コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐   作:ライト鯖

1 / 40
身体を貫く刃の冷たさ、それとは対照的な熱が全身へと広がっていく。

「これは…お前にとっての罰だ。…お前は正義の味方として仮面をかぶり続ける。
枢木スザクとして生きることは…もう、ない。
人並みの幸せも、全て世界に捧げてもらう…永遠に」

仮面の下の顔は見えない。
しかし、もう、その必要はない。

「その願い(ギアス)。確かに受け取った」


彼は、自分の身体から力が抜けることを知覚する。

そのまま倒れ、彼の憎んだ神聖ブリタニア帝国旗を自身の血で葬るようにして車体を滑り落ちる。

「お兄さま…?」

彼は消えゆく感覚の中、彼にとって最愛の、何よりも守りたかった妹、ナナリーの手、その温もりを感じていた。

「そんな…お兄さまは今まで…」

強く、確かに握り締められる手。
しかし、彼はその感触を1秒事に感じ取れなくなっていっていた。

「お兄さま…愛しています…!」

…ギアスの影響か?それともナナリーの…。
何れにせよ、もしかするとナナリーは…。

遠のく意識の中、彼の癖か反射か、分析的な思考が過ぎる。

そうであるならば、最早、悔いも、心残りも何一つ──。

「ああ、オレは、世界を…壊し…」

いや、一つだけ──。
すまない、C.C。
だが、きっと、お前も、笑える、"明日"が──。
だから…。

「世界を…」

─創る。



第1章 記憶(願い)欠片(アーカイブ)
Archive-001 "願い"


 

 

我々は望む。七つの嘆きを。

我々は覚えているジェリコの古則を。

 

‐私達は望む。より良い明日を‐

 

 

「………」

 

重苦しく感じられた瞼を上げ、彼は光を眼へ取り入れる。

 

「ここは…」

 

ぼんやりとした視界。

もう一度瞼を瞑って軽く頭を振る。

 

「俺は…確か…」 

 

鮮明なる記憶。

つい先程、彼は自らの命でもって、レクイエムを完遂させたはずだった。

世界の敵、神聖ブリタニア帝国皇帝が正義の味方、ゼロに討ち取られる。

 

そう、俺は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、死んだ筈だ。

 

彼は、ルルーシュは、混乱する思考を落ち着ける為、そして現状認識の為に視界を動かす。

 

「列車…?」

 

流れていく窓外の景色。

枕木を叩く音。

特徴的な長椅子に、規則的に配置された扉。

 

間違いなく、列車の中である。

 

「しかし、何故…」

 

困惑のままに視界を正面へと戻すと、ルルーシュの目に、淡い青と、赤のコントラストが白いキャンバスに塗られたかのような色が飛び込んできた。

 

それは、少女であった。

 

「…!いつの間に。いや、それより、血が…」

 

淡い青は水色は、髪の色。

そして、赤は、白い服を染める、血。

 

ルルーシュの反応を他所に、彼女は口を開いた。

 

「私の、ミスでした」

「…何?」

 

ルルーシュは眉を潜める。

しかし、逆光によって断定は出来ないものの、表情自体は柔らかな微笑みを堪えているが、ただならぬ彼女の雰囲気によって、彼女の話を中断させようとは思えなかった。

 

「私の選択。…そしてそれによって招かれたこの全ての状況」

「結局、この結果にたどり着いて初めて、あの人の方が正しかったことを悟るなんて」

 

彼女は、宙に投げ出していた視線を初めてルルーシュの方に向けた。

左目は髪に隠れているものの、右の透き通るような■色の目がルルーシュの紫の瞳と交わる。

 

「図々しい事は承知で、お願いします」

「お願い…?」

「貴方が何故ここに来たのか。私にも、確かな理由は分かりません。…けれど、貴方にしか成せない事があるのだと思います」

 

少女は残念そうにも見える、寂しげな笑みを浮かべる。

 

「きっと、私達では変えられない何かがあるのでしょう」

「待て。何の話だ」

「…ルルーシュ・ヴィ…いえ。ルルーシュ・ランペルージさん」

「?!名前を…」

「これは契約です」

 

少女の眼は──。

何も変化はしていない。

しかし、ルルーシュはその中に願い(ギアス)を見た。

 

「契約か─。条件は?」

「……貴方にしか出来ない選択をして欲しいのです」

「選択?」

「今は、分からないかもしれません。でも、何れ──」

「…どうせ死んだ身だ。良いだろう。しかし──」

「ここで話したことは忘れてしまうでしょう」

「!?。では──」

「それでも、恐らく貴方ならきっと選択してくださると思います」

 

未だに意図も、何もかも掴みきれていないルルーシュであったが、しかし、彼女の身体の状況、そして、笑みの奥に隠した切迫感のような、ナニかを感じ取り、思わず"契約"を受けてしまっていた。

 

「大事なのは、経験ではなく、選択」

「貴方にしか出来ない選択の数々─」

 

彼女は再び、ルルーシュと目を合わせた。

 

「責任を負う者に付いて、考えたことはありますか?」

「責任?─無論だ。痛いほどにな」

「そうですか。貴方の答えは、あの人と同じなのでしょうか。──大人としての、責任と義務。その延長線上にある、選択。

それが意味する心延えも」

「──」

「ですから、"先生"」

「先生?」

 

ルルーシュのオウム返しに、彼女は小さく頷く。

 

「…あの人が信じる大人。だから私も信じられる。貴方ならきっと」

「さっきから言っている"あの人"とは何なんだ」

「──この捻れて歪んだ先の終着点とは、別の結果を…」

 

さっきから言いたいことばかりで要領を得ない。

安請け合いするべきではなかったか。

しかし、だからといって見捨てるのも──。

 

ルルーシュは相も変わらぬ思考の渦を脳内では巻き起こしていたが、彼の身体も表情も、或いは耳も、まだ、傾聴の姿勢を堅持していた。

目の前の、見る限り長くはなさそうな少女の邪魔をすることは、ルルーシュに出来る筈もないからだ。

 

「そこへ繋がる選択肢はきっと見つかるはずです」

 

だから。と、彼女は左目を覆い隠していた髪をかき上げる。

 

「なっ!」

 

「"ルルーシュ先生"、どうか──」

 

 

 

 

「──!」

「─先生、起きてください!」

「ルルーシュ先生!」

 

ルルーシュ・ランペルージは眩い光を感じ、同時に誰かの呼びかける声によって、覚醒させられる。

 

「んっ?!」

 

上体を起こし、辺りを確認する。

 

ここは──。俺は、何を?

 

「少々待っていてくださいと言いましたのに──お疲れだったみたいですね」

 

まだ半覚醒状態の脳で、ルルーシュは記憶を辿る。

 

「夢でも見られていたようですね。ちゃんと目を覚まして、集中してください」

 

傍らからかけられる声の主に、視線を向けた。

 

黒いストレートヘアに青いインナーカラー。

洒落っ気のないメガネ。

そして、鋭い耳。

白を基調としたスーツとも軍服とも付かない、アッシュフォードの制服にも近しいどこか見覚えのある制服に身を包んだ少女が、声の主であった。

少女にはそれらの特徴を凌駕する要素があった。

 

頭上に浮かぶ、とりどりの"青"に染まる"ヘイロー"。

 

 

ルルーシュは、革張りのソファに腰掛け直し、彼女を視認した瞬間、"思い出す"。

 

「もう一度改めて、今の状況をお伝えします」

 

いや、これは思い出したのではない。

俺は確かに、死んだのだから。

スザクに、ゼロに殺され、レクイエムを完遂させた。

なら、この"記憶"は?断片的な情報の欠片。記憶、というより記録か?

何にせよ、これは何だ。

 

「私は、七神リン。学園都市"キヴォトス"の連邦生徒会所属の幹部です」

 

駄目だ。思い出せん。

とりあえず彼女の話を聞き、この"記憶"と現況の整合性だけでも確かめねば。

 

「そして貴方は恐らく…私達がここに呼び出した"先生"…のようですが」

 

どうやら合っているようだな。

だが…。

 

「ようだ、とは?」

「ああ。推測形でお話したのは私も先生がここに来た経緯を詳しく知らないからです」

「何故だ?」

「混乱されてますよね。分かります。このような状況となってしまったこと。遺憾に思います」

 

でも、と彼女、七神リンは申し訳なさそうに言う。

 

「今はとりあえず、私に付いてきて下さい」

「──」

「どうしても、先生にやっていただかねばならないことがあります」

「やらねばならないこと?」

「はい。学園都市の命運をかけた、大事なこと、ということにしておきましょう」

 

今は付いていくしかないか。

そう判断したルルーシュは、リンの後を追うこととした。

 

呼び出したエレベーターへ乗り込み、リンがボタンを押下すると、高速で下降を始める。

 

随分な高層にいたのだな。

徐々に下界へと降りていく景色を見ていると、リンが横に立ち、窓外の景色を手で指し示し、言った。

 

「キヴォトスへようこそ。先生。

キヴォトスは数千の学園が集って出来ている、巨大な学園都市です。これから先生が働く場でもあります」

「学園都市…」

 

記憶の断片の情報とも合致する。

しかし、未だに"何故"は見えてこない。

そもそもここは俺のいた世界なのか?。

キヴォトス等、聞いたことも…いや、記憶にはあるが、ブリタニアにも中華にもE.Uにも日本にも、世界の何処にも無かったはずだ。

 

「先生がいらっしゃった所とは色々な所が違っていて──」

 

駄目だ。情報が少なすぎる。

仮に、異なる世界だとして、そんな事があり得るのか?。

いや、無いとは切り捨てられないだろう。

Cの世界。ギアス。

普通なら信じられるはずもない数多の超常を見てきたのだからな。

 

「──それほど心配しなくても良いでしょう」

「あの連邦生徒会長が、お選びになった方ですからね」

「連邦生徒会長?それが私の雇用主か?」

「それは後でゆっくり説明します」

 

気付くと、窓外の景色は殆ど地上の高さになっていた。

数秒もせず、目的階への到着を報せるチャイムが鳴る。

 

「ちょっと待って。代行!見つけた!待ってたわよ連邦生徒会長を呼んできて!」

 

エレベーターを降りるや否や、待ち受けていた一人の少女にリンは捕まり、何やら騒々しい雰囲気となる。

 

「ん?隣の大人の方は?」

 

青髪のツインテールの少女がルルーシュの存在に小首を傾げると同時、黒い髪に黒い瞳、黒い服と、そして、背から生える大きな黒翼。黒を纏いし、美麗の少女が割って入る。

 

「首席行政官、お待ちしておりました」

 

そこに更に、薄茶色の髪を左右それぞれ大きく二房に纏め、頭の真ん中に大きな黒いリボン。そして、四角っぽい黒縁のメガネが特徴的な少女も入ってきた。

 

「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が今の状況について納得のいく回答を要求しています」

「ああ…面倒な人達に捕まってしまいましたね」

 

リンは軽く息を吐き、皮肉たっぷりな笑顔を作る。

 

「こんにちは。各学園からここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん」

 

慇懃無礼とはこのことだな。

ルルーシュは傍らで内心苦笑しつつ、ここまでで得られた情報を整理していた。

 

どうやら連邦生徒会長というのがこの"学園都市"の首魁らしい。

それは俺の"記憶"。

ええい。ややこしいな。"情報(アーカイブ)"としよう。

それと一致している。

だが、肝心の"生徒会長"に関する情報がない。

 

数千の学園。学園都市。連邦生徒会。

そして、生徒会や風紀委員。

恐らく、この都市では各学園の生徒会が政府のような役割を担っているのだろう。

連邦生徒会は超合集国のようなものか。

 

しかし、子供が運営しているのか?

莫迦な。

いや、俺が言えたことではないな。

10代の学生が国を作っておいて、否定は出来ないか。

 

「ここを訪ねてきた理由はよく分かっています」

「今、学園都市で起きている混乱の責任を取るために、でしょう?」

「そこまでわかってるなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!」

 

青髪ツインテールの少女が憤りを顕にする。

 

「数千の学園自治区が混乱に陥ってるんですよ!この前なんてうちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」

 

どうも、状況は良くなさそうだ。

いや、子供だけで運営しているのだとしたら、先程見えた都市の風景。

あれが成立しているだけでも奇跡と見るべきか?

何れにせよ、泥舟かもしれんな。

 

ルルーシュのシニカルな一面がそう冷徹に分析を続ける。

 

「矯正局で停学中の生徒の一部が脱走したとの情報もありました」

「登校中のうちの生徒達が襲われる頻度も急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」

「戦車やヘリコプター等、出所の分からない武器の不法流出も2000%以上増加し、正常な学園生活に支障をきたしています」

 

戦車?ヘリコプター?。

"情報(アーカイブ)"によれば確かにキヴォトスは銃社会。

いや、それどころか──。

しかし、幾らなんでも学園が、子供が戦車やヘリコプターを?

莫迦げている。やはり夢なのではないか?

夢なのだとしたら、俺は死んでいないのか?

いや、それもあり得ない。

心臓を貫かれているのだし、目覚める気配すらない。

 

だが──。

ならばなぜ、俺はここにいるんだ。

 

「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして姿を見せないの?今すぐ会わせて」

 

詰め寄られたリンは、致し方ない、という風にため息を吐き、ルルーシュの方にもチラリと視線を向けつつ、口を開く。

 

「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」

「…え?!」

「……」

「やはりあの噂は…」

「何?!」

 

ルルーシュも思わず驚愕を口から漏らす。

 

首魁たる連邦生徒会長が行方不明だと?

では俺の雇用主は不明?

呼び出された理由とやらも分からないままになってしまう。

これでは俺が何故ここにいるのか、確たる論拠を得られないじゃないか。

ええい。気味が悪い既知であり、未知の"情報(アーカイブ)"に従うしかないのか?

いや、まだリンが生徒会長から何か聞かされている線もある。

まだ早計だ。

 

「結論から言うと、"サンクトゥムタワー"の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です」

 

その上無政府状態?!

くそっ。悪い情報ばかりが出てくるじゃないか。

一体こんな中華連邦よりも悪い地域で俺に何をしろと──。

いや、だからこそ俺が、ということか──?

まさか──。

いや、そうか。"情報(アーカイブ)"からしても──。

 

「フッ…」

 

ルルーシュは何やら悟ったような笑みを浮かべ、リンの話が終わるのを待つこととした。

 

「先程まで、認証を迂回出来るルートなども、見つかっていませんでした」

「それでは、今は方法があるということですか?首席行政官」

「はい。この"先生"こそが、フィクサーになってくれるはずです」

 

──やはりか。

 

そうであるなら"情報(アーカイブ)"を信じる以外に、ないのだろうな。

そして、"先生"の役割もある程度は推測出来た。

俺にそれをやれ、ということだろう。

それはまあ良い。どうせ死んだ身。

やることもないのだしな。

 

だが、まだ分からない。

誰が、或いは、世界はこの"学園都市(キヴォトス)"で、死んだ俺に、"ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア"に──。

いや、若しくは、"ゼロ"に、何をさせたがっている?

 

 

 

 






読んで頂きありがとうございます。
ある程度の構想はありますが、一次創作等他の執筆もしているため、不定期更新となります。
次回更新は早めにしたいと思っていますが、未定です。

ルルーシュが先生として如何なる選択をしていくのか、気長に気楽にお待ちいただければと思います。


よろしくお願い致します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。