の告白をきっぱりぶった切る女性の姿が目に入る。

そのまま告白相手を背にさっさと歩き去るその後ろ姿は優雅にも見えないこともない。

 

「流石は王女様ですね。…卒業したら政略結婚確定とはいえ」

「遊び相手には悪くないと思うのにな」

 

ジャガとヒョロが呟く。

そう、告白のお相手はこの学園の王女様、アレクシア・ミドガルである。

姉に第一王女、アイリス・ミドガルがいる、まさに学園の高嶺の花…自分とはさすがに立場は月とスッポンともいえる王女さまだ。

 

「な、なぁ。今更怖気づいたとかはなしだぜ?」

「わかってるよ、普通に告ってフラれてくる」

「ワタル、どうせなら僕が考えた告白法を───」

「いや、やらないから」

 

絶対にシドがするってなった場合夜なべしてでもモブっぽい告白の仕方を考えてきたんだろう。なぁ、と思いつつワタル本人はそこまでモブに徹する気はないので流石にお断りする。

 

ということで、放課後の学園の校庭。

目の前には件のアレクシアと対峙している。

そんなワタルを近くの木陰で隠れて見てるヒョロとジャガ、ついでにシド。

 

銀髪は綺麗に切り揃えられ、切れ長の赤い瞳がこちらを見据える。

しかしワタルはいつも間近に美人たち…アルファたちと一緒にいたからか、あんまり緊張はしていない。

無論、アレクシアもしっかり美人だ、流石王女といった感じ。

とはいえどう告白しよう、もう面倒くさいからさっさと告ってフラれようと考えて、適当に咳払いして。

手を出しつつお辞儀をするように

 

「───えっと、アレクシア王女どの。もしよろしかったのなら、僕と付き合ってはもらえないでしょうか!」

 

とりあえず勢いに任せることにした。

どうせフラれることは確定しているのだから、変に凝った告白なんかしても仕方がない。

っていうか仮にこんな王女と付き合うことになったら絶対に悪目立ち───

 

「わかったわ」

「え」

 

差し出された手が握られる。

思わず顔を見る、そこにはアレクシア王女の顔。

自分の手を見る、そこには握られたアレクシア王女の手。

また顔を見る、そこにはきょとんとするアレクシア王女の顔…きょとんとした顔可愛いな。

 

「え」

「あなたのような方を待っていたの。…よろしくね」

「え。…アッハイ」

 

父さん、僕彼女が出来たよ(現実逃避)

 

◇◇◇

 

なんでじゃろう、と思わず変な口調で心の中で呟きながら食堂で注文したカレーを貰う。

周囲の視線が突き刺さる、めっちゃ刺さる。

一部の男からはマジで目で殺さんと言わんばかりに突き刺してくる。

クルムズ家はそれなりに名は売れてはいるが結局はそれなりなので、ミドガルのような超名門というわけでもない。

今もひそひそとこっちに声が聞こえてくる。

 

普通だけど悪くはないんじゃない? とか、誰だよアイツ…マジ殺す! とかエトセトラ。

まぁ気にしてもしょうがないので全部無視して友人たちとの席につく。

 

「…おかしいな」

「あぁ、おかしいな」

「うん、おかしいね」

「えぇ、おかしいです…」

 

ワタルの呟きにヒョロ、シド、ジャガが返してくる。

でも顔からわかる、たぶんシドは半分本心で言っているが、半分は安堵が込められている。

めんどくさいことにならなくてよかったーっていう感じの安堵だ。

 

「はっきり言うが、お前がアレクシア王女と付き合えるだけのスペックはない。…俺でも怪しいところだぜ」

 

申し訳ないがヒョロにもないと思うな、とカレーを食べながら心の中でツッコんでおく。

 

「ワタルくんでもいけるのなら、僕でもいけましたよ。告白すればよかったなー」

 

ゼッタイないと思うな―、と辛辣なことをまた心の中でツッコむ。

というかシドが見つけてきたモブ友たちだ、女の子と付き合えるだけのスペックは申し訳ないが存在しないだろう。

 

「…ひょ!?」

 

そんな時不意にジャガの顔が驚きに染まる。

 

「? どうした…あっ!?」

 

ジャガに気づいたヒョロも視線の先を辿るとまたフリーズ。

合わせてこっちも視線を向けるとそこにはなんとびっくりアレクシア王女のお姿が。

 

「ご一緒してもいいかしら」

「どどどどどどうじょっ!?」「こここここんなしぇきでよろしければっ!?」

 

ヒョロとジャガがいかにもな反応をする。

なるほど確かにこれはモブだ。

 

「ごめんシド、席一個ずれれる?」

「うん」

 

とりあえずシドに頼んで奥の椅子に移動してもらい、自分はシドの座ってた椅子へ。

アレクシアはさっきまでワタルが座ってた椅子に座ると待機していたメイドがテーブルに料理を置いていく。

これは確か日替わり定食十万ゼニー超お金持ちコースとか何とかだった気がする。

頼む人いるんだ、始めて見たかもしれない。

 

「結構量多いんだ、そのコース」

「えぇ、いつも食べきれないの。本当はもっと下のコースがいいんだけど、私が頼まないとみんなが頼みずらくなるから」

「ふーん。優しいんだね。それならちょっともらっていい? 残すのも料理に失礼だ」

「───、え、えぇ。いいけれど」

 

しっかり許可ももらったのでまずはメインのお肉を一切れ、ワタルの箸が持っていく。

流石に持ってきたのはど真ん中ではないが、ソースのかかった部分も食べてみたかったので真ん中の隣を一つ。

口に入れてみると程よい焼き加減、下味もしっかりついてるのかなかなかの美味。

興味本位から食べてみたが、流石貴族金持ちコース、なかなかいい素材を使っている。

 

「ねえ」

「あ、魚も美味いね」

「ちょっと?」

「野菜も美味い…味付けがいいのかな?」

「聞きなさい」

 

金持ち料理に舌鼓を打っているとぐいっ、と耳を引っ張られた。

なんだいと思いながらアレクシアの方を向く。

 

「貴方、午後の実技は確かブシン流よね。一緒に受けましょう?」

「え? でも僕9部だよ?」

 

この学園は午前の基礎科目と、午後の実技科目に分かれている。

基礎はクラス、実技は選択式で、クラスも学年も混合だ。

色々な武器流派から、自分にピッタリなものを選ぶのである。

その中でブシン流はかなり人気で、一部五十人で、それが九部まである。

一番実力の高いものが当然ながら九部である。

 

「大丈夫よ、私の推薦で1部に席を空けてもらったから」

「…用意周到だねぇ」

 

肉の味を堪能しつつ、やけに準備のいいアレクシアを見やる。

ここまでされては流石に断れなさそうだ。

そんなわけで、怒涛かもしれなかったお昼の時間は過ぎていくのだった。

 

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