コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐   作:ライト鯖

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Archive-029 守りたいもの、学び得たもの

 

 

─カイザーコンストラクション本社。

 

明かりも付けないままに、ゴソゴソと書類を漁る影が一つ。

目当ての資料を探して、あちらこちらの過去の記録を集め、ページを捲る。

 

やがて、目的の資料が見当たり、彼はそれを写真に収め、送る。

 

満足そうに頷き、さて、資料を片付けようかというところで、部屋の扉が乱暴に開け放たれ、同時に部屋の電灯、全てが灯った。

 

「何をしているのかな?部長」

 

カイザーコンストラクションの常務が、二人の護衛を脇に固め、影、今や電灯によってその姿を映し出された男を睨みつけていた。

 

「ああ、常務でしたか。何って、資料を少し調べていただけですよ」

 

何事も無かったかのように語る、"部長"は、何処か虚ろな表情だった。

 

「資料をね…。で、誰に送ったんだ?」

「………」

「誰に送った、と聞いている」

「命令されましたので」

「だから、誰にだ!」

「情報を送るよう、命じられましたので」

「…ふざけているのか?」

 

常務は苛立った様子で部長に詰め寄る。

 

「答えろ!何の情報を、誰に送った!…この裏切り者が!」

「誓って裏切ってなどいません。常務。

私はただ、送るように言われた情報を送っただけです」

「警備!こいつをひっ捕らえろ!」

 

連れてきていた護衛に命じ、部長を拘束させる。

 

「お待ちください常務。私はただ命じられたことをしていただけです」

「もうその口を開くな!!おい!さっさと連れて行け!」

 

くそっ、と常務は舌打ちをしながら乱雑に散らかされた書類の山に目を向ける。

 

「一体何を流された……」

 

 

─ルルーシュは、カイザーコンストラクションに潜ませていた駒からの連絡が途絶えた事に、シャーレを出る前に気付いていた。

 

「さすがにバレるか。…まあ良い。

今必要なカードは全て手に入ったんだ」

 

落ち着いたらまた誰かしらをギアスで利用すれば良い。

そんな風に考えながら、件の部長が最後に送ってきた資料を見、ほくそ笑むのだった。

 

 

それよりも、と思考をビルを出るのと同時に切り替える。

 

戦力をどう確保するかだな。

便利屋には勿論協力して欲しい所だが、それだけではまだ不安が残る。

 

傭兵を雇うか?いや、それも必要だが、カイザーPMCと戦って勝てる傭兵がどの程度いるか、だな。

数合わせには雇うが、まだ中核戦力が足りない。

 

そうなると──。

 

ルルーシュの足は自然、一つの学園へと向いていた。

 

 

「はあ?風紀委員長に会いたい?ゲヘナの風紀委員長にそう簡単に会えると思ってるのか?」

 

ルルーシュはゲヘナ学園に来ていた。

ヒナを探していた所で出くわした風紀委員の銀鏡イオリに頼むも、そう断られたところであった。

 

「そこを何とかお願い出来ないか?」

「無理なもんは無理だって。

──そうだな。土下座して私の足でも舐めたら…」

 

ルルーシュは──土下座することも、足を舐めることも無く、そうか。と小さく呟き、わざとらしくため息を付いた。

 

「残念だ。正規の手順を踏むとするよ」

「ん?…正規の手順?」

「ああ。ゲヘナ学園の窓口から、風紀委員の上部組織に伝えてもらって、そこからヒナとの会談を申し込むとしよう」

「あ、そ」

 

興が削がれた様に興味を失うイオリだったが、数秒の後、「待て」とルルーシュに目を戻す。

 

「上部組織って言ったか?」

「当然、正規の手順であればそうなるだろう?

そう、万魔殿(パンデモニウムソサエティ)と言ったかな?」

「……あんた、分かって言ってるよな?」

「怖いな。一体何の話だい?」

 

ルルーシュはわざとらしくとぼけてみせる。

勿論彼は分かっていた。

風紀委員と万魔殿の確執を。

そして、万魔殿が、というより、万魔殿のトップが風紀委員に嫌がらせをすることの多い事情を。

 

「ぐ…!」

 

ルルーシュが恐らく知っていることを悟りつつも、だからといって堂々と言って良いようなことでも無い。

イオリは言葉に窮し、ルルーシュを睨む。

 

「き、汚いぞ!」

「さてね。しかし、ヒナに簡単に会えないと言うのだから、そうするしかあるまい」

「分かった!分かったよ!連絡取ってやるから!」

「ありがとう。助かるよ」

 

釈然としないイオリが携帯を取り出した時、丁度、二人の視覚の外から声がかかる。

 

「イオリ。校門で騒ぎって聞いたのだけれど何が──」

 

声に気付き、目を動かしたルルーシュは、丁度彼の存在に気付いたヒナと目線が合った。

 

「先生?どうしたの。こんなところで。アビドスはもう良いのかしら」

「ヒナ!僥倖だ。実は頼みがあって来たんだ」

「へえ。頼み」

 

ヒナは、軽く息を吐き、肩を揺らす。

 

「私達の公務を邪魔したのに、そっちはお願いをするの?

…確かに、あなた達から見ればそうじゃなかったのかもしれないけれど、あなたが言ったことよ。先生。

私達にとってみれば、問題はあったけれど形式上は風紀委員の公務だった」

 

そして、と彼女は言う。

 

「あなたはそれを妨害したし、不当だと糾弾した。

それなのに、私達を頼るのね。

少し、都合が良すぎないかしら」

「………返す言葉もない」

 

ルルーシュはどうするべきかを知っていた。

分かっていた。

だが、それでもなお、彼のプライドはそれの邪魔をする。

 

しかし──。

 

"俺は今、生まれて初めて人に頭を下げている。

恥も外聞もない、これ以上何もいらない、ギアスだって!"

 

今思うと、アレは確かに謝罪とは程遠い姿だったのだろう。

頭を下げると言っておきながら、俺は──。

 

ああ、そうだよな。スザク。

お前は俺の頭を踏みつけにしたのも当然だったのだろう。

 

そして──。

 

 

"事前通達無しでの無断兵力運用。そして、他校自治区での武力行使。このことについては、私、空崎ヒナより、ゲヘナ学園風紀委員長として、アビドスの対策委員会に対して公式に謝罪する"

 

自らの権威もプライドも、拘泥することなく礼節として、或いは、責務として、組織の長である事の責任を重んじ、頭を下げた目の前の彼女。

 

彼女達の戦力は欲しい。

便利屋、傭兵。これだけでは不足するカード。

圧倒的な制圧力、火力。

奴等を倒すための力。

ホシノを助け出すための条件。

 

「…あの時の非礼を詫びる。

そして、改めてお願いしたい。どうか、力を貸して欲しい」

 

ルルーシュは生まれて始めて、自発的に、真の意味で、頭を下げた。

 

「……」

 

ヒナの顔は、ルルーシュには見えていなかったが、彼女は驚いたように目を見張っていた。

 

「意外。…正直、プライドが高そうに思えてたから」

 

分かったわ、とヒナの呟き。

 

「顔を上げてちょうだい。先生。

自分の為じゃなく、生徒の為に頭を下げられる人は初めて。

言ってみて、私に何をして欲しいの?」

「ありがとう。恩に着るよ。空崎ヒナ委員長」

「…呼び方は前のままで良いわ」

「そうか。では、頼みたいことと言うのは──」

 

 

─時を同じくして、トリニティ総合学園。

 

 

ティーパーティー、トリニティ総合学園の各派閥のトップが集い、"お茶会"の名の下に会談を行う形式で作られる、トリニティの生徒会組織。

 

そのお茶会の行われる、陽光の気持ちよく差し込む広々とした、大理石によるシンプルながら豪奢な装飾に包まれたテラスの一角にて、二人の少女が話し込んでいた。

 

「なるほど。ヒフミさんが仰っていることはよく分かりました。

その先生の言葉が本当だとすると、このまま聞き流す訳には行かなさそうです」

 

チラリとホワイトゴールドの整えられたロングヘアを揺らしながら、少女はテラスの向こうに見下されるトリニティ総合学園の景色を見る。

 

「例の条約も目前に迫っていますし、今は下手に動くわけには行かないのですが…」

「しかし、そのカイザーPMCという企業の存在が、我が校の生徒達にも良くない影響を及ぼしそうなことは確かですね」

 

正面に座るヒフミは、小さくのどを鳴らし、次の言葉を待つ。

 

「今回はちょっとした例外ということで、何か考えた方が良さそうです」

「あ、ありがとうございます。ナギサ様…」

 

ナギサと呼ばれた彼女、ティーパーティーの"桐藤ナギサ"は、ニコリと微笑んでヒフミの礼に応えてから、「そうですね…」と続ける。

 

「確か丁度、牽引式榴弾砲を扱う屋外授業の予定があったはずです。

…折角ですし、明日はハイキングなんてどうでしょう」

「えっと…牽引式榴弾砲というと…L118の…?」

「はい。他ならぬヒフミさんのことですし、全てお任せします。細かいところは、私の方で」

 

恐縮するヒフミに、ふふっ、とナギサは微笑する。

 

「愛は巡るもの。…ヒフミさんがいつか私にお返ししてくれる時を、楽しみにしていますね」

「あ、あう…」

「それにきっと…いいえ、間違いなく、シャーレには借りを作っておいた方が良さそうですしね」

 

 

─そして、アビドス某所。

 

「よし」

 

満足げな声を上げ、柴関ラーメンの大将は自前の、完成させたばかりの屋台を見上げる。

 

「うん。こんなもんかな」

「お〜。屋台も良い感じじゃん」

 

便利屋のムツキはやって来るなり、屋台の出来栄えに感嘆を口にした。

 

「元々屋台から始めたこともあってな。懐かしい気分だよ」

「わ、私のせいでお店が…し、死にましょうか?死んでも良いですか?死にますっ!」

 

ハルカがまたも一人で過激な懺悔をするが、ムツキによって「まあまあ」と軽くいなされる。

 

「それにしても辞めるって聞いてたけど、またお店を開くことにしてくれて良かったよ〜」

「ああ。ちょっと前にどっかの誰かさんがお店の前にお金を置いていってくれたこともあったからな」

 

本当なら、と大将は看板を見上げる。

 

「引退してゆっくりしようかと思ってたんだが、営業して欲しいと言われちゃ仕方ない」

 

十数分後、ラーメンのどんぶり四つが便利屋の面々の前に其々、ドン!と机を軽く揺らしながら提供された。

 

「580円の柴関ラーメン4杯、お待ち!」

 

それは、相も変わらず、塔のように高く聳え立つトッピングのされたラーメンだった。

 

「これ、また量を間違えてる気が…?」

「あはっ。まあ、良いじゃん良いじゃーん」

 

一同が声を揃えて「いただきまーす!」とラーメンにありつく様を、大将は屋台の出来を見たときよりも満足そうに、何度も頷くのだった。

 

「ここにいたのか。連絡しても出ないと思ったが、食事中だったんだな」

 

丁度食べ終わるか、という頃に、屋台へとルルーシュもやって来た。

 

「おや。先生じゃないかい」

「やあ、大将。元気そうで何よりですよ。もうすっかり?」

「ああ、おかげさまでな。元気一杯だ」

「それは良かった」

 

ニコリと笑ってからルルーシュはアルへと目を向ける。

 

「依頼だ。アル」

「昨日に引き続いて、ということかしら?」

「そうだな。今回はコチラから出向いて、ぶっ壊してやるのさ。それに君達の力が欲しい」

 

勿論、とルルーシュは小切手をアルへと見せる。

 

「報酬ははずむ」

「なっ…!」

「ホントに1千万出すんだ…」

 

0の数に驚きを隠せないムツキ達。

アルだけは、平静を装っていた。

 

「フフッ。…依頼料は不要よ。先生」

「さすがにそう何度もただ働きさせるわけには行かない」

「依頼料なんて、このラーメンが味わえただけで充分よ」

 

フッと笑ってみせるアル。

 

カヨコは軽いため息を付きつつ、ムツキは目をキラキラとさせ、ハルカは感動の眼差しでアルを見つめた。

 

「さ、さすがアル様です!多くは語らず、一杯のラーメンで地獄へと赴くその姿、正にハードボイルドです!

私も真のアウトローになれるよう頑張ります!

今度こそ、ちゃんと全部消してみせます!」

「ふふっ。さあ、私と一緒に地獄の底まで付いてくる覚悟は出来たかしら?」

 

アルは余裕綽々といった様相で構え、そう皆を見回したが、内心は全く異なる姿であった。

 

言っっちゃったーーー!!!

 

ラーメン食べたら帰るつもりだったのに、思わずカッコ良い台詞をーー!?!?

 

だ、だって先生は何かクールな感じでぽんと依頼をしてくれたし?

今までカッコ良い所全然見せれてなかったし…?

 

け、けど、もう今更「やっぱ無しで」とか、そうでなくても「依頼料は欲しい」とか言えない雰囲気だし!?

 

今から逃げるって手は…うう…で、でも…。

 

「ありがとう。アル。心から恩に着るよ。

この借りは何れ必ず」

 

めっちゃ真っ直ぐ見てくる!!

期待されちゃってる…!

 

でも今回はマーケットガードなんかじゃなくて、カイザーPMC…勝敗なんて目に見えて…。

 

どうしよう、と心中狼狽するアルを知ってか知らずか、ルルーシュは「勝算はある」と断言してみせた。

そして、大将にことわってから、書類を数枚、机へ広げてみせる。

 

「これが作戦のパターンだ。君達にはこの3つのどれかを担当してもらいたい」

 

書類を覗き込んだカヨコはそうは言っても、と難色を示す。

 

「戦車やヘリなんて用意出来るの?」

「無論、既に手配済みだ」

 

アルには作戦群を読み終え、一つの感想が浮かんでいた。

 

あれ。本当に勝てそう…?

作戦を見る限り勝算はめっちゃある。

 

ふ、フフとアルは怪しい笑い声を漏らし、当然!と元気よく口を開くのだった。

 

「先生のお望みの配置で良いわよ!どれが本命かしら?」

「悪いな。では──」

「了解したわ。私達便利屋68に任せなさい!」 

 

勝算のあることを知り、アルはむしろ、それならば、と堂々と格好を付けることにしたようだ。

 

「さあ、皆!行くわよ!

依頼には応えてみせるわ。先生」

 

ルルーシュはアルの不敵な笑みに、同じく自信を口角へ覗かせるのだった。

 

──翌朝。

 

「ん。準備完了」

 

アビドス高校前に集合した対策委員会達。

そこにルルーシュも合流していた。

 

「アビドスの古い地図も最新の状態に更新しておきました。

先生からいただいた情報によると、ホシノ先輩はカイザーPMCの第51区の中央辺りにいるはずです」

 

対策委員会の皆は、顔を見合わせ、頷き合う。

 

「アヤネ、ナビゲートは任せても?」

「はい!一番安全なルートで案内します!行きましょう!」

 

ルルーシュも頷き、そして、高らかに宣するのだった。

 

「では、ホシノ奪還…オペレーション"ハルマキス"を発動する!」

 

 







今回も読んで頂きありがとうございます。
次回更新日も、未定ですが、またどうぞよろしくお願い致します。
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