コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐ 作:ライト鯖
アコの言葉に合わせて統率を取り戻した風紀委員達は臨戦態勢へ移行する。
しかし、アコが戦闘開始を告げる直前、構える風紀委員達を何処からかやって来た銃弾が襲う。
「うわあっ!?」
「ぐあっ!」
バタリ、バタリと何人かの風紀委員が倒れ、風紀委員は周辺への警戒に意識を移した。
「な、何だ?!」
倒れた風紀委員達の方へと視線を移すイオリ。
その彼女の背後に、ぬらりと姿を現す影。
「許せない…」
「はっ?!」
イオリの背後を取っていたのはハルカであった。
「許せない許せない許せない許せない!」
うわあああと叫び発砲するハルカ、対するイオリは突然の事に応戦する事も回避する事も能わず、銃弾を何発も身体に受け、気を失ってしまうのだった。
「嘘を付かないで、天雨アコ」
カヨコが倒れる風紀委員の間を抜けて姿を現した。
「最初からあんたが狙ってたのはこの状況だった」
『カヨコさん…』
アコはカヨコの姿に、そして、続々と現れる便利屋達の姿に、眉をしかめていた。
「ハルカちゃんナイス〜」
「す、すみません。助けに来るのが遅くなりました…!私のせいで、計画が全部台無しに…。し、死んでも良いですか?!死にますっ!」
情緒不安定気味なハルカであったが、ムツキは特段気にする素振りを見せない。
「確かにハルカちゃんのせいだけど、まあ面白いから死ななくて良いんじゃない?」
『包囲網を抜けて…?』
便利屋達の出現はアコや風紀委員のみならず、アビドス勢も驚くところであった。
「いつの間にあんなとこに…」
「…やるね」
シロコは便利屋達の実力に素直に感嘆を向ける。
『…面白い話をしますね、カヨコさん?推理ゲームは先生だけで充分ですよ?』
「…へえ。先生も気付いてたんだ」
「あくまで推測だがな」
「そう。…アコ。これは貴方の独断でしょう。私達を狙う為だけに他所の自治区へここまでの兵力を展開するなんて非効率的な運用、いつもの風紀委員じゃない」
だけど、とカヨコはルルーシュを一瞥してからアコに目を向ける。
「この大兵力、私達じゃなく、他の集団との戦闘を想定していたとすれば、説明が付く」
ゲヘナ出身で、風紀委員の手を逃れてきたカヨコの言だからこそ、信憑性があるな。
他の集団、か。ん?…まさか…。
「とはいえ、このアビドスは全校生徒集めても5人しかいない。…なら結論は一つ」
「なるほどな。"私"いや、"シャーレ"との戦闘を想定していた、という訳か」
「そう。アコ、あんたの狙いは先生。シャーレを狙ってここまで来たんだ」
アコ、カヨコ、ルルーシュ以外の面々はカヨコの指摘に驚愕を隠せずにいた。
『ふふっ。…便利屋にカヨコさんがいることを忘れていましたね。呑気に雑談などしている場合ではありませんでした』
アコは全く目の笑っていない口元だけの笑顔のまま言う。
全て合点が行った。便利屋の逮捕などというのは建前に過ぎないとは理解していたが、そうか。俺が目的だったか。
そう考えれば様々なことに辻褄が合う。
ただ、その可能性も一度考えはした。しかし、メリットとデメリットが釣り合っていないと切り捨てた可能性。
だが、しかし──。
『まあ、構いません』
ルルーシュの思考はアコが指を鳴らすと同時、通りに響き始めた地鳴りのような行進音によって中断させられる。
『風紀委員の増援です…!さらなる兵力が四方から集結しています…!』
まだ増援だと?!ただでさえ過剰に思える戦力の数倍?何故だ。これ程の兵力を動員する程の動機になるのか?"シャーレ"が。
俺の想定以上に、危険視されていたということになる。
例の条約前に騒ぎを起こす程に。いや、だからこそか?俺が条約を結ぶ上での"イレギュラー"として判断されている、ということか。
『少々やり過ぎかと思いましたが、シャーレを相手にするのですから、このくらいあっても困らないでしょうし…』
まあ、とアコは笑ってみせる。
『大は小を兼ねると言いますからね』
「包囲は抜けたと思っていたのに…二重だったか…」
『はい。…しかし、それにしてもさすがはカヨコさんですね。先程のお話は正解です。…いえ、得点としては半分くらいでしょうか?』
確かに、とアコは続ける。
『シャーレと衝突するという最悪のシチュエーションを想定してはいました。しかし、この状況を意図的に作り出したわけではありません。
それだけは信じていただきたいのですが、どうやら難しそうですね』
ふう、と小さく息を吐き、仕方がありませんね、とアコはルルーシュとカヨコを交互に見た。
『事の次第をお話しましょう…きっかけはティーパーティーでした。
勿論お二人ともご存知ですよね。ゲヘナと長きに渡って敵対関係にあるトリニティ総合学園生徒会の事です』
『ティーパーティーがシャーレに関する報告書を手にしている、と。そんな話がうちの情報部から上がってきまして』
シャーレの報告書?トリニティのティーパーティーが…?
一体何…故…。
ヒフミの顔が過ぎり、ルルーシュは気付く。
あれか…。あの時は損はないなどと考えていたが、まさかこんな展開になるとはな…。
ゲヘナとトリニティの確執を軽く見てしまっていたようだな。
『当初は私も"シャーレ"とは一体何なのか、全く知りませんでしたが、ティーパーティーが知っている情報となれば、私達も知る必要があります。
それで、チナツさんの報告書を確認しました』
確認するのが遅くないですか?と言いたげにチナツは後ろでひっそりため息を吐いていた。
『連邦生徒会長が残した正体不明の組織…大人の先生が担当している超法規的な部活。
どう考えても怪しい匂いがしませんか?』
だからこそ、"シャーレ"としては目立たないようにしてきたつもりだったんだが…。
どうやらゲヘナは相当神経質な状態にあるらしい。
『シャーレという組織はとても危険な不確定要素に見えます。これからのトリニティとの条約にもどんな影響を及ぼすか分かったものではありません』
ですから、とアコはニッコリとした微笑みをルルーシュへ向けた。
『せめて条約締結までは私達風紀委員会の庇護に先生をお迎えしたいのです』
こうなると、まだ認識の甘い部分があったと認めざるを得ないな。
学生とは言え、国家と同レベルの思考で動く場合もあるわけだ。権限や職掌のみならず、性格、思考すらもそれに近しい者達がいるのか。
その認識が足りていなかったのかもしれない。
しかし、そうであるならば尚の事、はい、分かりました。等とのこのこゲヘナに付いて行く選択肢は有り得ない。
何をされるか分かったものではないし、今度はトリニティを刺激してしまうだろう。
『ああ、勿論』と、アコはカヨコ達に視線を移す。
『居合わせた不良生徒達も処理した上で、ですよ』
「………」
「…ん。むしろ状況が分かりやすくなって良いかも」
シロコが沈黙を破り、ルルーシュとカヨコの両方を見、アコを睨む。
「先生を連れてくって?それで私達がはいそうですか、って言うとでも思った?」
シロコの目にも、セリカの言葉にも余裕を崩すことなく、アコは笑う。
『やっぱりこういう展開になりますか。では仕方ありませんね。奥空アヤネさん?』
『…はい?』
『ゲヘナの風紀委員会は必要でしたら戦力を行使する事もあります。そうなれば、一切の遠慮をしません』
『…!』
カヨコはアコ達の注意がそれたタイミングで、少し離れた場所で様子を伺うアルの下へ駆け寄った。
「社長、逃げるなら今しかないよ。戦闘が始まったらもう後戻りは出来ない。
風紀委員会がアビドスに注意を向けてる間に包囲の薄いところを突破…」
カヨコの言葉は、アルの低い笑い声によって中断させられる。
「ふふふふっ…。ねえ、カヨコ。貴方はもう私の性格、とっくに分かってるんじゃなくて?」
「こんな状況でこんなおまけみたいな扱いされておいて…背中を向けて逃げる?
そんな三流悪党みたいなこと、私達がする訳がないじゃない!」
「…あはー」
ムツキはアルの意を汲み、楽しそうに笑った。
「あの生意気な風紀委員会に一発食らわせないと気が済まないわ!」
「アル様っ…!」
「それは良いとして、あの兵力と真っ向から戦う気?アビドスと力を合わせてもギリギリだと思うけど。
そもそも私達がアビドスに協力してくれるとも思えないし…となると…」
だが、カヨコの想像は裏切られる。
「よしっ!便利屋!挟み撃ちにするわよ!あいつらコテンパンにしてやらないと!」
「先生の盾になってもらう」
むしろアビドスの側が便利屋との協力を求めて、というより自明視していた。
「話が早いな…」
カヨコは呆れたように呟くも、アルの方はむしろアビドスとテンションを共有していた。
「ふふっ…!あはははっ!当たり前よ。この私を誰だと思ってるの?心配は無用!」
「信頼には信頼で報いるわ!それが私達便利屋68のモットーだもの!」
すっかり共闘関係を成立させた便利屋とアビドス勢。
その様子に、アコは若干呆れたような苦笑を浮かべていた。
『これはこれで想定はしていた状況ですが…。
ここまで意気投合が早いとは…その点は予想外でした。…まあ、良いでしょう』
アコは命ずる。風紀委員達に。
『対策委員会と便利屋を制圧して、先生を安全に確保してください。
先生はキヴォトス外部の人間なので怪我をさせないよう充分注意を』
風紀委員達は既に作り上げていた包囲網をじわりじわりと狭め始めていた。
「包囲を突破する。まずはセリカ、ムツキ。二人は10時の方向にいる小隊に向けて前進。シロコとカヨコはそのカバー」
そして、とルルーシュは続ける。
「ハルカとノノミはイオリの足止め。…そして、アル」
「何かしら」
「私の指定する場所へ狙撃をして欲しい。出来るな?」
「当然」
「良し。では、作戦開始!」
セリカ達は前進してくる部隊に向かって発砲を開始した。
風紀委員がそれに応戦を始めたタイミングでシロコがドローンを飛ばし、遠距離攻撃を仕掛ける。
更に近場の敵にはカヨコと共に直接攻撃を行う。
セリカとムツキはそのまま進み続け、先程風紀委員が傭兵をアビドスの増援と勘違いしたことで措置らの対処に部隊を割いた事によって他よりも兵力の薄くなっていた方面を突き破っていく。
「今だ。アル」
指示されたタイミングでアルは少し離れた場所にあるビルの前面に設置された魚型の、恐らくそこにあった飲食店を象徴していただろうオブジェクトの留め具を狙撃した。
「!あれは…」
それを見たチナツはシャーレ奪還時のルルーシュによる作戦を思い出していた。
「第一分隊、第二分隊!左右に別れてください!」
そう落下してきた看板に驚き足を止めることになり、更に看板を即席の障害物とすることで敵の進路を限定する。
それが前回のルルーシュの狙いであった。
「うわあっ!」
そう。チナツ。君は私の作戦を見ている。
だからこそ、同じような行動を見れば、狙いもそちらにあると誤認してしまうだろう。
しかし、セリカとムツキは左方向に急旋回する。
シロコとカヨコもそれに続く。
そのまま、先んじてオブジェクトを避けてロスを減らしつつ、"オブジェクトによって足止めされた風紀委員を狙うアビドスと便利屋を左右から挟撃する為に分離した"風紀委員の一方を襲った。
「…しまった。先生は私が先生の策を予測するのも見越して…」
そして、セリカ達はそのまま右側へ別れていた風紀委員の後背へと回った。
「各個撃破。此方が本命だ。…さて、ハルカ」
「は、はいっ?!」
「仕掛けた爆弾はまだ残っているか?」
ハルカはえ、えっと…。と歯切れ悪く、困ったように口ごもる。
そして、アルの方へと目を向けた。
「良いわよ。教えてあげなさい」
「わ、分かりました。…えっと…これが、仕掛けた場所です…」
ルルーシュは爆弾の情報を把握すると、良し、と頷いた。
「これで包囲は突破出来るな。ハルカ、二十秒後にポイント9と11、12の爆弾を起爆しろ」
「あ、はい!分かりました…」
風紀委員が作った陣地の一部で爆発が発生する。
地面、道路の爆発、車の爆発。建物の爆発。
三様の爆発に見舞われ、風紀委員達に隙が生まれた。
「今だ!突破する!」
ルルーシュ達はすかさず混乱の間を縫い、包囲網の一角を突き崩した。
『やはり、一筋縄では行きませんね。…ですが』
続々と投入される風紀委員の増援によって、折角空いた穴も閉ざされてしまう。
「くそっ…」
単純な数に任せた力押し。
しかし、それはアコの能力が低いことを意味しない。
向こうはそれで充分ということだ。
実際、此方は補給の当てもない。ただじわじわと削られていくだけ。
更に、大将首とも言えるアコはこの場にはいない。
だからこそ包囲網を抜けてこの場を離脱する事が最善なのだが…。
「ハルカ!こうなれば出し惜しみは無しだ!」
「は、はいっ!」
再び爆発が連続する。
今度は先程よりも規模も数も段違いであり、戦線に構える風紀委員達は陣形も何もあったものではなくなる。
彼女達の立つ道路が破壊され、足場を崩されるような形となったのだ。
「シロコ、カヨコは2時の方向の敵影に対処を!セリカ!直進!」
狭まった包囲網を押し広げ、更に前進するルルーシュ達。
しかし、戦力を集中せざるを得ない状況下にあるルルーシュ達への風紀委員の対処は至極単純であった。
即ち包囲網を崩さない範囲での戦力集中。
各方面から続々と風紀委員が集まり、ルルーシュ達の進む進路に圧力を加え続ける。
『なるほど…。少数を活かした見事な戦術ですね。
チナツの報告書通りです。そして、圧倒的兵力差を覆すための奇策、奇襲。
それが先生の得意とするところでしょうか。
確かに脅威ですが、既に連戦で疲労しているアビドスや便利屋だけではこの数をどうこうは出来ないでしょう』
アコはルルーシュの戦術を分析し、余裕綽々に笑った。
『そろそろ限界でしょうか』
ルルーシュはしかし、諦めてはいなかった。
「アル!10時の方向、30m先にいる隊長らしき奴を撃て。少しでも指揮系統を混乱させる。
そして皆、私の護衛はしなくて良い。気にせず戦ってくれ」
「でもそれじゃ先生が…」
「大丈夫だ。連中も俺を無傷で確保したがっている。狙われることはない。
流れ弾にさえ気を付ければ問題はない」
「それでも危ないんじゃないの?」
「大丈夫。策はある」
こうなればアロナに期待するしかない。
ルルーシュは頬を伝う一筋の汗を悟らせぬように、不敵に笑った。
「さあ、行け!アビドス生はフォーメーションCを!便利屋は動きを見てカバーを!」
動きが変わった?
アコは先程までよりも被害報告のペースが上がっていることに違和感を覚えていた。
何処にそんな力が残って…。
!。そうか、全員先生から離れて…。
つまり、先生の護りを捨てて攻撃力を上げた、と。
『それなら好都合。第四小隊、先生に向かって突撃、他の対象は無視して構いません』
「かかったな」
ルルーシュの確保に向かってくる風紀委員の第四小隊、彼女達は突如として背後からの銃撃を受けることとなった。
『っ…しまった!まだドローンなんて隠し持ってたんですね』
「言わなかったか?…ああ、これはチナツに言ったんだったな。手札は、残して置くものだ」
『しかし、大局は変わりません!このまま押し切って…』
いいや、とルルーシュは言う。
「アコ。君の注意を私に向けさせることこそが狙いだった」
『…?』
「ハルカの爆弾のおかげで陣形も所属もバラバラに私達を包囲しているのが風紀委員の現状。
それを纏めて秩序立てて動かす事が出来ていたのは、アコ、君という司令塔があってこそだ」
『わざと、一人になったというわけですか』
「その通り。こっちに注意を向けさせることで、結果的に他への指揮を妨害する事こそが、真の目的」
ふふふっとアコは憤りの混じった笑い声を立てる。
『してやられてしまったわけですね。"シャーレ"の力は予想を遥かに上回っていましたか』
既に、包囲網には攻撃に全神経を集中したアビドスと便利屋によって、小さいながらも突破口が開かれていた。
「どうにか突破…って」
「嘘…」
殿を努め、息の上がったアルとセリカも風紀委員の包囲網を抜ける事に成功したが、目の前の景色に愕然とする。
「まだいるの…?」
「これはもうアコの権限で動かせる兵力を越えてる…まさかこの襲撃、アコの独断じゃなくて…」
「風紀委員長が?」
カヨコの言に、ムツキが返した反応に、アルは目を白黒させた。
「えっ!?ヒナが来るの?!無理無理無理!逃げるわよ早く!」
「いやそうは言ってない…落ち着いて社長」
はあとため息をつくカヨコ。
しかし、ルルーシュとしてもそれは感じていた。
余りに兵力が大きすぎる。
幾らNo.2と言える行政官でもこんな大規模な軍事作戦を展開出来るものなのか、と。
その上、更なる援軍。
万事休すか…。どうにか突破口を。
ハルカの爆弾はもう殆ど残っていない。
第一、銃弾も足りていない。
傭兵共はもう利用する事は出来ないし。
ドローンもほぼない。
だというのに、まだ予備兵力があるとは…。
くっ。何度風紀委員を跳ね除けても次の戦力がやって来る。
これでは同じ事の繰り返しだ。
─ギアスを使うか…?いや、余りにリスクが大きすぎる。第一、"先生"の役割を考えるなら可能な限り避けるべきだろう。
少なくとも、万一この力の事が知られれば、先生としての立場、その全てがおしまいだ。
それならばいっそ俺が一旦投降して移送中にでも奇襲をかけてもらうよう手引きする?
いや、この状況で俺の身柄だけで妥協する理由がない。
便利屋の拘束まで戦いは続けるだろう。
『ふふっ…これ以上はさすがに、委員長に知られてしまったらイオリと仲良く反省文ですね』
ルルーシュ達はこの点に於いて見誤っていたと言えるのかもしれない。
風紀委員長の預かり知らぬところでの独断専行ではあった。
権限を越えているほどの動員も、彼女自身の手腕によるところであり、そして、バレたら不味い行動でもあったのだ。
『では、三度目の正直と行きましょうか。風紀委員会、攻撃を─』
アコが命令を出す直前、割入る形で彼女宛の通信が入った。
『アコ』
『…え?ヒ、ヒ、ヒナ委員長?!』
アコは明らかに狼狽した様子となる。
その狼狽えぶりはルルーシュ達に通信が筒抜けなままであったことからも分かる。
「委員長、って、じゃああれが風紀委員のトップってこと?!」
「そのようだな」
ルルーシュは一先ず時間を稼げそうなことに安堵しつつ、戦場の状況把握に努める。
次なる一手を、彼が諦めることはない。
同時に、事の成り行きも見守っていた。
『い、委員長がどうしてこんな時間に?』
『アコ、今どこ?』
『わ、私ですか?私は…その…えっと…げ、ゲヘナ近郊の市内の辺りです!風紀委員メンバーとパトロールを…』
「思いっきり嘘じゃん!」
「行政官の独断専行だったみたいですね…」
セリカは怒りを顕にし、ノノミが呆れたような真面で言った。
『そ、それより委員長はどうしてこのような時間に?出張中と…』
『さっき帰ってきた』
『そ、そうでしたか…!その、私今直ぐに迅速に処理せねばならない用事がありまして…後ほどまたご連絡致します!今は立て込んでおりまして…』
『立て込んでる?パトロール中なのに珍しい、何かあったの?』
戦場を見渡していたルルーシュははた、と包囲網の一角を形成していた風紀委員達が次々と背後を振り返るや否や、ハサミで斬られた紙のように真っ直ぐ二つに割れていっている事に気が付いた。
何だ?あそこで何が…。
!………まさか──。
『え?そ、その…それは…』
「他の学園の自治区で、委員会のメンバーを独断で運用しないといけないことが?」
『え…?』
声の聞こえ方に違和感を感じたのだろう。
アコの表情が一瞬止まる。
そして、風紀委員会メンバーの影から現れた彼女の姿に、アコは顔を一瞬にして青くさせた。
「アコ、この状況、説明してもらう」
ゲヘナ学園風紀委員長、空崎ヒナは、そう抑揚のない声と鋭い眼光で詰め寄るのだった。
今回も読んで頂きありがとうございます。
次回更新日は変わらず未定です。
次回もまたどうぞよろしくお願い致します。