コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐   作:ライト鯖

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Archive-024 砂漠の今昔

『ここから少し進めばもうアビドス砂漠…砂漠化が進む前から元々砂漠だったエリアです』

 

 

最早、利用者等殆ど存在しない寂れた駅へと降り立ったアビドス高校の一行。

学校にて情報収集とサポートを担うアヤネの通信を聞き、ルルーシュが目を奥に向けると、砂に埋もれた市街地の向こう、地平の先に大量の砂が無限の海となり、広がり続ける遠景が目に飛び込んできた。

 

『普段から壊れたドローンや警備ロボ等が徘徊している危険な場所なのですが…』

「とは言っても、偵察には目立つ車両で踏み込むわけにもいかないしな」

 

仕方がない、とルルーシュはため息を付く。

 

「先生、倒れないでね」

「……善処する」

 

否定する事も出来ず、ルルーシュはふいと目を逸らしながらシロコの冗談とも付かないセリフに頷いてみせた。

 

『それでは…カイザーコーポレーションがアビドス砂漠で何を企んでいるのか、実際に行って確かめることにしましょう』

「…けどさ、アヤネちゃん。よく考えるとその情報をくれたのってゲヘナの風紀委員長でしょ。それってなんかおかしくない?」

 

武器のチェックを終えたセリカだったが、釈然としない様子でそう尋ねる。

 

「幾ら風紀委員長とは言え、他の学園の生徒がうちの自治区の事をそこまで知ってるわけ?」

『うーん…推測に過ぎないけど、ゲヘナの風紀委員会はかなり情報収集能力に長けてるって聞いたことが…

だから、アビドスみたいな小規模な学校では考えられないような情報網を持ってるとか…?』

「ま、そういうこともあるのかもね〜」

 

アヤネは余り自信はなさそうであったが、それでも、彼女自身多くの引っかかりを覚えているのだろう、ゆっくりと考えながら言葉を続けていく。

 

『委員長という立場でしたら、風紀委員会が把握している情報は全て集約されているでしょうし…

それにあの時、あちらの行政官が確か…』

 

"他の学園自治区の付近なのだから、きちんとその辺り注意するのは当然でしょう?"

 

『行政官は"他の自治区の付近なのだから"と言っていました』

「そうだな。自治区の"中"ではなく"付近"と言っていた」

「そ、そうだっけ?!」

『それに、"まだ違法行為とは言い切れない"とも言っていました』

 

あの時は、とアヤネは伏し目がちになる。

 

『苦しい言い訳かと思っていましたが…もしかしたら向こうは本当に不法侵入と意図はなかったのかもしれません』

「どうだかな。恐らく、風紀委員会はアビドスの土地の事情も把握はしていたのだろう」

 

しかし、とルルーシュは言う。

 

「カイザーコーポレーションは自治区として認可されているわけではない。単なる私企業だ。

そいつらが土地の権利を有しているからと、形式上、アビドスがその土地の、自治区の主権者であることには変わりはない」

 

つまり、とルルーシュは続ける。

 

「実質的に無政府地帯である、というのを建前に侵犯行為を正統化したに過ぎないんじゃないかな。

そうやって言い訳を用意した上で、不法侵入を試みた、というところだろう」

 

シロコもルルーシュの言に頷く。

 

「あの時の風紀委員会の言動には明らかに侵犯行為と取れるものが多々あった。

あそこがアビドスの所有だったとかはそんなに重要じゃない。

それに、あのアコの行為は明確な敵対行為。

それだけで充分。あの時のアヤネの判断は間違ってない」

『…はい。そうですね。ありがとうございます。シロコ先輩、先生…。ですが…』

『あの行政官は私達の知らなかった事実を知って

いた──』

「十中八九そうだろうな。つまり、ヒナは更に多くを知っていてもおかしくはない」

 

インテリジェンス能力は、シャーレとしてもまだまだ未整備。

ここの強化は火急だな。情報の不足は致命を生む。

相手よりもモノを知らないということは、それだけで勝敗を決し得る。勿論、敗北の側に。

 

「ま、行ってみたらそれも含めて色々分かるでしょ。セリカちゃんの言ってた通り、直接この目で確かめれば良いんだしさ〜」

 

ホシノが頭を悩ませるアヤネとルルーシュに言い、出発を促すのだった。

 

ついに、最後の人工物、信号機か標識かをその天辺に住まわせていたのだろう腐食し、砂に覆われたポールを通り過ぎた一行は、果ての見えない黄色い海、アビドス砂漠に臨んでいた。

 

「ここから先が…捨てられた砂漠…」

「ここから先は私も初めてです…」

 

ノノミやセリカは、果てしない砂地に臆しているようだったが、ホシノは相変わらずの様子のままだった。

 

「いやあ〜久しぶりだねえ。この景色も」

「先輩はここに来たことあるの?」

「うん。前に生徒会の仕事で何度かね〜」

 

地平を指さしホシノは言う。

 

「もう少し進めば、なんとそこにはかつて砂祭りが開催されていたオアシスが!」

「え、オアシス?こんなところに?」

「うん。ま、今はもう全部干上がっちゃってるんだけどねえ〜。

元々はそんじょそこらの湖より大きくて、船を浮かべられる位だったとか」

 

ホシノはま、私も実際に見たことはないんだけど〜。と苦笑する。

 

「砂祭り…私も聞いたことある。アビドスでは有名なお祭りですごい数の人が集まるって」

「そうそう。別の学校からもお祭りみたさに人が来るくらいだったらしいからね。ま、砂漠化が始まる何十年も前のことだけど」

「へえ。良いじゃないか。オアシスはなくとも、祭りなら開けるかもな」

「こんな砂埃だらけになっちゃったとこじゃ無理じゃないかな〜。それに、オアシスがなきゃ暑すぎるし」

 

まあな、とルルーシュは微笑した。

 

「だが、もし借金の問題をどうにか出来て、砂祭りにリソースを振り向ければ、実現不可能ではないだろう。

観光客も呼び込めるだろうし」

「先生って意外とロマンチストなんだね〜。5人じゃどう頑張っても無理だよ〜」

「でも、楽しそうですね★夢があります!」

「ん。私もそう思う」

「ありゃ。先生。可愛い後輩達に変なこと吹き込んじゃダメだよ」

 

ルルーシュはフッと笑い、ホシノに切り返す。

 

「そういう君は意外とリアリストなんだな?」

「うへ。皆の先輩としてしっかりしなくちゃだからね〜」

「…どの口が…」

 

セリカが呆れたように言い、アヤネも『あはは』と苦笑を漏らす。

 

「ところで、アヤネちゃん。目的地はまだ遠そう?」

『…あ、はい。えっと…ゲヘナの風紀委員長が言っていたセクターまではもう少しかかりそうです。とりあえず引き続き警戒を続けましょう』

 

更に砂漠を進むこと数時間─。

 

『皆さん!前方に何かあります!砂埃でまだはっきりとは見えないのですが…巨大な…街?…いえ、工場…或いは駐屯地のようなものが…とにかくすごく巨大な施設です!』

 

アヤネが先行させていたドローンから砂埃の中から得られた断片情報を報告した。

 

「…こんなところに施設?何かの間違いじゃなくて?今のところ、こっちからは干からびたオアシスしか見えないけど…」

 

さすがにホシノも耳を疑ったようで、遠目にアヤネの言う方向を目を細めてみるも、やはりまだ何も見えないようだった。

 

「とりあえず、肉眼で確認可能な場所まで進もうか」

 

そして、確かに施設は存在した。

恐らく巨大な、"軍事施設"であると皆一目で理解した。

 

「この有刺鉄線、優に数キロ先までありそう」

 

防壁、有刺鉄線、そして物々しい雰囲気を纏った警備。

ひっそりと様子を伺う限り、敷地内にも戦車や兵器類の存在を確認出来てもいた。

 

「こんなの…昔はなかった…」

 

ホシノはその巨大な施設を睨み、低く呟く。

 

一行が、更に施設への距離を縮めると、彼女達の存在に気が付いた警護と思わしき武装兵が警告もなしに射撃して来た。

 

「うわっ?!なになに!?」

 

ゾロゾロとオートマタの兵士達が「侵入者だ!」「捕らえろ!」だとかを叫びながら姿を現し、アビドス生達の方へと群がり始めた。

 

『前方から正体不明の兵力が攻撃を仕掛けてきています!』

「よく分からないけど、歓迎の挨拶なら返して上げたほうが良さそうだね?」

 

ホシノ達は銃を構え、備える。

 

「向こうから撃ってきた以上、やるしかない、か…フォーメーションF!」

 

向かってくる武装勢力との戦闘が始まった。

前衛となっていたオートマタ兵達だけでなく、生徒らしき出で立ちの兵等、多種多様な兵士が次々に現れ、アビドス一行を狙う。

 

「…シロコ!10時の方角に敵増援!先制だ!」

「セリカはそこで待機。ノノミの斉射に合わせて前進を開始しろ」

「ホシノは1時の方向へ強行!」

 

だが、次々に現れる敵兵達も、ルルーシュの指揮と、アビドス生の猛攻の前に数を減らしていっていた。

 

しかし、頑強だな。これまでの敵とは…。

 

「うへ〜。結局なんなのこいつら」

「そんなに強くないけど、邪魔っていうか、めんどくさいっていうか…今まで戦ってきた奴等の中でも一際厄介って感じ」

 

そうか。こいつらが。

 

ルルーシュは既にこの施設の持ち主を推測していたが、そこから導き出される結論として、彼等の正体も即座に察していた。

 

「専門的な訓練を受けているとこうも違ってくるんだな」

「…先生?何か分かったの?」

「ああ。恐らくこいつらは…いや、ここは…」

 

丁度そのタイミングでアヤネが通信で割入った。

 

『施設に何らかのマークを発見しました!』

 

アヤネの送ってきた紋様を見るまでもなく、ルルーシュはその正体を口にしていた。

そして、もう一人、紋様を見て理解した者も。

 

「「カイザーPMC…」」

『!?…はい。先生とホシノ先輩のおっしゃる通りです』

「カイザー…?こいつらもカイザーコーポレーションってこと?」

「ああ。カイザーの傭兵集団。民間軍事会社と言う奴だ」

「ぐ、軍事…?」

『ヘルメット団の様なチンピラとはレベルが違います。文字通り、先生の仰ったように、専門的な訓練を受け、組織化されたプロの…軍隊のようなものです!』

「軍隊ぃ?!」

 

セリカがすっ頓狂な声を上げる。

 

「退学した生徒や不良生徒達を集めて企業が私設兵として雇っているという噂がありましたが、まさか…」

 

ノノミは先程まで戦っていた兵達の多様を思い返しながら、そう話した。

 

そこに、けたたましく辺りに警報音が響く。

 

「警報…?これ、なんだか大事になりそうな…」

「…これは、ヘリの音?」

「それにこの地面の揺れ、恐らく戦車…」

『だ、大規模な兵力が接近中!こちらを包囲に来ています!』

 

ちっ。まさかここまで頑強な軍事施設が建てられているとは。

抵抗せねばやられていた。だから、戦わざるを得なかった、が…。

これは、とんだ深みにはまってしまったのかもしれんな。

 

「包囲が完成する前にここを脱出する!全員、行くぞ!アヤネ!敵戦力の配置を可能な限りドローンから分析を頼む!」

『はいっ…!』

「─フォーメーションA!」

 

全員が一塊となり、包囲せんと距離を縮め襲い来るカイザーPMC部隊へと向かう。

 

『先生!今先生達から見て正面の兵力が丁度僅かですが戦力が薄いです!』

「よし。ありがとう。聞いたな皆。正面突破だ!」

「了解!」

 

この戦力差。イレギュラーも期待出来ない上、何の仕込みもない砂漠だ。

彼女達の突破力頼みしかないのが口惜しいな。

 

「…くっ。ホシノ!左前方の敵戦車に向けて先行!シロコは1時の方向にいる敵小隊に向けて手榴弾を投擲」

 

どうにかPMCの猛攻を掻い潜り、どうにか隙をつき、施設を囲んでいた兵達の包囲を逃れる事に成功する。

しかし、背後からは、当然、兵達が追ってきており、息付く暇もない。

 

「キリが無いなあこれは…」

『…せい?聞こえますか?…包囲網をぬけ…また…』

 

ジャミングが仕掛けられている?

くそっ。アヤネの戦況把握による補助がなくてはさらに厳しくなる。

シッテムの箱があるとは言ってもこのままでは限界が…。

 

『…が…接近…』

 

接近?まさか、まだ…!

 

ルルーシュの予感は当たってしまった。

更なるPMCの増援が、ルルーシュ達を挟み撃ちにするようにして、迫ってきていたのだ。

 

「…絶対絶命…?」

 

シロコも肩で息をしながらそう漏らす。

 

「また包囲されちゃったかー…」

 

くそっ。どうにか彼女達だけでも逃がせれば、後はギアスでどうとでも出来るのだが。

どう逃がすべきか。交渉は通じるのか?

 

ルルーシュは歯が砕けんばかりに噛み締め、内に納めきれない憤りを漏出させてしまっていた。

 

他に策はないか。これは避けたかったが──。

 

生徒達の後ろに立つルルーシュは左目にギアスの紋様(王の証)を浮かび上がらせていた。

 

しかし、PMC達の群れが割れて一人の人影が向かってくる事と、攻撃が止んでいる事にも気付き、ルルーシュは切り札(ギアス)を再び封じる。

 

そして、いかにもという恰幅が良い、というよりは、威圧感を他者に与えるような、隆々とした風体の、ブランド物だろうスーツを着こなすロボット型市民が一人、ルルーシュ達の前に現れた。

 

「侵入者とは聞いていたが…アビドスだったとはな」

「な、何よこいつ…」

 

警戒心を顕にするセリカ。

彼女のみならず、全員が彼の姿を睨みつけていた。

 

あいつは確か…。

 

ホシノだけは、別の理由からであったが。

 

「まさかここに来るとは思っていなかったが…まあ良い」

 

あの時、奴と一緒にいた…。

 

「勝手に人の私有地に入り、暴れたことによる被害額…君達の学校の借金に加えても良いのだが、まあ、大して額は変わらないな…」

「あんたは…あの時の…」

 

ホシノの存在を認識した男は、一瞬考えるように「ん?」と唸ってから、思い出したと口を開く。

 

「確か、例の"ゲマトリア"が狙っていた生徒会長…いや、副会長だったか?」

 

ふむ。と男は髭などあろうはずもない金属性の顎を撫で、下卑な笑みを浮かべた。

 

「面白いアイデアが浮かんだ。ヘルメット団や便利屋をけしかけるよりも良さそうだ」

「便利屋…何を言っているの?」

「貴方は…誰なんですか?」

 

んん?と男は首を傾げてから、呆れたように言う。

 

「…まさか私のことを知らないとは。君達ならよく知っている相手だと思うがね」

 

私は、と男は傲慢さの混じる自信を滲ませながら、名乗るのだった。

 

「カイザーコーポレーションの理事を努めている者だ。

そして。君たちアビドス高等学校が借金をしている相手でもある」

「…!!」

 

セリカ達は驚きを隠せなかったようだった。

 

なるほど。こいつが…。

アビドスの債権者にして、土地の所有者、という訳か。

カイザー幹部についてはある程度調べていたが、ここまでの上位者を実際に目にするのは初めてだな。

 

ルルーシュの観察による全身への視線に気付いていないのか、理事は全く変わることのない態度で、そして、変化のない横柄さを醸し出しながら、アビドス生達に、そして、最後にホシノ一人へ視線を向け直してから、口にするのだった。

 

「では、古くから続くこの借金について──

話し合いでもするとしようか」

 





今回も読んで頂きありがとうございます。
次回更新日は未定のままですが、出来るだけ早く出来るよう頑張りたいと思います。

次回もよろしくお願い致します。
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