Fate/kaleid night プリズマ☆イリヤ 3rei!!   作:388859

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~???日目、夜~si■e st■yn■ght

 魔術回路の起動を確認。 同時に■■の欠片と接続、同調を開始。 問題なく完了。

 続いて「 」とのコンタクト……失敗。 膨大な情報と侵食に、第七百二十六■■の欠片では、「 」との接続は困難。 専用の器、■■本体での接続であれば、可能と思われます。

 ■、■■……新たな入力を受信。 第七百二十五■■の欠片との併用ならば、「 」の接続は可能。 しかしこれ以上■■との接続は、命の危険を招き、生命維持すら困難かと思われm、yzzzzzzz、zxxxxxxxxxxxxxーー!?

 

「うるせぇんだよ端役が。 救済は常に犠牲が付き物だ。 犠牲なくして人は救われない。それが一人増えたところで、この行いは正しい。 俺、いや、私の舞台は壊れはしない。 続けろ」

 

……z、ji、……新たな、入力を承認。 七百二十五、七百二十六■■両者との接続、同調を開始……警告、接続先の生命に重大な問題が発生。 泥による精神汚染が進行、接続先の生命維持は困難です。

……訂正。 泥による身体と精神の再構築を確認。 同時に黒化した魂を捕捉、数は十三。 問題をクリア、次のシークエンスに移行。「 」とのコンタクト、開始します。

 コンタクト、成功ーー外側からの知識を回収。 同時に術式を補強……終了。

 

 並行置換、発動します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうしてーー私は、その舞台(セカイ)を鑑賞する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 まず見えたのは、炎だった。 ゆらゆらと、幾つもの炎が街を焼き尽くしている。 燃え盛る炎はあっという間に移り、人の営みを次々と灰にしていく。 絶叫と慟哭ばかりが街に響き、それすら炎は無に変えていく。

 助けてくれと、誰かが叫ぶ。

 行かないでくれと、誰かが事切れる。

 死にたくないと、誰かの手が焦げる。

 懇願は千差万別なれど、確かなことが一つある。 ここは地獄だ。 この街にしかその地獄はないが、しかしその狭さとは反比例して、その苛烈さは筆舌しがたい。 人が木のように燃え、灰になる。 たまにある非日常。 だがその過程が何千、何万と目の前にあったとすれば、それはすなわちこの世の終わりと言っても大差ないだろう。

 そんな中。 二人組の女性が、町を走りながら何処かへ向かう。

 二人とも、この地獄においてなお、見目麗しい。 一人は二つに結んだ黒髪を揺らし、一人は騎士甲冑を金髪で反射させ、ひたすら走る。

 

「セイ■ー、あなたは住民の避難を! わたしはあの馬鹿を、その頭かち割ってでも止める!」

 

 異物(ノイズ)が酷い。 押し返される。 だが問題はない、その話から察することは可能だ。 舞台や演劇は、話の筋が分かるなら、後は見せ場で台詞を聞き取れればそれで良い。

 

「いいえマス■ー。 避難誘導はあなたの役目だ。 ■■の泥に呑まれた■は、あなたの敵う相手ではない。 ここは、私が彼女を!」

 

「サー■ァントをバクバク食べちゃうような奴じゃ、あなたが行っても力を与えるようなモノでしょ!? 良い、セイ■ー? これは、わたしが■との問題を後回しにしてたツケよ。 だったら、その始末はわたしがする。 管理者としてじゃない、わたし個人のためにね!」

 勝ち気、というよりは自棄になったような印象しかない。 しかし黒髪の少女の言い分に、金髪の騎士は美顔を綻ばせた。

 

「……以前のあなたなら、魔術師としての責務を果たそうとしたのでしょうが……■■■の影響ですか、リ■」

 

「……まぁね。 ほんっとーに不本意だけど、アイツが帰ってきたときに、一人でも欠けてたら、わたしのブラウニー幸せ計画が破綻しちゃうし。 そんなの許せないし、何より……わたしがあの子を助けたいのよ、それだけ」

 

「そうですか……ふふっ」

 

「ちょっと。 何でそんな嬉しそうなのよ、もう」

 

「いいえ。 あなたもやはり、素直ではないなと。 それだけです」

 

 騎士は表情を一変し、引き締める。 それと同時に、主たる少女も魔術師へと切り替わった。

 

「分かりましたマスター。 それでは私は、人命救助を優先します。 何かあれば、令呪の使用は躊躇わずに」

 

「ええ、分かってるわ。 あなたこそ、泥相手に戦おうだなんて思わないでね。 まずは人命救助、戦いはそこからよ」

 

「はい……ご武運を」

 

 騎士が地を蹴る。 それだけで疾風のように、騎士は視界から消えていく。 その身は制限されていようと、名を持つ英霊。 心配は杞憂で済むハズだ。

 そう、本当に気を付けねばならないのは、少女の方。 何せ相手は、最上級の英霊すら相手取る力を有していながらも、その実英霊の天敵なのだから。

 

「……!」

 

 少女が、息を切らして走り続ける。 やがてその足は登るようになり、少女はそこに辿り着いた。

 小さな神社、というよりは、寺だ。 境内には敷き詰められた石が、節々にある灯籠の光を反射し、まるでここだけ現世から引き剥がされているようだ。 寺の向こうの空は、山火事でも起きているのか明るく、また少女の後ろの空も明るい。 ここだけが異様に暗く、そしてまた邪悪なのだ。

 

「あれ? 逃げたんじゃないんですか、■■■?」

 

 そして。 その中心に、誰かが居る。

 それをあえて言葉にするのなら、人の形を、少女の形をしていた。 白く色素が抜け落ちた髪は、少女が纏う黒のドレスを強調させ、またその素肌には、幾何学的な紋様が隅々まで走っている。

 黒髪の少女ーーいいや、魔術師は、目の前のモノに答える。

 

「お生憎様。 わたしは勝てる勝負から、すたこら逃げるのは趣味じゃないのよ。 それにあなたのこと、諦めきれるほど欲がないわけじゃないし」

 

「……呆れた人。 力の差が分かりませんか? 確かにあなたの魔術師としての力は、瞬間火力だけなら■■戦争でも指折りです。 でも、それだけ。 英霊になんか届かない……ましてや、私には」

 

「あら、言ってくれるじゃない。 こりゃ助ける前に一発ガツンと、食らわした方が良さそうね」

 

 ふてぶてしい、というより、自信に満ち溢れた魔術師。 されど世界(ステージ)というモノは余りに残酷だ。 今魔術師の目の前に居るのは、怪物。 物語に登場する、英霊にしか打ち倒せない悪竜だ。 それを魔術師の彼女では、どうすることも出来ない。

 そして彼女自身、それは深く理解していた。 だからこそ無様に震えることも、逃げ出す素振りも見せない。 戦いにおいてハッタリというのは大切だ。 こちらに何かあるのではないか、そう見せるだけで糸口も、

 

「へぇ……ガツンと、ね」

 

 だが。

 

「じゃあわたしはーーぷちっ、と潰しますね」

 

「……!?」

 

 既に状況は、最悪に等しかった。

 闇が、化け物から噴出する。 着ていたドレスが形を崩し、一気に周囲へ殺到する。 それは紛れもなく氾濫した川のそれだ。 しかもただの闇ではない。 あれは一度飲み込んだモノを、残らず食い荒らす、正真正銘の天敵。

 映像が途切れる。 今宵の世界(ステージ)は、これにて幕を閉じる。 全く続きが気になる終わり方だが、これ以上はこちらが巻き込まれる。 それに今このときが、人類史において最高のハイライトなのだ。 それを眺めるにしても、もう少し時間を置いて観るとしよう。

 それに。 気になることも、出来た。

……衛宮士郎。 第五次聖杯戦争ではセイバーのマスターとして戦い、ついには呪われた連鎖を断ち切った勝者。

 当初は、彼に対して嫌悪すら抱いていた。 何せ自分達の神話には、彼の役目など初めからない……演者としては最高かもしれないが、勝手にずかずかと踏み込まれるなど、虫酸が走る。

 だがよくよく考えれば、予定していない演者が出るとしても、それを無下にするのはつまらないにも程があるだろう。 ならば端役であっても、彼を受け入れるのが筋だ。

 

「……ふむ」

 

 一度見た景色を思い出す。

 紅蓮の荒野に、歯車。 製鉄所のような籠った熱気はうざったく、何より醜悪で、見るに値しない。

 こちらのカードからすれば、あの力にふさわしい相手は、かの王のカードだろうが、それも少し面白くない。 一度見た演劇は結果が分かる、それではダメだ。

 だからこそ、あの男を生かした。

 

「ほう……模倣とはいえ、バーサーカーを殺したか。 一応トントン拍子では飽きるだろうと細工をしたが、まさかそれすらはね除けるとはね。 いやはや……素晴らしいな、端役として成長していて」

 

 いずれ、器を回収するときが来る。

 それまでは彼も、鍛練を積まなくてはならない。

 偽物の相手は、偽物で十分なのだから。

 

「君には期待しているよーー贋作者(フェイカー)

 

 

 精々、何もない場所で足掻け。

 

 男の笑いが、世界に響く。

 

 さぁ。 それでは、あのときの続きを始めるとしようーーーー。

 


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