コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐   作:ライト鯖

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Archive-013 仇で返されし"恩"

「いや〜、すっかり朝になっちゃったね〜。

あのアルって娘達、面白い人達だったよね」

「…てっきり寝ているものと思っていたよ」

 

アビドスへ戻ってからホシノが一人姿を消す様子を見たルルーシュは、他の娘達に気取られぬよう、暫く時間を置いて屋上へと昇った。

 

「先生が話したそうにしてたからさ」

「エスパーみたいだな」

 

ルルーシュは悟っていた。

いつもならルルーシュすら気付かぬタイミングでふらっと屋上か何処かへ行っている事の多い彼女が、今回は明らかに、ルルーシュだけに存在を知らせていたことを。

 

「先生の方がよっぽどエスパーみたいだけどね〜」

「あれらは単なる計算に基づく必然的な結果だ。

超常の力ではないさ。……それよりも」

 

ルルーシュは塔屋に腰掛けるホシノを見やった。

 

「私達の間にある、誤解を解いておきたくてね」

「へえ…?誤解って何のこと?おじさんは別に…」

「……私は、仕事としてここに来ている」

「………」

 

ルルーシュはホシノから視線を外し、ゴチャゴチャとしたアビドスの校庭を見下ろす。

 

「そして、その仕事をする理由は単純だ。

今はただ、仕事を通して俺の成すべきことを、探しているだけなんだよ」

「何が言いたいのか、私にはさっぱり…」

「分かっているだろう。君ならば」

「先生って、何か鋭いのか鈍いのか分かんないね」

「褒め言葉ではなさそうだな」

「さあ。どっちだろうね〜」

 

ホシノは塔屋から飛び降り、ルルーシュと同じ位置に立った。

 

「先生。おじさんは感謝してるんだよ。先生に。

さすがに、カタカタヘルメット団相手とは言え、あの物資状況じゃ勝てなかったし。

それに、セリカちゃんも助けられた。

だから、誤解なんてのは何一つないんだよ」

「………」

「さ、戻ろう。皆、きっとおじさん達を待ってるからさ。会議の続きをしなきゃね。

──先生のアイドルプランの続きをノノミちゃんも聞きたがってるし」

 

塔屋の扉を潜り、階段へと戻ろうとするホシノをルルーシュは呼び止める。

 

「─君は」

「ん?」

「道化であり続けることを選ぶのか?ホシノ」

「うへ。本当、先生は鈍くて、鋭いね。…私は私だよ。先生」

 

ルルーシュが何か言おうと口を開きかけた瞬間──。

 

ルルーシュとホシノの携帯が同時に通知音を響かせた。

 

「どうした?セリカ」

「どったの?アヤネちゃん」

 

『あ、お二人とも同じ場所におられるのですか?!』

 

アヤネの慌てた様子の声が二つの携帯から飛び出して来た。

 

「あ、ああ。なるほど。同時に連絡する為に、か。

何かあったのか?」

『校舎より南、15km地点付近で大規模な兵力を確認しました!』

 

来たか。

 

ルルーシュはホシノに視線を向ける。

 

『まさか、ヘルメット団が?』

『ち、違います!ヘルメット団ではありません!…傭兵です!恐らく、日雇いの傭兵!』

 

ルルーシュは最早日雇いの傭兵という彼の世界ではあり得そうにもない単語の組み合わせにも大きな疑問を抱かない程度にはこの世界に染まりつつあった。

 

「へえー傭兵かあ。結構高いはずだけど」

 

ホシノは言いながら、ルルーシュの視線と彼女自身の視線を交わらせる。

 

『これ以上接近されるのは危険です!先生!出動命令を!』

「ああ。─総員!武装を整え、直ちに出撃!学校前の通り、そこで敵軍を迎え撃つ!」

 

通信を切り、ルルーシュはホシノとほぼ同時に不敵に口角を上げていた。

 

「どうやら、話の続きはまた今度だな」

「…そだね。行ってくるよ」

 

再び通信をオンにし、そのままホシノは屋上のフェンスに向かって駆け出す。

 

「はっ?!おい!幾らなんでも…!」

「大丈夫。…アヤネちゃんおじさんの盾と銃、お願い出来る?」

『あ、はい!了解しました!』

 

フェンスを飛び越えた彼女は風を受けて落下し、そのまま勢いよく地面に、しっかりと着地するのだった。

 

「見ているこっちの肝が冷えるな…」

 

ルルーシュはキヴォトスの人々の頑丈さに呆れつつ、"シッテムの箱"を取り出す。

 

「アロナ」

『はい!』

「サポートを頼む」

『承知しました!お任せを!』

 

ルルーシュは普通に階段を駆け降り、現場へと向かうのだった。

 

校舎が遠景の中央に目立つ位の、少し離れた通りで、アビドスの面々は敵軍と向かい合う格好となった。

 

「…あれ?─ラーメン屋さんの」

 

先頭で傭兵を率いる者達の姿に、アビドスの皆は見覚えがあった。

何せ、先程、ラーメン屋で良い別れを経験したばかりの、顔見知りなのだから。

 

「ぐぐっ…」 

 

指摘されたアルは気まずそうに顔を歪める。

 

「誰かと思えばあんたたちだったのね!ラーメン無料で特盛にしたあげたのに!この恩知らず!」

 

セリカの怒りに、アルは益々やりにくそうな様相となる。

 

「あははは!その件はありがと。それはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ」

「残念だけど、公私ははっきり区別しないと。

受けた仕事はきっちりこなす」

 

ムツキとカヨコがそう割って入った。

 

「…その仕事っていうのが便利屋だったんだ」

「もう!学生なら、他にもっと健全なアルバイトがあるでしょう?それなのに便利屋だなんて!」

 

ノノミのその言葉によって、アルは少し気勢を取り戻す。

 

「アルバイトじゃないわ!れっきとしたビジネスなの!肩書だってあるんだから!」

 

アルはそう胸に手を置き、自信たっぷりに言う。

 

「私は社長!」

「あっちが室長で」

 

ムツキを差してから、次にカヨコへ手を向ける。

 

「こっちが課長」

「はあ…社長。ここでそういうふうに言っちゃうと余計薄っぺらさが際立つ…」

 

カヨコがはあ、とため息を付いたのとほぼ同時、シロコ達に遅れて漸く到着したルルーシュはアル達を見て、やはりか、との想いを抱いていた。

 

予想通りではあるな。やはり彼女らがアビドスに放たれた刺客、というわけか。

まさかと思わされるような雰囲気であったが、まあ、だからといって油断するつもりはない。

 

「誰の差し金?…いや、答えるわけないか」

 

シロコは既に準備万端とばかりに銃を構える。

 

「力尽くで口を割らせる」

「ふふふ。それは勿論企業秘密よ?

─総員!攻撃!」

 

アルの命令と共に背後に控えていた傭兵集団も動き出した。

 

「恐らくこの戦力差をバリケードも築いていない道路で耐えきるのは難しいだろう。

全員、敵戦力に打撃を与え、遅滞戦闘に努めつつ、最終的には学校の校庭へ撤退するんだ」

 

まずは、とルルーシュは先鋒集団に狙いを付ける。

 

「ノノミ!掃射!セリカは左翼集団に向けて突撃!シロコはドローンで援護!」

 

ノノミがマシンガンを傭兵部隊に向けて撃ちまくる。

 

「くっ!」

 

先鋒集団は徒に突っ込むことはせず、その場に足止めされる格好となってしまった。

セリカがその先鋒の左翼へ突進し、左翼集団の注意がセリカへ向いたタイミングで、シロコのドローンがミサイルを撃ち込む。

 

「よくやった。これで左翼集団は崩れた!シロコはセリカの応援に行け!

ホシノは私の指定したタイミングで敵右翼集団に対し陽動を仕掛けろ」

 

ドローンのミサイルを撃ち尽くしたシロコはセリカの下へと駆け、混乱する傭兵部隊左翼集団に追い討ちをかける。

 

「ノノミはシロコ、セリカのカバー」

 

ノノミのマシンガンが、左翼集団の応援に向かおうとする中央集団を牽制する。

 

「ホシノ!」

 

ホシノは右翼集団の直ぐ側で、歩道に敷設された街路樹の茂みを潜り、突然姿を現した。

 

「うわああ?!こっちにも?!」

 

突然の奇襲に戸惑う右翼集団。

中央の傭兵達は何方に向かうべきか、敵の主力は何方かの判別を付けることが出来ず、バラバラの動きになってしまう。

 

「シロコ!セリカ!この隙に突破!」

 

統制の乱れた集団を掻き分け、撃ち倒して行き、二人は駆け抜ける。

そして、中央の傭兵部隊の中に紛れ込むような位置までたどり着く事となった。

 

「うわっ!ここだ!ここにいるぞ!」

「囲め!囲め!」

 

二人が包囲される格好となってしまうが、ルルーシュは不敵に笑う。

 

「シロコ、セリカ。屈め」

 

傭兵達が二人を完全に囲い込んだのとほぼ同じタイミングで、シロコとセリカは身を屈めた。

瞬間、包囲網の完成と同時に、敵に向けて傭兵部隊の何人かは引き金を引いた。

だが、射線はシロコ達の頭部や上半身に重なっており、地面に這いつくばる程に低く屈んだ二人は射線から外れた。

つまり、銃弾は反対側にいる傭兵部隊の味方に当たる事になるのだった。

 

「痛え!」

 

数発の弾丸が僅かに遅れて同じく同士討ちを起こす。

そして、シロコ達はそのまま近くの傭兵の足を払い、バランスを崩させる。

周囲の者達は倒れてきた仲間を避け、或いは巻き込まれ、折角の包囲陣をほつれさせてしまう。

 

その上同士討ちによる混乱で、何人かの傭兵は敵の攻撃と誤認し、撃ち返してしまっていた。

これにより、混乱には拍車がかかっていた。

 

シロコ達はその隙に包囲から抜け出し、一旦ノノミのいる後方へと戻る。

ホシノも陽動の役割を終え、合流を果たしていた。

 

 

─前線の惨状に、アルは内心で冷や汗を流していたが、それをおくびにも出さず「中々やるじゃない」と口にする。

 

「アハハッ。アルちゃん焦ってなーい?」

「焦ってなんかないわよ!こっちには数がいるのよ!先鋒がダメだったからって何よ!行きなさい!皆!」

 

様子見のようにゆったりとした進撃をしていた傭兵部隊だったが、先鋒の混乱を見、勢いを増した。

 

「─ふむ。ここまでだな。後退するぞ。校庭のバリケードを利用した防衛策に移行する。

総員遅滞しつつ後退だ」

 

数の差に押し潰される事は避けねばならない。

校庭ならば侵入経路は限られているから守りやすい。

塀をよじ登るような真似をされるかもしれんが、それはドローンカメラで全体を監視し、それをしようとする者に機銃付きのドローンで個別対応すれば良い。

 

そうして、アビドス勢はその時点で装備していた弾薬が尽きるまで遅滞戦闘に努め、学校へと撤退した。

 

「アヤネ!補給品の用意を!」

『承知しました!』

 

銃弾を新たに補給し直したアビドス勢は校庭のバリケードで持って学校の門扉を封鎖した。

 

「お手製のバリケードね…ハルカ!」

 

塞がれた出入り口を見たアルに命じられたハルカは手持ちの手榴弾の幾つかを素早くぶん投げた。

 

轟音と共に一瞬にしてバリケードは破られ、傭兵部隊が校庭になだれ込まんとする。

 

「ほう。中々素早いな。…しかし、アヤネ!」

 

ルルーシュは校舎に戻っており、階段を上がりながらドローンカメラから様子を伺っていたが、傭兵達が校門へ集中しているのを見て、アヤネへ合図を出した。

 

『スモーク弾、発射!』

 

アヤネの操作に従い、ドローンが煙幕弾を射出。

校門周辺が白い煙に包まれた。

 

ストリートのような広い場所では敵の配置も読みにくい上、此方も現在地を把握しにくくなる。

しかし、ここならば、彼女らにとっては目を瞑ってでも移動出来るだろう場所だ。

ならば──。

 

「シロコ!セリカ!」

 

言われる間でもないとばかりに二人は煙幕の中へと突っ込み、煙幕に視界を奪われた傭兵らに攻撃をかける。

 

「ど、何処から?!」

「後ろだ!」

「ちが…左だ!」

 

「社長。これ、不味いんじゃない?」

 

カヨコが傭兵達の惨状からそう危惧を言う。

 

「た、確かに少し想定外だったけれど、問題ないわよ!…そう、問題ないわ!ムツキ!こっちも対抗するのよ!」

「対抗?…あー。くふふっ。りょーかい」

「カヨコも、援護を」

「了解」

 

ムツキが楽しげに笑い、大きめの怪しげな中身の分からないバックを投げ飛ばすと、着地点で爆発が発生した。

 

「ば、爆弾?!先程のよりも大きいです!」

『ちっ。厄介だな。ここはあの小柄な──ん?』

 

屋上で戦場を俯瞰するルルーシュはムツキを最優先で倒す、最低限後退させるべきか、と考えるが、しかし、直ぐに彼女の傍に現れたもう一人の便利屋の存在に気付く。

 

他とはレベルが違いそうだな。あの二人、恐らくホシノとシロコに向かわせればどうにか出来んことはないだろう。

だが、その間、防衛戦力が薄くなり、数に飽かして傭兵共が突破してしまうかもしれん。

─仕方がない。

 

「ドローンであの二人を牽制しつつ、全員持ち場のまま!」

 

あれ程の爆発をそう何度も起こせるとは思えん。

そうであるならば、単に個の戦力としての脅威だけを認識していれば良い。

ただそれも我々にとっては痛手だが。

 

「ノノミ。煙幕から抜け出た傭兵達がいる。そいつらを倒した後、私が合図をしたら左40度前方へ斉射しろ」

「はい!★」

「セリカは一旦手を緩めてくれ。敵を数人入れる」

 

ノノミが言われた通りの場所へガトリングガンを放つと、セリカがルルーシュの指示に従いわざと射撃の手を緩めたことで校庭へと入り込んだ傭兵の一部隊はノノミのガトリングガンの弾幕へと招待されることとなった。

 

その後、何時間かに渡ってルルーシュが繰り出す多種多様な手管によって傭兵達を徐々にすり減らしつつ、5名での防衛に成功し続けていた。

しかし、便利屋68のメンバーを崩すことは出来ずにいた。

むしろ、彼女達によってアビドス勢も多少なりとも疲弊させられる事にもなっていた。

 

「これではジリ貧か…」

 

ルルーシュは顎に手を置き、やはり、と呟く。

 

「賭けに出るしか無さそうだ」

 

通信機に向かってルルーシュは声を張り上げる。

 

「シロコ!ポイントB付近の樹木があるだろう。その辺りに内側から塀を飛び越えられるよう踏み台を用意してある!そこから外に出てドローンと共にポイントδへ移動してくれ」

『ん。分かった』

「恐らく敵が追ってくると思うが、耐えられるか?」

『大丈夫。敵を引きつければ良いんだね?』

 

その通りだ、とルルーシュは肯定し、ホシノ達にも指示を出す。

 

「セリカ、ノノミ、二人は校庭の第二防衛線まで後退。

傭兵達に広い視界を提供してやれ」

『えっ!?良いの?!』

「問題ない。次の行動の為に必須なんだ」

『了解しました〜★』

「アヤネは二十秒後に傭兵部隊後衛にドローンからミサイルを発射」

『はい!』

 

シロコはルルーシュの言った通りの場所にあった踏み台、もとい、使われていない学習机をつたい、軽々と塀を乗り越えていた。

 

「おい!あいつ出てきたぞ!」

「狙え!狙え!」

「バカ!罠じゃないのか?!これ!?」

「罠?!…確かに、下手に突っ込んだら危ないか…?」

 

思った通りの展開にはならなかったシロコは、ルルーシュに連絡を入れる。

 

「先生…これ、大丈夫かな?」

「思ったよりも冷静なようだな。しかし問題はない。パターン2だ。

シロコはそのままポイントδへ向かうふりをしろ。ノノミとセリカはそのまま」

 

シロコという奇襲、とは捉えることはなかった敵の行動を受け、それでもしかし、警戒を抱いていた傭兵達は、突然眼前の視界から敵がいなくなった事に困惑した。

 

「な、なんだ?!こっちも罠か?!」

「行って良いんかな…?」

 

ニヤッとルルーシュは口角を上げ、シロコを呼ぶ。

 

「シロコ!敵本陣、便利屋達が陣取る場所まで近付け。

ただし、無理はしなくて良い。攻勢限界が来ればポイントδまで撤退。

アヤネはシロコのドローン操作を手伝ってやってくれ」

 

シロコは銃を構え、便利屋の社長、アルの構える場所へと突撃を開始した。

 

「こっちだ!校庭の方が欺瞞戦術なんだ!」

 

傭兵達は校庭の第一防衛ラインを捨てたことの理由を完全に読み間違えていた。

罠等ではない。欺瞞でもない。

 

ただ一つの目的の為に、傭兵達の密集を緩和させたかっただけなのだ。

 

アルの傍までたどり着くことは残念ながら出来ずじまいだったシロコだが、そのまま何個かの小部隊を引き付け、ポイントδへと向かう。

 

「敵戦力は分断された!

これで、狙いやすくなったな。─大将首を」

 

ルルーシュは満を持して指示を出した。

 

「ホシノ!敵の本陣へ、突入!!」

 

アビドスの前衛、突破力に長けているのはシロコとセリカ。

ホシノは守備に長けている…そう思っていた。

だが、これまでの戦闘でも垣間見えたホシノの真価。

彼女の突破力、制圧力はアビドスでもトップクラスだ。

しかも、恐らく、まだ全容を見れてはいないのだろう。

 

ホシノがあえて守備役に徹している理由は分からない。

ただ考えられる可能性の一つとしては、アビドスは総生徒数が少ないに起因している可能性だ。

故に、バランス良く役割を配置することを考えた場合、守備、攻撃双方に長けたホシノが守備に回るのは理解が出来る所ではある。

 

ただ…それだけではないようにも感じられていた。

 

 

だが、兎にも角にも指名されたホシノが凄まじい速度で便利屋本陣へと突貫する。

傭兵達は校庭へと、ある程度侵入したことで、狭苦しい舞台ではなくなり、密集が散漫を見せることとなった。

 

結果、ホシノの通り道が生まれていたのだ。

 

「!…これは」

 

何人かの未だ進路上にいた傭兵が薙ぎ倒されていく中、アルは危険を察知していた。

 

「社長」

「皆下がってなさい!私が──」

 

言い終えるよりも早く、ホシノの飛び上がった身体がアルに影を作っていた。

 

「っ─!!」

 

既の所でアルは自身の愛銃でホシノの突撃を防いだ。

二人は銃身を鍔迫り合いのようにぶつかり合わせる。

 

「へえ…」

「…っやるわね!」

 

数秒の押し合い。

しかし、傭兵や便利屋の面々がアルの応援に来たため、ホシノは一旦、アルから離れ後退する。

 

「ごめん。防がれちゃった」

「問題ない。目的は達成したからな。

敵はこれで、本陣の方に注意が向いた。

──シロコ!」

 

囮と認識され、ホシノの突貫によって傭兵達からも便利屋の意識からも消えていたシロコが道を挟んだ雑居ビルの影から飛び出し、ドローンのミサイルと共に、アルの方へ注意を向けていた傭兵の本隊へ突っ込んだ。

 

「畳み掛けろ!セリカ!ノノミ!ホシノ!」

 

ホシノは再び、セリカとノノミはそれに追従し、校庭に誘引されていた傭兵部隊を追い立てつつ、一気に前線を押し上げる。

 

「さあ。チェックメイトだ」

 

ルルーシュが次なる一手へ取り掛かろうとしたその時、彼の耳に学校特有の鐘の音が響いた。

 

「?!。そうか。屋上が音源か」

 

そして、傭兵達は鐘の音を聞き、皆が各々に校舎や校門付近に取り付けられた時計を見、動きを止める。

 

「定時だ」

「今日の日当だとここまでだね。後は自分達で何とかして。みんな、帰ろう」

 

傭兵達はゾロゾロと構えていた銃器を降ろし、疲れた等と気の抜けた声を上げながらアビドス高校に背を向けだした。

 

て、定時?。嘘だろう。幾ら傭兵とは言えそんな軽い…。

いやそうだな。別に銃弾が命のやり取りというわけではないのだから、ただのアルバイトと同じ、という訳か。

 

ルルーシュは一瞬困惑したが、キヴォトスの常識を想い、苦笑しつつ事態を呑み込んだ。

 

「は、はあっ?!ちょっと待ってよ!」

 

アルがそう傭兵らに抗議の声を上げる。

─しかし。

 

「終わりだって」

「帰り飯食べてこ」

 

とりつく島もなく、傭兵達はゾロゾロと帰っていく。

 

「ちょっ!どういうことよ!帰っちゃダメー!」

 

そして、便利屋の4人だけが残された。

 

「……」

「こりゃヤバいね。まさかこの時間まで決着付かないなんて。…アルちゃん?どうする?逃げる?」

 

さすがに少し焦った様子を見せるムツキに尋ねられ、呆然としていたアルは「あ、うう…」と言葉を絞り出す。

 

「こ、これで終わったと思わないことね!アビドス!」

「アハハッ。アルちゃんそれ完全に三流悪役のセリフ!」

「うるさい!逃げ…じゃなくて、退却するわよ!」

 

そして、便利屋も姿を消した──。

 

「待って!…あ、行っちゃいましたね」

「うへ〜逃げ足早いね。あの子達」

「詳しいことは分かりませんが、敵兵力の退勤…いえ、退却を確認」

 

アヤネが苦笑しつつ、作戦の終了を告げた。

 

「金で雇う傭兵か…。まあ、金による契約という点では信用出来るのだろうが、目的の為に全力を尽くしてくれるわけではない。

結局は金以上の事はしてくれない。おかげで5人であの数にも対処する事が出来たのは、不幸中の幸いだな」

「ですね。…でも困りました妙な便利屋にまで狙われるとは、先が思いやられます。

…一体何が起きているのでしょうか」

 

「まあ、少しずつ調べていくとしよう。まずは社長のアルって娘の身元を洗ってみたら何か出てくるよ。きっと」

 

ホシノの言葉にルルーシュも頷く。

 

「ああ。見た所余り大きくない企業のようだが、それにしては大人数の傭兵を揃えていた。

何かしらの金銭的裏付けがあってのことだろう。

つまり、報酬か前金かは知らんが、それなりに巨大な連中が彼女らを雇った、と推測するのが自然だな」

「巨大な…一体何処が…」

「"カイザー"とかな」

「まさか〜。先生、私達の債権者だよ。カイザーは」

「そう。そこが問題なんだよ。

だが、これまでの件、全て繋がっているのだとすればそれが可能な存在はそう多くはない。

カイザーも有力な選択肢の一つ、になるんだ。

しかし、如何せん理由が不明だ」

 

まあ、不確定情報だ。忘れてくれて構わない。

ルルーシュは生徒達の、特にホシノの険しい表情に気付き、一旦話を打ち切る。

 

「まあ、何にせよホシノの言う通り、調査が必要と言うことだ。

何者が影にいるのか。それを突き止めねば、話が進まないからな」

「そうですね。…とにかく、皆さんお疲れ様でした。今日はとりあえず、帰りましょう」

 

その日はそれで解散する運びとなった。

ルルーシュもシャーレへと戻ったが、夜に、アヤネからメッセージが届く。

 

『先生のお話が気になってしまって』

『カイザーが関わっているかもしれない、という』

『正直、にわかには信じられないのですが、先生の仰ることはこれまで、"一部を除き"的確でした。

なので、一応お伝えしておこうと思い、連絡差し上げました』

 

『…アイドルの事、まだ怒ってるのか?』

 

『怒ってません。それで、お伝えしたいことはですね、明後日はカイザーローンへの支払日なんです』

『学校まで取り立てに来るので、現金で支払う形です。

よろしければ、先生も立ち会われますか?』

 

現金で、直接?

アビドスと言えど口座の一つくらいあるだろう。

というか、カイザーローンが開設してやることが出来るはずだ。

なのに、現金で?

妙だな。──準備が必要だな。

 

ルルーシュは現金で支払う、という妙な返済方式がひっかかり、疑念を深め、殆ど確信していた。

 

カイザー、鼻を明かしてやる。

コンストラクションからの情報だけではカイザーローンの裏までは中々見えてこないが、それでも時折見える薄汚さ。

 

アビドスに何をしようとしているのか、これで見えてくるだろう。

 

『ありがとう。では、明後日、私も立ち会わせてもらうとするよ』

 

ルルーシュはアヤネに返信すると同時、別の端末で電話をかけ始める。

 

「私だ。すまんが明日中に用意して欲しいものがある。手段は問わん。"大株主"達を使っても良い。ああ、足が付かん方法なのは前提だ。

だが、他はなんでも良い。明日に用意出来るのならな。

用意して欲しいモノというのは──」

 

 

 






第十三話です。
今回も読んで頂きありがとうございます。


ちょっと戦闘描写長くなりすぎたかもしれませんね…。

次回更新日は未定です。
また次回もよろしくお願い致します。
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