コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐ 作:ライト鯖
──カタカタヘルメット団、アジト。
「う、うわあああっ!」
ヘルメット団員の一人は、息せき切りながら、アジトから逃げ出そうと走っていたが、背後からの銃撃にあえなく倒れる。
更に銃声が連続し、他の団員達もバタバタと倒れて行く。
「く…そっ…」
震える手で這いつくばりながらも抵抗の意志を砕かれきってはいない団員もいたが、無慈悲に強力な一発が撃ち込まれ、「うわああっ!」と痛みにより意識を手放してしまった。
「こっちは終わったよー」
「こっちも制圧完了。社長」
ヘルメット団が束になって倒れる場所で二つの影が何者かに通信をかける。
「ううっ…な、何者だ、貴様らは…」
ヘルメット団のリーダー格は倒れ伏しながらも、どうにか気力を振り絞り、起き上がらんと粘っていた。
「ふふふ」
ヒラリ、とアジトの高所から舞い降りた人影は、リーダー格へ近付き、怪しげな笑い声を漏らす。
「うわあああっ?!」
リーダー格は、二つの影に悟られぬように、と徐々に腕を伸ばし、銃を手に取ろうとしていたが、降りてきた"彼女"に掌を踏みつけにされ、その試みは挫かれてしまう。
「ま、まさかアビドスの?!…よくも、我々を!」
リーダー格の叫びには応えず、"彼女"は、はあ、ため息を付いていた。
「こんな不潔で変な匂いのする場所がアジトだなんて。あなた達も冴えないわね」
ふふっと、 今度は声だけでなく、雲間から覗いた月光に照らされて、微かに覗いたその口元にも、妖艶な笑みを浮かべているのが、リーダー格にも見て取れた。
「…いいわ。貴方達を労働から解放してあげる」
「なっなんだって?!」
「要するにクビってこと。現時刻を持って、アビドスは私達が引き受けるわ」
「ふっ、ふざけた真似を!貴様らは一体!」
最早焼けばちとばかりにリーダー格は素早く銃を手に取り、構えるが、誰一人として動じない。
そして、リーダー格は背後からの衝撃を受け、地面と縒りを戻すこととなった。
「私達は便利屋68」
「金さえもらえばなんでもする…」
月光に照らされた、彼女達は累々と倒れるヘルメット団に一瞥をくれ、そして、背を向けた。
彼女達の名乗りを、聞いていた者は、最早誰一人としていなかった。
──アビドス高校 保健室。
「はあ…」
セリカはベッドに座り、ベッドフレームと枕に背を預ける体勢で、窓外に目をやる。
その数秒後、ガラリ、と保健室の扉が開かれ、セリカは自然とそちらへ視線を向けた。
「先生…?ど、どうしたの?」
「なに。一度シャーレへ戻る前に見舞いを、と思ってな」
「…ああ。私なら大丈夫。いつまでもこうしちゃいられないし。
アヤネちゃんや皆も心配してるし、バイトにも行かなきゃだし」
だ、だから、とセリカは上体をもたれた状態から起こす。
「お見舞いとかいいから!ほら、元気だし」
「そうか。それは良かった」
ルルーシュはそう微笑んで見せ、「じゃあ」とルルーシュはくるりと身体の向きを変えた。
「また明日だな。今日一日位は大丈夫でも一応安静にしておくんだぞ」
完全に背を向けたルルーシュに向け、セリカは意を決して声を張る。
「あ、あの…!」
「ん?なんだい?」
「え、ええとね…
そういえば、ちゃんとお礼言ってなかったなあって思って…」
伏し目であったセリカだったが、恥ずかしそうにしながらも、しっかりと、ルルーシュへ目を合わせた。
「あ、ありがとう。…色々と」
この程度、礼など不要だ、と言おうとしたルルーシュだったが、セリカの続いた照れ隠しに遮られる。
「…で、でもっ!この程度でアビドスの役に立てたと思わないでよね!
この借りはいつか必ず返すんだから!」
フッとルルーシュは思わず吹き出してしまっていた。
セリカの取って付けたような反抗的な言葉と、数秒前までの恥ずかしそうな姿のギャップに、思わず笑ってしまったのだ。
「な、何よ!何笑ってんの!?」
「はは。悪い悪い」
「はあ、まったく…」
「本当に元気そうで良かったよ」
「ん…。……じゃあ、また明日ね」
えっと…とセリカは掛け布団をギュッと掴みながら小声で、呟くように、続けた。
「せ、先生…」
「ああ。また明日。お休み、セリカ」
保健室を出て、暗い廊下を歩いていると、ルルーシュはアヤネとばったり出くわした。
「あ、先生」
「ん?まだ学校にいたのか。アヤネもセリカの見舞いか?」
「はい。セリカちゃんを一人にする訳にもいかないので今日は皆で学校に泊まろうって話になったんです。
皆が買い出しに行ってくれたので、私はセリカちゃんの様子を、と」
「ああ。皆で残っていたのか。気をつけるんだぞ」
「ありがとうございます。先生はシャーレに戻られるんですか?」
「ああ。明日は昼前に顔を見せるよ」
「分かりました。それでは、また明日」
「その前に、少し良いか?本当は帰ってからメールで送ろうと思っていたんだが、折角ならアヤネには直接見てもらっておきたいものがあってな」
「何でしょうか?」
ルルーシュは端末を操作し、画面をアヤネに見せる。
「時間のある時にで構わないが出来るだけ早く、この計画書にある通りに校庭にあるバリケードなんかを設置し直しておいて欲しいんだ。
より効果的な作戦行動が可能となるだろう」
「…なるほど。確かに今の校庭は必要に応じて都度都度増やしてきたせいで無秩序ですから」
「ああ。折角なら要塞化してしまった方が合理的だ」
「了解しました。データを頂いても良いですか?」
「無論だ。送信する」
「…皆が戻ったら見せておきますね」
「頼んだ。それじゃあ、また明日。
ちゃんと交代ででも寝るんだぞ」
「はい。おやすみなさい。先生」
さて、戻ったらするべきことは──。
まず、例の戦車。バックにいる何者かが提供した可能性は無論あるが、手付金を使って購入した可能性もある。
その場合、違法物品の流通なら、ブラックマーケットしかないだろうな。
だが、ここは俺が単独で調査に赴くにはリスクが大きすぎる。
幾らギアスがあるとは言え、一発銃弾を貰えばアウトだ。
となると、後は"カイザー"の調査か。
オープンソースだけでは限度があるし、セリカの件で中断したのもあるだろうが、連邦生徒会の権限を利用した調査でも情報では掴みきれていない。
誰かが都合の悪い情報を操作しているのか、カイザーが上手く隠れているのかは分からんが、どうにも動向を追いきれない。
しかし、何れの理由にせよ、公的機関で追いきれない、という事は何かしらの後ろめたい事情がある、という事の自白に他ならない。
後ろめたい所がないのならば、コソコソする必要などないのだから。
「やはり、内部に此方側となる駒が必要だな」
ふむ…。とルルーシュは顎に手を置き考え込む。
そして、学校を出て暫くした場所に呼んでおいたタクシーへと乗り込んでから先日用意したばかりのスマホを取り出した。
「私だ。悪いな。こんな夜遅くに。頼みたいことがあるんだ。
少し無理を言うが、明日の朝でのアポイントメントを取ってほしい。
分かっている。殆ど飛び込みのようになることぐらいはな。
相手は…"カイザーコーポレーション"」
どうやら電話向こうの相手はその名に警戒を覚えたようで、ルルーシュは苦笑する。
「まだ仕事を依頼すると決めたわけじゃないさ。
だが、カイザーのグループはキヴォトスに大きな影響力を有しているんだ。
誼を結んでおいて、損はないだろう?」
「ローンかコンストラクションとのアポイントメントを優先してくれ。まあ、他でも良いが。
まさか。カイザーローンに金をせっつく訳でもコンストラクションに土地を売ろうだとかでも、そんな話ではないよ」
フッと彼は笑う。
「確かに、それならアポイントメントは後日でも良いのかもな。
…だが、それは君が知る必要はないことだ。そうだろう?」
「ああ、そうだ。可能か不可能かだけ結果を教えてくれれば良いんだよ。君はね」
電話を切ってからルルーシュは面倒そうにため息を吐いた。
「少々詮索好きな奴がいるようだな。…まあ良い。
今回俺は無理を言っているんだ。見逃してやるとしよう」
翌朝。
ルルーシュはどうにか朝一番にねじ込むことの出来た、カイザーコンストラクション本社を訪れていた。
無論、シャーレの先生と知られる訳には行かないため、メガネと地毛よりも明るい色合いのカツラを被り、更に彼自身は秘書のように振る舞っていた。
彼の主人役に選ばれたのは、既にギアスの支配下に置かれた犬型市民であった。
彼は詐欺商法の常習者であり、ルルーシュに声をかけたのが運の尽き。
ネズミ講に誘う中でギアスをかけられ、服装や見た目を変えさせた上でL.Lの代役とされたのだ。
ルルーシュとしては、大株主の誰かをL.L役にする事も最初は考えたものの、、素性が一瞬にして割れてしまう人間を使うのは少しリスクが高く、しかもそうなればわざわざミステリアスさを演出し、ライバルを警戒させるイメージ戦略の為にL.Lと名乗り名前を隠した意味もなくなってしまう事等から、自らの中で却下していた。
そして選ばれたのは手頃な悪党。
御誂え向きに絡んできた詐欺師は渡りに船だった、というわけである。
「始めまして。私、"エンジェルマートグループ"の新しいCEOとなりましたL.Lという者です」
「お噂は伺っております。本日はどのようなご要件で?昨日急ぎの要件があると伺ったのですが」
いえね、とL.L役はチラリとルルーシュを見る。
「お願いしたいことがあるのですよ。取引の依頼とでも申しましょうか」
「ほう。新店舗の建設でしょうか?
興味がありますね」
ルルーシュはビジネスバッグから書類の束を取り出し、応対に来たロボ市民へと近付いた。
「いえ、お願いしたいことは別にあるんですよ。
そう、私から、貴方にね」
名刺交換で相手が部長の肩書を有している事を確認したルルーシュは、彼を駒とすることを決めた。
ロボ市民へのギアス効果も、"エンジェルマート"乗っ取りの際に株主相手に試して効果を確認済みである。
ロボ部長がルルーシュに目を向けた時、既にギアスは発動していた。
突然割って入ってきた眼前の交渉相手より格下のはずである秘書らしき男の姿を気にかけない者はいないだろう。
それ故に、ルルーシュへと顔を向けた瞬間、彼は"絶対遵守"に支配された。
「……何でしょう」
「俺が頼んだ情報を調べてくれるだけで良い。
勿論、俺との繋がりは足がつかないようにな」
「分かりました」
「それと、急遽アポイントメントを取ったのに何もなしでは怪しまれるからな。適当な店舗の建設を依頼する。契約書を作成してくれ」
「…直ちに」
これで一歩前進だ。
他のグループ企業にも情報提供者を増やしていき、カイザーを丸裸にする所が最終目標だが、ひとまずはこれで良い。
一番はカイザーローンに足場が欲しかったが、昨日の今日では高位職者とのアポイントメントを取ることはやはり無理だったな。
コンストラクションは建設部門。となれば、他のグループ企業との関わりは多いだろうし、悪くはない。
ローンはまた次だな。一応来週には予定を入れられたことだし。
「さて、アビドスの債務者君はチンピラ共の雇用者なのか、それとも、別者の仕業なのか、先ずはそこからだな」
ダミーの契約締結後、ルルーシュはそのままアビドスへと向かうのだった。
アビドスでは、お昼の前にルルーシュの到着を待っての会議が開かれることになっていた。
「それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます」
「本日は先生にもお越し頂いたのでいつもより真面目な議論が出来ると思うのですが」
アヤネがルルーシュに目を向けてからそう笑顔を浮かべた。
アヤネ、いつも苦労しているんだな。
期待に満ちた彼女の表情に内心同情しつつ、ルルーシュは一先ず彼女らの議論を見守ることとした。
「は〜い★」
「勿論」
「何よ。いつもは不真面目みたいじゃない」
「うへ、よろしくね〜。先生」
「ああ。よろしく」
ではとアヤネはホワイトボードの前に立ち、ペンを取る。
「早速議題に入ります。本日は私達にとって重要な問題…"学校の負債をどう返済するか"について具体的な方法を議論します。
ご意見のある方は挙手をお願いします」
「はい!はい!」
すかさずセリカが元気良く挙手をする。
「はい。黒見さん。お願いします」
「…あのさ、まず苗字で呼ぶのやめない?ぎこちないんだけど」
「セ、セリカちゃん…でも、折角会議だし」
「いいじゃ〜んお硬い感じで。それに今日は珍しく先生もいるんだし」
「珍しくというより、初めて」
「ですよね!なんだか委員会っぽくて良いと思いま〜す★」
皆の意見にルルーシュも首肯する。
「そうだな。それに、フォーマルな場での議論の練習にもなるだろう。
いつかの為にも今の内に慣れておくのは重要だ」
「皆がそう言うなら…まあ…」
セリカは名前の件を引っ込めて一拍の間を置いてから本題へと入る。
「…とにかく!対策委員会の会計担当としては、現在我が校の財政状況は破産の寸前としか言いようがないわ!
このままじゃ廃校だよ!みんな、分かってるよね!」
「まあね〜」
「毎月の利息額は788万円!私達も頑張って稼いでいるけど正直利息の返済もギリギリ
これまで通り指名手配犯を捕まえたり、苦情を解決したり、ボランティアするだけじゃ限度があるわ!」
このままじゃ、とセリカは勢いを増す。
「埒が明かない!何かこう、一発でっかく狙わないと!」
「でっかく…って、例えば?」
アヤネに尋ねられたセリカは、自信満々、喜色満面といった様子で、鞄から1枚のビラを取り出した。
「これこれ!街で配ってたチラシ!」
「これは…?!」
「どれどれ…」
ホシノがチラシの文面を読み上げる。
「"ゲルマニウム麦飯石ブレスレットであなたも一攫千金"、ねえ…?」
「そうっ!これでガッポガッポ稼ごうよ!」
純粋な表情で言うセリカを見、ルルーシュはこめかみを抑える。
対策委員会の面々も、苦笑や困惑を浮かべており、それはルルーシュに取って救いだった。
「この間、街で声をかけられて説明会に連れて行ってもらったの。運気を上げるゲルマニウムブレスレットってのを売るんだって!」
「これね!身につけてるだけで運気が上がるんだって!で、これを周りの三人に売れば…」
そこまで言ってから漸くセリカは、室内の妙な空気感に気が付いたようだった。
「どしたの、皆…?」
「却下ー」
ホシノはビラをポイと放り捨てて言う。
「えーっ?!なんで?!どうして?!」
「セリカちゃん…それ…マルチ商法だから」
「儲かるわけない」
「へっ?!」
ルルーシュもため息を付きながら言う。
「やはり、授業は必要そうだな。セリカには特に化学と経済の授業が」
「ええっ!?な、何でよ!!」
「マルチ商法もそうだが、ゲルマニウムと運気は何の関係もない。
麦飯石もだ。麦飯石が何に使われてるか知ってるか?」
「え…?なんだろ…わかんない。聞いたことなかったし…」
「聞いたことのない物に飛び付くんじゃない。
…麦飯石はミネラルウォーターの製造装置における濾過材として使われていたりするものだ。
因みにゲルマニウムは昔のラジオのトランジスタなんかに使われていたものだな。
肩こり改善などの効果が見られているものも存在するようで、多くの健康器具や食品に利用されているが、眉唾物もかなり多い」
「え。あ、あれ?ミネラルウォーター?健康…?運気アップは…?」
当然、とルルーシュはビラを拾い上げ、それをセリカに突きつけた。
「運気とは何の関係もない。ゲルマニウムも麦飯石もただの鉱物だ。超常の力は含まれていない!
これは典型的な似非科学を利用した詐欺だ!」
「そっそんな…。私、2個も買っちゃったんだけど…」
手遅れだったか、とルルーシュは額に手を当てた。
「セリカちゃん。騙されちゃいましたね。可愛いです★」
「…!!」
「全く、セリカちゃんは世間知らずだね〜。
気を付けないと、悪い大人に騙されて、人生取り返しのつかないことになっちゃうかもよ〜?」
うう…とセリカはへたり込むようにして椅子にその腰を戻した。
「そ、そんなあ…そんな風には見えなかったのに…せっかくお昼抜いて貯めたお金で買ったのに…」
「大丈夫ですよ、セリカちゃん。お昼、一緒に食べましょ?私がご馳走しますから」
「…ノノミせんぱぁい…」
ノノミに慰められるセリカ。
アヤネはその様子に苦笑いしつつ、議事を進める。
「で、では黒見さんの意見はこの辺で…。
他にご意見のある方…」
「はい…では小鳥遊委員長。ちょっと嫌な予感がしますが…」
「うむうむ。えっへん!」
わざとらしい咳払いをし、ホシノは言う。
「我が校の一番の問題は全校生徒がここにいる数人だけってことなんだよね〜。
生徒の数イコール学校の力!トリニティやゲヘナみたいな生徒数になれば、毎月のお金だけでもかなりの金額になるはず〜」
「確かにな。生徒数が増えれば議員を排出し、連邦生徒会での発言権も得られる。
だが、借金まみれの学校へ飛び込んできてくれる人間を数百と集めるのは無理があるんじゃないか?」
「ふっふー。簡単だよ。他校のスクールバスを拉致すればオッケー」
ルルーシュはまたもガクリと肩を落とすことになった。
「はい?!」
「登校中のスクールバスをジャックして、うちへの転籍書類にハンコを押さないと降りられないようにするのー」
「それ、興味深いね」
シロコだけが前向きな反応を返す。
「ターゲットは?トリニティ?ゲヘナ?それともミレニアム?」
「おい。確かにそれで生徒数は増やせるかもしれんが、ヴァルキューレに追われる犯罪学校にでもなるつもりか?」
「そ、そうですよ!それに他校の風紀委員が黙っていませんよ!」
「うへ〜やっぱそうだよね」
「ホシノ先輩、もっと真面目に会議に臨んで頂きませんと…」
ルルーシュはアヤネが最初に喜色満面でルルーシュの臨席を喜んでいた理由を痛感していた。
「はい。私に良い考えがある」
「はい。砂狼シロコさん…」
アヤネは警戒しつつシロコの挙手に応える。
ルルーシュも、既に嫌な予感を感じ取っていた。
「銀行を襲うの」
「はいっ?!」
アヤネは飛び上がったが、ルルーシュは想定外の明後日の方向に飛んだ提案の連続によってツッコミが追い付かず、ひきつった微笑しか出ていなかった。
「確実かつ簡単な方法。ターゲットも選定済み。市街地にある第一中央銀行。
金庫の位置、警備員の動線、現金輸送車の走行ルートは事前に把握しておいたから」
「さっきから一生懸命見ていたのはそれですか?!」
シロコは頷きつつ、手に持っていた紙束を広げる。
「5分で一億は稼げる。はい、覆面も準備しておいた」
シロコはそう言って、5種類の、それぞれ色の異なる覆面を取り出し、机に並べた。
「いつの間にこんなものまで…」
「準備が良いな。だが、把握が不足しているものがあるぞ」
「え?何?」
「最寄りの治安部隊の詰所からの距離だ。
逃走時間の確保には必須だろう」
「確かに。さすが先生、参考になる」
「先生?!お気を確かに!助言しちゃダメです!」
「…はっ?!─すまない。ツッコミが追い付か無くておかしくなっていた」
「分かります。…分かりますよ。先生…」
「苦労しているな…」
「分かっていただけますか…」
二人で分かち合っていると、ノノミが覆面を被った姿を皆に見せ始めていた。
「覆面レスラーみたいですね!」
「いやー、良いねー。人生で一発決めないと。
ねえ、セリカちゃん?」
「そんなわけあるか!却下!却下!」
「そ、そうですっ!犯罪はいけません!」
シロコは不満そうに頬を膨らませながら覆面を取った。
「ダメなものはダメです!シロコ先輩!
…皆さんもうちょっとまともな提案をしていただかないと…」
「じゃあ、はい!次は私が!」
「はい。十六夜ノノミさん。犯罪と詐欺は抜きでお願いします」
「はい!とってもクリーンかつ確実な方法があります!」
「アイドルです!スクールアイドル!」
「ア、アイドル?!」
またもや予想の斜め上の提案が飛び、アヤネは困惑の表情となる。
「そうです!アニメで観たんですけど、学校を復興する定番の方法はアイドルです!
私たち全員がアイドルとしてデビューすれば…」
「却下」
ホシノが即座に切り捨ててしまった。
「あら…これもダメなんですか?」
「ホシノ先輩なら特定のマニアに大ウケしそうなのに」
セリカがいつものお返しとばかりにからかう。
「うへー、こんな貧弱な身体が好きとか言っちゃう輩なんて人間としてダメっしょー。ないわー、ないない」
「決めポーズも考えておいたのに…」
残念そうに言いつつ、ノノミはその場でくるりと回って、ビシッとポーズを決めてみせた。
「水着少女団のクリスティーナでーす♧」
「…どういうことよ…てか水着少女団ってなによ!だっさい!」
「えー。徹夜で考えたのに…」
既に板書を諦めていたアヤネは、あのう、と皆を見渡し、言う。
「議論が中々進まないんですけど、そろそろ結論を…」
「それは先生に任せちゃおー。先生、これまでの意見見て、やるならどれが良い?」
「えっ!?この中から選んでもらうんですか?!もう少しまともなのが出てからの方が…」
「大丈夫だよー先生の選んだものなら間違いないって」
あははーと笑うホシノ。
アヤネは全く笑えず、困惑し通しである。
「何でそう言い切れるんですか?!」
「まさかアイドルをやれなんて言わないわよね?」
「いや、まあ、その中だとアイドルだろうな。実現可能性的にも、法的にも…」
だが、とルルーシュは何か言おうとする面々を制し、続けた。
「私からも提案。というよりも、聞いておきたい事だな、があるんだ。
生徒数の事ではないが、借金そのものについて」
「どしたの先生?急に真面目な感じになっちゃって…」
「アビドスの借金を肩代わりしても良い。
私がそう言ったとしたら、君達はどうする?」
「「「「……?!」」」」
「…………」
第十一話です。
次回更新日は変わらず未定です!
今回も読んでくださり、まことにありがとうございます。
次回もどうぞ、よろしくお願い致します。