コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐   作:ライト鯖

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Archive-003 奪還のシャーレ

 

 

「後少しよ!」

 

周囲に居座るスケバン達が次々、ルルーシュの指揮と彼女達の活躍によって蹴散らされていく。

 

「ハスミは2時の方向に発砲!

「…よし!残りはそこの集団だけだ!スズミ!」

「了解!…っ!?」

 

一瞬の悪寒。

咄嗟に身をかがめたスズミの頭上を、一発の銃弾が掠め、少し離れた地面へと衝突した。

まるで、隕石が落下した地点をミニチュアにしたような弾痕が現れる。

 

「騒動の中心人物を発見!対処します!」

 

ハスミが上方の歩道橋を指さしてから、銃を構える。

 

「フフッ。連邦生徒会の子犬たちが現れましたか。お可愛らしいこと。」

 

ワカモは歩道橋からひらりと舞い降り、殆ど間を置かずに、発砲した。

 

「!…」

 

ハスミが先んじて察知したことで辛うじて髪を掠めるに留まったが、かなりの高威力であることは明らかだった。

 

「他の不良とはわけが違いそうだな。…彼女がワカモか?。まあ良い。どうにせよ、突破せねば目的地にはたどり着けない。

スズミ!"さっきの"を奴に!」

 

スズミはそれで理解し、懐から取り出した物のピンを抜く。

他の者達も同様で、スズミの投擲に合わせて目を閉じた。

 

「!…閃光弾…」

「よし!隙が出来たぞ!全員、斉射!」

 

銃弾の雨あられ。

ワカモは鉛のシャワーに囲まれ、全てを捌くことも躱し切ることも出来ず、幾らかをもろに身体で受け止める形となった。

 

「フフッ…本当に楽しめそうですね」

 

ワカモが危機的状況に見える中でも楽しげに笑う姿にルルーシュが気付いた時、その背後からゾロゾロと動く影が向かって来ている様子をも視認した。

 

「フォーメーションB!」

 

ここに至るまでの間に幾度か繰り返してきた戦闘と、その合間の移動中に指示をより簡便に行えるよう幾つかのフォーメーションパターンを決めていたのだ。

事前に決めていた通りに、其々が素早く動き、位置に付く。

 

「ユウカ。左翼のスケバン達に向けて撃て。

スズミは右翼に向けて閃光弾の投擲。タイミングは任せる。

ハスミはワカモと思わしき人物の足止め。チナツはそのカバーに回ってくれ」

「あら、学園も違う人達が随分統率の取れた動きを…」

 

閃光弾に怯んだスケバンに、スズミが突貫をかけ、ユウカは左翼側のスケバンをルルーシュの指揮に従い上手く翻弄する。

 

「ハスミ!奴の正面右を狙って撃つんだ」

「はい」

 

ワカモは左側に身を翻し、ハスミの狙撃をいなす。

 

「よし。チナツ!」

 

追撃。

動いた先に更に銃弾が来たワカモは、防御が間に合わず被弾。

 

「これは…一旦…」

 

ワカモはぴょんぴょんと軽快に車や信号機を伝って歩道橋まで戻った。

 

「私はここまで、後は任せます」

 

スケバン達に言い残し、高さを利用してシャーレの方向へと退いていった。

 

「逃げられてるじゃない!追うわよ!」

「いえ、あくまで我々の目標はシャーレの奪還。このままシャーレまで前進するべきではないでしょうか」

「…そう、そうね。あいつを追うのは私達の役目じゃないってことね」

「罠かもしれんしませんし」  

「ハスミとチナツの言う通りだ。撤退したなら好都合。仮にシャーレ付近にいるのなら、同じこと。そうであるなら、優先するべきは戦略目標だ」

 

「そう簡単にここを抜けられると思うなよ?!」

 

ルルーシュ達の会話を聞きつけたスケバン達は自分達を負かすこと前提の会話に激高した様子を見せる。

しかし、当然ルルーシュ達が動じることはない。

 

「ハスミは信号機を、ユウカは11時方向の炎上している車をそれぞれ射撃」

 

信号機によって足止めされ、前方で発生した車体の爆発によってスケバン達の左翼集団は混乱する。

その上、炎で視界も遮られる格好となった。

 

「スズミ!」

 

右翼側を閃光弾で足止めし、そのままスズミは炎を迂回してスケバン達へ奇襲。

 

そのまま、5分と経たずにその場での戦闘は終了するのだった。

 

「よし。入口まで到着!」

 

先程のスケバン集団はシャーレの目と鼻の先であったのだ。

 

漸く一行は目的地手前にたどり着くことが出来たが、肩の力を抜く間もなく、車道を揺らしながら、此方へ向かって来る、巨大な車体を目にする。

 

「あれは…!」

「気を付けて下さい。巡航戦車です」

 

チッ。噂の戦車か。まさか本当に出てくるとはな。

 

「クルセイダー1型…!あれは私の学園の制式戦車と同じ型です!」

 

制式戦車か。ならば古めかしい型落ちの骨董品ということは無さそうだ。厄介だな。

 

「不法に流通したものに違いないわ。PMCに流れたのを不良達が買い入れたのかも!

…つまりガラクタ、壊しても良いってことだから、行くわよ!」

 

ユウカの不敵なセリフ。他の者達もルルーシュ以外はむしろユウカの言い回しにクスリとでもしているようだったが、ルルーシュだけは唯一眉を歪めていた。

 

「戦車に対抗出来る武装を持っているのか?

見た所無さそうだが…」

「ジャベリンだとかそういうのですか?それは無いですよ。手榴弾も持ち合わせはないですし」

「なっ!…手榴弾もないのか?なら一旦退いて態勢を」

 

ユウカはああ、とルルーシュの様子のおかしさに合点がいったようで、「大丈夫ですよ」と笑った。

 

「人間相手とは違ってさすがに時間はかかりますけど、ある程度までならこれで倒せますよ」

 

と、ユウカは自分の銃を掲げてみせた。

 

「ロケットランチャーだとか、そうでなくても大口径のモノがあれば楽ではありますけどね」

 

戦車を、小銃や狙撃銃で?

ナイトメア用の巨大な銃ならともかく人用の銃で戦車を倒す事が可能な筈…いや、ここは俺のいた世界とは常識が違うんだ。

落ち着いて考えろ。

 

……もしや。そういうことか?

先程のワカモと思わしき生徒の放った銃弾。

明らかに見た目の口径と弾痕が釣り合っていなかった。

クレーターのような破壊痕も本来あり得ない。

 

いや、考えてもみればハスミ達も銃そのものは敵と似通っているというのに、威力が段違いだった。

それはスケバン達が数発の銃弾でダウンしていることからも分かる。

ハスミ達も被弾は多少してはいるが、全くフラついてすらいない。

 

ここから導き出せる推測として、生徒達は何かしらの能力、或いはシステムを用いて高威力の銃弾を発射することが可能、ということだ。

そしてそれは本人らの技量か才能如何による、と言った所か。

 

そうか。これが"情報(アーカイブ)"にある"神秘"。

"神秘"が彼女らに武器のスペック以上の力を与えているとすれば、戦車と相対しても動じていないどころか、撃破可能という事にも、ワカモと思わしき生徒と弾丸にも説明が付く。

 

とは言っても、"神秘"が何なのかは全く分からない以上、説明可能と言えるかは怪しいが。

しかし、現時点では情報が不足し過ぎている。

"神秘"のメカニズムを今考察する意味はない。

 

現状必要なことはただ一つ。

"神秘"による攻撃力の増加。そういう現象が存在しているという事実認識。

 

そうであるならば──。

 

5秒と経たずこれまでの思考を纏め、ルルーシュは頷いて、指示を出すのだった。

 

「良し。ならばユウカ!前方10m先の障害物まで、前進!スズミはスケバン右翼に向け、発砲!」

 

彼女達が戦車を破壊可能である、という前提に立ち、ルルーシュはスケバン集団に対する有効な指揮を執る。

 

─シャーレ予定地ビル エントランス─

 

「あちらに気を取られている間に…ちょっとお邪魔しますね」 

 

ルルーシュ達が戦車を相手にしている頃、ワカモはひっそりとシャーレのビルへ入り込み、「フフフ」と怪しく笑い、明かりの灯っていない暗い地下へと消えていくのだった。

 

轟音がシャーレ前に響き、クルセイダーは煙を上げながらその動きを停止させていた。

 

「まさか本当に狙撃銃で戦車にとどめを刺すとはな…」

 

理解はしていたつもりでも、実際に目にすると驚愕を隠せず、そう言葉を漏らしつつ、皆の下へと急ぐ。

 

「よくやってくれたな。ありがとう、皆」

「まだ到着はしていませんよ。先生」

「ああ。しかし、目と鼻の先だ。行こう」

 

連邦捜査部S.C.H.A.L.E。

そう刻印された石板が鎮座するファサード。

一行はビルの軒先へと入り、扉を潜る。

 

「着いた!」

 

エントランスへ入り、ユウカがいの一番、少し力を抜きつつ言う。

 

『シャーレ部室の奪還完了。私ももうすぐ合流予定です。建物の地下で会いましょう』

 

ビルの軒先へと到達したタイミングで連絡を入れていたリンから言われ、ルルーシュは地下へと向かうこととした。

 

「私達は他階層のクリアリングをしてきますね」

「分かった。私は地下へ向かっておく。

各自2人一組で行動するように。イレギュラーがあれば連絡を」

「あ、先生、私は護衛に残ります」

 

チナツの挙手に、ルルーシュはん?と一瞬理由が分からない、と疑問が口をついてでたが、直ぐに自分の立場を思い出す。

 

「ああ、そうか。そうだったな。ありがとう。では、頼んだ。

…悪いが作戦は変更だ。時間はかかっても良い。三人が同じフロアを見るようにして、戦力を集中するように」

 

その頃、シャーレ 地下

 

「…うーん。これが一体何なのか、全く分かりませんね。これでは壊そうにも…」

 

ワカモは、地下に置かれている幾つかの機器、というには少々異質な物品も混じる品々を眺めながら、ため息を付いていた。

そこに──。

 

「あら?」

「お前は、さっきの…!」

「先生は下がってください!」

 

不味いな。まさかこんな地下にまで侵入されているとは。

 

チナツが庇うようにしてルルーシュの前に出る。

 

ルルーシュは先程の戦闘からして、かなりの実力者であるワカモに対する方策を編み出すべく思考を巡らせるが、直ぐにワカモが全く動く気配の無いことに気が付き、うん?と彼女の方へ真っ直ぐ視線を向けた。

 

「あら、あららら」

 

何だ?様子が妙だな。

 

ワカモはチナツの存在は意にも介さず、ルルーシュの方をじっと、─狐の面によって視線はわからないが、気配からルルーシュ自身視線を感じていた。─見つめている。

 

「…あ、ああ。し、し」

「し?」

 

ルルーシュは警戒を崩さず、眉を引き締めながら、ワカモの一挙手一投足を観察する。

 

「失礼致しましたあ〜!」

「はっ?!」

 

ワカモは一瞬にして地下から姿を消し、ルルーシュには追うことも出来ないスピードで去っていくのだった。

 

「な、何だったんだ。一体…」

「追いますか?!」

「いや、必要ない。それより、悪いが、他の皆への共有と、地下室の入口の警戒を頼めるか?」 

「分かりました。確かに、シャーレから出ていってくれたのなら、今は追う必要はありませんしね…」

 

ワカモの妙な動きはどうにも理解出来ないが…。

まあ、助かったのだし、良しと…するしかあるまい。

ルルーシュが釈然としないまま手持ち無沙汰に部屋を見渡していると、背後から靴音が近付いて来て、彼女の到着を察した。

 

「お待たせしました。何かあったのですか?チナツさんが扉の前で警戒しておられましたが」

「…いや、問題ない。念の為にお願いしただけだ」

 

全部説明してしまっても、既に彼女は逃げた後、余計な混乱を作るだけだ。

一先ず俺も損害は受けなかったのだし、万一備品が破損しているだとかが発覚したらで良いな。

 

ルルーシュはそんなことを考えながら、リンが手で指し示す先を見る。

 

「ここに、連邦生徒会長の残した物が保管されています。…幸い、傷一つなく無事ですね」

 

リンは机上に置かれていたタブレット端末のような機械を取り、ルルーシュの方へと手渡す。

 

これは、何だ。薄いな。液晶画面か。

先程からリン達が使っている通信機器。あれと特徴が一致している。

しかし、これは一回りか二回り程大きいな。

 

「受け取ってください」

 

正体を類推し、手を伸ばさずにいたルルーシュであったが、促され、手に取る事とする。

 

「これは…?」

「連邦生徒会長が先生に残した物」

「"シッテムの箱" です」

 

"シッテム"。旧約聖書か。

しかし、この機械とどういう繋がりが?

 

幾つもの疑問が浮かびつつも、一先ずリンの説明の続きをルルーシュは待つことにした。

 

「普通のタブレット端末に見えますが、実は正体の分からない物です。製造会社も、OSも。

システム構造も、動く仕組みの全てが不明」

 

怪しすぎるだろう、と口走りたい気持ちを抑えつつ、ルルーシュは"シッテムの箱"を見つめる。

 

とりあえず、これに近い電子機器はタブレット端末と言うのだな。

そして、これはそれと似ているが正体不明、と。

 

「連邦生徒会長は、この"シッテムの箱"は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだ、と言っていました」

 

この端末一つでさっきユウカ達が騒いでいた混乱。その原因の幾らかが一挙に解決する?

上手い話、に聞こえてしまうが、しかし、疑った所でどうしようもない話でもあるな。

 

「私達では、起動すら出来なかった物ですが、先生ならこれを起動させられるのではないでしょうか。それとも…」

 

なるほど。これが"やって頂きたいこと"か。

 

「……」

 

ルルーシュは顎に折り曲げた人差し指を当て、腕を組み思案する。

 

もし、起動出来なければ?俺は御役御免?

いや、それよりもこの学園都市は制御不能のままとなるわけだが…。

つまりはインフラの完全停止もあり得るのでは?

責任重大、なのは構わんが、余りに不透明過ぎるな。

…仕方ない。やらない選択肢はないんだ。

 

「…では、私はこれまでです。ここから先は全て先生にかかっています。

…邪魔にならないよう、離れています」 

 

ルルーシュが覚悟を決めた時、折良く、リンはそう言い残し、席を外した。

これで、地下室にはルルーシュただ一人となった。

 

「さて…」

 

電源ボタンの位置をルルーシュは感覚で理解することが出来た。

 

これは優秀なインターフェースだな。直感的に分かりやすい。

 

無関係ながらもタブレット端末のインターフェースに感心していると、液晶に光が灯った。

 

「付いたか…」

 

薄青い画面にSの文字が浮かび上がり、少し遅れてパスワードの入力を求める画面が現れる。

 

「……まさか"情報(アーカイブ)"にあったパスコードとはこれの…」

 

─我々は望む。

─七つの嘆きを。

 

─我々は覚えている。

─ジェリコの古則を。

 

2秒と経たず、画面の文字列が変わる。

 

【接続パスワード承認】

【現在の接続者情報は"ルルーシュ・ランペルージ"】

【確認出来ました】

 

【シッテムの箱へようこそ、ルルーシュ先生】

 

再び新たな文字列。

 

【生体認証及び認証書作成の為、メインオペレートシステム A.R.O.N.Aに接続します】

 

起動こそできたが、まだ何が何だかだな。

メインシステムとやらを起動するようだし、それ次第、というところか。

 

そんな事を思考し、画面を眺めていたルルーシュ。

しかし、液晶が一瞬暗転すると同時、ふわりと身体が浮くような感覚を味わい、その違和に思わず顔を上げると、そこは──。

 

何だ。これは──。

 

数秒前までいた薄暗い地下室とは正反対に、青い空から気持ちの良い陽光が振り注ぐ、見たこともない、外壁が空に向けて明け放たれた教室へと、ルルーシュはいつの間にかいたのだった。

 





次回でプロローグ部分は終了となるかと思います。
次回更新予定も未定ですが、来週中には上げたいな、と考えています。
また次回もよろしくお願い致します。
評価等いただけると嬉しいです。
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