コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐   作:ライト鯖

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Archive-014 利息の行方

 

「おはようございます先生」

「おはよう。アヤネ。偶然だな」

 

アビドスへ向かう道中、ルルーシュはアヤネとばったりと出くわした。

 

「先日の便利屋の方々の事ですが、ある程度調べは付きました。あとで詳細確認願えますか?」

「了解した。私の方でもある程度調べている。後で共有するとしよう」

「先生もお調べになっていたんですね。分かりました」

 

二人は曲がり角にさしかかったところで、二度目の偶然に遭遇する。

 

「あっ、先生じゃん!やっほー」

 

先日の便利屋社員の一人、ムツキと呼ばれていた少女とばったり二人は出くわしたのである。

 

「な、なっ!?」

「じゃじゃーん!どもどもー!こんな所で会うなんて奇遇だねー」

 

驚き困惑するアヤネを他所に、ムツキはルルーシュの腕を抱き締めるような体勢を取る。

 

「!?」

「な、何してるんですか!離れてください!」

「引っ張らないでよ〜」

 

いたずらっぽく笑いながらムツキはルルーシュの腕を離した。

 

「誰かと思いきや、アビドスのメガネっ娘ちゃんじゃーん。おっはよー、昨日ラーメン屋で会ったよね?」

「その後の学校襲撃でもですね!どういうことですか?いきなり馴れ馴れしく振る舞って

それに、メガネっ娘じゃなくてアヤネです!」

 

アヤネが怒りを顕にするが、ムツキは全く気にする素振りを見せない。

 

「ん?だって私たち別にメガネっ娘ちゃん達が嫌いなわけじゃないし。

ただ、仕事で請け負ってるだけだからさ。

仕事以外の時は仲良くしたって良いじゃん?」

「い、今更公私を区別しようということですか?!」

 

くふふっとムツキは笑った。

 

「別にいーじゃん。それに"シャーレの先生"は、あんたたちだけのモノじゃないでしょ?

だよね、先生?」

「まあ、そうだな。しかし、だと言うのならば争いたくはないところだが?」

「それはムリかなー。こっちも仕事だから。

アルちゃんがモチベ高くてさ、適当にやると怒られちゃうから」

「ま、いつかうちの便利屋に遊びにおいでよ、先生。アルちゃんも皆もきっと喜ぶからさ」

 

ルルーシュはふむ、と昨日調べた便利屋の情報を想起し、一瞬思考する。

 

確かに、関係を結んでおいて損はないだろう。

 

だが、今はアヤネの手前、行くとは言いづらいな。

 

ルルーシュが曖昧な笑みを浮かべ、小さく頷いて見せると、ムツキは少し可笑しそうに吹き出してから、「そんじゃ、ばいばーい」と楽しそうに言った。

 

「アヤネちゃんもまた今度ね」

「また今度なんてありません!今度会ったらその場で撃ちます!」

「はいはーい」

 

手を振ってからムツキは素早くその場を立ち去るのだった。

 

「はあ…はあ…」

「だ、大丈夫か?」

「なんなんですかあの人は…!」

 

 

そうしてちょっとした出会い、という名のアヤネにとってはアクシデントに出くわしながらアビドスへと到着してから数時間後──。

 

アビドスの借金相手、カイザーローンの車が校門の前に止まり、皆が返済の為に集っていた。

 

「お待たせしました。変動金利等々を諸々適用し、788万3250円ですね。

全て現金でお支払い頂きました。以上となります」

 

カイザーローンの行員は支払われた金を車に積み込んでから、慇懃に頭を下げる。

 

「カイザーローンとお取引頂き、毎度ありがとうございます。来月もよろしくお願い致します」

 

そして、さっさと走り去るのだった。

 

「はあ、今月も何とか乗り切ったねー」

「完済まであとどれくらい?」

 

シロコに尋ねられ、アヤネが幾らか計算をして応える。

 

「309年返済なので…今までの分を入れると…」

「いい!言わなくて良いわよ!正確な数字で言われると更にストレス溜まりそう」

 

セリカがそれを打ち切る。

 

「どうせ死ぬまで完済出来ないんだし!計算してもムダでしょ!」

「…ところでカイザーローンはなぜ現金でしか受け付ないのでしょうね?わざわざ現金輸送車まで手配して…」

 

ノノミがそう疑問を口にする。

それはルルーシュも先日アヤネから話を聞き、違和感を感じていたことだった。

 

 

調べさせた限り、他にも現金輸送車での返済を行なっている事例はあるにはあるが、やはり口座取引が一般的だった。

つまり、アビドスは特殊な例の1つということ。

 

──とりあえず、どうやら、あの行員は気付かなかったようだな。

 

ルルーシュは一先ず校舎へ戻る対策委員会の皆に付いて行きながら、自身の端末に映し出される情報を睨みつけていた。

 

「全員揃ったようなので始めます」

 

教室へと戻ってすぐ、対策委員会の会議がアヤネの確認と共に始まる。

 

「まずは、二つの事案に付いてお話したいと思います」

「便利屋と、後は、ヘルメット団の件か?」

「はい。まず、先日の襲撃の件です」

 

アヤネが資料を手に、そう話し始める。

 

「私達を襲ったのは"便利屋68"という部活です。

ゲヘナではかなり危険で素行の悪い生徒達として知られています」

「リーダーの名前は、アルさん。

自らを社長と称しているようです。

彼女の下には三人の部員がいて、それぞれ、室長、課長、平社員の肩書があるとのことです」

 

ホシノの「いや〜本格的だね〜」という合いの手に、ノノミも感心したように「社長さんだったんですね!凄いです★」と同調する。

 

「いえ、あくまでも"自称"なので…それで今はアビドスのどこかのエリアに入り込んでいるようです。今朝も会いましたし…」

「ゲヘナでは起業が許可されているの?」

 

シロコの疑問。

これにはルルーシュが応える。

 

「厳密には不可能ではなさそうだが、彼女達の場合は、無断で部を設立し、運営しているのだろう」

「校則違反ってことですかね…」

「恐らくな」

「そんなに悪い娘達には見えませんでしたが…」

 

いえ、とアヤネが首を振る。

 

「それが今までかなり非行の限りを尽くしてきたようで、ゲヘナでも問題児扱いされているようです」

「そんな危険な組織が私達の学校を狙っているのです!もっと気を引き締めないと行けません!」

「次はとっ捕まえて取り調べでもするかー」

 

ホシノのその言葉にアヤネは深々と頷く。

 

「はい。機会があればぜひ」

 

食い気味なアヤネの様子を妙に思ったのかセリカが尋ねる。

 

「アヤネちゃん。何かあったの?並々ならぬ恨みを感じるんだけど」

「…特に何も!続いてセリカちゃんを襲ったヘルメット団についてです!」

「確か、連中の使っていた兵器の一部が現在は違法とされているモノ、なんだったな」

「そうです。ですから廃番となり生産されていないはずのもの、ということになりますね」

 

「そんなのどうやって手に入れたのかしら」とセリカ。

 

「違法だとか廃番品だとかの類は"ブラックマーケット"しかないだろう」

「ブラックマーケット…とっても危ない場所じゃないですか」

「そうです。あそこでは様々な理由で学校を辞めた生徒達が集団を形成しており、連邦生徒会の認可を得ていない部活もたくさんあると聞きました」

「便利屋68みたいに?」

「はい。便利屋68もブラックマーケットで何度か騒ぎを起こしているとも聞きました」

 

シロコの問いにアヤネは頷き、補足付きで応える。

その横でルルーシュは端末を操作していた。

彼は画面を一瞥してから、ニヤリと笑って皆を見渡す。

 

「更に興味深い情報だ。

─君達が金を払った現金輸送車、何処に向かっていると思う?」

「え…。まさか?!」

 

アヤネが驚愕で目を見開く。

 

「そう。ブラックマーケットへと向かっている。

最寄りのカイザーローン店舗ではなく、な。

妙だとは思わないか?800万近い現金を積んで、わざわざ危険なブラックマーケットへ向かうなんて」

「ええ?!な、なにこれ!?どういうこと?!」

「というか、先生これって…」

「発信機だ。君達が支払った現金の中に忍ばさせて貰った。…まあ、特急で用意したものだから、精度は然程高くないがな」

 

サラリとなんでもない事のようにとんでもない発言をするルルーシュ。

尋ねたアヤネとセリカは若干引きつつ驚いていた。

 

「先生、本気でカイザーを疑ってたんだ」

 

眉間に皺を寄せ、画面を睨むホシノ。

 

「そりゃあな。考えてみれば、債務者を追い詰めるメリットは確かにまだ分からんが、アビドスと利害があり、裏社会とも繋がる強大な連中、となれば合致するのはカイザーくらいのものだ」

 

そして、とルルーシュは端末に再び目を落とす。

 

「ビンゴ、というべきかな?こういうのは。

…さっきの今だ。殆どアビドス関係と見ていいだろう──。

例え、アビドスと関係のない事だったとしても、カイザーローンが何かしら、現在進行形で後ろめたい行為をしていることは確実だ」

「もしかして、それを抑えてカイザーと交渉を?」

「正解だ。シロコ。明確な証拠を抑える事が出来れば良し。そうでなくとも、交渉材料になるものがあればベターだ。

何方にせよアビドスでの不法行為に対する補償として借金の減額を要求出来るし、場合によっては連邦生徒会にそのまま持ち込む」

「連邦生徒会が動いてくれると思う?」

 

ホシノの諦念を感じさせる言い方に、ルルーシュは「場合によるだろうな」と正直に答えた。

 

「しかし、言い逃れのしようがない、明確な物的証拠があった場合、動かざるを得なくなるだろうさ。

まあ、そこまでのものは見つからないだろうが、揺さぶりをかける材料があれば充分だ」

「と、とにかく、ブラックマーケットへ調査に行くべきじゃない?!」

 

興奮した様子のセリカ。

ルルーシュはフッと笑い、頷く。

 

「セリカの言う通りだ。皆、どうする?

もしかすると、最大の手がかりかもしれんぞ」

「便利屋とヘルメット団の二つの事件。…これがつながっているのだとしたら…」

 

アヤネがごくりと喉を鳴らす。

 

「ん…急ぐべき。それに、他の手がかりも見つかるかも」

「だね。よーし。それじゃあブラックマーケット、行っちゃおっか」

 

おーっとアビドスの皆はブラックマーケットへと向かうべく、準備を始めるのだった。

 

ルルーシュは端末を操作し、シャーレ経由である依頼を出す。

直ぐに来た返答を確認したルルーシュは腕時計をチラリと見やり、まだ余裕のある事を確認した。

 

 

──精度の荒い発信機故に、道中で待ち伏せ、等は厳しい。 

だからこそ、目的地であるブラックマーケットへ先回りをする必要がある、ということだ。

 

詳細な目的地も分からない以上、アドリブが必要になるな。

そもそも、推測が多分に含まれているんだ。

アビドスとは全くの無関係である可能性も残ってはいる。

しかし、それは状況証拠、アビドスから金を受け取った直後にブラックマーケットへ向かっている─しかも現金で受け取って─等からしてある程度確信出来る。

 

ついに掴んだ怪しげな尻尾の先だ。離しはしないぞ。カイザーコーポレーション!

 

 

─ブラックマーケット近郊。

 

「まさかヘリを用意してくれるとはね…」

「シャーレって凄いんですね〜★」

 

ホシノ達は現実感のない様子で地上に降り立ち、今まさに自分達の乗ってきたヘリコプターを振り返る。

 

ルルーシュはブラックマーケットに行くことになると決めて直ぐにヘリコプターをチャーターしていた。

それ故に、現金輸送車よりも素早くたどり着く事が出来たのだった。

 

「こ、ここがブラックマーケット?」

 

マーケットへ足を踏み入れたアビドスの皆は、想像していた市場とは全く異なる賑わいや活気があり、混乱していた。

 

「すっごい賑わってますね…?」

「本当。まさか街一つぐらいの規模だなんて。

…連邦生徒会の手が及ばないエリアがここまで巨大化してるとは思わなかった」

「うへ〜普段私達はアビドスにばっかりいるからね〜。

学区外は結構変な場所多いんだよ〜?」

 

ホシノが周囲を警戒しているとは悟らせないようにしつつ辺りへ視線を向けながらシロコに教えるように話す。

 

「ホシノ先輩はブラックマーケット来たことあるの?」

「いんやー。私も始めてだねー。でも、他の学区にはへんちくりんなものが沢山あるんだってさ〜。

ちょーデカい水族館もあるんだって。アクアリウムっていうの!──魚…お刺身…」

「多分だけどアクアリウムってそういうのじゃないような…」

 

ホシノの小ボケにセリカが突っ込みを入れる。

 

『皆さん、油断しないでください。そこは違法な武器や兵器が取引されている場所です。

何が起こるか分からないんですよ』

 

アヤネは学校に居残りつつ、遠隔でのサポートである。

 

「そうだな。それに、現金輸送車もそろそろブラックマーケットへ着きそうだ」

「お。そんじゃ、行こうか」

『皆さんお気を付けて。何かあったら私が──』

 

支援します、とでも言おうとしたのだろうアヤネの声は銃声によって遮られた。

 

「待て!!」

 

続いて、荒っぽい声。

更に続いて、慌てた様子の、逃げているのか少し息の上がった声が届く。

 

「う、うわああ!まずっ、まずいですー!

つ、ついてこないでくださいー!」

「そうは行くか!」

 

数人のチンピラらしき連中に追われる桜色のパステルカラーを二つに纏めた、見るからに良い生地を使っている制服に身を包んだ少女がシロコ達の方へと向かってきていた。

 

『あれ…あの制服は…』

「わわっ!そこどいてくださいー!」

 

アヤネの言葉はまたもや遮られてしまう。

追われていた彼女はどうやら逃げるのに必死で周囲の確認を怠っていたようで、シロコへとぶつかってしまう。

 

「い、いたた…。ごめんなさい」

「大丈夫?…なわけないか、追われてるみたいだし」

「そ、それは…」

 

少女は何か言おうとしたが、先にチンピラ達が追い付いた。

 

「何だお前らは!どけ!アタシらはそのトリニティ生に用がある」

「あ、あうう…わ、私の方は特に用はないのですけど…」

『トリニティ!そうです。その制服、キヴォトスのマンモス校の一つ、トリニティ総合学園のモノです』

 

アヤネが思い出した、と言うと、チンピラ達はそれにあくどい笑みを浮かべながら付け足す。

 

「そう。そして、一番金を持っている学校でもある!だから拉致って身代金たんまり頂こうってわけさ!」

「拉致って交渉!なかなかの財テクだろ?

─どうだ、お前らも興味があるなら計画に乗るか?身代金の分け前は…」

 

チンピラの一人は調子に乗った様相でそう提案した。

しかし、ルルーシュが前に出て、フッと挑発的に笑い、返す。

 

「生憎だが、私達には用事があってね」

 

ルルーシュの返答と同時、チンピラ達の背後から、目にも留まらぬ速さで回ったシロコとノノミが銃弾をゼロ距離で浴びせ、気絶させるのだった。

 

 

 





第十四話です。
次回更新日は変わらず未定のままですが、早く更新出来るれるよう頑張ります。
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