コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐   作:ライト鯖

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Archive-002 戦術指揮

 

「此方のルルーシュ先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」

 

リンの紹介に、ルルーシュは「そうらしい」と頷く。

 

「行方不明になった連邦生徒会長が指名…?ますますこんがらがってきたじゃない…」

 

青いツインテールの少女にルルーシュは内心深々都頷いていた。

 

まったくだ。何がどうなっているのか。

 

内心を隠しつつ、ルルーシュは久方ぶりに外向けの、優しげな青年と見える表情を作り、挨拶をする。

 

「ルルーシュ…ランペルージだ。皆、よろしくな」

「あ、こんにちは。先生。私はミレニアムサイエンススクールの…いや、今は挨拶なんて良くて!」

 

青いツインテール少女は困惑のままにノリツッコミの如く自己紹介を打ち消す。

 

「そのうるさい方は気にしなくて良いです。…続けますと…」

 

リンの言葉に青いツインテール少女は怒りを顕にした。

 

「誰がうるさいって?!わ、私は早瀬ユウカ、覚えておいてください!先生!」

 

そのまま流れるようにまくし立て、結局自己紹介をするのだった。

 

「あ、ああ。よろしく頼む」

 

勢いにたじろぐルルーシュ。

対照的にリンは慣れているのか平然とそのまま説明を淡々と続ける。

 

「先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げたある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました」

「担当顧問…?」

「はい。連邦捜査部S.C.H.A.L.E。

単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。

連邦組織の為、キヴォトスに存在する全ての学園の生徒達を制限なく加入させることも可能で──」

 

ほう。かなりの権力を移譲されるようだな。

好都合だ。此処へ何らかの手段で飛ばされた理由も、目的も分からない以上、使えるリソースは多いに越したことはない。

 

「各学園自治区で制約なしに戦闘活動を行うことが可能です」

 

その言葉に、ルルーシュはポジティブな感情を抱けなかった。

むしろ──。

 

待て。幾らなんでも権限が大きすぎる。

超合集国設立後の黒の騎士団へ加盟国の要請に基づく行動や、資金源を加盟国の拠出金とする制約を加えていたのは黒の騎士団が独裁勢力となることを避けるためだった。

 

そうした制約がないのなら、この"シャーレ"は権限だけで言えば、ナイト・オブ・ラウンズの方が近しい事になる。

何故これほどの権限を。

資金源はさすがに連邦生徒会が握るのだろうが、そんなものどうとでもなる。

つまり──。これは不味いな。俺の判断一つで戦争が起きうるということではないのか?

 

「何故、それ程巨大な権限を?」

「さあ…。連邦生徒会長が失踪前に設立されたきりなので私達にも分からないのです」

 

リンからは、ルルーシュ自身、ある程度予想はしていたものの、答えを得られることはなかった。

 

くっ。情報が少なすぎてどの可能性も捨てきれない。

 

ともかく、とリンはルルーシュの内心を知る事もない為、なおも続ける。

 

「シャーレの部室はここから30km程離れた外郭地区にあります。

今はまだ殆ど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で"とある物"を持ち込んでいます。

先生をそこにお連れしなければなりません」

「ん?場所さえ教えてくれれば俺一人でも…後のことは連絡してもらえれば良いだろう」

 

今は新たな情報と、脳にある"情報(アーカイブ)"を整理しつつ思考を纏めたいルルーシュは、そう断ろうとしたが、リンが首を縦にするはずもない。

 

「…先生が治安の悪化したキヴォトスを一人で歩くには危険過ぎます」

「………」

 

そうだ。ここは"キヴォトス"だな。

知っているはずがないのに知っているキヴォトスの" 情報(アーカイブ)"から、ルルーシュは納得せざるを得なかった。

 

「モモカ。シャーレの部室に直行するヘリが必要なのだけれど」

 

あれは無線機の類、或いは、携帯か?

 

ルルーシュは見たこともない形の、薄く全体に液晶が広がっている機械に語りかけるリンを見、その未知の物体の正体を類推する。

 

『シャーレの部室?外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど』

 

モモカと呼ばれた少女が何でもないことのように言った言葉に、リンは若干唖然としつつ「大騒ぎ?」とオウム返しをした。

 

『矯正局を脱出した停学中の生徒達が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ』

 

嘘だろう。ゆっくり考える暇もない。

ルルーシュは既に自己紹介の時に作り上げていたアルカイックスマイルが崩れていることにも気付かず、事態をモモカから聞くしか無かった。

 

曰く、連邦生徒会に恨みを抱いた地域の不良達が辺りを焼け野原にしているという。

 

しかも。

 

『巡航戦車までどっかから手に入れて来たみたいだよ』

「はっ?!」

 

思わずルルーシュの口から漏れ出た困惑と驚愕。

しかし、それを気に留める者はいなかった。

そんな場合じゃない情報が飛び出てきたのだから当然だ。

 

『シャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに何か大事なものでもあるみたいな動きだけど?』

『…まあでももうとっくにめちゃくちゃな場所だし別に大したことな……あ、先輩お昼ご飯のデリバリー来たからまた連絡するね!』

 

一瞬、探るような曖昧な間が挟まったかと思えば、今度はマイペースに昼飯だと言ってモモカの声は途絶えるのだった。

 

プルプルと震えるリンに、ルルーシュは苦笑を向ける。

 

「…苦労してそうだな。どうにも。大丈夫か?」

「だ、大丈夫です。少々問題が発生しましたが、大したことではありません」

 

言いつつ暫くウロウロとホールを小さく回っていたリンだったが、何かに気付いたように立ち止まり、それから事態を見守っていた"来客"達に視線を、何やら言いたげな強い視線を送り始めた。

 

「な、何?どうして私達を見つめてるの?」

 

早瀬ユウカが怪訝に眉をひそめる。

リンは対照的にニッコリと笑い、慇懃な態度で口を開いた。

 

「丁度ここに、各学園を代表する立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです」

「え?」

「キヴォトスの正常化の為に、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう?」

 

リンはそれはもうニッコリとした笑顔を貼り付けたまま、踵を返し歩き出す。

ルルーシュは一先ず、リンについて行かざるを得ないので、その後を追った。

 

「…ちょ、ちょっと待って!何処に行くのよ!」

 

ユウカを始めとする面々も、流れのまま後を追いかけてくるのだった。

 

 

その後、件のシャーレのビルとなる予定地付近へとたどり着いた一向。

近場の安全な場所へ降り立ったヘリを降りたルルーシュを待ち受けていたのは、爆発音だった──。

 

「な、何これ?!」

 

ユウカの困惑した声に、ルルーシュも深く頷きたいほどに同意する。

 

数十メートル先で爆発が起きたかと思えば、少し先の歩道では銃撃戦が繰り広げられている。

 

ブリタニアがゲットーで"鎮圧作戦"を行っているかの様な状況。

 

これがキヴォトスの日常なのか?。

世紀末だな…。

 

そんな末法のストリートを駆け抜けるルルーシュを、ユウカ達が襲い来る不良達と戦いながら援護していた。

 

「何で私達が不良達と戦わなきゃ行けないの!」

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻す為には、あの物質の奪還が必要ですから」

 

黒いリボンとメガネの少女に諭されるも、ユウカはなおも不満そうである。

 

「それは聞いたけど…!私これでもうちの学校では生徒会に属していて──」

 

ユウカの不満を聞き流しつつ、ルルーシュは彼女達の戦い方を観察する。

 

──やはり、"情報(アーカイブ)"通りだな。

キヴォトスは銃社会。

その上、銃撃戦は日常茶飯事。

その理由は、彼女達が銃弾の10発や20発では死ぬどころか大怪我すらもしないことにある。

 

頑丈なのだ。キヴォトスの生徒達は。

 

「いったあ!痛いってば!あいつら違法JHP弾を使ってるじゃない!」

 

今も正にユウカが敵、スケバングループの銃撃を受けたが、殆ど無傷だ。

多少の、打撲痕にすら見えない、擦り傷程度だな…。

 

しかし、まあ、だからといって戦車が出てくるのはやり過ぎに思うが…。

 

「伏せてください。ユウカ。それに、ホローポイント弾は違法指定されていません」

 

黒翼の少女の冷静な指摘に、ユウカは「うちの学校ではこれから違法になるの!傷跡になるでしょ」と憤懣のままに服のホコリを払いながら言い返す。

 

傷跡。

あれだけの銃撃を受けて転んだ程度の傷がつくか付かないかという程度。

全く、知識としてはあっても、実際に目にすると混乱する。

 

自分もその頑丈さを手に入れているのか、と錯覚しそうになるが──。

 

「今は先生が一緒なので、その点には気をつけましょう」

「先生を守ることが最優先。あの建物の奪還はその次です」

 

どうも、そうではなさそうだ。

 

「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトスでない所から来た方ですので、弾丸一つで命の危険に晒される可能性があります。その点、ご注意を!」

 

黒リボンとメガネの少女もそう言ってルルーシュの脇を固めている。

 

やはり、俺は普通の人間のまま、か。 

銃火器の種類も俺のいた世界とは違うな。

ナイトメア、サザーランド辺りの武装に酷似している。

鉛玉に火薬を用いた銃がメインのようだ。

…キヴォトスの人間と同じでないなら、俺に直撃すれば、物理現象として死は当然だろう。

 

「分かってるわ」

 

ユウカは、はあ、と息を吐くように顔を動かした後、通ってきた道の突き当たりにあるビルの影から、目的地方向を見やる。

そして、振り向き、ルルーシュに向かって言った。

 

「先生、先生は戦場に出ないでください。私達が戦ってる間は、この安全な場所にいてくださいね」

 

ルルーシュもその時点で気付いていた。

かなりの数のスケバンがある程度の秩序を持って進行方向から向かって来ているのだ。

 

…無様だ。

幾ら頑丈とは言え、俺よりも年下の学生に守られるばかりで、彼女達が戦う様を眺めることしか出来ないとは。

ナイトメアさえあれば…。

 

いや、ナイトメアはないが…。

俺にも出来ることはあるじゃないか。

ナイトメア等よりももっと簡単で、俺の領分が。

全く、我ながら混乱しすぎだな。この程度の事に思い至らんとは。

 

「…私が指揮を執ろう」

「え?!戦術指揮をされるんですか?…まあ、先生ですし…?」

 

ユウカはイマイチ納得出来ていない様子だったが、黒翼の少女は淡々と受け入れる。

 

「分かりました。これより、先生の指揮に従います」

「生徒が先生の言葉に従うのは自然なこと、ですね。よろしくお願いします」

 

黒リボンとメガネの少女も、銃を構え、白銀の髪を靡かせる少女も小さく頷く。

 

「よし!じゃあ行ってみましょうか!」

「ああ。直ぐに片を付けるぞ」

「私は先生の護衛に回るので、皆さんお願い致します」

 

リンはそう言って銃を構え、ルルーシュの背後を警戒する。

 

ここまでの行軍で彼女達の得意や傾向は把握した。後は──。

 

「悪いがユウカ以外は飛び出す前に名前を頼む!現状では不便だ!」

「羽川ハスミです」

 

と、黒翼の少女。

 

「火宮チナツです」

 

黒リボンとメガネの少女。

そして白銀の少女も最後に名乗り、飛び出す。

 

「守月スズミ。…行きます」

 

良し。これで指示を出しやすくなった。これまでの戦いからしてスケバンと彼女達では実力に大きな差がある。

無論、彼女達が圧倒的に強い、という意味で。

ならば後は──。

 

スケバン達は飛び出してきたユウカ達に気付くや否や、一斉射を開始する。

 

「ユウカはそのまま5m先の障害物まで前進!ハスミはその場で待機しろ!スズミ!2時の方向に向けて撃て!」

 

スズミの射撃がスケバン何人かに直撃するが、まだ状況は大きくは変わらない。

 

「相手は少人数だ!やっちまえ!」

 

スケバン達が5人固まって勢いよく突進してくる。

 

「ユウカ!右端の奴に向けて発砲!」

 

「ぐっ!痛え!」

 

一人はそこで動きを止めるが、4人は気にせず突進を続ける。

 

「よし。条件はクリア。ハスミ!10時の方向、上方の射角45度と40度に一発ずつ撃て!」

 

ハスミは誰もいない場所への射撃命令に一瞬躊躇するも、従うと言ったこともあり、とりあえずと引き金を引く。

 

ハスミの射撃は、近くのビル、その外壁に取り付けられていた看板の付け根に辺り、看板が壁の束縛から自由となり、今度は重力に取り込まれる。

 

「うわあ!?!?」

 

目の前に落下してきた看板に驚き足を止める4人のスケバン達。

 

「スズミ、チナツ!」

 

それ以上の指示はいらなかった。三人共、ルルーシュの狙いを察し、既にスケバンの背後を取っていたのだ。

 

「ぐわあああ?!」

「そうか。ユウカさんに一人撃たせたのは、看板の大きさを考慮して…」

「凄い…これなら本当に早く終わりそう」

 

「ユウカはそのまま一時の方向に向けて斉射!」

「スズミは付近のスケバンを引き付けろ!チナツはその内の一人に突撃!

ハスミは5秒後に左前方40度の位置に向け、狙撃!」

 

「3…4…5!」

 

今度は本当に何もない場所へ狙撃した筈のハスミの弾であったが、虚しく彼方へ消えることはない。

 

スズミとチナツの攻勢に追い立てられ、ユウカの斉射範囲に入らぬよう移動したスケバンの一人が、ぴったりハスミの射線へと入ったのだ。

 

「なっ…」

 

バタリと倒れるスケバン。

ハスミは信じられないものを見た、と唖然とした様子であった。

 

「敵の前衛は完全に崩壊した!全員、正面に向けて一斉射!」

 

残された10人に満たないスケバン達は、右往左往とする。

もう大した戦意も無さそうだ、とルルーシュは一瞬思ったが、はたと違和感を覚えた。

 

「──ん?」

 

そして、辺りを見渡し、もしや、と気付く。

 

「ユウカとチナツはそのまま!ハスミとスズミは9時の方向に注意しろ!敵が来るぞ!」

 

ハスミが真横を向くのを、スズミは静止し、言う。

 

「私一人で十分です。先生。皆さんも合図に合わせて一瞬、目を瞑って下さい」

 

そこから3秒と経たず、スケバンの別働隊が路地から姿を現した。

 

「閃光弾!投擲!」

 

スズミの声に合わせ、ルルーシュ達は目を瞑る。

 

一瞬の強烈な光。

自分達が奇襲をかける側と考えていたスケバン達は、思わぬ攻撃に反応することは出来ていなかった。

 

「なんで…バレて…」

 

続くスズミの追い打ちによって、別働隊はそのまま倒れ伏す。

 

「よくやってくれたスズミ。…フッ。リン、もう警戒は必要ないぞ」

 

ルルーシュは前方に残るスケバン達が、別働隊の壊滅を受けて完全に戦意を喪失し、逃げ出すのを見て、勝ち誇った笑みを漏らした。

 

「もう、終わったのですか?!…凄い」

「相手に戦略も戦術も殆どなかっただけさ。

精々最後の奇襲か。あれにしたって偽装が上手いわけでもなかったしな」

「それでも、いつもの数倍は早く戦闘が終わりましたし、凄いですよ」

 

スズミ達もルルーシュとリンの元へと戻ってきて、感嘆を漏らす。

 

「戦いやすいというか…気付いたら皆逃げていっていた位にスムーズだったわ」

「先生の戦術指揮のおかげで、普段よりずっと楽に戦えました」

「なるほど…これが先生の力。まあ、連邦生徒会長が選んだ方だから当たり前か…」

 

指揮官に相当する存在が珍しい、或いは極端に少ないのか?

この程度ならば俺でなくともやれそうなものだが…。

いや、お世辞か?。まあ、何にせよ無意味に謙遜する理由も水を差す必要も無い。一先ず素直に称賛を受け取っておくか。

もし、少しでも信頼を勝ち取れたのであれば、損はない。

 

「それでは次もよろしくお願いします。先生」

「勿論だとも」

「すみません。私は少し確認することがあるので、少し遅れて向かいます」

 

リンは着信が来ている端末を見、そう言った。

 

「ん?ああ。了解だ。気を付けるんだぞ」

「それは此方のセリフです」

「うぐっ…。まあ良い。では皆、行こうか」

 

30分後──。

幾度かスケバンの小集団を相手にしながら、一行はシャーレの部室となるビルが伺える程の場所までたどり着いていた。

 

「もうシャーレの部室は目の前よ!」

 

ユウカが漸く、と声を上げる。

そのタイミングで丁度、リンからの連絡が入る。

 

『…この騒ぎを起こした生徒の正体が判明しました』

「ほう」

『ワカモ…百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です

似たような前科が幾つもある危険な人物なので気を付けて下さい』

 

 

─シャーレ部室予定ビル前─

 

「あら、連邦生徒会は来ていないみたいですね。…まあ、構いません。

あの建物に何があるかは存じませんが、連邦生徒会が大事にしている物と聞くと…」

 

ビルを見上げながら狐の面を付けた少女は恐らくその内で嗜虐的な笑みを浮かべているのだろう。

 

「壊さないと、気が済みませんわ…

ああ、久しぶりのお楽しみになりそうです」

 

狐の面の少女は、ウフフと楽しげに笑うのだった。

 

 





第二話も読んで頂きありがとうございます。
次回更新は未定ですが、プロローグに該当する部分、恐らく後一話分までは早めに投稿するつもりです。
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