コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐   作:ライト鯖

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Archive-016 覆面水着団(憧れのアウトロー)

 

「わあ★そしたら悪い銀行をやっつけるとしましょう!」

「はいっ?!ちょ、ちょっと待ってください」

「はあ…マジで?マジなんだよね?」

 

それなら、とセリカまで覆面を被った時点でルルーシュは制止を諦めていた。

 

「とことんまでやるしかないか!」

 

こいつら…。思っていた以上に猪突するタイプの集まりだったんだな…。

 

これまではルルーシュの思惑と彼女達の行動目的とが合致している場面も多く、痛感するタイミングに恵まれていなかったが、今、ルルーシュはそれを痛感させられていた。

 

「あ…うあ?あわわ…」

 

すまん。ヒフミ。私には止められそうにもない。

 

内心で困惑するヒフミに謝りつつ、事の成り行きを見守る。

 

『はあ…了解です。こうなったら止めても聞く耳持たないでしょうし…どうにかなる、はず…』

 

やはりそうか…。とルルーシュはアヤネのため息混じりの声に諦めを深くさせる。

 

「ごめんヒフミ。貴方の分の覆面は準備がない」

「うへー、ってことはバレたら全部トリニティのせいって言うしかないね〜」

「ええっ!?そんな…。覆面…何で…えっと…」

 

最早全く理解の追いつていないヒフミは目を白黒とさせていた。

 

「それは可哀想過ぎますよ。ヒフミちゃん、とりあえずこれでもどうぞ★」

 

ノノミはそう言ってたい焼きを購入した際の紙袋をヒフミに差し出す。

 

「ちょ、ちょっと待ってください皆さん…」

 

ノノミはそのままヒフミの頭に紙袋を被せてしまった。

 

「あうう……」

「ん、完璧」

「番号も振っておきました。ヒフミちゃんは5番です★」

「見た目はラスボス級じゃない?悪の根源だね〜親分だね〜」

 

ホシノの茶化しに対する反応も返せず、ヒフミはただただ困惑しているようだった。

 

「わ、私もご一緒するんですか?闇銀行襲撃に??」

「さっき約束したじゃんヒフミちゃーん。今日は私達と一緒に行動するって」

「う、うわああ。わ、私もうティーパーティーの方々に合わせる顔がありません…」

「問題ないよ!私らは悪くないし!悪いのはあっち!だから襲うの!」

 

まあそうではあるがもっと穏当な方法があったんだがな…。

 

ルルーシュはため息を付きながら襲撃を前提とした事後策を練り始める。

 

マーケットガードが来るまでの時間を稼ぐには…。

そうだな、偽の通報辺りが効果的か。

どうせ余り長くはかけられないんだ。その程度の時間稼ぎなら下手に小細工を弄するよりも直裁的な手に出た方が良い。

 

「よし。行こう、皆。…先生は、覆面もないし危ないからここにいて」

「ん?あ、ああ。そうだな。そうさせてもらうよ」

 

『では…』と全てを受け入れた様な声と共にアヤネも覆面を被る。

 

『覆面水着団、出撃しましょうか』

 

 

──闇銀行、行内

 

窓口で小口の融資を担当している行員に呼ばれた陸八魔アルは案内された席に静かに着席する。

 

彼女は、そう、犯罪組織にも融資を行なっているこの闇銀行へ融資を受けにやって来ていたのだ。

 

行員も資料を捲りつつ、着座した。

 

「お待たせ致しました。お客様」

「何がお待たせしましたよ!本当に待ったわよ!六時間も、ここで!」

 

行員の言葉に不満を爆発させ、クレームを入れるアル。

 

「融資の審査に何で半日もかかるの?!ウチより先に人もいなさそうだったのに!私の連れは待ちくたびれてソファで寝ちゃってるし!」

 

アルの指さした方向には便利屋の面々が、ぐっすりとソファにもたれかかって眠りに落ちていた。

飛び出していったアルに、皆、仕方がない、となんだかんだ付いてきていたのだ。

 

「私共の内々の事情でして、ご了承を」

 

行員はすまなさそうにするでもなくそう言ってから「ところで」と厳しい表情をそのディスプレイに表示させた。

 

「アル様。あなたはそのような態度を取れる状況にないと思うのですが?」

「ぐっ…うう…」

「当行の助けが必要なら辛抱強くお待ち頂くことも大事かと。…それと、お連れの方ですが、そこでお休みになられては困ります」

 

パチン、と行員は指を鳴らす。

 

「セキュリティ、そこの浮浪者…いえ、お客様を起こして差し上げなさい」

 

「ほら、起きた起きた!」

「むにゃ…うはっ?!何?!」

 

セキュリティに乱暴に揺すられてムツキはビクリと飛び起きた。

カヨコも驚いたように目を見開き、目覚める。

 

「ああっ…!すみません!居眠りしてすみません!」

 

ハルカも飛び起き謝罪する。

 

「さて」と行員は何事もなかったかのように書類に目を落とす。

 

「では、ご確認を。陸八魔アル様。ゲヘナ学園の2年生ですね。

現在便利屋68の社長、ですか…。

この会社、ペーパーカンパニーではありませんか?書類上では財政が破綻していますが?」

「ちゃ、ちゃんと稼いでるわよ!まだ依頼料を回収出来てないだけで…」

「それと、従業員は社長を含めて四名ですか。室長に課長、そして平社員1名。…肩書の無駄遣いでは?会社ごっこでもしているのですか?」

「そ、それは…肩書があった方が仕事の依頼を…」

「あとですね。必要以上に事務所の賃貸料が高いです。

財政状況に見合った物件を見つけていただかないと」

「ちゃ、ちゃんとしたオフィスの方が…仕事を…」

 

行員に矢継ぎ早に詰められ、アルは完全に意気消沈していた。

行員の方も行員の方で嘘だろ?と言いたげな表情を一瞬浮かべたが、直ぐに難しい顔へと戻る。

 

「アル様、これでは融資は難しいですね」

「え!ええーっ?!」

「まずは、より堅実な職に就いてみてはいかがでしょうか。日雇いや期間工など、手っ取り早く始められるものもありますが」

「は?はああっ!?闇銀行がそれ言う?!

というか闇銀行なのに厳しすぎでしょ!?」

「だからこそ、ですよ。裏社会は信用第一。

互いを、理由や動機はどうあれ信用出来なければ成り立ちませんから」

「正論…!…ううっ」

 

もういっそ、大暴れして銀行のお金を持ち出してやろうかしら。

 

アルは一瞬、力にモノを言わせる選択肢を過ぎらせるが、直ぐにダメね、と否定する。

 

仮にここから持ち出せたとしても、ブラックマーケットを抜け出すのは至難の業。

あちこちにマーケットガードがいるし。

 

…でも、もしかすると大したことない連中なのかもしれない。

私達なら全員叩きのめして逃げ切れそうな気も…。

 

はあ…。やっぱ無理…。ブラックマーケットを敵に回すなんて、そんな勇気ないわ…。

情けない。…キヴォトスいちのアウトローになるって決めたのに、私は…。

 

アルは机の下で拳を握り締めていた。

 

私が望んでいるのはこんな融資だのなんだのの話じゃない…。

何事にも恐れず、何事にも縛られない、ハードボイルドなアウトロー…。

そうなりたかったのに…。

 

「…ル様!アル様!」

「あ、は、はいっ!?…えっと、何か言った?」

 

行員に呼ばれ、アルは我に帰った。

 

「融資の承認は降りませんでした。お力になれず申し訳ありません」

「ええっ!?ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

アルが立ち上がろうとする行員を引き留めようとしたその時、銀行の照明が突如として落ちた。

 

「な、なんだ?!停電?!」

「パソコンの電源も落ちてるぞ!」

 

困惑と動揺が暗闇に広がる。

 

「こんな一瞬で銀行のシステムをハッキングするなんて、さすがです★」

『他の策の準備をしていたからな!…はあ。マーケットガードの応援も足止めしている。

行内の戦力配置はちゃんと記憶出来たか?』

「もち。暗闇で下手に動くおバカさんは少ないだろうし、これで殆どはいけるね」

『ああ。手早くな』

 

銃声が動揺の闇を切り裂き、混乱を生み出した。

 

「銃声っ!?」

 

アルは咄嗟に傍らに置いていた銃を手探りで探り当て、姿勢を低くする。

 

「うわっ!?」

「うわあああっ!?」

 

暗闇の中で叫び声が連続して響き渡っていく。

 

「な、何が起きて?!うわああっ!」

 

時間にすれば5分どころか、2分と経っていないだろう僅かの時間。

しかし、暗闇に包まれていた人々にとってはそれ以上の時間に感じられただろうその刹那。

明かりが灯り、行内の現状を意識のある全ての人々に曝け出した。

 

倒れ伏すマーケットガード達。

そして──。

 

覆面を被った5人の集団。

 

「全員その場に伏せなさい!持っている武器は全て捨てて!」

「言う事聞かないと痛い目合いますよ★」

「あ、あはは…皆さんケガしちゃいけないので伏せてくださいね」

 

三者三様の言い方で、しかし間違いなく物騒な雰囲気でもって客や行員を従わせる。

 

「ぎ、銀行強盗?!」

 

アルは屈めた身のまま物陰から成り行きを見守っていた。

 

「ひ、非常事態発生!非常事態発生!」

 

行員が慌てふためき、異常を報せんと机の下に設置された通報ボタンを連打するが、ホシノ、1番の覆面に詰め寄られ、パッと手を離す。

 

「無駄無駄〜。外部に通報されるシステムは落としちゃったからね〜」

「ひいっ!」

「ほら!そこ!伏せてってば!下手に動くとあの世行きだよ!」

「皆さん、お願いだからジッとしてください…あうう…」

 

見ようによってはヒフミが一番恐ろしい存在だな。

 

行内の状況をアヤネの仕込んだドローンで監視するルルーシュはそう苦笑していた。

 

気弱そうな様子で従えと要求する銀行強盗…。

まず会いたくない存在だな。何を考えているのか分からなさすぎる。

 

「うへ〜ここまでは計画通り!次行こう〜。

リーダーのファウストさん。指示を願う!」

 

ホシノに振られたヒフミはえっ!?と困惑を浮かべる。

 

「ファウストって…わ、私ですか?!私がリーダーですか?!私が?!」

「リーダーです!ボスです★…因みに私は、覆面水着団のクリスティーナだお♧」

 

まだ生きていたのかその設定…。

緊張感のない銀行強盗現場にツッコミを内心入れつつ、ルルーシュは端末を操作する。

 

偽の通報を飛ばし、マーケットガードの戦力を分散することには成功していたが、直ぐに偽の通報だと気付かれる。

そのマーケットガード達の次の動きを、各所の監視カメラをハックし盗み見ているのだ。

 

『全員、恐らくあと20分もすれば異常を察知した敵の増援が到着し始めるだろう。』

「いつから覆面水着団なんて名前になったの?!ダサすぎだし……てか、ふざけてる場合じゃないじゃん!」

 

ルルーシュの報せにセリカが叫ぶ。

 

「急がないとね〜」

 

ホシノはにへっと笑い、行員達に向けて口を開く。

 

「ファウストさんは怒ると怖いんだよ〜?言う事聞かないと怒られるぞ〜?」

「あう…リーダーになっちゃいました…」

 

「あれ。あいつら…」 

「ア、アビドス…?」

 

ムツキとカヨコは覆面水着団の正体に勘づいたようだった。

 

「だよね。アビドスの子たちじゃん。知らないのもいるけど…。何してるんだろ?覆面なんかしちゃって」

「ね、狙いは私達でしょうか?!それなら返り討ちにして…!」

「いや、ターゲットは私達じゃないみたい。…あの子たち、まさかここを…?」

「もー、アルちゃんは何してるのさ」

 

 

2番の覆面は行員達を見渡しながら言う。

 

「監視カメラの位置、警備員の動線、銀行内の構造、全て頭に入ってる。無駄な抵抗はしないこと」

 

どん、と一人の行員の前に2番の覆面はバッグを置いた。

 

「さあ、あなた。これに入れて。少し前に到着した現金輸送車の…」

「わ、分かりました!何でも差し上げます!現金でも債券でも金塊でも!」

「そ、そうじゃなくて集金記録を…」

 

動転した様子の行員はバッグを持って走り去り、数分と経たずに戻ってきた。

 

「どうぞ!これでもかと詰め込みました!どうか命だけは…!」

「あ、う、うーん」

 

思っていた状況とは異なり、シロコも流石に困ったように唸る。

 

 

そんな様を見ていたアルはというと──。

 

や、ヤバーイ!この人たちなんなの?!ブラックマーケットの銀行を襲うなんて!

 

感激していた。

 

どう逃げるつもりなのかしら?いや、それ以前にこんな大胆な計画を立てちゃうアウトローがいまだに存在するなんて!

めちゃくちゃ手際良いし、超プロフェッショナル!まるでこのためだけに生まれてきたみたい。

ものの5分でやってのけたわ!

か、かっこいい!…シビれるっ!これぞまさにアウトロー!

 

 

「全然気付いてなさそうだね」

「むしろ目まで輝かせちゃってさ…」 

 

アルの姿を見つけたカヨコとムツキはため息と苦笑いを浮かべていた。

 

「わ、私達はここで待機でしょうか?」

「…あの子たちを手助けする義理も銀行に助太刀する理由もない。社長もあんなだし。今は隠れていよう」

 

「シロ…ブルー先輩!ブツは確保した?!」

 

 4番の覆面に言われ、シロコは困りつつも目的の書類が諸々と共に入れられている事を確認すると、一応バッグを掲げて頷いて見せた。

 

「それじゃ逃げるよー!全員撤収!」

「それじゃ、アディオース♧」

「け、けが人はいないようですし…すみませんでしたっ!さよなら…!」

 

1番の号令に従い、全員が一斉に出口の方へと駆けていく。

 

それと共に、何処に隠れていたのか、という物陰から1台のドローンが飛び出し、弾頭を発射した。

 

監視カメラなんてものは、下手に長時間ハッキングなんかをせずとも、単純に視界を遮ってやれば単なる木偶の坊に成り下がる。

回線やコードが違っても周囲一帯のカメラ全てを無力化可能にもなるし、ローテクというのは使い所によっては極めて有効だ。

これで逃走ルートも絞り込みにくくなるだろう。

 

煙幕弾の放出した煙幕が行内に充満し、外にも漏れ出して行く。

 

ルルーシュは人気のない路地で皆を待ちながらフッと笑っていた。

 

「シロコ達が話を聞かず強盗をすると決めたときはどうしたものかと焦ったが…蓋を空けてみれば大成功だったな。

…犯さなくて良い危険でもあったが、まあ、しかし、結果は悪くない。

一先ずは目的達成、か」

 

とは言っても、これは単なる通過点。最終目標はカイザーグループだ。

それに、逃走中にアクシデントが起きたりしては不味い。

マーケットガードに追い付かれてしまったりしては水の泡になる。

しっかりガイドせねばな。

 

「全員、聞こえているか?そのまま銀行から反対の歩道へ向かえ。

そして建物沿いに歩いて黒っぽい壁の高級ブティック。店の入り口側方面の路地へ入ってこい。合流するぞ」

 

通りに漏れ出した煙に驚いた市民達は、混乱することとなった。

 

「な、何だ?!火事?!」

「何が起きてるんだ?!」

 

周囲の通りにも混乱を広げつつ、覆面水着団は煙の中を素早く逃げ去っていく。

 

「奴らを逃がすな!道路を封鎖!マーケットガードに通報しろ!」

 

覆面水着団が去るや否や元気を取り戻した行員はそう怒鳴り、セキュリティに追わせようとする。

 

だがしかし、それは不可能であった。

周囲は未だ煙幕に包まれており、まともな追跡は不可能となっていたからだ。

監視カメラも同じく、視界不良であり、ルルーシュの計算通り、今、仮にマーケットガードが到着したとしても直ぐには逃走ルートを絞る事は出来ないだろう。

 

行員の叫び声はそれ故虚しく、煙の中に消えていくのみなのであった。

 

 






今回も読んで頂きありがとうございます。
次回更新日は相変わらず未定ですが、次回もまた、どうぞよろしくお願い致します。

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