陰の実力者のお友達   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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追記 七陰列伝の設定等も入れてるし書きたいとは思ってはいるんですけど如何せん列伝の方が長スギィ! のため多分書きたいとこをピックアップすると思います
いつ書くかはわかりません、申し訳(遠い目

あと列伝って文字見ると真三国無双3猛将伝の列伝モード思い出すよね(


7 その技の名前は

「───ほざくな!!」

 

最初に仕掛けたのはゼノンの方だった。

一直線に接近をすると、ワタルの方に向けて剣を降りぬく。

ワタルは当たり前のようにその一撃を防ぎ、鍔迫り合いへと派生する。

 

「訳の分からない事を! 君も所詮そこのアレクシアと同じ凡人! 私には適いはしない!」

「どうかな、凡人だって必死で努力すりゃあ天才を超えることもあるかもよ」

「減らず口をぉぉ!!」

 

ゼノンはそのままワタルを押し飛ばし、連撃を叩き込んでいく。

ワタルは落ち着いて、そして冷静にゼノンの一撃一撃を防ぎ、流し、捌いていった。

いつしか、ゼノンの顔からわずかに余裕が消えていく。

ちっ、と舌を打ってからゼノンがまず一歩離れ、構えを変えた。

先ほどアレクシアを跪かせた、〝ラウンズの剣〟を使う気だ。

 

「ワタルっ!」

 

不意にアレクシアが彼の名を呼んだ。

ワタルは冷静に構えながらアレクシアに向かって小さく微笑む。

 

「大丈夫」

「はあぁぁぁぁっ!」

 

ゼノンが踏み込む。

アレクシアに見せた時以上に、強く、鋭い魔力が乗っている。

常人ならきっと、その一撃を受ければ死は免れないかもしれないその一撃を、ワタルは軽々と受け止めた。

 

(デルタに比べたらまだまだだなぁ)

 

ゼノンの顔が驚愕に染まる。

そのまま歯を食いしばり力の限りワタルを押し返そうとするが、彼はピクリとも動かない。

ギリリ、とゼノンは歯を食いしばる。

 

「おぉぉぉぉっ!!」

 

今度は連撃。

一撃一撃に重い魔力が乗っかった斬撃を、まるで稽古と言わんばかりにワタルは対応していった

いつしか、アレクシアもワタルの剣に見入っていた。

 

あれが、自分と同じ凡人の剣なのか。

 

否、あれこそはかつて幼い頃に考え抜いた理想のカタチ。

才能でも、速さでも魔力でもない、ひたすらに基礎の積み重ね、研鑽の先にたどり着く持たざるものの形。

だけどそんな理想は、いつしか姉と比較されて、凡人の剣と揶揄されるようになってからアレクシアは道を見失っていた。

 

だけど、今。

そんな凡人の剣が、ゼノン・グリフィに喰らいついている。

 

「馬鹿な…! お前の剣はアレクシアと同じはず!! なぜ凡人が、私に追いつくことができる!」

「別に。僕の剣もまだ発展途上だからさ、まだまだだよ。でもね、天才とか魔力の量とかにあぐらを掻いて努力を怠ってる連中には負けないね。月並みな言葉だけどさ、努力は人を裏切らないってね!」

 

ヒュン、と突き出されたワタルの突きをゼノンは剣の腹で受け止めて大きく後ろにのけ反った。

ががが、と足に力を入れてなんとか踏ん張るが、それでも結構押されてしまう。

肩で大きく息をしながら、息を整えて…ゼノンは再び笑みを浮かべた。

 

「…やれやれ、ガキにこんなものを使う予定はなかったのだが」

 

ゼノンは剣を地面に突き立てると、懐から一つのデバイスを取り出す…いやイクサナックルだあれ。

彼はそのままナックルに手を押しつけて

 

<レ・ディ・イ>

「───インストール」

 

そこはメガレンジャーまで言え。

などというワタルの心のツッコミなど気にもせず、ゼノンはいつの間にか出現していたベルトにナックルをセットした。

 

<フィ・ス・ト・オン>

 

低く、くぐもった電子音が鳴る。

ベルトから現れた幻影はゼノンに重なり、その身にパワードスーツ〝イクサ〟を纏わせた。

急によくわからないモノを身に纏ったゼノンを見たアレクシアは目を見開かせ

 

「な、何よあれ」

 

初めて見るパワードスーツ〝イクサ〟に驚くアレクシア。

対するワタルはふぅ、と一息。

オルバと呼ばれていた男の所でもあったから、やはり結構な数があり、優秀な者の所に配備されているのだろう。

まーそっちがそれ使うんならこっちも使わしてもらうで、と言わんばかりにワタルも服の下に事前に巻いていたベルトを改めて取り出す。

 

「…バカな、何故貴様がそれを持っている!?」

 

ゼノンイクサが言ってくる。

それもそうだ、今ワタルが持っているのはイクサベルトだ。

これは以前オルバの部下の人が持っていたモノを回収したやつで、イータ協力のもと修復改修を施したものである。

そして入学するまでの間、ちょこちょこ七陰たちの報告に耳を通している感じ正直この〝ディアボロス教団〟なる連中は割とカスばっかりだという事を知った。

そんなやつらの尖兵にイクサがなってることが個人的に我慢ならなかった。

そう、いつも心の奥にいるのは、我らが名護さんの最高なイクサなのだ。

 

「お前に言う義理はない」

「まさかっ、貴様も教団の───!!」

「一緒にするなっ!!」

 

あんな奴らと一緒にされるとか溜まったもんじゃない。

頭に来ますよ。

聞いたことのない怒号に、アレクシアまでビクリと身体を震わせた。

 

「ワタル…?」

 

あのワタルがここまで感情を露わにしたのなんか初めてだ。

しっかりとゼノンイクサを視界に捉え、ワタルは持っているベルトを勢いよく巻き付ける。

ちなみになんで服の下に巻いてたやつをまた取って巻き直したかというとそっちの方がカッコいいからである。

名護さんはいつも巻いてた(最初の方は)

そして制服の内ポケットに忍ばせていたイクサナックルを取り出すと、先ほどのゼノンよろしく手のひらを押し付ける。

 

<レ・ディ・イ>

 

「…変身!」

 

まずナックルを持つ手を右に真っ直ぐ伸ばし、入れる直前に顔の前に持っていく。

そのままベルトにナックルをセット…変身ポーズは名護さんリスペクトである。

ゼノンのモノとは違い少し高い電子音声が応える。

 

<フィ・スト・オン>

 

ゼノンのモノと同様、ベルトから残像が現れてワタルに重なる。

そして今、パワードスーツ〝イクサ〟だったモノは生まれ変わるのだ。

当然、あのセリフも言わなければならない。

 

「…その命、神に返しなさい」

 

その呟きと共に、仮面の十字であるクロスシールドが展開し、赤い複眼がゼノンイクサを捉える。

仮面ライダーイクサ、ここに爆現というわけだ。

 

「───見掛け倒しがぁぁぁぁ!!」

 

ゼノンイクサがカリバーを構え突っ込んでくる。

焦りや動揺が表れているのか、その構えはひどくわかりやすい。

突っ込んでくるゼノンイクサに向かってワタルのイクサは手慣れた様子でガンモードのイクサカリバーをゼノンイクサに向けて発砲した。

バババババ! と放たれた魔力の弾丸がゼノンイクサに命中する。

元々教団のイクサカリバーにはガンモードに相当する形態が存在しなかったが、イータの協力もあって装着したものの魔力を弾丸として撃ち出すという機構と、ガンモードへの変形が追加され原典のイクサに近づけることができたのだ。

 

「ぐああ! 馬鹿な、飛び道具だと…! この武器にはそんな機能なかったはずだ!」

「ほぼ別もんですからね、僕のイクサは」

 

しゃきん、とカリバーをガンから切り替えて同じく接近し斬りつけていく。

もう仮面ライダーの姿になっているので凡人スタイルでない戦い方にシフトした戦い方だ。

格闘と剣を織り交ぜた特撮スタイル。

斬ると見せかけてフェイントをかけて蹴りを繰り出したり、剣とパンチを交互に繰り出して相手の出鼻を挫いたりと、ゼノンイクサにダメージを与えていく。

やがて吹っ飛ばされたゼノンイクサは趣に何かを取り出そうとした。

すかさず接近しそれをさせまいと手に持った何かを弾き落としゼノンイクサを蹴っ飛ばす。

その蹴りはちょうどベルト部分にあたり、その衝撃でベルトが取れゼノンの姿に戻ってしまう。

 

「ぐぁぁぁぁぁ!! おのれ、おのれぇ!」

「いつもの余裕はどうしたんです、せんせ?」

 

わかりやすい煽りにゼノンはこれまたわかりやすく歯を食いしばる。

そういえば何を叩き落としたんだろう、とワタルはふと気になった。

相手が取り出してすぐ地面に叩き落として蹴っ飛ばしたから今自分の足元にあるはずだよね、とちらりと視線を下に向ける。

 

視線の先には蒼い狼のような彫像のようなものが

 

(これガルルセイバーじゃん!!!!!)

 

あいつが持ってたんかい! と心の中でツッコむ。

あんまりにもスルッって出すもんだから危うくスルーしかけた。

だがこれでなんとなく確信した…アームズウェポンたぶん教団の手に落ちてるわこれ。

でもどうしよう、ぶっちゃけ入学祝に父から実はザンバットソードを受け継いでいるのだよね実は

ま、気分で使い分ければいいか。

後でこっそり回収しないと。

 

「有り得ない、あり得ないっ! 貴様、一体何者だ…! それだけの実力がありながら、なぜ学生などをっ!」

「友達と一緒のが気楽なの。それに、僕は地位や名声なんて興味ない。なぜならば───」

「───我らはシャドウガーデン。陰に潜み、陰を狩る者」

 

それはいつの間にか、ワタルの隣にいた。

ゼノンもアレクシアもその存在にたった今気が付いたのだ。

上下共に漆黒を着込んだ、その男の存在を。

 

「な、何者だ、貴様はっ!」

「我が名はシャドウ」

「その黒ずくめの衣装…そうか、貴様らは、最近教団に嚙みついている野良犬どもだったのか!」

「さぁね。けど所属はバラシてもいいかな。そう、僕たちはシャドウガーデン。陰に…もういいか、さっき言ったし」

 

その言葉の意味を、アレクシアは理解していない。

傍から見れば狂人どもの戯言だと思うのだが、あのワタルがそんな虚言を言うとも思えない。

もしかしたら、そんなことが、本当に…?

 

ゼノンはワタルの言葉に苛立ちを募らせながら、立ち上がる。

徐に懐から取り出したのは、赤い錠剤の入った小さめの瓶だった。

 

「は、はははっ、いいだろう、ならば見せてやろう、最強の力をっ!」

 

瓶の蓋を開けて一息に錠剤を飲み込んだ。

数粒残っていたが、気にせずゼノンはその瓶を投げ捨てる。

 

「この錠剤で、人を超えた覚醒者となる…、だが常人では扱えずやがて死に至るが…ラウンズは違うっ! この圧倒的な力を制御できるものこそが、ラウンズとなる権利を得るっ!」

 

魔力が暴風となり吹き荒れる。

ゼノンの筋肉が肥大化し、傷も再生していく。

それはまるで、圧倒的なまでの力の重圧。

だがそれを前にしても、ワタルの表情は変わらなかった。

 

「シャドウ、後は任せていい?」

「無論だ。あのような見せかけを許すわけにはいかないからな」

 

イクサの変身を解除して、ワタルはアレクシアに隣に立った。

 

「わ、ワタル…」

「大丈夫、僕の友達は強いから」

 

そう言ってワタルはシャドウの方を見た

 

「その醜い姿で、最強を語るな」

「み、醜いだとぉ!」

 

ゼノンとシャドウの剣が重なる。

幾度となく鉄が重なる音が繰り返され、それを少し眺めていて、アレクシアは気づいた。

 

「…シャドウも、凡人の剣…? もしかして、ワタルは…」

「うん。僕もあの人から剣を教わってるんだ」

 

通りで、とアレクシアは納得する。

ワタルとは違い、一太刀一太刀が鮮やかで軽い。

放物線を描く剣先はとても綺麗で。

 

〝貴女の剣が好きよ〟

 

「…ぁ」

 

不意に姉の言葉を思い出す。

シャドウの剣はひたむきにまっすぐ磨き上げた剣だ。

そして、似たような事をワタルもアレクシアに言ってくれていた。

もしかしたら…あの日の姉もそんな気持ちで言ってくれたのかもしれない。

わかるのに、だいぶ時間がかかってしまった。

 

「借り物の力で、最強に至る道はない」

 

シャドウはここで周りもわかるくらいに魔力を高めた。

彼の魔力は緻密で、意識しなければ認識できないほどに。

 

「真の最強を、その身に刻め」

「…念の為、守っとこ」

 

ワタルはイクサへと再度変身し、アレクシアを庇うように彼女を抱きすくめる。

突然のことに動揺しつつも、視線はシャドウの技を追っていた。

 

「これぞ、我が最強───」

 

シャドウが剣を振い、頭上に円を描く。

凄まじい威力が、その剣に込められているのがわかる。

 

「や、やめっ───」

 

───アイ───アム───アトミック

 

刹那、光が視界を包み込んだ。

 

 

核に挑んだ男がいる。

男は身体を鍛えて、精神(ココロ)を鍛えて、技を鍛えた。

しかし、核にはそれでも届かなかった。

だが、男は諦めることができなかった。

狂気とも言える修行の果て、辿り着いた答え───

 

そう、核で蒸発しないためには…己が核になればいい───

 

そんな考えのもとにシャドウはある絶技を生み出した。

その技の名前こそが───〝アイアム・アトミック〟なのだ。

 

 

ある夜に、一つの光の奔流が天に昇った。

その光は夜の闇の中に煌めき、誰もがその魔力の輝きが目で見えるほど。

だがこの世界で、あれほどまでの大きさを誇る魔力を生み出すことができるものはそういない。

 

その光の些細を知っているのは、陰に潜み、陰を狩る者たちだけ───

 

 

アレクシアはゆっくりと目を開けた。

いつのまにかシャドウはいなくなっていた。

自分を守ってくれていたワタルは隣に移動しており、こちらに気がつくと

 

「あ、気づいた? まぁいきなりあんな眩い光来たら目閉じちゃうよね」

 

そんな風にまるでいつも通りな彼に思わず笑いが溢れそうになるものの、ふと辺りを見回す。

ひどく星が輝いていた。

周りにはほぼ吹き飛んだ施設に、アレクシアとワタルだけがいる。

ゼノンは先程の一撃で消し飛んだのだろうか、何処にもいない。

 

「そろそろ救助が来るだろう。僕はここで一旦お暇するよ」

「え、どうして」

「色々言い訳するの面倒だからね。それにほら」

 

そう言ってワタルは耳を澄ますよう促す。

アレクシアは少し聴覚に意識を集中すると自分を呼ぶ声が聞こえてくるのがわかる。

自分の姉のアイリスだ。

 

「姉妹水入らずを邪魔したくないから」

「べ、別に気にしなくていいのに」

「そうはいかない。なんかスッキリした顔してるからさ。…目指す剣と、いつかの姉の言葉の真意、なんとなくわかったんでしょ」

「…えぇ、あなたと、シャドウのおかげでね。…私は、私のまま頑張って強くなってみせるわ」

「うん、応援するよ。───それじゃあ、〝また〟ね」

「っ! …えぇ、〝また〟、ね」

 

そう言ってワタルはこの場から歩き去っていく。

アレクシアは遠くなっていく彼の背中をずっと目で追っていた。

やがて見えなくなると、今度は姉の声の方へ意識を向ける。

 

「! アレクシア!」

 

やがて姉のアイリスがこちらを見つけると有無を言わさず抱きしめられた。

 

「アイリス姉様…」

「アレクシア…っ! よがった…本当にっ…!」

 

僅かながら涙混じりの声色。

アイリスの身体はびしょ濡れで、ひんやりと冷たい。

だけど身体を通して伝わってくる温かさは、ほんもので。

 

「…アイリス姉様…」

 

思わずアイリスの背中にアレクシアも手を回す。

ぎゅ、と互いの身体を抱きしめながらアイリスは呟いた。

 

「…ごめんなさい、冷たいでしょう?」

「うぅん。…あったかいよ、姉様」

 

アレクシアの目から一筋の雫が流れる。

今度は、悔しさとかからくる涙じゃない。

 

◇◇◇

 

二人の学生がミドガル学院の屋上にいた。

男女一組の学生だ。

さんさんと太陽が眩しい…というかちょっと暑い。

初夏である。

 

「一応表面上は解決、ということになったわ。でも姉様は専門の調査部隊を立ち上げようとしてるし、まだまだこれからね。私も協力する予定だし」

「そっか。姉さんとも仲直りできたみたいだし、よかったね」

「言わないでよ、もう」

 

ほんの少し顔を赤くして女性…アレクシアが言い返す。

否定はしない、ということは仲直りできたのだろう。

 

「色々聞きたいことはあるわ。シャドウガーデンはなんなの、とか、結局貴方は何者なの、とか」

「ん」

「けどいいわ。あなた話してくれそうにないもの、そういうの」

「そうだね、深くは言えないかな」

 

そう言うとやっぱりね、という風に肩を竦めるアレクシア。

流石においそれと説明はできない。

っていうか説明が難しい。

 

「それと、さ。これは…提案、なんだけど」

 

なんだか急にアレクシアがしおらしくなった気がした。

両手の指先をくっつけたりして弄びつつ、ちらちらとこちらの様子を窺うように視線を向けてくる。

どうしたんだろうこの子。

 

「ほ、ほら。今まで付き合ってるふりをしてたわけだけど、今回の一件でゼノンが消えてくれたじゃない? だ、だから、その…あなたさえよかったら…もうちょっとだけ、この関係を、続けてみないかなーって…」

 

これは予想外の告白だった。

ワタルは頭の中で考える、これはどう返したら正解なのだろう。

正直付き合うつもりはあんまりないが…っていうか付き合ったら七陰たちがなんていうかわからない。

だからここは当たり障りない感じで…そうだ今の立場を使ってカッコよく断ってみよう(この間0.5秒)

 

「…そいつは魅力的な提案だね」

「───!」

「だけど、遠慮しておくよ。…僕は日陰で生きる者」

 

そう言ってアレクシアの頬にそっと手を添えて

 

「君みたいな太陽の傍は眩しすぎる」

 

最後に少し自嘲気味な笑みを浮かべながら数歩離れて完成だ。

何が? とか思ってはダメである。

なるべくやんわりと断ったつもりだが、と改めてアレクシアの方を見るが彼女はクスリと笑みを浮かべて

 

「やっぱりね。なんだか断られそうな気はしたの」

「? そ、そう───」

「でも」

 

アレクシアはそうずい、と言葉を区切ってワタルに一歩近づくと彼の顔へ自分の顔を近づけて───ちゅ、と触れるだけのキスをした。

突然の出来事にワタルは一瞬フリーズする。

 

「諦めてないからね、私」

 

そう言ってアレクシアはきっと初めて見るくらい綺麗な笑いを浮かべていた。

女ってのは強いなぁ、と思いながらワタルはそれに釣られて思わず笑みを返すだった。

 

 

そんなことがあった帰り…というか教室へと戻る道中。

アレクシアとはその場で別れ、現在はシドと合流し歩いている。

 

「フラグ立てちゃったかな」

「かもねー。ちゃんと七陰たちと時間作ってあげなよ?」

「わかってるよ、みんな頑張ってくれてるから、労うくらいは。あ、そういえば前繰り出したアトミックって、少し威力調整した?」

「あ、わかる? ホントは結構広範囲にできたんだけど…ちょっと周りの被害ってのを気にしてみたんだ、だからあの施設全体を消し飛ばす程度に抑えたんだけど…まぁそれでも施設周辺の建物は被害に遭っちゃったかな」

「十分だよ。人的被害はなさそうだったし」

 

などと世界でたぶんワタルとシドしかわからない会話を繰り広げていると、シドが誰かとぶつかった。

ぶつかったのは女の子だった。

しかも状況を察するに大量の本を抱えながら、しかも一冊読みながら歩いていたようだ。

前方不注意だったこちらも悪かったかもしれないが、これは女の子も悪いと言えてしまうかもしれない。

 

「大丈夫?」

 

シドが女の子に手を差し伸べる。

ピンク色の髪をした女の子は一瞬シドの顔を見やる。

 

「…───」

 

何故だか僅かに頬が染まってる気がする。

そして差し出されたその手を、女の子はそっと取ったのだった。

なんだろう、ラブコメの波動を感じる。

問題は差し出した男の方はそこら辺に一切興味がないということなのだが。

 

ともかくこの出会いが吉と出るか凶と出るかは…たぶん誰にもわからない。

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