コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐   作:ライト鯖

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Archive-20 ゲヘナ学園風紀委員会

 

「社長!皆!逃げるよ!奴等が来た!」

 

カヨコが便利屋の皆に呼びかける。

 

「奴等?」

「ウチの風紀!」

 

だが、彼女達の動きよりも、砲弾の着弾が先だった。

 

「くっ…う…」

 

爆風に巻き込まれた便利屋一味は吹き飛ばされ、地面に強く打ち付けたことで気絶してしまう。

 

「対象、沈黙したかと」

「なら歩兵第2小隊まで突入」

「…イオリ、あの方たちはどうしますか?」

 

ゲヘナの風紀委員を率いているのは、火宮チナツと、イオリと呼ばれた健康な褐色の肌と銀の長い髪をツインテールにしている少女であった。

 

「ん?ああ、向こうの生徒、なんだっけ…アビドス?

当然、公務の執行を妨害する輩は全員敵だ」

 

チナツの問いに、ある種の明瞭さでイオリは答える。

 

「なら、大人しくしていてもらいたいものですね…。

しかしこちらの事情を説明するのが先かと」

「説明?必要か、それ?」

「………」

 

チナツからの視線には気付かず、面倒そうにイオリは続ける。

 

「うちの厄介者を捕らえるための労力が惜しい。

もし邪魔するなら部外者とは言え、問答無用でまとめて叩きのめす」

 

 

「何っ!?風紀委員が便利屋を捕まえに来たってこと?!」

 

セリカが困惑したように言った。

 

『まだ分かりません…しかし私たちに友好的とは判断しかねます…』

 

そうだ。アヤネの言う通り、連中の目的はまだ読めん。便利屋を捕まえに来た、確かに無い話ではないだろうが、過剰戦力にも思える。

他校の自治区へ、幾らアビドスが弱小とは言え、これ程大規模な戦力展開の理由が、指名手配犯確保?

バカげている。何か裏の理由がある筈だ。

 

しかし、理由の如何はともかく、俺達に好意的でないことも確実。

何せ──。

 

「砲撃範囲内には私達もいた。あからさまにこっちを狙ったわけじゃないけど」

 

シロコが遠景に見える風紀委員の部隊を睨みながら言った。

 

「冗談じゃないっての!便利屋は私達の獲物なんだから!何なの一体!」

「でも風紀委員は便利屋のような部活だったりとは違います。一歩間違えれば紛争の火種になるかもしれません…。

アヤネちゃん、ホシノ先輩とはまだ連絡がつきませんか?」

 

ノノミは、アビドスの代表者足りうる、そして最高戦力でもあるホシノが必要と考えていた。

しかし、アヤネから良い返答が返ってくることは無かった。

 

「…普段なら、ここまで連絡が付かないことはないのですが…」

「…この状況、私達はどうすれば良いのでしょうか…」

 

ルルーシュとしても判断に迷う所であった。

相手の意図を掴めない以上、これという解が存在するわけではない。

風紀委員会の行動に対する情報が少ない故に、推測を重ねるしかなく、こうなるとどうしても無難な手段を取らざるを得なくなる。

 

「とりあえず、此方から先制攻撃をすることはないようにな。…そして、可能ならばあれらを率いている責任者と対話出来れば良いんだが…」

 

便利屋を連中に引き渡すというのも手か。

いや、目的が他にある以上、建前を潰されようと何かしら理屈を捏ねて来る可能性は高い。

むしろ、余計に拗れるか?。

 

裏の目的の重要度次第だな。

建前を潰されて諦める程度なら…。

そうであるなら、やはりこれ程の戦力は展開しないだろう。

恐らく悪手だな。

 

「どうすれば良いのよー!」

「…他に選択肢はない。風紀委員を阻止する」

 

シロコは迷う様子もなく、銃を構える。

 

「待て。くどいようだがこちらからは攻撃をするなよ」

『ですが、シロコ先輩の言う通りだと思います』

 

アヤネが憤懣とした様子で割り込む。

 

『風紀委員会が私達の自治区で戦術的行動を取った時点で、既に政治的紛争は生じています。

便利屋の皆さんが問題を起こしたのは事実なのでしょう。

でも、だからといって他の学園の風紀委員が私達の許可もなくこんな暴挙を敢行していいという理由にはなりません』

「アヤネちゃんの言う通りよ!これは私達の学校の権利を無視するような真似よ!」

 

セリカは怒り心頭といった表情で言うのだった。

 

「便利屋を罰するのは私達!柴関ラーメンを壊した代償を払ってもらわないと!」

「待て!一度落ち着け!此方から先制攻撃をしても事態は悪化するだけだ。私が話しに行くから一度──」

 

ルルーシュの説得も虚しく風紀委員会の方へとにじり寄るアビドス勢。

それは当然、風紀委員側も認識していた。

 

「アビドス、臨戦態勢に入りました」

「はあ、面倒だな。たかだか4人で。こっちは1個中隊の兵力なのに。だけど、売られたケンカを買わないなんてことは風紀委員会として出来ない。

総員、戦闘準備!」

 

イオリの指示に、直ぐ様部下達は反応し、臨戦態勢へと移行する。

だが、ドローンカメラで観察を行なっていたチナツが「ちょ、ちょっと待ってください」と彼女を止めた。

 

「ん?」

「アビドス側に民間人と思しき人が映りました。確認中ですのでお待ちください」

 

え?と映像を詳細に確認したチナツは驚きの声を上げた。

 

「あ、あれは、シャーレのルルーシュ先生?!」

「ん?シャーレ?なんだそれ」

「ちょ、ちょっと待ってください。シャーレの先生があっちにいるのだとしたら…この戦闘は行ってはいけません!」

「ど、どういうことだ?」

 

チナツの鬼気迫る様相に押され、イオリが戦闘を強行することはなかった。

しかし、多人数になればなるほど、意志の統一と貫徹には時間がかかってしまう。

前方の部隊は、既にアビドスとの距離をかなり近くしていた。

 

『アビドス、接近中!発砲します!』

 

チナツが止める間もなく、銃声が辺りを満たし始めてしまう。

 

「ちっ。仕方ない、行くぞ」

 

イオリの方は、始まったのだから仕方ない、と飛び出すのだった。

 

 

良し。とりあえず先制攻撃はあちらからという事実を作れた。

これで我々は少なくとも自分達の自治区に無断侵入し武力行使をする集団から自治区を防衛する為に戦った、という建前を手に入れた。

 

後々問題になった場合、この意味は大きくなるはずだ。

 

「皆!フォーメーションCだ!攻撃のタイミングはシロコに合わせろ!」

 

数が多すぎるな。どうにか減らす事が出来れば。

残るドローンだけでは少々心許ない。何か他に…。

 

「何だ?連中やけに機敏だな」

 

前に出た歩兵部隊にセリカとノノミが向かい合い、シロコは少し離れて、側面からの攻撃を加えた。

 

同時にノノミとセリカも発砲を始め、いきなり突出した第2小隊が半包囲されることとなる。

 

「?!…不味い。第2小隊下がれ!」

 

しかし、シロコが軽快に障害物を飛び跳ねるようにして歩兵部隊へと急迫し、撤退を阻害する。

そのまま数人、シロコによって倒されてしまった。

 

「ノノミは現状を維持。セリカはシロコのカバー」

 

ルルーシュはインカムで指示を出しながら次なる策を巡らせる。

人数不足を補える一手を。

 

「…。そうだ。アヤネ!便利屋の傭兵部隊は?」

『え?…ふ、風紀委員の姿を確認し、撤退を開始した模様です』

 

使えるな。

 

ルルーシュはニヤリと笑い、風紀委員の方にも聞こえる声量を意識し、声を出す。

 

「総員!パターンD!援軍の到着まで耐えろ!」

 

その声に、いくつかの風紀委員部隊が反応した。

 

「増援?まさか。一体何処から?」

「小隊長!少し離れた通りで隊列行動を取っているアンノウンの部隊があると報告が!」

「そいつらが?!」

 

イオリの下にもその情報は入ってくる。

 

「援軍?アビドスには生徒がいないだろ。そんな大規模部隊いるわけがない」

「いえ。イオリ、"シャーレ"が味方に付いている以上、可能性はゼロではないかもしれません」

「そんなに凄い組織なのか?シャーレって」

「報告書、読んでないんですね…」

 

チナツははあ、と肩を落としつつ、はい、と首肯する。

 

「どんな学校の生徒でも入部させることが可能で、連邦生徒会の権限に基づき様々な学校へアクセスすることを許可されているんです」

「…何だその無茶苦茶な組織」

「そんな組織なら資金源も豊富と見るべきではありませんか?ビルを一棟丸々与えられていましたし」

「…てことは、傭兵か?」

 

ええ、とチナツは頷く。

 

「その可能性はあります。シャーレをバックに傭兵を雇い、自治区の防衛力を強化しているのかも…」

 

敵風紀委員会は増援の情報の真偽が分からん以上、多少の混乱は作れるだろう。

しかし、傭兵達が戦場から遠ざかっていると気付かれれば仕舞だ。

 

ここからは賭けだな。

 

ルルーシュは残るドローンを操作し、傭兵達へと向かわせた。

 

向かう先を反転させられれば、そうでなくとも足を止めさせられれば充分。

 

「ここだ」

 

ドローンは路肩に放棄されている至る所に裂傷や破損のある乗用車に向けて、小型の爆弾を投下する。

 

激しく爆発、中に残っていた燃料に引火したのか、激しく燃焼した。

 

「な、何だ?!敵?!」

「風紀委員会じゃないか?!」

「でも姿が見えないぞ?!」

 

ここでもう一撃。

ルルーシュはドローンそのものを近くの街灯へと衝突させた。

乗用車程ではないが、小規模な爆発。

 

「うわわっ!」

「わ、私達はただの傭兵で無関係なんだ!」

「言っても聞いてくれるわけねえだろ!」

「くそっ!そっちも封鎖されてるのかよ!おい!こっち行くぞ!」

 

反転こそしなかったものの、傭兵達は戦場から離れるルートから外れ、まるで戦場を迂回し、風紀委員会の後方へ向かうような動きとなる。

 

『報告!アンノウンの部隊、此方の後方、皆さんの本陣に向かっていると思われます!』

「マジかよ…」

 

イオリはその傭兵達がアビドスの物と錯覚しつつあった。

チナツも、やはり、と確信を深める。

 

「仕方がない。戦力を回すか」

「それしか無さそうですね」

「第三小隊、第四小隊、アンノウン部隊を食い止めろ」

 

良し。少しだが圧力が低下したな。

ここで打って出る。

 

「シロコ、セリカ、ノノミ。フォーメーションA!」

 

三人は素早く一塊となり突進を開始する。

 

ホシノがいないと少々突破力にかけるが、それでもアビドスの皆は個々の戦闘力が高い。

しかし数が圧倒的に劣勢である以上、正面戦闘に拘ってはいけない。

 

むしろここで狙うべきは、アビドス生全員でもって、敵風紀委員会本陣に向けた、奇襲。

つまりは、戦力を集中しての、正面──。

 

「──突破!イオリ!」

 

チナツはイオリに呼びかける。

ギリギリでアビドスの意図に気付いたのだ。

勿論、イオリも悟っていた。

しかし、指示は間に合わない。

 

「これで、チェックだ」

 

三人は一気に敵本陣へと距離を詰める。

戦線を壊され、更に陣形ど真ん中に現れた敵に、風紀委員部隊は即座に戦術を切り替える事が出来ず、反応が遅れる。

応戦しても、陣形を無視したものである以上、味方への誤射すら発生してしまう。

 

そして、三人が足を止めることはない。

 

「まずい!このままじゃ!イオリ先輩達のとこに!」

 

既にイオリの表情すらも、シロコ達ははっきりと視認出来るまでになっていた。

 

「シロコ先輩!」

「…ん!」

 

どうにか対応してきた少数にノノミとセリカが当たり、シロコを前へと通す。

 

「はあっ!」

「くそっ!」

 

イオリと正面からぶつかるシロコ。

チナツも応射しようとしたが、チナツの背後から数発の銃弾が飛び、手に持つ銃を撃ち落とされた。

 

「なっ?!──」

『カードは残しておくものだ』

 

通信チャンネルをオープンにし、ルルーシュが言う。

 

『三人に気を取られてる隙に、残ったドローンを突貫させてもらったよ』

「ぐあっ!」

 

一瞬、チナツの方を気にかけてしまったイオリも、シロコに押し負けてしまうのだった。

 

「わ、私たちが負けただと?」

 

風紀委員の手が止まる。

どう撃ったとしても、シロコに銃を突きつけられているイオリ達に当たることが避けられず、自分達を率いる人間が指揮不能となったのだ。

止まらざるを得ない。

 

「君もいたとはな。チナツ。久しぶり、というべきかな?」

 

銃弾の雨が止んだので、ルルーシュもチナツ達の下へとやって来た。

 

「…こんな形でお目にかかるとは…先生がそこにいらっしゃると知った瞬間、勝ち目はないと確信し、後退するべきでした…私たちの失策です」

 

落ち込んだ様子のチナツに、アヤネが通信で割り入る。

 

『アビドス対策委員会の奥空アヤネです。そちらの所属をお願いします』

「それは…」

 

イオリが不承不承口を開きかけた時、アヤネの通信に割り込む存在が現れた。

 

『それは私から答えさせて頂きます』

「アコちゃん…?」

「アコ行政官?」

『こんにちは。アビドスの皆様。私はゲヘナ学園所属の行政官、天雨アコと申します』

 

生徒は画質と色彩の荒い通信映像でもよく映える水色の髪と、少々露出が多く見える服で身を包んだ少女はアコと名乗り一礼をする。

 

しかし、ルルーシュはブリタニアのパイロットスーツで見慣れている所でもあり、その奇抜な服装に引っかかりを覚えることはなく、彼女の存在と、意図についての考察を巡らし始めていた。

 

『今の状況について説明させて頂きたいと思うのですが、よろしいですか?』

「アコちゃん、その…」

『イオリ。反省文のテンプレートは私の机の左の引き出しにあります。ご存知ですよね?』

 

イオリが気まずそうに口を開きかけるが、アコに遮られるのだった。

 

 

そんな現場から少し離れた場所で、ムクリと起き上がる人影があった。

 

「ああ…皆、集まってます…」

 

チャンスですね。と呟き、彼女はまだ少しよろける足でひそかに行動を始める。

 

「許せない…許せない…許せない…」

 

ブツブツとハルカは呪詛のように漏らしながら、取り落としていた銃を手に取っていた。

 

 

『行政官といえば、風紀委員のNo.2…』

『あら実際はそんな大したものじゃありません。あくまで委員長を補佐する秘書のようなものでして…』

「本当にそうならそこの風紀委員達がそんなに緊張するとは思えない」

 

アコの作ったような笑顔と周囲の雰囲気を見て取ったシロコが指摘する。

 

『…なるほど。素晴らしい洞察力です。確か…砂狼シロコさんでしたか? 

─アビドスに生徒会の面々だけが残っているとは聞きましたが、皆さんのことのようですね』

 

居並ぶアビドス生を一瞥し、アコは問う。

 

『5名と聞いていましたが、あと一人は何方に?』

『今はおりません。そして私達は生徒会ではなく対策委員会です。行政官』

『奥空さん…でしたね?それでは生徒会の方はいらっしゃらないということでしょうか。私は生徒会とお話がしたいのですが』

「アビドスの生徒会はずっと前に解散したの!事実上私達が生徒会みたいなものだから言いたいことがあるなら私達に言いなさい!」

 

セリカが不満と怒りを滲ませながらそう言い、ノノミもその後に口を開く。

 

「こんなに包囲して銃を向けられたまま、お話しましょうか〜なんて、お話の態度としてはどうかと思いますけどね」

『ふふ。それもそうですね。

…失礼しました。全員、武器を下ろしてください』

 

アコによって命が下されるや否や、風紀委員達は一斉に、僅かの遅れもなく銃口を下ろした。

 

「あら…」

「本当に武器を下ろした…?」

 

思わぬ展開にノノミも予想外と言った様相であった。

 

『先程までの愚行は私の方から謝罪させていただきます』

「なっ!私は命令通りにやっただけなんだけど?!アコちゃん?!」

 

イオリが抗議するも、アコは貼り付けた笑顔でしかし、確かな圧を醸し出す。

 

『命令に、まずは無差別に発砲せよ。なんて言葉がありましたか?』

「い、いや。状況を鑑みて必要な範囲で火力支援。その後に歩兵の投入、戦術の基本通りに、って…」

 

存外、簡単に非を認めたな。

大戦力をけしかけたにしては嫌にあっさりしている。

やはり、読み切れんな。だが、確定したこともある。

便利屋は完全に単なる大義名分の一つにしか過ぎないということだ。

 

便利屋確保が最優先であるならば、ここで謝罪しては便利屋確保からは明らかに遠のく。

許可されない行動となってしまうのだから。

 

強行に確保を実行する方が確実だ。

しかし、そうはせず、非を認め、謝罪を行った。

 

では何が狙いか─。

 

アビドスの併合?いや、併合自体、現状のアビドスだとメリットがほとんどない上、メリット無しでゲヘナがこれ程の武力行使を断行出来るようなこじれた関係ではなかった。

 

『他の学園自治区付近なのだから、きちんとその辺りを注意するのが当然でしょう?』

 

なるほどな。あくまでも付近という建付けを取るのか。 

しかし、やはりこれだけでは連中の狙いを確定は出来ないな。

考えられるのは数パターンある。が、どれか一つ当たるか当たらないか、だ。

 

『対策委員会の皆さん、失礼しました』

『私達ゲヘナの風紀委員はあくまでゲヘナ学園の校則違反者を捕縛するためにここまで来ました』

 

アコは慇懃に軽く頭を下げ、続ける。

 

『余り望ましくない出来事もありましたが、まだ違法行為とは言い切れないでしょう。やむを得なかった、ということでご理解いただけますと幸いです

「……」

『風紀委員としての活動にご協力願えませんか?』

『先程も言いましたが、そうはいきません!』

 

アヤネは、毅然と拒否の意を示す。

 

『他の学校が別の学校の自治区内で堂々と勝手に戦闘行為をするなんて!自治権の観点からして、明白な違反です!』

 

便利屋の処遇は自分達で決める、と言い切ったアヤネに、他のアビドス生達も同じだと言わんばかりに大きく頷いていた。

 

『まさかゲヘナ程の学園がこんな暴挙に出るとは思ってもいませんでしたが、ここは譲れません』

『なるほど…皆さん同じ考えのようですね』

 

そう。他校の敷地内でこんな軍事行動を取るなんてのは連邦生徒会に訴え、受理されればアビドスの勝利は確実なほどに明白な違反だ。

だからこそ、自治区の付近、と誤魔化すような言葉選びをしたのだろうしな。

しかし、そうまでして得たいものはなんなんだ。

ゲヘナは今、例の条約で上も下も多忙だろうに。

 

ルルーシュの思考を他所に、アコはフッと笑う。

 

『これだけの大兵力を前にして怯みもしないなんて…これだけの自信に満ち溢れているのは…やはり、信頼出来る大人の方がいらっしゃるからでしょうか?…ねえ、ルルーシュ先生?』

 

水を向けられたルルーシュ。

そして彼は、アコの妙な視線から風紀委員の真の狙い、その正体に推測が付いてもいた。

 

数パターンにまでどうにか絞り込めたが、やはり、確たる論拠を確認せねばな。断定は禁物だ。

 

 

『シャーレの先生、あなたも同じご意見ですか?』

「ああ。ゲヘナ学園のこれは違反の可能性が極めて大だ。そんな下手をすれば底なし沼に陥るような危険を、今、起こす理由すらも分からないのだから」

 

だが、とルルーシュは笑う。

 

「ゲヘナ"に"アビドス"が"協力するのではなく、ゲヘナ"が"アビドス"に"協力するというのであれば、話は変わってくるかもな?」

『便利屋確保までアビドスの指揮下に入れと?』

「本来はそれが筋じゃないか?或いは事前に通告し許可を得ているか。

少なくとも、力に任せて本来成すべき前提を覆し、数にあかして他者の土地を踏み荒らす。何処ぞの帝国のような真似に協力は出来ない」

『帝国?…まるで私達が悪役かのような言い方ですね。我々は単にゲヘナの不穏分子を逮捕し、秩序を維持しようとしているだけですが』

 

ルルーシュはフン、と鼻を鳴らす。

 

「そもそも、それは単なる建前だろう」

『そう仰る根拠がおありで?』

「ある。まず、他所の学園自治区にこんな大兵力を展開する程に便利屋がゲヘナにとって危険な存在である、というのならば、彼女らがゲヘナから出る前にこの規模の作戦を展開していただろう。

だが、そんな記録はない。

それに、風紀委員会が損害度外視で本気を出せば彼女達はここ(アビドス)にはいなかったろうさ」

 

アコは笑顔こそ崩していなかったが、その笑顔は硬く、内にある憤りを抑えつけるものでしかなかった。

 

「まあ、便利屋を捕縛した後、彼女らの背後にいる存在さえ分かれば此方としては用済みだ。

引き渡しても構わないが?」

『そうですね。勿論、風紀委員の皆さんがこのまま退去なさるのであれば、です!』

 

アヤネがルルーシュの後に続き、そう断言した。

 

『…これは困りましたね…うーん。本当なら穏便に済ませたかったのですが…』

 

アコは少々面倒そうに眉をしかめてから、すっと目を閉じる。

 

『やるしか無さそうですね?』

 

そして、むしろスッキリしたと言わんばかりの笑顔を浮かべ、言うのだった。

 

 





今回も読んで頂きありがとうございます。
次回更新日は変わらず未定です。

また次回もよろしくお願い致します。
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