コードギアス 教導のルルーシュ‐Archive Stories‐ 作:ライト鯖
明け方。
アビドス砂漠に鎮座するカイザーPMC基地の司令室では、敵の来襲を告げるアラートがけたたましく鳴り響き続けていた。
「敵の数は?!」
「不明です!西方より傭兵と思わしき集団が大挙して押しかけ、兵らに攻撃を仕掛けてきております!」
「チッ!何処の誰だ?!アビドスには傭兵を雇う金も無いはずだし…」
理事は敵の正体に思いを巡らせるが、ゆっくりと考える時間が与えられることはない。
「!…東方にてレーダー反応!…これは…」
「何だ?!迅速に報告しろ!」
「恐らく、輸送機と…攻撃ヘリです!」
「数は!」
「輸送機、2!攻撃ヘリは3です!」
「撃ち落とせ!」
理事の命令によって、ミサイルが多数発射され、航空機群へと向かう。
しかし、殆どは撃墜され、唯一、攻撃ヘリの一つに掠めたものがあるだけだった。
そして、攻撃を受けたのは、無人運転されている機体である。
「やっぱり無人運転じゃ対処しきれないみたいよ。先生」
『あくまで的をそらさせる為の時間稼ぎ用だ。構わんさ』
ヘリの一つには、便利屋68が乗っている。
彼女達が、殆どのミサイルを迎撃したのだった。
ルルーシュが計算し送ったポイントを参考に、カヨコがヘリの武装でミサイルを狙い、ハルカとムツキが銃撃と爆弾の投擲でアシスト。
漏れ出たものをアルが狙撃することによって、ミサイルの殆どをいなしたのである。
『輸送機の護衛が終了し次第、君達は次のフェーズへ移ってくれ』
「了解。……フフッ。私達の本気、先生にもしっかりと見せてあげなきゃね」
カイザーPMCの司令室では、理事がミサイル攻撃の失敗に苛立っている所へ、更なる報告が齎される。
「敵、輸送機より降下部隊が!」
「なっ…!」
「更に敵傭兵部隊の追加です!」
ぐうっ、と唸りつつ、理事は命じる。
「兵力を集結させろ!東方には北側の部隊を!西方には南側の部隊を増援に向かわせるんだ!
それから、北方の対デカグラマトン部隊も呼んでおけ!」
「は、はいっ!……なっ!?」
「今度は何だ!!」
理事は激昂するも、それは、誰にぶつけることも出来ない憤りの発散でしか無かった。
「北方に少数ですが敵性勢力確認!」
「北方…?」
「数は三人…」
報告された数に、胸をなで下ろしかける理事や司令室の面々であったが、震える声で続いた報告に、背筋を寒くさせることとなる。
「あ、あれは…ゲヘナの…!風紀委員!」
「バカな!?何故今、ゲヘナが?!
…くそっ!西方、東方共に増援はなしだ!兵力は北方に向けろ!」
「よ、よろしいのですか?数は傭兵の方が…」
「どうせ連中はカイザーに就職も出来ん雑魚共だ!どうにでもなる!早く命令を飛ばせ!」
「はいっ!」
『カイザーPMCの増援を発見。1個大隊の規模です。委員長』
天雨アコの報告に頷き、小さく息を吐いてから、空崎ヒナは愛銃を構えた。
「さあ、二人とも、準備して」
「どうして私もここにいるんだ…」
イオリは釈然としない様子で渋々銃を持つ。
その横でチナツもまた、(イオリはともかく何故私まで…)と心中で愚痴りながら準備をする。
「まだ風紀委員の仕事も残ってるし、手早く片付けよう」
『折角委員長が反省文の代わりに、ということにしてくださったのですから、愚痴はそこまでにしましょうね?』
アコの有無をいわさぬ笑顔に、イオリもチナツも押し黙るしか無かった。
「ここで全軍止める。私達の目的は、敵の目をここに釘付けにすることよ」
『ええ。派手にやらなくては、ですね。
…しかし、意外です。委員長が先生のお願いを受けられたのは』
「そうかしら」
『話でしか聞いていませんが、随分と糾弾されたと聞きましたし』
ジロリ、とヒナは通信機に映るアコを睨めつける。
「貴方の独断によってね」
『うっ…すみません…』
「ああは言ったけど、実際言われても仕方のない事ではあった。
でも、それだけでここまではしないわ」
『では、何故…?』
「先生が意外と、ロマンチストだったから、かしら」
『へ…?』
お喋りは終わりと言わんばかりに、ヒナは向かい来るカイザーPMC兵に向かって、最初の一発を放った。
「さあ、行こう」
足を踏み込み、凄まじい速度で跳ぶようにしてPMC兵の群れの中へと飛び込みながら、ヒナは昨日の、ルルーシュとの会話を思い返していた。
"そう。小鳥遊ホシノを…"
"ああ。君達には、我々が潜入するまでの間の撹乱をお願いしたいんだ"
"目的も、私達の力が欲しい理由も理解した。
けれど…"
姿勢を低くしながら、突如降ってきたゲヘナの風紀委員長に震え上がりながら、バラバラに反撃を試みるPMC兵を一人、また一人と倒していく。
"貴方がそこまでして、アビドスに肩入れする理由は分からないわね"
"肩入れ、か。まあ、否定は出来ない"
"先生。貴方の誠意には応えようと思う。
けれど、分かってる?カイザーコーポレーションはゲヘナも当然、キヴォトス全体で大きな影響力がある。
それへの攻撃に、私達風紀委員が出る意味"
"分かっているつもりだ"
"それなら、理由を教えて欲しい。貴方の覚悟を。私達が出る、理由を"
「無理だ!相手はあの空崎ヒナだってのに…!」
「泣き言を言うな!囲んで叩けば…ぎゃっ!」
「私らも忘れんなよ」
背後をイオリとチナツに突かれ、ヒナを取り囲まんとしていた分隊が倒される。
"理由か。…彼女達の一所懸命な姿を知ってしまったからだ。生徒の努力には応えたいだろ?"
"……嘘ではないのでしょうけど、おためごかしの感を拭えないわね"
"フッ。鋭いな。少し恥ずかしくてな。これで勘弁はしてもらえないか"
"勿論、ダメよ。全部教えて"
分かったよ、と苦笑するルルーシュの顔を思い起こしながら、ヒナは宙を舞い、天を見ていた。
そして、くるりと空中で身体を捻り、引き金を引いた。
「うわああっ!?」
空中からの攻撃に対応しきれず、またも、何人かのPMC兵が一挙に落とされる。
"…そうだな。では…ヒナ。幸せに形があるのだとしたら──"
"それは、どんな形だと思う?"
「はあっ!」
「ま、まだ増援は…ぐわっ!」
たった三人にも関わらず、カイザーPMCの大部隊が押され、バタバタと兵力を失わされて行っていた。
"?…そうね。もしあるのだとしたら、ダイヤモンドとか、ルビーみたいな宝石のようなものかしら"
"そうかもな"
"先生はどう思ってるの?"
"俺は、そう、──"
「ガラス…」
『何か言われましたか?委員長?』
「いいえ。…それより、アコ。敵の増援は?」
『あ、はい。あと3分以内にそちらへ到着の見込みです』
「了解。じゃあ、今いるのは3分以内に半減させる」
─アビドス対策委員会の皆は、ルルーシュと共に砂漠をひた走っていた。
フード付きのマントを被って。
「本当にこんなので気付かれないの?」
「電波吸収体によるコーティングを施してあるから、多少はな。連中のレーダーはそこまで精度が高くないことは分かっているし」
「そうなんだ…?」
「まあ合理的だよ。本来は人気のない砂漠だ。多少精度が荒くても直ぐに反応を見つける事が出来るからな。コストパフォーマンスの面から、精度は無視しているのだろう」
とはいっても、勿論、とルルーシュは付け足す。
「私達だけだったら発見されていただろう。
だが、傭兵部隊、風紀委員と立て続けに撹乱し、降下部隊の護衛を終えた便利屋のヘリが基地に向かって絶えずミサイルや銃撃をしてくれている。
これで基地に近付くレーダー反応を誤認しやすくなっている。
その上での、電波吸収体によって多少レーダーを誤魔化せる我々が通ることで、隠密を可能とした、というわけだ」
「そこまで手を凝らなくても私達なら突破出来るよ?」
シロコの疑問に、ルルーシュは微笑む。
「だろうな。だが、温存は重要だ。暴れ回るのは基地に侵入してからで良い」
実際、対策委員会は基地に侵入するまで、敵に捕捉されることはなかった。
『先生に教えて頂いた座標はもう直ぐです!』
「よし。では作戦通り…チッ」
ルルーシュはシッテムの箱からの通知によって、敵兵を感知した。
その情報はアヤネにも送られる。
『あ、後方に敵部隊!此方に気付いてるみたいです!皆さん戦闘準備を!』
「いたぞ!侵入されているぞ!!」
「あいつらアビドスだ!」
「司令室に連絡!!」
怪しげな影を見かけたPMC兵は双眼鏡を覗き、対策委員会を見つけていた。
「よし!俺達も向かうぞ!」
伝令に報告を命じ、隊長は部下達を率いて対策委員会へと向かわんと駆け出した。
だが、彼らの視界は次の瞬間、真っ白に染まる。
地面を揺らす轟音と共に、小さなクレーターのような爆発痕。
そこから数十メートルは飛ばされた位置で、彼等はぐったりと伸びていた。
『あ、あれは…』
「支援射撃…?」
突然指揮所ごと吹き飛ばされたカイザーPMC兵達の小さな影を見つめながら、対策委員会の皆は目を見張る。
『L118…トリニティの牽引式榴弾砲です!一体どうして…』
困惑するアヤネの通信に、一つの電波が割いって来る。
そこに写し出されたのは──。
『あ、あうう…私です…』
ヒフミ…いや、"ファウスト"であった。
「あ、ヒフ──」
セリカが言いかけるのを"ファウスト"は遮る。
『ち、違います!私はヒフミではなく、ファウストです!』
「わあ、ファウストさん!お久しぶりです!ご自分で名前を言っちゃってるのは御愛嬌ということで★」
『あ、あれ?!あぅぅ…』
『その…このL118はトリニティの牽引式榴弾砲ですが…と、トリニティ総合学園とは一切関係ありません!射撃を担当している皆さんにもそう伝えておきましたので…』
すみません、と袋越しに申し訳なさそうにヒフミは言う。
『これぐらいしかお役に立てず…』
「ううん。すごく助かった」
「ありがとうございます!ファウストちゃん★」
「ああ。おかげでまだ敵司令部に我々の存在は気付かれていなさそうだ。
それに、学園の制式兵器だろうと、その学園のモノとは限らないなんて、キヴォトスではよくあることだもんな」
『あ、あはは。そういうことです。…皆さん、頑張ってください』
通信が切れた直後、更についでとばかりに少し離れた場所にある見張り塔らしき施設が爆発した。
「火力支援の直後に突撃、定石通りだね」
「結果的にだがな」
言いつつ、ルルーシュはミサイルの痕をチラリと見、思考していた。
しかし、トリニティに恩が出来てしまったな。
いや、恩を着せられた、と言うべきか。
この借りは、高く支払わされそうだ。
…だが、現状はありがたく受け取るしかない。
そうして、アビドス対策委員会とルルーシュは基地の地下へ通じるポイントから、侵入するのだった。
アルはルルーシュからの信号を受け取り、カヨコに指示を出す。
「カヨコ。私達も基地へ向かうわよ。作戦がフェーズ2に入ったみたい」
「分かった」
既に攻撃ヘリはアル達の操縦する一機だけとなっていたが、カイザーPMCはそれを撃ち落とすこと能わず、空からの脅威に損害を与えられ続けていた。
そのまま、アル達はカイザーPMCの基地へと機体を向かわせる。
時を同じくして、ヒナ達にも同じ通信が入っていた。
「じゃあ、行きましょうか」
『ルートは送ったものが最短です』
「ありがとう。イオリ、チナツ。遅れないでね」
PMC兵達は、邪魔な位置にいる残党は払い除けるようにして倒され、残る者達は、殆どその様に戦意を失っていた。
傭兵部隊はというと、結局の所、ここだけは理事の思惑通りであった。
プロフェッショナルになりきれないスケバン上がりのような者達が多く、兵力はあっても、戦力にはなりきれず、数で上回っているというアドバンテージによってどうにか膠着を維持していた。
だがそれでも、かなりのカイザーPMC兵力を釘付けにしており、意味はある。
「さて、そろそろ、好機だな」
ルルーシュはニヤリと笑い、走りながら端末を素早く操作する。
『侵入完了です!先生!』
インカムを通して聞こえるアロナの声に頷きつつ、ルルーシュは呟く。
「では頼む」
その二人のやり取りから数秒後、PMC基地の司令室のメインモニターにはノイズが走り始めていた。
「理事!風紀委員が基地に…!」
「ぐうっ…!ん?何だ画面がおかしいぞ」
「え?…これは…?」
「し、侵入されています!何者かにシステムへ!」
理事が「バカな!」と言い終えるよりも早く、モニターは砂漠を背景に佇む一人の男を映し出していた。
「シャーレの…!」
『やあ。どうも。早い再会を祝おうか?』
「そうか…。貴様の差し金か…!アビドスの財力ではあり得んと思ったが、シャーレの資金だったということだな」
『そうかもな。さて、そんな話をする為にわざわざ貴様らのシステムに侵入したわけではない。
まあ、勿論、もう分かっていることだろうが、風紀委員も、便利屋も、傭兵も我々の味方だ。
すっかり基地の戦力は削がれてしまっているな?』
『傭兵の数、便利屋による空からの支援。風紀委員の制圧力。…随分と苦しめられているようだ』
画面上のルルーシュはニヤリ、と嘲るようにして笑った。
『そう。頃合いと言う奴さ。これからそちらにお邪魔する。歓迎は不要だ。もう既に、祝砲は他の者達に使い果たしてしまっているだろうからな』
「ふざけた言い回しを…!!」
理事は神経を逆なでされたようで、拳を机に激しく叩きつけた。
『さあ、宴を楽しもうじゃあないか』
プツリとモニターは映像を途切れさせ、真っ暗な画面だけが残る。
「背景の分析をしたところ、基地から直ぐの砂丘辺りかと。移動スピードを考慮すれば、もう直ぐに基地へ辿り着きます…」
部下の報告に、理事はふざけやがって、と怒気の混ざった唸り声を上げる。
「今更宣戦布告のつもりか?何処までも…!アビドス!シャーレ!お前達のせいで…!だと言うのに更にその上!!」
我慢ならなんと言わんばかりに理事は勢いよく立ち上がり、傍にいた部下へ命じる。
「…私自ら出る。"アレ"を用意しろ」
「き、危険ではありませんか?!アレは実験機…やるなら機甲部隊の連中に命じて…」
「無論だ。だがそれまで奴等を野放しにはしてられん!私のは実験型の中でも起動準備が早い!確実に奴等を食い止める!」
理事は部下の制止を祓い除け、苛立ちを隠すこともせず、ドスドスと足音にも感情を乗せながら"それ"の下へ向かうのだった。
「先生。基地上空に到着したわ」
『よし。では、予定通り──』
「待って。…地面が?」
『ん?どうした』
アル達は基地の敷地に広がる砂地、その一角が競り上がり、かと思えば、ハッチが開くようにして、砂に包まれたそれが上向きに開く。
これにより、上に乗っていた砂は落ち、その正確な姿を顕にする。
開かれた穴の先は、アル達からはよく見えなかったが、しかし、徐々に"それ"が迫るようにして上がり、姿を見せた。
『ゴリアテPRT、発進!』
6mはゆうにあるだろう大仰なコックピットを備えたロボットのような機械が地の底よりせり上がってきたのだ。
頭頂部にはアンバランスなまでの巨砲。
両腕も砲塔として作られており、攻撃力に長けていると一目で分かる機体。
それはまず、便利屋の乗るヘリへと右腕の照準を向けた。
「やば…」
カヨコが言うのとほぼ同時に、便利屋の皆も危険を察知しており、空へと一斉にダイブした。
直後、ヘリは爆炎を生み、地面へと火だるまとなり落ちていくのだった。
ヘリの落下による爆発の少し前に、アル達は地面に着地、もとい、落下のようにして、降り立っていた。
「もういい…もう沢山だ。あんな学校に拘って本気で借金を返そうと、しがみつき続けるバカ共。
それに与する愚者。
全て、私の計画を妨げた全てを、踏み潰してやる!」
理事はゴリアテPRTのコックピットに乗り込んでいたのだ。
わらわらと地下から増援として飛んできた兵らと共に、ゴリアテは駆動し、風紀委員と便利屋を狙った。
「へえ。こんなのまであるのね」
基地へと辿り着き、合流したヒナはゴリアテを見上げ、慌てることもなく平然と言う。
そこに、丁度ヘリより退避した便利屋とかちあわせてしまうのだった。
「あ…ヤバ」
「便利屋の…。はぁ…ここはアビドス砂漠。他所の自治区だから、見逃すわ」
「!………ふ、フフフ。見逃す?それはこっちのセリフよ。─依頼が優先だもの。見逃してあげるわ」
アルは内心で、ヤバイヤバイヤバイ。ヒナまで連れてきてるなんて。ヤバイヤバイヤバイ!
と叫んでいたが、表面上は余裕のある顔を崩さず、構える。
風紀委員と便利屋68による、奇妙な共闘が始まるのだった。
「ここは…学校…?」
「…」
「これって、学校の痕跡だよね?」
地下への入口を探す中、対策委員会はその痕跡に思わず足を止めてしまっていた。
勿論、既に基地の中へは侵入済みである。
先程、司令室で流されたのは録画。
PMCの注意を基地の外や入口付近に向け、内部を疎かにさせるための策であった。
故に、彼等は余裕をもって隠密に行動出来ていたのだ。
「砂漠の真ん中に学校の跡…もしかして…」
「恐らく、ここがかつてのアビドス高校の本館だったのだろうな。文献とも凡そ合致する」
何故ここに基地を…?象徴的な意味、も無論あるのだろう。
だが、黒服の言っていた実験、そして、実験室の存在。
奴はアビドスの神秘、とも言っていた。
"ここ"に何か意味があるのか?
いや、考えるのは後だ。
「ん?アレって…」
ノノミは見つけたそれを皆に指差し伝える。
「バンカー?」
『あそこから入れるかもしれません!』
「だな。行ってみよう」
ルルーシュ達は静かに地下への入口を潜り、地上より姿を消す。
「貴様ら!どけ!アビドスの連中をこの基地に入れるわけにはいかんのだ!」
理事の操るゴリアテは、基地の入口方向へ向かわんと移動するが、それはアルの狙撃と、回り込んだヒナによって妨害される。
「ぬうっ!?…くそっ!くそっ!アビドスめ!シャーレめ!」
理事はわなわなとコクピットで肩を震わせる。
お前達のせいで!と理事は喚いた。
「計画!私の計画があっ…!!」
ザザッという雑音の後、ヒナやアルの耳に、ルルーシュからの報告が届く。
『侵入完了。時間稼ぎは終了だ。以後は君達の判断に任せる。イレギュラーがあれば報告を』
ヒナは、残念ね、とゴリアテの頭上へと飛び上がり、銃口を向ける。
「あの娘達はもう、侵入してるわよ」
「は…?」
ピンポイントで頭部に装着されている巨砲が破壊され、ゴリアテはバランスを崩す。
「何を…そんなに早く行けるはずが…」
「へえ。本当に引っかかったんだ」
「録画、だったりしてね?」
ムツキの嘲るような笑いと、アルの皮肉っぽい言い方に苛立ちながらも、理事はその言葉の意味を理解し、怒りが表出するよりも先に、背筋を冷やす、冷たいものを感じていた。
「バカな…」
確かに私は奴と会話を…そこまで考えてから、彼は気付いたようであった。
いや、あれは会話ではなかった。
私の反応をある程度ざっくりと推測すれば、成り立つやり取り。
そうだ。奴は私の言葉に細かく反応をしているわけではなかった。
──不味い。
「司令室!!敵が侵入している!対処を──」
『す、既にAブロックが突破されてしまいました!』
「なっ…!何をしている!何故報告しない!」
『り、理事が通信をオフにしていたからで…』
「御託は良い!早く連中を止めろ!」
ルルーシュは理事を深く知っている訳では無い。
それ故に、完全な会話というよりは、単なる挑発としての言葉を意識した録画を流したのだ。
これならば、即座に違和感を抱かれることもなく、ルルーシュ達の本当の位置を誤魔化せる。
理事はまんまと引っかかった、というわけだ。
「注意が疎かになっているわよ」
「しまっ──!」
ゴリアテの右腕装甲が破壊されてしまい、理事は体勢を立て直すべく、歩兵達に前へ出るよう命じるしか無かった。
「時間を稼げ!…くそっ!ゴリアテ部隊!準備はまだ出来とらんのか!」
『あ、後少しです!もう暫しお待ちを…!』
「ぐうっ…!実験機とは言え、最初から起動準備をしておくのだった…」
─そして、基地の地下。
対策委員会達は侵入を察知し、やって来るPMC兵を薙ぎ倒しつつ、ホシノのいる実験室へのルートを進んでいた。
途中でルルーシュは敵を一旦撒く事を狙い、ルートを変更。
監視システムも全てではないがある程度はハッキングしていた為、それに合わせる形で移動。
姿を一時的にくらませる事に成功する。
そして、恐らくこれ以上の侵入を許さないために封鎖されたとあるフロアのゲートを彼等は見つけた。
「あからさまだな…ふむ」
ルルーシュは封鎖されたゲートの近くにあるパスコード付きのキーロックへと手を伸ばす。
「ここが予定のポイントか。なるほど、このゲートが閉じられていたのだな」
キーロックの示す数字から位置を割り出し、ルルーシュは予定通りのポイントであることを確かめると、シッテムの箱を懐から取り出した。
「アロナ。行けるか?」
ルルーシュが小声で尋ねると、アロナは、はい!と元気よく返事を返す。
『ここを突破するんですね!おまかせを!キーロックとの同調を開始します』
ルルーシュも端末を操作し、アロナと協力してキーロックの解析を始めた。
光の殆ど届かない暗闇の中。
広く、天井も何処まで広がっているのかというほどに高い、静かな空間。
実験室に繋がれたホシノは暗闇の中で、ただただ、孤独に悔いているのだった。
「皆…ごめん…私の、ミスで…」
今回も読んで頂きありがとうございます。
次回更新日は変わらず未定ですが、早めに上げられるよう頑張ります。
次回もよろしくお願い致します。