コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐ 作:ライト鯖
シロコとノノミがチンピラ達をのしたことで追われていた少女は漸く一息つけた、と息を吐いた。
「ありがとうございました。皆さんがいなかったら学園に迷惑をかけちゃうところでした。
…それにこっそり抜け出してきたので何か問題を起こしたら…あうう…想像しただけでも…」
一瞬嫌な想像が過った少女は一度だけ身体をブルリと震わせる。
「まあ、何にせよ無事で良かったね。えっと…」
「あ、すみません。阿慈谷ヒフミです」
少女、ヒフミはホシノが何と呼ぶべきかと逡巡した事に気付き、名乗った。
「ヒフミちゃん。君みたいなトリニティのお嬢様がどうしてこんな危ない場所に来たの?」
ヒフミは「あはは…」と苦笑しつつホシノの疑問に答える。
「実は探し物がありまして…
もう販売されていないので買うことの出来ない物なのですが、ブラックマーケットでは密かに取引されてるらしくて…」
「もしかして…戦車?」
「それか違法な兵器?」
「化学兵器とかですか?」
シロコ達の物騒な例示に「い、いいえ!」と慌てたように頭を振った。
「…えっとですね、ペロロ様の限定グッズなんです」
「ペロロ?」
「限定グッズ?」
ポカンとするアビドス生達にヒフミは「これです!」と鞄から奇抜、言葉を選ばずに言えば妙ちきりんなデザインの鶏っぽいキャラクターが、口にアイスを咥えているような何とも言えないぬいぐるみを取り出してみせた。
「ペロロ様とアイス屋さんがコラボした限定ぬいぐるみ!」
「限定生産で100体しか作りていないグッズなんですよ!
ね?可愛いでしょう?」
ヒフミの同意を求めるその言葉に、一人を除き好意的な反応を返すことは出来ず、むしろ、戸惑いを隠せていない。
例外はノノミであった。
「わあ★モモフレンズですね!私も大好きです!ペロロちゃん可愛いですよね!私はミスター・ニコライが好きなんです」
「分かります!ニコライさんも哲学的な所がかっこよくて。
最近出たニコライさんの本も買いましたよ!それも初版で!」
楽しそうに語るヒフミとノノミ。
「…いやあー何の話だかおじさんにはさっぱりだなー」
「ホシノ先輩はこういうファンシー系全く興味ないでしょ」
「ふむ。最近の若いやつにはついていけん。ね、先生?」
ホシノに話題を振られたルルーシュは「ホシノも私もそこまで大きく年齢差があるわけじゃないだろ」と真面目くさった表情で返し、それに、と付け足す。
「私はモモフレンズを知らんとは言ってない」
「え先生、知ってるんだ。意外〜」
「偶々だがな」
ルルーシュはわざわざ長々と説明する必要もないことだとぼかして答える。
実際の所、彼はキヴォトスの文化を把握するために様々な娯楽関係にも手を出しているのだ。
娯楽は文化や生活、その社会における価値観を知る一端となる。
だからこそ、知っていたのだが、わざわざ既知と話してしまったことは、ルルーシュにとって藪蛇となってしまう。
「モモフレンズをご存知なんですね?!
可愛いですよね?!」
ヒフミが即座に反応し、首をルルーシュの方へ凄まじい速度で向けた。
─可愛い?これが?この珍妙な鳥が?まだもこちーの方が理解出来るが。
いや…しかし、何だか下手な事を言っては不味そうな気がする。
ヒフミの無意識的な圧に押されたルルーシュは数瞬の逡巡の後、「あ、ああ」と口を開く。
「ど、独創的なデザインだよな」
無難な答えを絞り出し、ヒフミの反応をうかがうルルーシュ。
「──そうなんですよ!この唯一無二のフォルムもペロロ様の魅力の一つで!」
どうやら不正解ではなかったようだ、とルルーシュは内心で胸をなでおろしていた。
しかし、その後暫しの間、ヒフミのペロロ様への愛を語る時間となってしまうのだった。
「まあ、そんなわけでグッズを買いに来たわけですが、先程の人達に絡まれて…
皆さんがいなかったらと思うとゾッとします」
ところで、とヒフミは首を傾け、ホシノを始めとしたアビドス生達に水を向ける。
「アビドスの皆さんの方はどうしてブラックマーケットに?」
「私達も似たようなもんだよ。探し物があるんだ〜」
「そうなんですか。似たような感じなんですね」
追っているのがぬいぐるみか悪事の証拠かの違いを似ていると評して良いのか?
まあわざわざ全部話すような事でもないか。
ルルーシュがそんな事を考えていると、端末から焦ったアヤネの声が響いて来た。
『皆さん大変です!四方から武装集団が向かってきています!』
偵察に出していたドローンが発見したのだろう、アヤネがそう報告する。
「何っ?!」
「ま、不味いです…!」
ルルーシュとヒフミの反応はほぼ同時であった。
「あいつらだ!」
「よくもやってくれたな!」
チンピラの集団がルルーシュ達を取り囲まんと全力で向かってきているのが全員の目に入るや否や、ホシノやシロコ達は直ちに戦闘準備に入る。
『先程撃退したチンピラのお仲間達のようです!完全に敵対モードです!』
「望む所」
「まったく、なんでこんなのばっかから?でくるんだろうね!私達何か悪いことした?!」
『愚痴は後にして…応戦しましょう、皆さん!』
いや、とルルーシュは飛び出さんとしているシロコとセリカを制止した。
「な、何で止めるのよ?!」
「ここは逃げるぞ!連中の包囲の一角を突き崩し逃走する!」
「あのぐらい大したことないって」
「詳しい理由は後で説明する!チンピラはどうでも良いが、ここの治安部隊が来たら不味い。
面倒事になる前にここを立ち去るぞ!」
ヒフミも同意とばかりに頷いていた。
ルルーシュの様子に気圧された面々はとりあえず彼の指示に従って、応戦ではなく包囲からの退避を目的に、包囲網の一角へ突貫する事で道を空けたのである。
「こ、ここまで来れば大丈夫か?」
「恐らく…チンピラも撒けたようですし…」
ルルーシュは息せき切り、ゼイゼイと事情に通じているらしいヒフミに確認する。
ヒフミも少し息を整えながら周囲を見回し頷いた。
「先生、ヒフミ。ここの治安部隊って?」
シロコに尋ねられ、ルルーシュは答えようと口を開くも、彼はまだ息が整っておらず、ヒフミが代わりに答える。
「ここは連邦生徒会の手が及んでいない地域、無法地帯のような場所ですが、ここ専用の治安機関があるんです。
勿論、違法な団体ですが…」
「違法な治安機関ってどういうことよ?!」
「無法者や大企業が連邦生徒会の監視の目を逃れて利権争いや勢力争いをしているのがここ、ブラックマーケット。
しかし、荒くれ者共に好き勝手暴れられては企業活動が阻害されるだろう?
だから、大企業達がそれぞれのテリトリーで民兵を雇い、警察ごっこをさせているんだよ」
漸く息の整ってきたルルーシュがセリカに説明する。
「ここ専用の銀行なんかもあるそうです」
「銀行まで?!」
「それも、裏社会の人間は表で口座を作ったりなんて出来ないからだな。
そして、大銀行が金の匂いのする違法活動に利権を持つための方法でもあるのだろう。
要するにフロント企業だな。
このブラックマーケットは並の学園数個分に匹敵するらしいし、実質的に学園自治区そのものと言っていい」
ただし、とルルーシュは付け足す。
「全てが連邦生徒会の法規に反したイリーガルな存在である、という点を除いてな」
「スケールが桁違いですね…」
「はい。特に治安機関はとにかく避けるのが一番です…。騒ぎを起こしたらまず身を潜めるべきです…」
ヒフミの言にルルーシュも同意する。
「そうだな。連中はチンピラとは違う。訓練された傭兵だし、何より警察の真似事をしているんだ。連携も桁違い。
下手に敵対すれば此方はジリ貧になるし、ブラックマーケットから逃げるしか無くなる」
「先生はともかく、ヒフミちゃんも、ここの事に詳しいんだね〜」
ホシノはそう、感心したように言った。
「え?そ、そうですか?危険な場所なので事前調査をしっかりしたせいでしょうか…」
「よし。決めたー」
ホシノは緩い顔のままで、ヒフミの腕をがっちりと掴んだ。
「え?」
「助けて上げたお礼に、私たちの探し物手にはいるまで一緒に行動してもらうね〜♪」
「え、ええっ?」
「私じゃ不足か?」
ヒフミの困惑するのを他所にルルーシュがホシノに探るような微笑を向け、尋ねる。
「いや〜先生も一人くらいここに精通してる生徒が補佐としていた方が心強いでしょー?」
「──フッ。確かにそうかもな。…どうかなヒフミ。無理にとは言わないが」
「あ、あうう…私が何かお役に立てるかはわかりませんが、皆さんにはお世話になりましたし、喜んで引き受けます」
「すまないな。ありがとう」
「よーし、それじゃ、ちょっとだけ同行頼むね〜」
ヒフミが同行する事が決まり、先を行こうか、というタイミングで、ところで、とノノミがルルーシュを見る。
「先生。件の発信機は今どんな感じですか?」
「ああ。既にブラックマーケットの区域内にはいるようだな。
といっても、もう少し近付かねばこれの精度では大体の距離感しか掴めん」
「じゃ、早く追いましょ!」
「発信機…?」
ヒフミのえ。という反応にルルーシュは曖昧な笑みを見せつつ、先を急ぐのだった。
──同時刻。
人口密度の割には広々としたオフィスに電話のコール音だけがけたたましく鳴り響く。
受話器を険しい表情で睨みつける陸八魔アルに、浅黄ムツキが「電話出ないの?」と尋ねた。
「…表情が暗い。もしかしてクライアント?」
「うわ。そりゃそんな顔にもなるわ。失敗したって報告しないとじゃん?」
鬼方カヨコの推測に、ムツキは、あーと察した顔となる。
「…アル様…」
伊草ハルカの心配そうな声色に押され、アルは覚悟を決めた。
「はい…便利屋68です」
アルの報告を聞いた電話相手は、ふむ、と唸ってから、言った。
『興味深い報告だ。ここまでの練習は拝見した。
それで、実戦はいつだ?』
「うえっ?…あれが実戦だったん…です…が…」
『ん?』
「い、いえ!何でもありません!勿論、実戦は直ぐにでも…あ、えと…1週間以内には…はい…」
カヨコとムツキはアルの発言に動揺を見せた。
便利屋の現状を鑑みれば、それは困難である、とアルを含め理解はしていることだ。動揺も当然だろう。
しかし、アルは一人、自信を感じさせる声色で続けていた。
「はい。そうです。お任せください」
「はあ…」
通話を終えたアルは、深くため息を付く。
「やつれたねえ、アルちゃん」
「社長?一体どういうこと?もしかしてまた戦うつもりなの?」
「…あのクライアントは私も詳しくは知らないんだけど、超大物なの。
…この依頼、失敗するわけにはいかないわ」
「けど、アビドスの連中、思ったよりも強かったじゃん」
それに、とムツキは付け加える。
「"シャーレ"の先生が一緒にいるから、私達だけじゃ無理だよ」
「あの指揮能力は厄介だよね」
「こっちの動き全部読まれてるみたいだったよね〜。
それに、お金もあれで使い果たしちゃったし、どう戦うのさ?」
困った様子のアルを見かねてか、ハルカが割って入る。
「わ、私がバイトでもしてきましょうか?」
「その稼ぎで傭兵を雇うには全員後1年は働かないと…」
カヨコはそう指摘してから、アルに向き直る。
「こんな高いオフィスなんか借りてるから、無駄にお金がかかってるんじゃ…」
「ちゃ、ちゃんとした会社ならオフィスは基本でしょ!
その方が仕事の依頼も増えるんだから!」
「別に私は前みたいに公園のテントでも構わないけどー?」
ムツキが笑って言ったが、アルは笑えなかったようだ。
「うるさい!静かに!」
「………融資を受けるわ」
アルの発想は本来なら常識的と言えるかもしれない。
しかし、裏社会の依頼を引き受ける便利屋に融資するまともな銀行はないだろう。
更にいえば、アルは──。
「アルちゃんブラックリスト入りしてるでしょ」
「違うわよ!私は指名手配されて口座が凍結されただけ!」
ムツキの指摘にアルは反論したが、実質的な状況に変わりはない。
「そうだっけ?
あ、そっか。風紀委員にやられたんだったね」
「ここまで痛めつけられるとは思わなかったわ」
「中央銀行とか、行っても門前払いじゃない?」
「他にも方法はあるんだから!」
アルは準備を整え席を立つ。
「見てなさいアビドス。このままじゃ終わらせないんだから…便利屋のミッションはこれからなのよ!」
そう啖呵を切ってから、アルは風のように事務所を出ていった。
「一体どうするつもりなんだろ…」
──便利屋との通話を終えた"カイザーPMC"の理事は便利屋68についての報告書をざっと見返しながら、独り言ちる。
「奴らのデータは正確なものだったはず。
…計算ミスか?いや、しかしあの力は明らかに」
そこに、一つの怪しい影がやって来る。
「…お困りのようですね」
真っ黒なスーツに身を固めた黒い、人影のような表皮から目や口と取れる位置に加え幾つかヒビ割れているかのようにして光、或いはオーラのようなものが滲む男が理事の前に立った。
「…いや、困ってはいない。ただ、少し計算にエラーが生じただけのこと。
アビドスの連中がデータより遥かに強かっただけのこと」
理事はその黒スーツを信頼しているわけではなさそうで、数秒の思案を挟んででからそう言った。
「……データに不備はありません」
「…?」
「これは単に、アビドス生が更に強くなった、と解釈すべきかと」
「何?それは一体…」
「アビドスにどのような変化があったのか確認してみましょう。
…では」
黒スーツは自身の解釈を呑み込めていない理事を放置し、さっさと去ってしまう。
それを、理事は何とも言えぬ視線で見送るのだった。
─ブラックマーケット。
「もう数時間は歩いてますね…」
「これはさすがにおじさんも参ったな〜。
膝も腰も悲鳴あげてるよー」
ヒフミは真に受けたのか、「えっ…ホシノさんはおいくつなんですか…?」と真顔で尋ねる。
「ほぼ同年代!」
セリカがツッコミを入れる。
その後も暫く歩いてから、一行はノノミの提案で近くにあった屋台のたい焼きを買い、休憩を取ることとした。
ルルーシュとしても、体力は限界に近く、目標よりも先んじたルートにいることも発信機の動きから把握していたので、その提案に乗ることとしていた。
「しかし、ブラックマーケット。聞いてはいたが、見た目は本当に普通の街だな」
「ここに集まっている企業は開き直って悪さをしていますからね…。
コソコソしていないせいで、他の自治区と見た目では区別が付かなくなってるのかもしれません」
ヒフミは例えば、と付近のビルを指さす。
「あのビル。あれはブラックマーケットに名を馳せる闇銀行です」
「あれが?いや、確かに。あのエムブレムは…。
まさかこうも堂々と鎮座しているとはな…」
確か、とルルーシュはビルを睨みながら言う。
「ブラックマーケット最大の闇金の一つで、キヴォトスで行われる犯罪の盗品、その15%が流れていると言われている…様な連中が日の下に高層ビルか…」
「そんなに多くの盗品が…」
「他にも、横領や強盗なんかの財貨が違法な武器や兵器に変えられ、また別の犯罪に使われている…そんな悪循環が続いているのです」
ヒフミの補足の後、ルルーシュは「銀行すらも、犯罪組織、というのはむしろ徹底的で畏れ入るな」と現状を皮肉った。
「ひどい!連邦生徒会は一体何やってんの?!」
セリカの純粋な憤りに、ホシノは諦めたような様相で「理由は色々あるんだろうけどね〜何処もそれなりの事情があるだろうからさ」と反応する。
「現実は、思った以上に汚れてるんだね…。
私達はアビドスばかりに気を取られて外のことを知らな過ぎたかも…」
シロコが少し落ち込んだように言ったが、ルルーシュはそうかもな、と首肯しつつ、しかし、と続ける。
「誰にだって手の届く範囲には限りがある。
外を知らなかったからといって恥じることはない。
勿論、もっと遠くへと手を伸ばす努力は大切だがな。外の事はこれから学んでいけば良いさ。
恥じるべきは、知ってもなお、手を伸ばそうとしない場合だ」
「それに、手の届かない場所へ、代わりに手を伸ばすために私がいる。
より遠くへ手を伸ばせる余裕のある者が、その分遠くへ伸ばすんだ」
「先生…」
『お取り込み中失礼します!』
アヤネが慌てた様子で通信で呼びかけてくる。
「どうした」
『そちらに武装した集団が接近中!』
「なに?!…いや、私達は別段大きな問題を起こしていないはず…」
自分達が追われているとかではなさそうだと目星を付けたルルーシュは一先ず脳内の警戒レベルを少し下げる。
「うわあっ!?あれは、マーケットガードですよ!」
「本当か!?一応身を潜めておくぞ!」
ヒフミが武装集団の先頭を見るや、焦りを滲ませ、ルルーシュも"マーケットガード"の単語に反応し、直ちに身を隠す選択を取った。
「"マーケットガード"って?」
「ここの治安機関でも最上位の組織です」
「ブラックマーケットでもトップクラスに力のある企業が運営している様でな。
他の治安機関よりも権限が強力なんだ。
ここには法律がないから、企業の力次第で治安機関の権力も決まるってわけさ」
説明しつつルルーシュは懐に閉まっていた端末を取り出し、発信機の位置を確認する。
すると──。
近いな。いや、位置的にこれは…。いや、まさか──。
ルルーシュはバッと目を上げ、やって来るマーケットガードの方を見た。
丁度その時、エンジン音と共に、ゆっくりとした速度のトラック──現金輸送車─が、"マーケットガード"に取り囲まれながら姿を現した。
「護衛してるみたいだね…」
「ああ…。しかもあれは…」
「まさか──」
ルルーシュの様子に気付いたホシノは、現金輸送車へ目をやってから見開いていた。
「闇銀行に入っていきますね…」
現金輸送車は銀行の前に停まり、運転席からスーツ姿のロボット市民が降り立つ。
そのロボット市民は、彼の姿は、アビドスの皆に見覚えのある姿だった。
「今月の集金です」
「ご苦労さん。早かったな。
では、こちらの確認書にサインを」
「はい」
サラサラとペンを踊らせる彼の姿に、ルルーシュ以外のアビドスの皆は、息を呑んでいた。
「あの人…」
「あいつ、ウチに来て利息を受け取ってる銀行員じゃない!」
「ホントだね…」
「いや…え、ええっ!?」
ヒフミが驚愕の声を上げる。
「どういうこと?」
さすがのシロコも動揺を隠せずにいた。
「き、今日の午前中に利息を支払ったときのカイザーローンの車でしたね…」
「か、カイザーローンって、あのカイザーコーポレーション傘下の高金利貸しですか?!」
「知ってるの?」
「知ってるも何も、有名ですよ。
カイザーグループ自体は犯罪を犯してこそいませんが、合法と違法の間をうまく振る舞っている多角企業で…」
ルルーシュにとっては既知の情報であったが、アビドスの生徒達にとっては初耳であったようだ。
ルルーシュとしてはカイザーの事はある程度知っているものとわざわざ話していなかったのだが、話しておいたほうが良かった事を知ることになった。
「私たちのトリニティの自治区にも進出しているのですが、生徒達への悪影響を考慮し、"ティーパーティー"が目を光らせています」
「"ティーパーティー"。あのトリニティの生徒会が、ね…」
ルルーシュは端末を操作しつつ、ヒフミに「アビドスの借金はそのカイザーグループから借りたものらしくてな」と説明する。
「借りたは何代も前の生徒会ですけどね…」
「何はともあれ、やはり連中はクロだったということだろう」
ルルーシュは現金の運び込まれていった先を睨みつける。
「闇銀行にアビドスの払った金が流れている。
その意図は何であれ、犯罪資金に使われていることはほぼ確実だな」
「ま、まだそうハッキリとは言えないのでは…証拠も足りませんし」
「そうだな。逆に言えば足りないのは物証だけだ。
状況証拠は充分にある。発信機のルートもその一つになるだろう。
それに、まさか、闇銀行が犯罪に融資せず、後生大事にアビドスの払った金だけ保存しているなんて、あるはずも無いしな」
「あ!さっき行員がサインしてた書類!それを見れば証拠になりませんか?」
ヒフミの提案に「さすが」「ナイスアイデアだね。ヒフミちゃん」とシロコやホシノが褒め言葉を投げかける。
ルルーシュは、既にそのつもりである程度まで作戦を立てていたが、ここで先に考えていたのは自分、などというつまらない顕示をする人間ではない。
それ故、少し時間を置いてから作戦を立てた、と皆には言うつもりであった。
ルルーシュは、そのままついでに作戦の細部を詰めておこうと端末へ再び目を落とす。
「あはは…でも考えたら書類はもう金庫の中でしょうし、むりかもしれないですね…。
ブラックマーケットで最も強固なセキュリティを誇る銀行の中となると…
しかも、"マーケットガード"が目を光らせてますし」
「他に書類の中身を知る方法は……」
頭を悩ませるヒフミ。
しかし、シロコは悩む様子もなく、「方法はない」と言い切り、ヒフミを驚かせた。
「他に方法はないよ。ホシノ先輩。例の方法しかない」
「あー。あれかー」
「あっ!そうですね!あの方法なら」
「何?どういうこと?まさか、あれ?私が思ってるあの方法じゃないでしょうね」
ルルーシュは猛烈に嫌な予感を感じ、目を上げたが、既にシロコはそれを取り出していた。
「あ、あのう。全然話が見えないんですけど、あの方法ってなんです?」
「残された方法はたった一つ」
「待て。今侵入ルートを整えている所だから少し…」
ルルーシュの制止が聞かれることはなく、シロコは取り出した覆面を被るのだった。
「銀行を襲う」
今回も読んで頂きありがとうございます。
また次回も読んでいただけますと幸いです。
以下、ゲーム最新のネタバレが少しあります。ご注意下さい。
いつになるのやらって話ですが、現在のブルアカゲーム、"鋼鉄大陸編"における相手の論理がめちゃくちゃルルーシュに反論させたいな、って内容なので鋼鉄大陸編までこのシリーズやりたいって気持ちが強くなってます。
これ以上はまだまだ最新ストーリーなので深くは語らないようにしときます。